プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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2015年10月

2015/10/24

LEEWAY (リーウェイ)  『BORN TO EXPIRE (ボーン・トゥ・エクスパイヤ)』


BORN TO EXPIREBORN TO EXPIRE
LEEWAY

MARQUEE RECORDS 2014-12-12
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 ニューヨーク・ハードコアで、伝説のクロスオーバー・バンドとして語られているリーウェイの88年のデビュー作。長いこと入手困難になっていた作品だが、ブラジルのスラッシュメタル系レーベルマーキュリーによって、全曲リマスタリングされ、9曲のボーナストラックが追加。デラックス版として2015年に再発された。

 彼らがなぜ伝説のバンドと呼ばれているかといえば、後世にあたえたインパクトにある。自らをニューヨーク・シティー・ファイネスト(極上)・ハードア・メタルと呼び、スラッシュ・メタルとハードコアを折衷させた。メタルとハードコアのクロスオーバーといえば、D.R.Iやスイサイダル・テンデンシーズが有名だ。だが彼らの場合、クロスオーバーの折衷率が違う。当時ニューヨークで活躍していたアグノスティック・フロントは、あくまでもハードコア中心のサウンドで、比率からすると2対8くらい。あくまでもギターソロの部分でしかメタルを取り入れていなかった。そしてスイサイダル・テンデンシーズやDRIでは、メタルとハードコアの折衷率が5対5くらいまで増したが、あくまでもハードコアがベースでメタルを肉付けした形だった。

 しかし彼らはメタルとハードコアの比率を3対7まで引き上げた。もはやギターのリフやメロディー、ハイトーン気味のボーカルからは、アンスラックスの影響が強いスタッシュメタルをベースにしたサウンドなのだ。ここまでくるとスタッシュ・メタル・バンドといわれても過言ではない。だがなぜ彼らがハードコア・バンドとして捉えられているかといえば、ニューヨーク・ハードコア・コミュニティー出身という出自と、怒りに満ちた歌詞とヒップホップの要素を取り入れた部分にある。

 その歌詞の内容は、黒人とユダヤ人が襲撃しあう恐怖と暴力に満ちた日常や、欺瞞に満ちた宗教についての社会問題や、困難な壁に立ち向かっているリアルな自分の人生について歌っている。モービット・エンジェルとナパーム・デスの違いが、サウンドよりも歌詞の内容にあるように、リーウェイのハードコアも、歌詞にあるのだ。緊迫感に満ちたリアルな日常への怒りに満ちた歌詞は、間違いなくハードコアなのだ。

 その直截的な怒りの内容を歌った歌詞と、ハードコアコミュニティー出身という出自からかもし出されるシリアスで緊迫感に満ちた空気が、スラッシュ・メタルなサウンドに独特のハードコアエッセンスを加えているのだ。それがリーウェイにしか演ることのできないサウンドを生み出しているのだ。

 彼らがスラッシュ・メタルにハードコアの空気感を加えたサウンドは、結果的にニューヨーク・ハードコア界に自由さをもたらせた。90年代に入り、クリシュリナ教を取り入れたシェルターや、ニューウェヴの要素を加えたクイックサンド、ピップホップを取り入れたマッドボールなど、いろんなサウンドを柔軟に取り入れたバンドがニューヨーク・ハードコアでたくさん現れた。そういった意味では先駆者である彼らの功績は高いのだ。

2015/10/02

Heroin (ヘロイン)


HeroinHeroin
Heroin

Gravity Records 1997-01-24
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89年から93年にかけて活動していたヘロインの、97年に発表したすべての作品を網羅したディスコグラフィー的な作品。その内容は、91年に発表された7インチ・シングル『オール・アバウト・ヘロイン7』から6曲。92年に発表された7インチ『ヘロイン』から4曲。93年に発表された12インチ・シングル『ヘロイン』から6曲に、3曲プラスされた、計19曲が収録されている。

 ぼくが彼らの存在を知ったのは、アップルシード・キャストのインタビューでの発言だ。エモの先駆者である彼らが影響を受けたバンドとして挙げていたのが、ライツ・オブ・スプリング、ヘロイン、ジュリアといったバンドたちだ。そのとき以来個人的に、ヘロインというバンドのことがずっと気になっていたが、日本の雑誌では彼らのことを紹介されることがまったくなく、つねに無視し続けられてきた存在だったのだ。このたび彼らのCDを入手したので、レビューを書くことにした。

 とうやらヘロインというバンドは、アメリカではスクリーモの先駆者として語られているようだ。エモーショナル・ハードコアというジャンルが、エムブレイスやライツ・オブ・スプリングなどによって産声を上げたころ、そのバンドたちやオールド・スクール・ハードコアを聴いた育ったヘロインのメンバーたちは、ライツ・オブ・スプリングのサウンドスタイルをさらに推し進めた。熱く叫ぶボーカルは、しゅうし絶叫するスタイルへと進化し、センチなメロディック・ギターはなくなり、分厚くノイジーでカオティックに変化した。

 このアルバムで展開されているサウンドは、終始絶叫するスタイルのボーカルと、分厚くノイジーなギターサウンドだ。ギタースタイルはハードコアをベースにしているが、ところどころにメロディー・パートが加わっている。そして高速スピードのドラミングによって、分厚いギターとメロディー。絶叫ボーカルという個々に際立つ要素が歪な不協和音を生み、全体の印象をカオティックなものにしている。そのあたりが終始ハイテンションで闘争的なハードコアとは違うし、静と激のコントラストがあるエモーショナル・ハードコアとも違う。精神状態がめちゃくちゃで、マッドなカオティックを生んでいるのだ。

 その絶叫するボーカル・スタイルから、スクリーモの先駆者として語られることになった。だが実際に一部の例外を除いたスクリーモと呼ばれているジャンルのバンドたちは、メタルやハードロックからの影響が強い。メタルやハードロックのメロディーパートにハードコアのコントラストがあるバンドたちが、スクリーモと呼べるだろう。そういった意味で、ヘロインはスクリーモからかけ離れている。いうならエモーショナル・ハードコアとカオティック・ハードコアの間をつなぐ存在が彼らとは言えるのではないか。エモーショナル・ハードコアよりも過激なサウンドで、カオティック・ハードコアよりも混沌とはしていない。それがヘロインのサウンドなのだ。

 おそらく彼らの存在がなければ、コンヴァージもデリンジャー・エスケープ・プランも存在しなかったのではないか。日本ではそれほど評価されていないが、エモーショナル・ハードコアとカオティック・ハードコアの間をつなぐ上で、重要なバンドだったのだ。

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