プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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2015年12月

2015/12/23

Malfunction (メルファンクション)  『Fear of Failure (フィアー・オブ・フェルリア)』


Fear of FailureFear of Failure
Malfunction

Bridge Nine Records 2015-11-19
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 ニューヨーク州バッファロー出身のハードコア・バンドのデビュー作。クイックサンドからスナップケースへと進化していくニューヨーク・ハードコアの伝統を受け継ぎ進化させたバンド。ニュースクール・ハードコアの正当なる後継者。

 彼らのすばらしさはスナップケースやスラッグフェスト、ディスパイヤなどの90年代のチュガ・チュガ・バッファロー・ハードコアと呼ばれるサウンドを、総まとめにし、さらに進化させた部分にある。スナップケースの変則的なギター・フレーズを、よりバラエティー豊かに増やし、スラッグフェストのスローテンポで刻むグルーヴと、鉄骨を叩きつけるような重厚なギターサウンドを加えた。怒りを叩きつけるようなかすれ気味の怒声は、デスメタルからの影響を全く感じないボーカルで、ニューヨーク・ハードコアのボーカルスタイルの伝統を踏襲している。ノイジーにソリッドにタイトに進化させたサウンドは、より過激に攻撃的に前へ変化しようとする軌跡を伺える。

 そしてなによりすばらしくオリジナルティーを感じるのが、急激に変わっていく曲展開。ミドルテンポからいきなりブラストビートの急ピッチに変わる緩急をつけた複雑な曲展開は、ニューヨーク・ハードコアの伝統的な要素を取り込み、集約しながらも、彼らしかないオリジナルティーあふれるサウンドを展開しているのだ。

 まるで吐く息も凍る厳しい寒さのなか、金属と金属、肉体と肉体がぶつかり合うような音の迫力と気合。そんな緊迫感と気迫に満ちた空気が全体を支配しているのだ。

 ニュースクール・ハードコアの最新版という意味だけでなく、硬質なサウンドの迫力もすばらしいといえる内容の作品だ。

2015/12/18

Twitching Tongues (トイッチング・タングス)  『Disharmony (ディスハメニー)』


DisharmonyDisharmony
Twitching Tongues

Metal Blade 2015-10-29
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 大手インディーレーベル、メタルブレイドに移籍して発表された3作目。前作の死神に恋をするという世界観をガラッと一新させ、前作よりもさらにスケール感が増した作品に仕上がっている。

 ぼくは前作『イン・ラヴ・ゼア・イズ・ノー・ロウ』のレビューで、この作品が最高傑作と書いた。その気持ちはいまも変わらないが、おそらくメタルが好きな人から見れば、今作を最高傑作に挙げる人も多いのではないか。前作がハードコア的な要素が強い作品とするならば、今作はメタルと呼べる作品に仕上がっている。

 前作はシリアスで緊迫した空気が流れるなか、独特な静けさがあった。葬式のような死者の霊を愛しむ深い沈黙の静謐が魅力であった。そのサウンドはマッドボールから発展した新しい形の、ニュースクール・ハードコアなサウンドであった。今作ではその静謐が薄れ、代わりに土臭いアメリカ南部のサザンロック的な荒々しさが支配している。ボーカルもワイルドな歌い方に変わり、ギターの音は野太くなり、ソロパートなども加えている。複雑な展開はなく、サウンド自体は至ってシンプルでストレート。マストドンの影響が色濃いメタルな作品に仕上がっている。

 ただマストドンとの違いを揚げるのなら、キリスト教の影響が色濃い神秘的なオルガンを不吉な音色に変え取り入れている。どうやら今作も前作同様にコンセプチュアルな作品らしい。現時点でそのコンセプトは何かわからないが、反キリスト的な異端の宗教と、愛の欠如や、愛の終わり、偽造され全世界へ布教された愛の話など、といった歌詞の内容が目立つ。今作では哲学的な思慮的なムードと、ニヒリズムが支配しているのだ。それがこのアルバムの特徴だ。

 前作とサウンドの違いこそあれ、漆黒に囲まれた、死神や反キリスト的な異端教、ダークな世界感は今作でも変わっていない。趣向の違いこそあるが、今作もすばらしい作品なのだ。

2015/12/07

TAKEN (テイクン)  『CARRY US UNTIL THERE IS NOTHING LEFT (キャリー・アス・アンティル・スリー・イズ・ナッシング・レフト)』


CARRY US UNTIL THERE IS NOTHING LEFTCARRY US UNTIL THERE IS NOTHING LEFT
TAKEN

FALLING LEAVES RECORDS 2015-01-27
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 日本では叙情系ニュースクール・ハードコアと呼ばれ、97年から04年まで活動をしていたカルフォルニア州オレンジカウンティー出身のバンド、テイクン。15年1月に、再結成&新作レコーディングを記念して、現在廃盤となっている過去3作品、『Finding Solace in Dissension』『And They Slept』『Between Two Unseens』を収録した2枚組みが発売された。

 日本ではホープス・フォールやシャイ・ハルードと並び、叙情系ニュースクール・ハードコアの代表格と呼ばれているテイクン。叙情系ハードコアとは、従来のハードコアに、断末魔の苦しみのような叫びと、繊細なメロディー・パートが絡むサウンドことを言う。エモーショナル・ハードコアの発展系で、アメリカではリアル・スクリーモと呼ばれている。

 そのなかでもテイクンは、安らぎと心地よさと、桜が散るような儚さに満たされた浮遊感のあるメロディーに特長があった。悲痛な叫び声と、荒々しくバイオレンスなハードコアのなかに、気品ともいえる美意識が漂っていた。それが彼らの個性でもあったのだ。

 アルバムの構成は、ディスク1は04年の2作目のEP『Between Two Unseens』から5曲、02年のデビュー・アルバム『And They Slept』から5曲の計10曲が収録されている。ディスク2は、『And They Slept』から2曲、00年の1作目のEP『Finding Solace in Dissension』7曲の、計9曲が収められている。新しい作品から順に収録され、古い作品にさかのぼっていく展開だ。

 『Between Two Unseens』は、メロディーに力を入れた作品ながらも、叫び声の迫力が増し、激しさと繊細さの境目がなくなっている。初期にあったころあった荒削りな部分がなくなり、滑らかに聴かせる仕上がりに。技術的に円熟の域を感じさせる作品だ。『And They Slept』は、前作『Finding Solace in Dissension』の延長上にある作品で、エモのように静のメロディーとハードコア激しさがくるくると入れ替わる展開。ボーカルもクリーン・ボイスと叫び声を使い分け、全体に荒々しさが目立ち、エモーショナル・ハードコアの要素が強い作品だ。そして『Finding Solace in Dissension』は、絶叫にザクザク刻むリフとノイジーなギター、ブラストビートの焦燥感が特徴的なハードコアな曲が多い。あくまでもメロディーをハードコアのエッセンスとして加え、勢いや衝動を重視している。

 全体を通して聴いてみると、ベースにある儚いメロディーと叫び声にハードコアが加わったサウンドスタイルは、全アルバムを通して貫いている。だが後期になるほどメロディーが研磨されていき、初期になればなるほど、激しく暴力的なハードコアな衝動を感じる。彼らが目指していたサウンドとは、おそらく『Between Two Unseens』だったのだろう。ここで完成したから、潔く解散したのだろう。解散後、メンバーがメタルコアを志向ミコトと、メロディーをさらに追及したサーカ・サヴァイブに分かれたのが象徴的だ。

 桜が散るような儚いメロディーに激情の叫び声と高みに登っていくハードコアのノイズギターは、
叙情系ハードコアのなかでは間違いなく5本の指に入る名盤だ。


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