プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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2016年2月

2016/02/15

Julia(ジュリア)


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 サンディエゴ出身のエモーショナル・ハードコア・バンドの94年に唯一発表された8曲入りのEP。このバンドもまた、アップルシード・キャストのメンバーが影響を受けたバンドとひとつとしてあげ、エモの先駆者のひとつとして語られるバンドだ。日本ではあまり評価されることのなかったバンドだ。

 そのサウンドは、ライツ・オブ・スプリングとテキサス・オブ・リーズンの中間に位置する。ジャンル的にはライツ・オブ・スプリングから進化したエモーショナル・ハードコアだ。ライツ・オブ・スプリングとの違いは、部分的にメロディーパートを導入した部分。あとにテキサス・オブ・リーズンによって、静がよりクローズアップされ、静と動のアップダウンこそがエモーショナル・ハードコアのサウンドの特徴として語られていくことになる。

 サウンドの8割をしめる荒々しく力強いギターと全力を出し切るエモーショナルな歌声のサウンドは、ライツ・オブ・スプリングからの影響が強く、残り2割のメロディーパートと、エクスペリメンタルなサウンドには、彼らならではのオリジナルティーを感じる。透明で繊細で冷たく美しいメロディー・パートを取り入れた部分は、のちにテキサス・オブ・リーズンやミネラルによって、さらにメロディーがデフォルメされ、エモーショナル・ハードコア=不良になりきれないうじうじした奴がやる音楽という代名詞になっていく。そしていびつな音の不協和音ギターやピアノが反復するプログレのように長いパートなどの雑音を取り入れた実験性には、あとにアップルシード・キャストによってこの路線がさらに極められ、ポストロックやプログレを取り入れたエモという新しい形を提示していくことになる。

 ともあれエモの静の部分を最初に導入したバンドであり、実験性なども大胆に取り入れ、構成のバンドに多大な爪あとを残した。エモを語る上で重要な作品だ。


2016/02/10

Beyond(ビヨンド) 『Dew It/Live Crucial Chaos Wnyu(デュー・イット!-ライブ・クーシャル・ケイオスWNYU )』

Dew It / Live Crucial Chaos Wnyu [Analog]Dew It / Live Crucial Chaos Wnyu [Analog]
Beyond

Revelation 2015-10-01
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 ニューヨーク・ハードコア界では知る人ぞ知るまぼろしな存在であったビヨンド。88年から89年にかけてわずか1年間しか活動しなかったバンドで、ユースクルー・シーンの先駆者にあたる。のちにメンバーは、BOLD、インサイド・アウト、クイックサンド、BURN、シェルター、108などといった、名だたるニューヨーク・ハードコアバンドで活躍したことでも知られている。

 28年の月日を経て発表された今作は、ヴァイナル盤のみの発表で、88年にリリースされたデモ・テープ『Dew it』から8曲と、アメリカのラジオ局WNYUでの、ハードコアパンクラジオショウ"Crucial chaos"でのラジオライヴセッション14曲を加えた、計21曲がアルバムに収録されている。そこに20ページのブックレットを添付した内容。1年という短命な活動のバンドであったが、活動のすべてが今作に網羅されている。

 今作だが、初期衝動という気迫と熱意に満ち、演奏力よりも勢いだけで突き抜ける荒々しい演奏だ。肝心のサウンドだが、ハードコアの黎明期に活動したバンドだけあって、ゴリゴリのハードコア、という音ではない。要所要所に初期パンクっぽいメロディーパートを導入した、ハードコアの原型といえるサウンドだ。

 スローテンポじっくり聞かせるボーカルが、いきなりなだれが襲ってきたかのように変化するノイズギターの洪水とばたばたと躁病的に叩くドラムが特徴の曲や、わずか46秒で終わるファストな曲、あとにユースクルーシーンの特徴となったストップ&ゴーの変則的なリズムや、クリシュリナ教を取り入れた高音ギターのギターメロディーといったサウンドスタイルは、このバンドが先駆けといえるだろう。

 性急なスピードと2,3コードという大まかなパンク・ハードコアのサウンド・スタイルこそ遵守しているが、ハードコアというサウンドが確立される前の、いろんなことにチェレンジした実験的なサウンドでもあるのだ。その後メンバーたちがシャルターやクイックサンドといったバンドで活躍し、ここで演ったサウンドをブラッシュ・アップさせ、自分たちのバンドの個性を確立し、ユースクルー・シーンの代名詞といえるサウンドを確立した。ここにはまさにユースクールの原型があるのだ。ニューヨーク・ハードコアのユースクルーの歴史を知るうえでは重要な作品だ。

2016/02/02

Forced Order(フォースド・オーダー)  『Vanished Crusade(ヴァネッシュド・クルセイド)』

Vanished CrusadeVanished Crusade
Forced Order

Revelation 2015-07-16
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 15年に発表されたデビュー作。今作も引き続き“レボレイション・レコーズ”からのリリース。サウンド路線は前2作と変わらない。今作では前2作で確立したサウンド路線を総まとめにし、さらに研磨したサウンドを展開している。ごつごつした部分が綺麗に整えられつつも、勢いと迫力と衝動に満ちたデビュー作といえる気合の入った内容なのだ。

 彼らの確立したサウンドとは、インテグリティーや イン・コールド・ブラッド、リングウォ-ムなどのバンドから影響を受けた、スピーディーで重くグルービィーなハードコア。上記で述べたとおり、今作でもそのサウンド路線は変わりない。だが余分な部分はそぎ落とし、強調するところは強調し、前作までのごつごつした部分が確実に磨かれ、研磨されたサウンドを展開している。

 とくに目立つのは金属板のように厚く重い低音のギターのリフのなかに妖艶に鳴り響く高音のギターソロ。そして最後に収録された、魔界に森を一人彷徨っているような不気味さを紡ぎだすアコースティックと暗く沈んだ寂寥と孤独ノイズ。

 そこには熱く男くさく立ち向かう勇気を急き立てるような闘争心と、はっとする勢いで駆け抜けていくし初期衝動にあふれている。そして強気に向こう見ずに突き抜けたあとに不気味な静けさとともに漂うに最後のアコースティック・ノイズからは、闘争心やアブレッシヴな感情から開放され、一人逃げ出し癒されているような、神秘に満ちた美しさが漂っている。最後にさらけ出した自分のダークな部分が、独特な美しさ放っている。これもダークサイドNYCに通じる亜種のハードコアの進化版の作品なのだ。


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