プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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2016年4月

2016/04/29

VA (EBULLITION) XXX SOME IDEAS ARE POISONOUS

Xxx

ドイツの『マーザー・アース』やスウェーデンの『ストレート・エッヂ・アズ・ファック』と並び、90年代を代表するストレート・エッヂ・コンピレーション。EBULLITION・レコードの社長であるケントが、<ストレート・エッヂは有毒なアイデアで、あなたの人生を破壊する。そして疎外感を残す。致命的なアイデアだ。>という逆説と皮肉に満ちた理念のもと、自らの厳選した筋金入りのストレート・エッヂ・バンドを集めた。サウンド形態や演奏技術より、ストレート・エッヂ思想にこだわったコンピレーション・アルバムなのだ。

だからなのかこのコンピには、サウンドの物理的な重さよりも、怒りや衝動や信念からくる熱意などの精神的な重さが、アルバム全体を支配している。収録されているバンドの数は12。それぞれにストレート・エッヂ思想という部分では共通しているが、微妙に思想が異なる。

まず1曲目のMONSTER X(モンスターX)は、グラインド・コアよりのパワー・ヴァイオレンスで、ノイジーなサウンドを展開し、際限なき人間の欲望や、資本主義社会の問題が生み出した核爆弾の恐ろしさなど、政治社会問題を取り上げた内容の歌詞を歌っている。

2曲目のVIAはおどろおどろしいノイズギターが印象的な終始スローテンポな、イントロのようなサウンドで、言葉を巧みに聞かせる。そこでは少数派の怒りや憤りを、協調や団結することでともに体制派に戦っていくことを訴えかけている。

3曲目のWELL AWAY(ウェル・アウェイ)は、ジャームスのようなハードコアパンクを情動的な叫び声と煽情的なギターで聴かせる。世欲を断ち、ストイックに真の自分のあるべき姿を追求しているバンドだ。

4曲目のFRAIL(フェイル)は、悲痛な叫び声のような華奢な歌声とノイズギターで、エモーショナルハードコアを聴かせる。パンクのような反社会的思想で、流行のファッションやスノッブなチャラ男文化を完全否定した頑固にストレートエッジを貫いている。

5曲目のPolicy of 3(ポリシー・オブ・3)は、水面をたゆたうようはノイズの中に安らぎと落ち着きを求めたイアンマッケイのエッグ・ハントのようなポストコア。ときには何もないことが高く評価され、空虚で終わることが運命づけられているという哲学を持ったバンド。ニヒリズムにあふれている。

6曲目のTREES WITHOUT LEAVES(ツリーズ・ウィザウト・リーヴス)は、スリントに影響を受けたポストロック。スリントとの違いは静謐なギターメロディーから、荒々しいノイズギターとエモーショナルな叫び声が加わり、情動的な展開へと発展していく部分か。歌詞は海を泳ぐなど、抽象的で比喩や示唆的な内容が目立ち、サウンドのイメージを大切にしているところがうかがえる。このアルバムのなかで、一番文学的な思考を持ったバンドといえるだろう。

7曲目のPROZAC MEMORY(プロザック・メモリー)は、抗うつ剤の思い出というバンド名と同様に、やばい精神世界を体現している。サウンドはノイズギターを全面にだしたエモーショナル・ハードコア。そこに幻想的なメロディーやボーカルの語りが絡む独特の展開。歌詞は地球そのものを嫌悪し、世間から疎外され見下された人間の心境を歌っている。そこに漂っているのは陰鬱な虚無感。嫌われている理由を突き止め解決する気力もなく、ただ俯瞰的に見ている。このバンドを聴いているともしからしたら、ドラッグなどをやり、幻覚を見て死の淵をさまよった経験があるのではないかと勘ぐってしまう。ポリシーや思想的な意味で自己選択をしたのではなく、長生きするため、必然的にストレートエッヂ選ばなくてはならなくなったのではないかと想像してしまう。それほどぶっ飛んだ考え方を持ったバンドなのだ。

8曲目のPOGROM(ポグロム)は、ナパーム・デスに影響を受けたグラインドコアで、ボーカルにはディストーションがかけられ、さらにデフォルメされている。ノイジーで魔界のような暴虐なサウンドとは裏腹に、歌詞はどこかシュールでシニカル。不快感は私を慰めると歌い、ストレートエッヂ以外の人を野蛮で信用できない人々と思っている。ポグロムとは大虐殺という意味。

9曲目のGROUNDWORK(グラインドワーク)は、エクスペリメンタルなエモーショナル・ハードコア。その実験性とは、エモーショナルなボーカルの叫びが絶叫に変わったのと、メロディーパートのギター、掛け合いのツインボーカルを取り入れた部分。エモーショナル・ハードコアが激情コアやスクリーモに進化していく過程の、初段階に進化したバンドといえるだろう。歌詞は、為政者によってあなたは利用され、彼らの嘘はあなたのアイデンティティを飲み込む。あなたは被害者であることに気づけと、歌っている。反体制側の思想を掲げたバンドなのだ。

10曲目のPORTRAITS OF PAST(ポートレイツ・オブ・パスト)は、フガジのようにトリッキーなギターにこだわったポストハードコア。歌詞はソクラテスの哲学のように、エモーショナルな叫び声で自らを問いかけていく。お前はそれでいいのか?や、お前に人を避難することができるのか?とか。自問自答を繰り返した結果、ストレート・エッヂに行き着いたという。ストレートエッヂに目覚めた原因について歌い、ルーツを大切にしている。いささか内省的な傾向にあるが、このバンドも他人になりをいわれようが自分の信念を貫く固い決意と意思を持ったバンドなのだ。

11曲目のTHREADBARE(トレッドベア)は、エンブレイス系のエモーショナル・ハードコアに、3人の掛け合いボーカルを合わせたサウンド。歌詞は肉食からベジタリアンに変わる心境を歌っている。肉食によって自らの体を蝕んでいた原因物質を取り除き、体の中を浄化し、自分を再構築していくことへのすらばしさを取り上げている。修行僧のように欲望を断ち切り、ストイックに突き詰めることによって得られる境地があることを示唆しているのだ。


12曲目の SHATTER THE MYTH(シャター・ザ・メス)は、フガジから発展した静と動のアップダウンのあるサウンドのエモーショナル・ハードコア。静の部分のつま弾くアコースティック・ギターが印象的。心に衝撃を与える・神話というバンド名さながら、歌詞はすべてのしがらみを抜け出し新しく生まれ変われば、至福の喜びを得られると、いささか自己啓発的な内容だ。愛の欠如などについてもふれ収録されているなかでは、一番平和的な考えを持ったバンドといえるだろう。

13 曲目のENDEAVOR(エンデバー)は、アースクライシスからの影響を色濃く感じるスローテンポなニュースクール・ハードコア。思想的にはディスチャージの流れをくむ闘争的で怒りに満ちたハードコア。歌詞は富を搾取し、戦争への引き金の原因を引き起こす富裕層と為政者への強烈な非難と怒りにあふれている。戦争とは経済的な窮迫が原因で起き、支配者層が私腹を肥やすためのもので、庶民だけが犠牲を強いられるものだと怒りを込めて訴えている。収録されているなかでも一番闘争的で、ポリティカルな姿勢をもったバンドといえるだろう。

14曲目の NONE LEFT STANDING(ノン・レフト・スタンディング)は、のちにプロミス・リングのギタリストとなるジェイソン・グネーウィッカウが在籍していたことでも知られ、ちょうどエモーショナル・ハードコアとエモ・ロックとの分かれ目にあたるバンド。そのサウンドはライフ・オブ・スプリングをもっとメロディックに仕立てたサウンド。歌詞は私の考えをあなたに伝えることによって、あなたを変えることができる。と、歌っている。自分のポリシーを、誇りとプライドをもって全面に掲げているバンドなのだ。

全体的にエモーショナル・ハードコアよりのサウンドを展開しているバンドが多いが、グラインドコアからポストコアなどの少数派のバンドもいる。全バンドがなにかしらのハードコアバンドからの影響を受けているのだ。どのストレート・エッヂという思想や主義や信念、ライフスタイルでは共通しているが、アプローチや考え方は様々だ。カジュアルにストレート・エッヂになったバンドもいれば、健康志向が動機のバンドもいれば、宗教のように心の平穏を求めているバンドもいる。そして修行僧のようなストイックな姿勢のバンドもいる。多種多様の考え方があるのだ。ストレート・エッヂの多種多様な考え方が分かる意味では、貴重なコンピなのだ。

2016/04/08

face to face(フェイス・トゥ・フェイス) 『Protection(プロテクション)』

Protection
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 デビュー作を発表したレーベルである【ファット・レック・コーズ】に戻り、発表された3年ぶりとなる8作目。フェイス・トゥ・フェイスの活動25周年を記念した発表された作品だが、2011年以降の、再結成されてから発表された作品のなかでは、一番の出来ではないか。いや、むしろ全盛期である3rd『フェイス・トゥ・フェイス』に匹敵する作品だ。90年代後半の、僕が好きだったころのフェイス・トゥ・フェイスが戻ってきた。

 その戻ってきたものとは、窓を全開に開た車で全速力で駆け抜けていくような爽やかで心地よい開放感に満ちた疾走感。渋いコントラストのあるベース、カーテンから光が差し込むようなメロディーライン。カルフォルニアの空気のようなカラッ明るいメロディック・サウンド。それらは目をつぶっいても一発でフェイス・トゥ・フェイスのサウンドだとわかる、彼らならではの独特な音なのだ。

 そのメロディーラインと疾走感は、2ndアルバム『ビック・チョイス』を彷彿とさせる。今作では『ビック・チョイス』の続編のような仕上がりだ。とはいっても、『ビック・チョイス』にあった泣きじゃくるような切なさや感傷などのセンチメンタリズムは、一切ない。あるのは、どんな困難がこの先あろうが前へ進んでいく固い決意と開き直り。アルバム全体に爽やかな風のような男らしさが漂っている。

 元来彼らは似通った作品を作ることに、極端なほど抵抗をみせたバンドでもあった。前作とは違ったサウンドの作品を作るという意識が、ファン離れを起こし、悪い方向に向かうこともあった。自分たちの演りたいサウンドとファンが望むサウンドの狭間で乖離を生みだしていた。

 歳をとって丸くなったせいなのか、ファンが望むんでいるものに対して、その期待に応えてやろうとする意識とモチベーションが、今作では強く感じる。今まで封印していたメロディーと疾走感を、今作で復活させたのは、ファンを喜ばせようとする意識からだろう。その喜ばせようとする意識が、アルバムに熱意と衝動をあたえ、全体に爽やかな風を感じる素晴らしい作品に仕上がっている。ここにきて初めてコール&レスポンスという、ファンの期待に応えたのだ。

 たしかに彼らの魅力の一つであったセンチメンタリズムはなくなっている。だがもやはそんなものはぼく自身彼らに求めていない。むしろセンチメンタリズムから固い決意と開き直りに変わったことによって、40代の心境を如実に表しているのではないか。大方の人が挫折や悲しみの先にある感情を経験した年代で、もはや悲哀だけにくれるほど、同じ場所にとどまっているわけでもないのだ。そんなリアルな気持ちを反映したアルバムでもあるのだ。

 個人的には今年に入りノー・ファン・アット・オールなど、96年のメロコアリバイバルを経験し、ひさびさに20年前の熱い気持ちや衝動、なにより性急なパンク・サウンドにシビれた あのころのフィーリングがよみがえってきた。この作品もそんな意識を強く感じる作品の一つだ。個人的には今年のベスト5に確実に入ってくる作品だ。

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