プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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2016年6月

2016/06/20

Dag Nasty(ダグ・ナスティー)  『COLD HEART(コウルド・ハート)』

Dagcoldheart

 初期のオリジナルメンバー(Vo.ショーン・ブラウン、Gt.ブライアン・ベイカー、Ba.ロジャー・マーブリ、Dr,コリン・シアーズ)のラインナップで発表された、2曲入りのEP。インナー・エアー・スタジオにてドン・ジエンターラとイアン・マッケイによってレコーディングされ、このメンバーでのレコーディングはじつに30年ぶりとなるだろうだ。

 2曲しか収録されていないが、これがいい作品に仕上げっている。全盛期のダグナスティーのハードコアとメロディーの折衷度を6対4とするなら、ハードコア7のメロディーが3という具合。メロディーを重視していないためか、サウンド自体、むかしよりもファストで引き締まった感じがする。息を吸う暇もないくらい矢継ぎ早に捲し立てるショーンのボーカルは相変わらずハードコアしているし、ブライアンのギターは、タイトで無駄がない。性急で気合がみなぎっている。両曲全体に、ハードコアがみなぎっているいい作品だ。

2016/06/17

Dag Nasty(ダグ・ナスティー)  『Dag With Shawn(ダグ・ウィズ・ショーン)』

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Dag Nasty

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 バッド・レリジョンやハスカー・ドゥと並び、メロディックハードコアの創始者のひとつとして知られるDAG NASTY(ダグナスティー)。7セコンズやH2Oなどの東海岸のメロディック・ハードコア・バンドに多大な影響を与えたことでも有名だ。ダグ・ナスティーのデビュー作『CAN I SAY(キャン・アイ・セイ)』以前に収録された、初代ボーカリスト"SHAWN BROWN(ショーン・ブラウン)"在籍していた1985年のハロウィンの日にレコーディングされた『DAG WITH SHAWN(ダグ・ウィズ・ショーン)』が、2010年に25年の時を経てリリースされた。

 現バッド・レリジョンのギタリストであり、元マイナー・スレットのベース/ギターであるブライアン・ベイカーがダグ・ナスティーを始めた経緯は、マイナースレットというバンド活動で、自分の個性を発揮しきれず、忸怩たる気持ちを抱えていたところにある。マイナー・スレットではベースを担当し、後期こそギターに代わったが、自分の演りたいことや、個性を発揮しきれなかった。そんなモヤモヤを抱えていたブライアンが、自分のやりたい音楽や、ギタースタイルを確立するため始めたバンドがダグ・ナスティーなのだ。

 当時ダグ・ナスティーが画期的なサウンドを展開しているバンドとして語られた理由は、ハードコアの2コードの部分にメロディーを導入したところにある。ハードコアのスピードにメロディーギターとボーカルを合わせたバッド・レリジョンやハードコアの分厚いギターにメロディーを取り入れたハスカードゥとは異なるアプローチのメロディック・ハードコアだったのだ。

 とくにデビュー作『キャン・アイ・セイ』は、デイヴ・スマイリーの熱く爽やかなメロディーを帯びたボーカルがブラインのギタースタイルに合わさり、正々堂々と人生に立ち向かっていくような、エネルギッシュで熱く健やかな作品だった。ハードコアのなかでも希望に満ちあふれた作品で、独特な個性を放っていた。

 改めて再発された『ダグ・ウィズ・ショーン』だが、デモ作品をリリースした作品だけあって、『キャント・アイ・セイ』にすべて収録されている曲だ。この作品のほうが粗さがあるものの、サウンド自体はそんなに変わりはない。個人的にはデイヴ・スマイリーのボーカル・スタイルが好きで、ダグナスティーの最高傑作は『キャン・アイ・セイ』だと思う。その気持ちは今も変わらない。そのなかで『ダグ・ウィズ・ショーン』のよさを挙げるなら、デイヴ・スマイリーとは異なる魅力があるショーンの歌声だろう。ショーン・ブラウンのボーカルは、デイヴとは違い、もっとハードコア寄りのスタイルだ。怒声で挑発的で矢継ぎ早に捲し立てる歌声からはハードコアそのものの熱気と闘争心を感じる。デイヴとは違い、希望に向かってキラキラと輝く爽やかさは皆無だ。未開の荒れた土地をブルドーザーのようにパワフルにグイグイ進んでいく、汗臭いほどの熱気と男臭さにあふれた歌声がショーンの魅力なのだろう。

 この作品が『キャン・アイ・セイ』の代わりに発表されていたら、このバンドの評価はもっと違うものになっていたのかもしれない。ボーカルの違いでアルバムの質感が変わることを、改めて再認識させられた作品だ。

2016/06/06

Shai Hulud(シャイハルード) 『Just Can’t Hate Enough X 2 – Plus Other Hate Songs』(ジャスト・キャント・イナフ×2-プラス・アザー・ヘイト・ソングス)

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 15年にヴァイナルのみで発表された8曲入りEP。4曲のカヴァーと多彩なゲストをボーカルに据えた4曲で構成された作品。今作ではボーカルがマットからマッティ・カロックに代わり、心機一転を図った作品といえるだろう。自分たちの影響を受けたミュージシャンや、現在の嗜好するサウンドを徹底的に見つめ直した。いわば再生をテーマに掲げたカヴァー集なのだ。

 06年に発表したカヴァー集『ア・プロファウンド・オブ・マン』( A Profound Hatred of Man)では、NOFX、バッド・ブレインズ(BAD BRAINS)、バッド・レリジョン(Bad Religion)、ネガティヴ・アプローチ(NEGATIVE APPROACH)、メタリカ(Metallica)と、オールドスクール・ハードコアからスラッシュ・メタル、メロディック・ハードコアなど、彼らのルーツが垣間見れるカヴァーだった。

 今回もハードコアからメロディックパンク、スラッシュメタル、クロスオーバーなど、パンクやハードコア、メタルなど特定のジャンルに焦点を絞っている。だが『ア・プロファウンド・オブ・マン』と比べると、今作ではエクセル以外は比較的最近活動しているバンドが多い。自らのルーツをカヴァーするというより、いろいろなバンドの異なるアイデアを、自らのサウンドに取り込むためのカヴァーといえる。自分たちの原点を見つめ直すカヴァーではなく、異なる視点からハードコアを学ぶためのカヴァーなのだ。

 肝心の内容だが、1~4はオリジナルの曲で、5~8はカヴァー曲。1曲目の“Sincerely Hated”(センシリティー・ヘイテッド)から3曲目の“How Hates The Heart”(ハウ・ヘイツ・ザ・ハート)は新曲で、4曲目の“A Profound Hatred Of Man”(ア・プロファウンド・ヘイテッド・オブ・マン)は97年に発表された『Hearts Once Nourished With Hope & Compassion』(ハーツ・ワンス・ノーリッシュド・ウィズ・ホープ・コンパッション)からの再録。Further Seems Forever (ファーザ・シームス・フォエバー)のチャド・ネプチューンやComeback Kid (カムバック・キッド)のアンドリュー・ニューフェルドなど、多彩なゲストを招いて制作された曲だが、カヴァー曲を含め、2曲目以外はHate(憎しみ)という言葉が引用されている。自己嫌悪や相手に対する憎しみなど、多種多様な憎しみが表現されているのだ。そして5~8のカヴァー曲は、5曲目の“I Just Can't Hate Enough”(アイ・ジャスト・キャント・ヘイト・イナフ)はカルフォルニアのオールド・ハードコア・バンド、 A Chorus Of Disapproval(ア・コーラス・オブ・ディサプルーヴ)のカヴァーで、6曲目の“Just Can't Hate Enough”(ジャスト・キャント・ヘイト・イナフ)はニューヨークの極悪ハードコアと呼ばれたSheer Terror(シアー・テーラー)のカヴァー。7曲目の“Blaze Some Hate”(ブレイズ・サム・ヘイト)はスラッシュメタルとスケーターパンクをクロスオーバーさせたExcel(エクセル)のカヴァー。8曲目の“Hate, Myth, Muscle, Etiquette”(ヘイト、メス、マッスル、エチケット)はカナダのメロディック・パンクバンド、Propagandhi(プロパガンティー)のカヴァーだ。

 今回も自分たちのサウンドスタイルを強調しつつも原曲の個性も残す、折衷スタイルのカヴァーだ。5曲目の“アイ・ジャスト・キャント・ヘイト・イナフ”はア・コーラス・オブ・ディサプルーヴのメロディーラインを残しつつも、シャイハルードの特徴である気合の入った叫び声を全面に出したカヴァーで、“ジャスト・キャント・ヘイト・イナフ”はシアー・テーラー特有の重くグルーヴィーなギターのリフを、スピーディーな激しさに変化させている。“ブレイズ・サム・ヘイト”はエクセルのリズム感とギターコードを残し、そこにシャイハールドの個性である激しさを加えたカヴァーだ。そして“ヘイト、メス、マッスル、エチケット”はプロガンバティーのスピード感とメロディーラインを重視したカヴァー。そこにシャイハルードらしい叫び声を加えた。どの曲も両者の個性が顕著に表れているのだ。

 今回シャイハルードが、カヴァーと新曲、そして思いいれの強い旧曲の入り混じったこの作品を発表した理由は、自分たちがバンドを始めた動機を再確認するためだろう。だから自分たちがバンドを始めた動機であり、フラストレーションを発散する理由であり、バンドを続けているモチーベションの原因でもある<憎しみ>という感情を、追求したのだろう。そして多彩なゲストと一緒に曲を作ることによって、新しい手法を手に入れた。自分たちのサウンドを貫く変わらない自分であるためには、ハードコアの違った手法を取り入れることによって変わり続けていくことによって、成し遂げられる。新しく生まれ変わるために必要な作品だったのだ。

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