プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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2016年8月

2016/08/31

Descendents(ディセンデンツ)  『HYPERCAFFIUM SPAZZINAT(ハイパーカフィウム・スパジネイト)』

HYPERCAFFIUM SPAZZINAT
HYPERCAFFIUM SPAZZINATDESCENDENTS

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78年から活動を始め、Dickies(ディッキーズ)やAgent Orange(エージェント・オレンジ)と並び、西海岸のメロディック・パンクの創始者といわれるDescendents(ディッセンデンツ)の、じつに12年ぶりとなる7作目。

ディッセンデンツといえば、代名詞であるカラッと明るく爽やかなメロディック・パンク・サウンドが特徴のバンドで知られている。だがその音楽性は以外にも幅広く、ファストなハードコアの曲もあれば、トリッキーなインストメンタルな曲など、じつにいろいろな音楽をメロディック・パンクに取り込んでいた。アルバムを発表するたび、毎回違った要素を取り入れたサウンドを展開していた。

若かりしころはいろいろな音楽性を取り入れ新しいサウンドを提供することにチャレンジしていたが、9年ぶりの復活となった96年の以降は、メロディック・サウンドだけにスポットを当てたシンプルなサウンドを展開している。

今作も96年以降のサウンドの延長上にある作品で、あいかわらず良質なメロディック・パンクを展開している。先駆者ならではのオリジナルな個性である、つんのめるようなテンポで進むスラップベースは、今作も健在。独特のスピード感を持っている。前作よりも今作のほうが、いろいろなジャンルをメロディック・パンクに取り込んでいる。だがメロディック・パンクとの融合度は、いままでよりも明らかに上だ。この曲はハードコアの影響が強すぎるなど、そのジャンルの音楽を感じさせない仕上がりだ。

今作も全体的にカラッと明るく仕上がっているが、円熟した大人の味わい深さを感じる。いろいろな苦難を経験したうえでたどり着いた達観のような爽やかさだ。辛いことはたくさんあるけど、爽やかで心地よい風にあたりながらビールを飲み、人生を楽しもうぜみたいな雰囲気だ。

難解なものをいろいろと取り込んで世の中を難しく考えていた時期を経て、シンプルに考える大人になった。そんな経験と大人の渋みがにじみ出たグッドメロディーに勝るものはないのだ。今作も素晴らしい作品だ。

2016/08/24

『SALAD DAYS:A Decade Of Punk In Washington,DC(1980-1990)』サラダ・デイズ:ア・デケイド・オブ・パンク・イン・ワシントンDC(1980-1990)

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2014年12月に上映されたワシントンDCのパンク・ハードコア・シーンに焦点を当てたドキュメンタリー映画『SALAD DAYS:A Decade Of Punk In Washington,DC(1980-1990)』(サラダ・デイズ:ア・デケイド・オブ・パンク・イン・ワシントンDC(1980-1990))。その映画が2015年にDVD化で販売。07年に上映されたドキュメンタリー映画『アメリカン・ハードコア』は、80年から86年にかけてのアメリカ全土のハードコア・シーンを、相関的に紹介した映画だった。今回紹介する映画『サラダ・デイズ:ア・デケイド・オブ・パンク・イン・ワシントンDC(1980-1990)』は、80年から90年にかけてのワシントンDCのパンク・ハードコア・シーンのみに焦点を当て、10年に起こった出来事を紹介する作品だ。トニー・レットマン著書の『ニューヨーク・ハードコア1980-1990』は、ニューヨーク・ハードコア・シーンの10年間の出来事を事細かく追った紹介した本だったが、それのワシントンDC版といえる内容だ。この2作品を比べると、ニューヨークとワシントンDCでは、別の国の出来事のように、シーンの内容が全く違うのが面白い。

本編では、イアン・マッケイとDC出身であるヘンリー・ロリンズが影響を受けたラモーンズやシド・ヴィシャスなどの初期パンク・バンドの話から始まる。そしてイアン・マッケイが初めて結成したバンド、ティーン・アイドルの話に移り、そのバンドのレコードをリリースするためディスコード・レコーズを設立した話に移る。ユース・ブリケードやヴォイド、フェイス、SOAなど、バッドブレインズに影響を受けたバンドたちの台頭により、DCシーンが活気を増していく話に移る。そしてストレートエッヂの始まり。警察介入や暴力の蔓延などによるDCシーンの倦怠期。スキンズの台頭。そして85年に起きたレボリューション・サマー(改革の夏)と呼ばれる重大な出来事。倦怠期を迎えていたDCシーンに、ライツ・オブ・スプリングやエムブレイス、ダグ・ナスティーなど新しいバンドたちの登場によって、新たなルネサンス運動を起こした。これらのバンドがのちにエモーショナル・ハードコアというジャンルで呼ばれることになる。そしてファイヤーパーティーという女性バンドや、フガジなどのバンドによって設立されたポシティヴ・フォース(正しい力の目覚め)と名付けられた新しい芸術家運動。自らの成長が目的とされ、社会変革や非暴力などを訴え、芸術や教育、慈善運動などに力を入れた活動だ。最後にフガジがニルヴァーナーに与えた影響について語り、ジョーボックスなどの新しいバンドの台頭、J・ロビンスとデイヴ・グロールがDCシーンにつて総括するところで映画は終わる。10年間に起こった出来事を、時系列に沿って、DCシーンの変遷をインタビューとライブ映像を交えて進めていく内容だ。

DCシーンの始まりのころは、どのバンドもバッド・ブレインズからの影響を抜けきれずにいた。それが85年に起きた“レボリューション・サマー”で、サウンド面でのオリジナルティーを獲得することになる。そして“ポジティブ・フォース”で、DCシーンそのものが独自サウンドを持ったバンドを次々と輩出していくようになる。

個人的には、フガジのあとにマイナー・スレットを聴いたり、そのあとにダグ・ナスティーを聴いたりしていたから、シーンのそのものの移り変わり自体、知らなかった。それが今回のDVDでDCの全容すべてを知ることができた。資料としてもものすごく基調価値のある内容なのだ。

個人的な感想をいえば、DCハードコアとは、ものすごく理想的で素晴らしいシーンだと思った。ドラッグが蔓延することもなければ、黒人や白人、アジアや男女差別のない、DCに住んでいることという以外、すべてに対して、門戸を開いた特殊なシーンだった。

そこにはまるで隣近所がすべて知り合いで、お互いに助け合った昭和時代のような、義理と人情にあふれた昔の日本の下町のような情緒を感じる。その遠因としてディスコード・レコーズのオーナーである、イアン・マッケイの性格が大きく左右しているのだろう。

このDVDでは語られていなかったが、一点疑問に思ったのが、ディスコード・レコーズがDCのバンド以外リリースしなかったところ。もちろんDC以外のバンドをリリースしていたら、これほどDCシーンは、大きく発展しなかっただろう。DC以外に門戸を開かなかったのが、すごくいい意味で作用したのは事実だ。ただイアン・マッケイにどんなポリシーがあったのか、個人的には知りたかった。そこだけが残念だった。(英語が分からなかったので、もしかしたら語っていたのかもしれないが)

なおボーナストラックに本編からカットされたインタビューと、当時のDCバンドのライブ映像が、収録されている。

2016/08/09

letlive.(レットライブ)  『If I'm The Devil... (イフ・アイム・ザ・デビル)』

IF I'M THE DEVILIF I'M THE DEVIL
LETLIVE

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おそらく現在のへヴィー系音楽の最前線にいるのは、彼らだろう。メタリカなどのスラッシュメタルから、パンテラのパワーメタル、リンプビズキッとなどのニューメタルとシーンが変遷し、そして現在、スリップノットやイン・フレイムなどのメロデス・デスコアが音楽シーンの中心いる。どのバンドもスリップノットやイン・フレイムの影響下から抜け切れず、デス声を中心に据えた音楽を展開している昨今、彼らは主流派とは全く異なるアプローチで、新しい形のへヴィネスを提示している。

とくに前作『ザ・ブラッケスト・ビューティフル』は、コンガのリズムをヘヴィネスサウンドに取り入れ、新しいスタイルのへヴィーロックを展開していた。トライバルなリズムが闘争心を掻き立て、性急なスピード感が苛立ちといった感情を煽っていく。そして怒りの感情をマックスまでに振り切った、ボーカルのシャウト。そこには理性のかけらもない本能だけで動く暴力衝動がある。理性を失った究極の躁病的なサウンドだったのだ。

そんな激しかった前作と比べると、今作では静かさや穏やかさなどの、鬱な感情を追求している。今作でもア・トライブ・コールド・クエストやカニエ・ウエストなどのヒップ・ホップから、ニューロマンティックやゴズ、ヨーロッパのクラッシク調のメロディーなど、いろいろな要素をハードコアに取り込んでいる。いろいろな要素を取り込む無国籍で雑多なハードコアという姿勢は変わらないが、そのなかでもとくに目立つのがスローテンポのバラード曲の多さ。スピーディーな躁から、スローテンポな鬱へと180度異なるアプローチのサウンドを展開している。

ここにあるのは叙情的で、繊細さと妖艶な美しさのある穏やかなメロディー。繊細さの奥にデリケートな神経質さを感じる。メロディックになったといっても、けっしてポップで大衆受けするノー天気な明るさを追求しているわけではない。今作もパンクな姿勢はブレることなく一途に貫かれている。とくに3曲目の“グッド・モーニング・アメリカ”は、白人警察から不当に暴力を受ける黒人や、マルクスとゲバラの理想論を掲げ、貧困からの脱却など、差別と虐待を受けている弱者の気持ちを代弁している。そこには迫害されている者たちの悲惨な苦しみの感情が、切実なほどひしひしと伝わってくるのだ。

レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンから受け継ぐ、政治的なメッセージは今作でも健在なのだ。サウンドが変わったからといっても、反逆のパンクバンドでいることに変わりはない。今作もまぎれもなくパンクロックの最前線にある作品なのだ。

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