プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

スポンサードリンク


« 2016年8月 | トップページ | 2016年10月 »

2016年9月

2016/09/14

Why Be Something That You're Not: Detroit Hardcore 1979-1985 (ホワイ・ビー・サムシング・ザット・ユアー・ノット:デトロイト・ハードコア1979-1985)

Why Be Something That You're Not: Detroit Hardcore 1979-1985Why Be Something That You're Not: Detroit Hardcore 1979-1985
Tony Rettman Tesco Vee

Revelation Records 2010-07-06
売り上げランキング : 272416

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 アメリカン・ハードコアに精通したライター、トニー・レットマン著書による、13年に発売されたデトロイト・ハードコアを紹介した本。なぜトニー・レットマンが、デトロイトという小都市にスポットをあてたのか、その理由は分からないが、これまたすごい内容の本だ。

 その内容は79年にデトロイトで誕生したタッチ&ゴー・レコーズが、85年にシカゴに異動するまでの6年間を中心に語っている。当時のバンドの関係者のインタビューを交え、デトロイトのハードコア・シーンについて語っていく内容だ。

 なぜこの本がすごいかといえば、デトロイトのハードコア・シーンが、ほかの地域と比べると、あまりにも特殊すぎるからだ。そこにはカルフォルニアやニューヨークのシーンのような、大勢のバンドによる活気や、盛り上がりなどはない。ましてや長期にわたってハードコア・シーンが継続され、伝統が生まれる土地柄でもなかった。バンドのつながりや伝統やコミュニティー、仲間意識やライバル心、シーン内による影響など、全く存在しなかった。それらの要素が独特なシーンを形成したのだ。
 
 デトロイトで活動したバンドたちは、まるで線香花火のように瞬間に激しく燃え、瞬く間に散っていった。どのバンドも短命で、単独で行動していた。烏合の集まりのシーンなのだ。デトロイトという治安が悪く、荒っぽい気質の土地柄の人間たちがパンクな暴動を起こす。それがデトロイト・ハードコア・シーンの特徴といえるだろう。
ここで具体的に取り上げられている代表的なバンドはNecros(ネクロス)とTHE FIX(ザ・フィックス)とNEGATIVE APPROACH(ネガティヴ・アプローチ)といったバンドたちだ。3バンドとも、マイナースレットやブラッグ・フラッグ、アグノスティック・フロントなんかと比べると、日本ではあまり知られていない存在のバンドたちといえるだろう。だがアメリカでは3バンドとも、本当の意味で伝説のバンドとして語られ、ハードコア界では神格化された存在として扱われている。

 とくにネガティヴ・アプローチは、デビューが82年で、後世のバンドたちに多大な影響を与え、アメリカ・ハードコアの基礎の半分くらいを作ったと言われているバンドだ。デス声の先駆者のようなボーカル・スタイルや、パワーヴァイオレンスに多大な影響を与えたといわれるノイジーなパワフルなサウンドスタイルが特徴だ。
そしてネクロスは、デビューシングル『SEX DRIVE(セックス・ドライブ)』のプレスリリースがわずか100枚で、いまだに1stアルバムは再発されていない。アメリカン・ハードコア史上10本の指に入るレア盤として語られてきた。YouTubeが普及するまで、長らくそのサウンドが知られることがなかった。最近までそのサウンドが知られることがなかった伝説のバンドとして語り継がれてきた存在だ。

 ザ・フィックスも、デビューEP『VENGENCE(ヴェンジェンス)』の発売がわずか200枚で、このバンドもアメリカン・ハードコア史上10本の指に入るレア盤といわれてきた。だがネクロスとは違いそのサウンドは猛烈な勢いと爆音で駆け抜けるハードコア・パンク。ハードコアに進化していく原型のサウンドなのだ。どのバンドも活動期間が短く、それでいて後世に多大な影響力をあたえたバンドたちだ。

 わずか数百枚しかリリースがなかったという希少性。サウンドと精神性の両面からの後世への影響力。そしてわずかな期間しか活動しなかったという伝説。それらの要素が、デトロイト・ハードコア・シーンという特殊性を生んだのだ。これほど伝説や神話して語られるのがデトロイトならではの特徴といえるだろう。これほどデトロイトの特殊性を探り当て、スポットをあてたトニー・レットマンはすごい。アメリカン・ハードコアが好きなら、絶対必読する必要のある本だ。

« 2016年8月 | トップページ | 2016年10月 »

スポンサードリンク


最近のトラックバック

無料ブログはココログ

スポンサードリンク