プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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2016年12月

2016/12/29

WARZONE(ウォーゾーン) 『Don't Forget the Struggle, Don't Forget the Streets(ドンド・フォーゲット・ザ・ストラグル、ドンド・フォーゲット・ザ・ストリート)』

Don't Forget the Struggle, DonDon't Forget the Struggle, Don
Warzone

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ニューヨーク・ハードコア界では、GORILLA BISCUITS(ゴリラビスケッツ)やYOUTH OF TODAY(ユース・オブ・トゥディ)と並び、第二世代のバンドとして知られているWARZONE(ウォーゾーン)。それ彼らが87年に発売されたデビュー作。長らく廃盤であったが、今回新たにリマスターされ再発された。

ニューヨーク・ハードコアの第二世代のバンドといえば、ストレートエッヂ思想をアメリカ全体に広めたユース・オブ・トゥディ、ハードコアの骨太のサウンドにポジティヴな明るさを加えたゴリラビツケッツ、ニュースクール・ハードコアの開祖といわれるJUDGE(ジャッジ)などが有名だ。

そんななか、ウォーゾーンはスキンズ・ハードコアという個性を確立し、丸坊主頭で軍隊上がりのような男くささが持ち味のバンドであった。彼らはスキンヘッズに支持されてはいたが、右翼的な思想はまったく持っていなかった。人種差別やハードコア・コミュニティーの排他的な暴力やナチズムと戦ってきたバンドなのだ。ここで歌われている内容は、愛国心や、スキンズとパンクスとの対立によって暴力沙汰に発展したハードコア・コミュニティーの団結について。自ら観客席に飛び込み、オーディエンスに揉みくちゃにされながら歌い、暴力を止めるという、独自のステージパフォーマンスで、カリスマ性を獲得したバンドでもあるのだ。

そのサウンドはスピーディーなオールドスクール・ハードコア。レーシングカーのようなスピードと、メタルなリフ織り交ぜたニューヨーク・ハードコアの伝統を継承しながらも、骨太のOiコーラスや演説などの要素を取りいれ、独自に進化させた。吐く息のように簡潔で矢継ぎ早に、言葉を放つボーカル。平穏な静けさから急激に性急なスピードが加わるサウンド。そこには心の落ち着きが急激に乱されるような攻撃性と焦燥感と熱気に満ちあふれている。

彼らのサウンドにはまるでスポーツの団体競技のような連帯感と団結心を感じる。いがみ合っていたお互いが、怒りや喜びをともに共有しあい、そして共感に変わり、共通の目的へと昇華していく。感情がポジティヴな方向へと変わっていく団結心のプロセスがあるのだ。

現在、ニューヨーク・ハードコア・シーンはファミリーのような結束力の強いシーンとして知られている。その概念を初めてもたらしたのが、まぎれもなく彼らなのだ。ボーカルのRAYBEEZが亡くなって19年になるが、いまだ忘れ去れることなくその存在は輝きを放っている。それほど彼らの功績は大きかった。これはニューヨーク・ハードコアの歴史の一枚を飾る名盤なのだ。


2016/12/13

Vanishing Life (ヴァニシング・ライフ) 『Surveillance サーヴェイランス』

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元ゴリラビスケッツのウォルター・シュレイフェルズ(Vo)、ライズ・アゲインストのザック・ブレア(Gt)、AND YOU WILL KNOW US BY THE TRAIL OF DEAD(アンド・ユー・ウィル・ノウ・アス・バイ・ザ・トレイル・オブ・デッド)のオートリー・フルブライト(ba)、バッド・レリジョンのジェイミー・ミラー(Dr)ら、アメリカパンク界のスパースターたちにより結成されたバンドのデビュー作。

そもそもこのバンドが結成された経緯は、ベースのオートリー・フルブライトがウォルターに声をかけたことがきっかけだそうだ。ウォルターは当初、オートリーが声をかけてれたが、何も起こらないと思っていたらしい。そしたらある日、ジェミーとオートリーがデモを作ってウォルターに送ってきたそうだ。坂を転げるように瞬く間にバンドが進展していったそうだ。

そんな経緯があるせいなのか、このバンドに関してウォルターは、サウンドのことに対してはほとんどノータッチで、すべてジェミーとオートリーとザックに任せている。もっぱらボーカルに専念しているそうだ。

ウォルターとしてはいままでバンドを組んだ人たちは、ほぼレベシューション・レコーズと関係した人たちだった。ニューヨーク・ハードコアのコミュニーティーに何が知ら関わっていた人たちとしてしか、バンドを組んだ経験がなかったそうだ。それが今回初めて、西海岸の人たちやメロコア、オルタナなどの違うジャンルの人たちとバンドを結成したそうだ。ウォルターにとって何もかも新しいチャレンジだったそうだ。

肝心のそのサウンドは、2コード2フレーズを繰り返していくエクスペリメンタルなポスト・ハードコア。煽情的な2コード2フレーズを、同じ調子、同じ勢い、同じ感情で突き抜けていく。ギターアレンジにこだわったサウンドで、ところどころにアンド・ユー・ウィル・ノウ・アス・バイ・ザ・トレイル・オブ・デッドぽさを感じることができる。だがライズ・アゲインストっぽさは全く感じられない。8曲目の“Image(イメージ)”などからはクイックサンドのようなギターを感じるし、聴けば一発でウォルターのギターだと分かるようなサウンドの曲もある。

サウンドに対しては全く関知していないというが、ところどころにウォルターのギターの個性を感じるのは、ぼくだけなのか?個人的にはこのバンドもまたウォルターの趣味が大爆発した作品といえる。

決してそれが悪いわけではない。むしろぼくはウォルターらしさを感じるからこそ、この作品がとても好きだ。その理由はシンプルな2フレーズ2コードを執拗に繰り返すことによって、むしろ混乱した内面世界のような複雑さが生まれているからだ。まるで印象派の画家の絵のように光の部分がはっきり目立つから余計に影の部分が際立ってくる。サイケデリックでありながら攻撃的で煽情的な気分を煽り立てるサウンドなのだ。サウンドの姿勢が攻撃的なパンクだし、とてもカッコいい音だ。個人的には今年はベスト10に入るほど好きな作品。

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