プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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2017年5月

2017/05/24

Incendiary(インセンダイアリー) 『Thousand Mile Stare (サウザント・マイル・ステア)』

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Thousand Mile StareThousand Mile Stare
Incendiary

Closed Casket Activities 2017-05-11
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ニューヨーク州ロングアイランド出身のニュースクール系ハードコア・バンド3作目。これが成長を感じさせるすばらしい作品に仕上がっている。前作までは、108, Visions Of Disorder(ヴィジョン・オブ・ディスオーダ)や Buried Alive(ベリッド・アライブ)などのスローテンポでグルーヴ感を意識したニュースクール系ハードコアからの影響が勝った。

今作では前作までのサウンド路線にプラスアルファを加え、自分たちのサウンド・スタイルを確立している。終始ゆったりとしたリズムで、変則的なリズムでザクザク刻むギターのリフ、グルーヴ感の強いドラムの、グルーヴ感を重視した展開こそ変わりはない。今作でとくに印象的なのが、怒りの言葉をヒップ・ホップのリズムに乗せまくし立てるボーカル。そこにはRage Against the Machine (レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン)のような、虐げられたマイノリティーの怒りを感じる。

とくに怒りが顕著なのは1曲目の“Still Buming(いまだ燃えている)”の歌詞。ここではwe got to know some pain to show we’re still here~still beating、still burning(私たちはいくつかの痛みを知るようになった。私たちがまだここにいることを示す。~また殴られる。また燃える。)と、歌われている。その内容は、抗議デモで警官に殴られるような場面を想起させる。正当な権利を主張すれば、政府によって弾圧され暴力を振るわれる虐げられた者の悲惨さ。そんな弱者の怒りに満ちているのだ。

マッチョでギャングな不良の匂いがするバンドが多いニューヨーク・ハードコア・シーンでは、ポリティカルで闘争的なアティーテュードを持ったバンドは珍しい。だがこれほどの怒りや闘争心を持ったバンドもニューヨーク・シーンでは少ない。ぼくのフラストレーションを発散させ熱い気持ちを掻き立てるいい作品だ。

2017/05/09

This Is Boston, Not L.A. (ディス・イズ・ボストン,ノット・L.A)

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This Is Boston Not L.a.This Is Boston Not L.a.
Various Artists

Wicked Disc 1995-10-10
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82年に発表されたボストン・ハードコア・バンドを集めたコンピレーション。この作品を聴けばボストン・ハードコアがどんなシーンなのか、サウンド的な意味でも、アティーテュードの特徴も、おおよそ理解できる。ボストン・ハードコア・シーンを知るうえで外せない重要な作品だ。

当時このコンピレーション・アルバムを制作した理由は、ボストン・ハードコア・シーンのアイデンティティを全国に広めるためと、退廃的なイメージが強かったロサンゼルス・シーンと差別化を図るためだった。そのため『This is Boston NOT L.A.』(これぞボストン。ロザンゼルスではない)という過激なタイトルがつけられた。だがこのタイトルの意味はロサンゼルスのバンドたちにとっては侮辱して捉えられ、あとにストレートエッヂ思想やNegative FX(ネガティヴ・FX)などのボストンバードコアシーンを全否定したNOFXを生み出すほど、西海岸のバンドたちには評判の悪い作品となった。この作品を発表した結果、ボストンのハードコア・シーンのバンドたちは、ほかの地域のバントたちを受け入れない排他性を確立し、ガラパゴス的な進化を遂げていった。

ほかのシーンにはなにかと評判の悪い作品だが、サウンド的には優れている。アメリカン・ハードコアのなかでも5本の指に入る名作だ。ここに収録されているバンドは、JERRY’S KIDS(ジェリー・キッズ)、THE PROLETARIAT(ザ・プロレティアート)、 GROINOIDS(グロイノイドズ)、 THE F.U.’S(ザ・フューズ)、 GANG GRREEN(ギャング・グリーン)、 DECADENCE(デカダンス)、 THE FREEZE(ザ・フリーズ)など、すべてボストンのバンドたちだ。ボストンでも有名だったSSDecontrol(ソサエティー・システム・デコントロール)やDYS、Negative FX(ネガティヴ・FX)などのバンドたちは参加していない。とくにボストンシーンの中心的存在であったSSDecontrolは、参加のオファーがあったが、レーベルへの不信感があり、参加を見送ったそうだ。

全体を通して聴いてみると、メロディックギターを導入した初期パンクに影響を受けたサウンドのバンドと、性急で電源がショートしたような歪んだギターのノイジーなハードコア・サウンドを展開しているバンドの2タイプに分かれる。だがどのバンドも声量の限りを出し尽し早口でまくし立てるボーカルと、苛立ちと焦燥感に満ちた音楽衝動の部分では共通している。それがボストン・ハードコアの特徴なのだ。この一枚を聴くだけで、ボストン・ハードコア・シーンのサウンドの特徴が分かり、しかも退廃的でメロディーパートがあるLAハードコアシーンや、スピーディーでノイジーなサウンドのバンドが多かったワシントンDCシーンなど、地域ごとの音の違いも理解できるのだ。なおCD盤には、ボストンの上記6バンドが参加し、82年に発表されたEP『Unsafe at Any Speed EP (センセーフ・アット・エニィ・スピード・EP)』がボーナストラックとして収録されている。

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