プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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2017年6月

2017/06/28

Joyce Manor (ジョイス・マナー)  『Cody (コーディ)』

CODYCODY
JOYCE MANOR

EPITA 2016-10-20
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アメリカはロサンゼルス郡南のトーランス出身、エモ・バンドの16年に発表された4作目。彼らの特徴といえば、イギリスのネオ・アコースティックを、荒くがなり立てるサウンドだった。いうならネオアコのような都会的に洗練されたスタイリッシュな洒脱さを排除して、激しくエモーショナルにかき鳴らす。それが彼らの特徴だった。

出世作となった前作『Never Hungover Again (ネバー・ハングオーバー・アゲイン)』は、ネオアコにアメリカのメロディック・パンクなど、いろいろな要素を取りこみ、バラエティー豊かなサウンドに仕上がっていた。タイトルを直訳すると、二日酔いを二度と繰り返さない。おそらく“後味の悪い経験を二度と繰り返さない”という意味なのだろう。その意味が示すとおり、歌われている内容は、青春時代の初体験の苦い思い出。現実と理想とのギャップで戸惑い落ち込み、初恋が後味の悪い思い出として残るような、青春の一コマがテーマだった。

青春さながらに熱くエモーショナルに勢いと初期衝動を重視していた前作。今作ではエモーショナルな勢いや粗削りさがなくなり滑らかな仕上がりに、落ち着いたサウンドに変化した。いままでアコースティック中心のサウンドであったが、今作では青空のように明るいギターが特徴のミドルテンポのポップソングから静謐感漂う牧歌的なバラードなど、ポップロックを追求し、バラエティー豊かなサウンドに変化した。曲ごとに喜怒哀楽の表現を変え、いろいろな感情表現ができる大人のバンドになったのだ。

今作も青春の一ページを切り取った歌詞は健在。テーマは前作同様、憧れや理想だったものへの失望をここでも語っている。やりたい何かが見つからない将来に対する不安と苛立ちや、好きだった彼女への失望など、18歳前後の大半の若者が経験し、考え感じるような内容がテーマだ。初体験が後味の悪い経験と感じる若者がより限定された人だったのに対し、今作では大多数の気持ちを代弁したより広い視野に立っている。極上にポップに仕上がった楽曲といい、歌詞も大多数に共感され理解できるような広い視座でこの作品は作られているのだ。

個人的には前作の粗削りな勢いと衝動を重視したサウンドのほうが好きだったが、大人しくなった今作は前作以上に完成度が高い作品であることに間違いはない。

2017/06/19

SECT (セクト)

SECTSECT
SECT

Alliance Trax 2016-08-04
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元Cursed(カースド)、Burning Love(バーニング・ラヴ)、Left For Dead(レフト・フォー・デッド)のChris Colohan (クリス・コロンハン)Vo、元CatharsisのJames Chang(ジェイムス・チャング)Gt、元Earth Crisis(アース・クライシス)のIan Edwards(イアン・エドワーズ)Bs、元Fall Out Boy(フォールアウト・ボーイ)のAndy Hurley(アンディー・ハリー)Drによって結成されたニューヨーク出身の16年に発表されたデビュー作。

これがTrash-Talk (トラッシュトーク)やNALIS(ネイルズ)に通じる峻烈なハードコアを展開している。FAST誌11月号のインタビューによれば、政治や社会問題、環境問題に対して怒りに満ちた不満があり、自らの主義・主張を宣言するため、ハードコア・バンドを結成したとのこと。掲げている信条とは、ビーガンストレートエッヂ思想。バンドの信念として、Not Drinking(酒を飲まない)、Not Smoking(タバコを吸わない)Not Drugging(ドラッグをやらない)、Not Vaping(マリファナを吸わない)など、かなり禁欲的なハードコア思想を掲げている。ストレート・エッヂはアースクライシスの出現によって、シーシェパードなどの結びつき、行動に出る闘争的な方向に進んだが、彼らもまた動物愛護を実践している。まさに筋金入りのハードコアバンドなのだ。

ここで歌わている内容は、核兵器でキリスト教徒以外は排除するキリスト原理主義への批判、動物実験を繰り返し、巨大な利益を得る大企業への怒りなど。西側諸国の大企業やキリスト原理主義への批判が多い。それにしても尋常でないほどの巨大な怒りがこのアルバムを支配している。そのサウンドを形容するなら、まるで怒りの雷だ。どす黒い空に光を放ち龍が走り回るようにゴロゴロと不気味な音を立てるブラストビートのドラム。バリバリと巨大な音を立てるノイズギター。そして激しい音を立て落雷するような怒りを落とすボーカルの怒声。激しい怒りを爆発させる尋常でないエナジーに満ち溢れているのだ。

尋常でないテンションの高さとノイジーなサウンドを極めたこともさることながら、トラッシュトークのような激しいテンションとスピード感や、ネイルズのノイジーなサウンドをさらに突き詰めたギター、Modern Pain(モダンペイン)あたりのスローパートをミックスさせたサウンドは、現在のハードコアの最先端にいる作品といえるだろう。


2017/06/14

TERROR(テラー) 『The Walls Will Fall(ザ・ウォールズ・ウィル・フォール)』


The Walls Will FallThe Walls Will Fall
TERROR

Alliance Trax 2017-04-27
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西海岸はロサンゼルス出身のハードコア・バンドの17年に発表された(アルバムを合わせ計11枚目となる)5曲入りのEP。西海岸のバンドだが、フロントマンであるボーカルのスコット・ボーゲルがニューヨーク州バッファロー出身で、そのため彼らのサウンド的な特徴は、ニューヨーク・ハードコアの伝統的なスタイルを受け継いでいる。シック・オブ・イット・オールのOiコーラスを交えた男臭く硬質なサウンドから、アースクライシスのスローパートやノイジーなギターなど、ユースクルーとニュースクールのニューヨーク・スタイルを集約したバンドといえるだろう。

全作品を通してニューヨークのストイックで硬質なハードコアサウンドに変わりはない。だが、アルバムを発表するたびに、メタルサウンドをふんだんに取り入れたアルバムや、oiコーラスとシャウトにこだわったアルバム、ノイジーでよりアグレッシブになったアルバム、ブラストビート、メタルのギターフレーズ、ドラムのテンポの変化など、色々な要素を取り込み、バラエティー豊かに深化してきた。

そして今EPでは前作『The 25th Hour』の延長上にある、スローから急激にスピードが上がるストップ&ゴーの重く重厚なリフが特徴的なサウンドを展開している。そして注目すべきは、5曲目に収録されている“Step To You”。この曲はMADBALL(マッドボール)のカバー曲で、ゲストヴォーカルにはマッドボールのヴォーカル、Freddy Cricien(フレディー・)と、AGNOSTIC FRONT(アグノステッィク・フロント)のヴォーカル、Roger Miret(ロジャー・ミレット)が参加。ニューヨークのオールドスクール・ハードコアと、ニュースクール・ハードコアを代表する新旧世代のレジェンドによる夢の競演をはたしている。

肝心の曲だが、原曲のアレンジを変えず、忠実にカヴァー。違いがある部分といえば、ギターサウンド。全体に拡散するノイジーだったマッドボールのギターと比べると、音を絞った硬質なギターが持ち味のterror(テラー)の個性が発揮されている。ここには自分たちが好きだったマッドボールやアグノステッィク・フロント、それをひっくるめたニューヨーク・ハードコアへの限りない愛情と、伝統に対する誇らしい気持ちがひしひしと伝わってくるのだ。彼らの気合や、音楽への情熱、高いモチベーションになにも変わりはない。好作品だ。


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