プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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2017年8月

2017/08/31

INTEGRITY (インテグリティ) 『 Howling, For The Nightmare Shall Consume (ハウイング,フォー・ザ・ナイトメア・シャル・コンセウム)』

HOWLING, FOR THE NIGHTHOWLING, FOR THE NIGHT
INTEGRITY

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アメリカ中部クリーブランド出身のハードコア・バンドの10作目となる作品。ハードコア界のなかでも彼らは特殊なアティテュードをもつバンドだ。暗黒デスメタリック・ハードコアとでも形容するべきか?悪魔崇拝やカルトなど、ダンテの新曲『地獄篇』のような世界観をもっている。そういった意味ではメタルよりのアティテュードを持ったバンドだが、サウンドはハードコア。典型的なメタルとハードコアの折衷スタイルだが、その折衷の具合が独特だ。オールドスクールなスピーディーなハードコアと怒声ボーカルを堅守しながらも、スラッシュメタルのリフからテクニカルなギターソロ、ドローン、ドゥーム、デスメタルにいたるまで、いろいろな要素を幅広く取り入れている。メタル側から見ればメタルと見えるし、ハードコア側からいえばハードコアといえる、モーターヘッドのような不思議な立ち位置にいるバンドなのだ。

今作では前作のテクニカルギター中心のサウンドをさらに突き詰め、より輪郭のはっきりとしたサウンドを展開している。それにしてもギターがすごい。鳴きまくっている。ギターメロディーの際立ったサウンドは、スラッシュメタルよりLAメタルからの影響を強く感じる。性急なスピードに怒声とブラストビートで駆け抜け、テクニカルなメロディーギターが絡むサウンドは、誰か演っていそうで誰も演っていなかった独特なサウンドを展開している。

それにしてもLAメタルのような暑苦しさはなく、むしろ冷たさを感じる。暗くひっそりとした魔界の沼地のような、背筋に恐怖を感じ、氷を引き詰められたような冷たさなのだ。LAメタルとオールドスクールなハードコアを折衷させたサウンドは、メタルコアでもクロスオーバーでもない新しい形のハードコアなのだ。

2017/08/17

Armstrongs (アームストロングス)       『 If There Was Ever a Time(イフ・ゼア・ワズ・エヴァー・ア・タイム)』

GREEN DAY(グリーン・デイ)のボーカル、Billie Joe Armstrong (ビリー・ジョー・アームストロング)と、RANCID(ランシド)のボーカル、Tim Armstrong (ティム・アームストロング)によって結成されたバンドのデビューシングル。このシングルが発表された経緯は、アメリカ西海岸のイースト・ベイ・パンクシーンのドキュメンタリー映画『Turn It Around: The Story of East Bay Punk』が上映されることがきっかけ作曲された。映画用に作られた曲を、iTunes限定で発売された。売り上げはすべてカリフォルニア州バークレーのイースト・ベイエリアにあるライヴハウスVenue、924 Gilmanに100%寄付されるそうだ。

そもそもこの2人の出会いは、87年までにさかのぼる。同じカルフォルニア州のイーストベイ出身で、当時ビリージョーはSweet Children(スウィート・チルドレン)というバンドで活躍し、ティムはOperation Ivy(オぺレーション・アイヴィ)で活動していた。お互いに貧しい地区の出身で、前身のバンド時代からの友人関係だという。先にブレイクを果たしたビリージョーが、ティムに売れてほしいと願い、93年に“Radio Radio Radio”を提供。のちにランシドの名曲と呼ばれ、現在でもライヴの終盤に必ず演奏されている。かたやグリーンディのほうは、初期のころから現在にいたるまでオぺレーション・アイヴィのカヴァーである“Knowledge”を必ずライヴで歌い続けている。そこにはお互いのバンドがどれだけ大きくなろうが、変わることのない絆の深さある。お互いの挫折と復活、成功など、苦楽をともにしてきた仲間だからこその結束の強い友人関係があるのだ。

そして結成されたバンド名は、ティムとビリージョーのラストネイムであるアームストロングが採られ「The Armstrongs(ザ・アームストロング)」と名付けられた。メンバーは、ビリージョーとティムのほかに、ビリー・ジョーの息子ジョーイと、ティムの甥っ子レイ・アームストロングも参加。お互いの親族のみで結成。

肝心の曲だが、アコースティックギターのイントロが印象的なカラッと明るい西海岸特有のパンクロック。ランシドの3作目である“...And Out Come The Wolves(アンド・アウト・カム・ジ・ウルヴス)”に収めされている曲に雰囲気が近いさわやかなパンクロック。ティムのしゃがれたボーカルスタイルに合わせた曲が採用されており、ビリージョーは終始わき役に徹している。

ここで歌われている内容は、映画にふさわしく、自分が生まれ育ったシーンについての楽しかった思い出。もう一度昔に戻ることができるのなら、また過去と同じステージに立ち歌いたいという、痛切な郷愁願望。いささかノスタルジーに浸っている傾向にあるが、けっして後ろ向きな感情ではない。そこにはイーストベイ・シーンへの深い愛情がある。バンドを始めたことによって出会えた同じ気持ちの仲間たち。そしてその仲間たちと巡り会えたことによって生まれた深い絆と、ルーツであるイーストベイ・シーンへの誇り。そのプライドを胸にバンドを続けていく前向きな感情。そして息子たち次世代へと受け継がれていく。その未来へと受け継がれていく希望が、すがすがしいまでのさわやかさとカラッとした心地よい風のような気持ちであふれているのだ。変わらぬ友情が放つ愛情のあふれた1曲なのだ。

2017/08/03

DOWNCAST(ダウンキャスト) 『LP』

Downcast

激情エモ/ハードコアのルーツとされているDOWNCAST(ダウンキャスト)の91年に発表されたデビュー作にして最後となるアルバム。

彼らを語る前にますEbullition Records(エボリューション・レコーズ)から説明したい。Ebullition Recordsとは90年にRock Rock Rollのコラムニストであったkent Mcclard(ケント・マクランド)によって、カルフォルニア州ゴレタに創設されたレーベルだ。ケントは動物愛護や環境保全に力を注いでいる筋金入りのストレートエッヂで、レーベルに所属するアーティストは、ストレートエッヂでなければ、音源をリリースしないという徹底したこだわりを持っている。リリースされた作品のなかではとくにコンピレーション・アルバムが印象的で、『VA(EBULLITION)/HEARTATTACK』では、ケントがヨーロッパに出向き、ストレートエッヂ・バンドに声をかけ、コンピレーション・アルバムに参加してもらった作品だ。ヨーロッパか各地のライヴハウスを周り、ストレートエッヂを掲げるバンドをリサーチし、バンドのスタンスやポリシー、アティテュードへのこだわりを聞き、選び抜かれた14組を集め収録した作品なのだ。それほどストレートエッヂへの並みならぬこだわりと情熱をもった人物なのだ。

そのケントが唯一メンバーとして参加していたバンドがダウンキャストなのだ。彼らが発表した作品は4曲入りのEP『Downcast(7)』と10曲入りのフルアルバム『Downcast(LP)』の2作だ。EMBRACE(エムブレイス)のボーカルスタイルに、Helmet(ヘルメット)のスローデンポに重厚なリフのサウンドを合わせたスタイルだった『Downcast(7)』。そのEPと比べると、違い格段に曲のバラエティーが広がっている。今作でもEPのサウンドスタイルがベースとなっているが、リズムとともに叩きつけるようなリフや激しさと静けさのアップダウンを繰り返すギターなど、新しい要素を加えている。エモーショナル・ハードコアが激情コアへと進化し、カオティック・ハードコアへたどり着いた。極限まで過激に進化したバンドがConverge(コンヴァージ)とするなら、絶叫ボーカルやアップダウンを加えた部分で、エモーショナル・ハードコアを少しだけ前に進めたサウンドといえるだろう。

もしかしたら当時としては激しさのなかでも上位に入るサウンドだったのかもしれない。リアルタイムで聞くともっと違った印象だったのかもしれないが、だが今聞くとハードコアバンドならではの迫力や闘志、尋常でないテンションの高さは、あまり感じられない。暗闇で瞑想するようなシリアスや、修行僧のように厳しく内面を見つめ、煩悩を消し去ろうとするような精神の安定と、内省の葛藤が感じられる。ストレートエッヂならではのストイックさが感じられるのだ。

現在ダウンキャストは15年に活動を再開し、新曲をレコーディングしたとのこと。その後の活動は伝わってこない。現在復帰が一番待ち遠しいバンドなのだ。

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