プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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2018年7月

2018/07/25

Riot Ready presents Fuck Your Walls: Punk & Hardcore Compilation (ライオット・レディー・プレゼンツ・ファック・ユア・ウォールズ:パンク&ハードコア・コンピレーション)


Cover


ロサンゼルスにあるグラインド・コアやアナーコ・パンクなどのジャンルを紹介したレーベル『Riot Ready Records(ライオット・レディー・レコーズ)』が08年に発表したコンピ。ジャケットの絵からもわかるように、反体制色の強いバンドたちが収録されている。

日本語で“自動車爆弾のパレード”という意味をもつバンド名のThe Car Bomb Parade(ザ・カー・ボム・パレード)は“generation fucked(同世代の人はクソだった)”というタイトルの曲を歌い、wolfpack(ウルフパック)は、“Sterilise Society(社会を殺菌する)”というタイトルの曲を歌っている。The Homisides(ザ・ハーマサイド)は“A.T.A. (Anti-Trump Army)反トランプ軍”というタイトルの曲で、トランプ大統領を直截的な表現で非難する。Poison Made Sinners(ポイズン・メイド・シナー)は“Angry Song(怒りの歌)”というタイトルの曲で感情むき出しの怒りを爆発させる。敵意というバンド名をつけられたAnticitizen(アンチシチズン)は、貧富格差の問題である“Class War(階級闘争)”について歌っている。どのバンドも、体制側への怒りや同世代や社会に対する敵意、政治家への怒りという部分では一致しており、筋金入りのポリティカルハードコアで、たとえ政権に圧力を加えられても自分の主張を貫く屈強な姿勢がうかがえる。

反社会性がメインのゴリゴリのコンピだが、サウンド面ではハードロックやインダストリアルなど、幅広いジャンルのバンドが収録されている。The Stifled(ザ・スタイフォド)はメロコアのようなメロディーフレーズが特徴で、エモーショナルな歌声が魅力。The Homisides(ザ・ハーマサイド)はConflict(コンフリクト)からの影響を多大に感じるひとを小バカにしたような挑発的なサウンド。SNU MeNはハードコアなサウンドにハードロックからの影響を感じるハスキーな歌声を載せた独特なサウンド。Kill Their Past(キル・ゼア・パスト)はニュースクール系ハードコアで、怒りを一点に叩きつけるような気合の入ったサウンドを展開。Anticitizen(アンチシチズン)はファストでノイズコアなサウンド。そしてVenom Lab(ベノム・ラボ)はインタストリアルという、このなかで一番変わったサウンドを展開している。どのバンドもルーツの違いが明確で、バンド同士がカブることのない個性的なサウンドを展開しているのだ。

世界各地で独裁色が強い政権が誕生し、市民の権利が薄れている昨今、一部の富裕層と権力者だけが富と権利を牛耳っている。メディア規制も強まり、政権批判をすればテレビや社会から抹殺される。言いたいことも言えなくなってきている世の中で、彼らは反トランプというスローガンを掲げ、率先して批判活動を展開している。ただ陰口を言うのではなく、行動こそがすべて。そういった意味で、このコンピへの活動は経緯が払えるし、重要で価値のある作品なのだ。

こちらからダウンロードできます。


2018/07/14

THE GET UP KIDS(ザ・ゲット・アップ・キッズ)  『Kicker(キッカー)』

キッカーキッカー
ゲット・アップ・キッズ

Tugboat Records 2018-06-06
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じつに7年ぶりとなるEP。THE GET UP KIDS(ゲット・アップ・キッズ)といえば、JIMMY EAT WORLD(ジミー・イート・ワールド)とならび、ポップエモの代表的なバンドとして知られている。だがそのサウンドは実験的で、アルバムを発表するたび、ローファイなギターロックなど、色々なジャンルの音楽を取り入れていた。

とくに再結成後の11年に発表されたアルバム『There Are Rules(ゼア・アー・ルール)』では、Bauhaus (バグハウス)などのゴズにガレージを合わせたようなサウンドで、アグレッシヴで暗くノイジーで憂鬱な世界観を追求していた。実験的に次々と新しいことに挑むチャレンジ精神こそ感じられたが、そこには本来ゲット・アップ・キッズの魅力であった、失恋や次のステップに踏み出すことのできない未練や尻込みした感情を歌っていた姿はなかった。ダークでどす黒いアルバムを発表することによって、ゲット・アップ・キッズ像を過度に求めるファンへのイメージを打ち壊す、辟易とした態度がうかがわれた。

そして今作ではJAWBREAKER (ジョーブレイカー)などの初期エモを彷彿とさせる作品に仕上がっている。感極まったボーカル、パワフルで中部の放牧とした広大で乾燥した大地をイメージさせるノイズギター、キャッチ―なキーボードのメロディー、そこにはエモーショナル・ハードコアと呼ばれていたころの古い世代のエモを感じさせる。90年代のレコーディング機材がまだ発達していなかったころの、クリアーでないノイズまみれの音の悪さのなかに、パワフルな熱意が詰まった、人間味にあふれた味わい深さが魅力だったサウンドだ。

エモ全体の原理までさかのぼったサウンドには、現在では失われてしまった、むかしの古きよきものを取り戻そうとする姿勢がうかがえる。とくに彼らが否定していたエモと呼ばれることへの辟易とした感情が、誇りへと心境が変わってきている。NMEのインタビューで『エモという言葉にはプッシー(弱虫)な意味が強く、エモと呼ばれることに侮辱を感じていた。だが現在では、Modern Baseball(モダン・ベースボール)やThe Front Bottoms(ザ・フロント・ボトムズ)などの第四の波と呼ばれるエモ・バンドが出てきて、ゲット・アップ・キッズから影響を受け進化してきたと公言している。ゲット・アップ・キッズがエモのレガシーとして語られていることに誇りを感じる。』と語っていた。

さすがに歌詞は20代の恋愛経験ような、感傷的でデリケートな心情は歌っていない。“Sorry”ではジムの奥さんと子供についてなど、中年男性のごく平凡な日常を歌っている。そこには小さな幸せやささいな至福感が漂っている。

格別ファンの期待を応えようとする姿勢もなければ、裏切るよな仕草もない。あるのはエモの歴史を体系的に知ってもらおうとする姿勢と、中年の男性がただ純粋に自分の好きな音楽を楽しんでいる姿なのだ。楽しさや至福感が伝わっているいい作品だ。

2018/07/07

Krimewatch (クライムウォッチ)

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ニューヨーク出身のハードコアバンドのデビュー作。ニューヨークのハードコアバンドといえば、MADBALL(マッドボール)やEARTH CRISIS(アース・クライシス)など、バンダナにジーパンなどのアメリカ的なファッションで、ギャング的アティテュードか、もしくはストイックなバンドたちが思い浮かぶ。だがこれらのバンドたちと比べると、彼らは一線を画したアティテュードを持っている。

日本人の女性、Ogiura Rhylliがボーカルのバンドで、そのアティテュードは、フェミニズム思想が強い攻撃的なハードコア。歌詞には、“腰抜け”、“ゴキブリ男”、“小便たれ”、“マチズモ(男性優位主義)”など、挑発的で汚い言葉が並ぶ。Lil Kim(リム・キム)、Big L(ビッグ・エル)、Nas(ナス)、Mobb Deep(モブ・ディープ)、Jay-Z(ジェイZ)、Missy Elliot(ミッシー・エリオット)などのヒップホップから影響を受けていると発言しているが、そのアティテュードは、BIKINI KILL (ビキニ・キル)などのRiot grrrl(ライオットガール・シーン)に近く、80年代の日本のハードコアバンド、THE COMES(カムズ)からの影響も多大に感じる。

そのサウンドはカムズのヒステリックで甲高いボーカルに、ユースクルーやマイナースレットなどの野太くノイジーなギターを合わせた、シンプルなハードコアパンク。ボーカルスタイルや汚い言葉を吐き捨てるリリックからはカムズの影響を多大に感じる。女性を軽んじる男性への嫌悪と怒りにあふれている。差別や見下されることに対する怒りがヒステリックで悲痛な叫びとともに巨大な塊となって襲い掛かってくる。まさにやさぐれたハードコアなのだ。

ニューヨーク・ハードコアのなかでも80年代の日本やイギリスの匂いを感じさせるクライムウォッチは異質で孤立した存在なのだ。

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