プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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スクリーモ

2017/08/03

DOWNCAST(ダウンキャスト) 『LP』

Downcast

激情エモ/ハードコアのルーツとされているDOWNCAST(ダウンキャスト)の91年に発表されたデビュー作にして最後となるアルバム。

彼らを語る前にますEbullition Records(エボリューション・レコーズ)から説明したい。Ebullition Recordsとは90年にRock Rock Rollのコラムニストであったkent Mcclard(ケント・マクランド)によって、カルフォルニア州ゴレタに創設されたレーベルだ。ケントは動物愛護や環境保全に力を注いでいる筋金入りのストレートエッヂで、レーベルに所属するアーティストは、ストレートエッヂでなければ、音源をリリースしないという徹底したこだわりを持っている。リリースされた作品のなかではとくにコンピレーション・アルバムが印象的で、『VA(EBULLITION)/HEARTATTACK』では、ケントがヨーロッパに出向き、ストレートエッヂ・バンドに声をかけ、コンピレーション・アルバムに参加してもらった作品だ。ヨーロッパか各地のライヴハウスを周り、ストレートエッヂを掲げるバンドをリサーチし、バンドのスタンスやポリシー、アティテュードへのこだわりを聞き、選び抜かれた14組を集め収録した作品なのだ。それほどストレートエッヂへの並みならぬこだわりと情熱をもった人物なのだ。

そのケントが唯一メンバーとして参加していたバンドがダウンキャストなのだ。彼らが発表した作品は4曲入りのEP『Downcast(7)』と10曲入りのフルアルバム『Downcast(LP)』の2作だ。EMBRACE(エムブレイス)のボーカルスタイルに、Helmet(ヘルメット)のスローデンポに重厚なリフのサウンドを合わせたスタイルだった『Downcast(7)』。そのEPと比べると、違い格段に曲のバラエティーが広がっている。今作でもEPのサウンドスタイルがベースとなっているが、リズムとともに叩きつけるようなリフや激しさと静けさのアップダウンを繰り返すギターなど、新しい要素を加えている。エモーショナル・ハードコアが激情コアへと進化し、カオティック・ハードコアへたどり着いた。極限まで過激に進化したバンドがConverge(コンヴァージ)とするなら、絶叫ボーカルやアップダウンを加えた部分で、エモーショナル・ハードコアを少しだけ前に進めたサウンドといえるだろう。

もしかしたら当時としては激しさのなかでも上位に入るサウンドだったのかもしれない。リアルタイムで聞くともっと違った印象だったのかもしれないが、だが今聞くとハードコアバンドならではの迫力や闘志、尋常でないテンションの高さは、あまり感じられない。暗闇で瞑想するようなシリアスや、修行僧のように厳しく内面を見つめ、煩悩を消し去ろうとするような精神の安定と、内省の葛藤が感じられる。ストレートエッヂならではのストイックさが感じられるのだ。

現在ダウンキャストは15年に活動を再開し、新曲をレコーディングしたとのこと。その後の活動は伝わってこない。現在復帰が一番待ち遠しいバンドなのだ。

2016/05/13

Gospel (ゴズペル) 『 The Moon Is A Dead World (ザ・ムーン・イズ・ア・デッド・ワールド)』

Moon Is a Dead WorldMoon Is a Dead World
Gospel

Level Plane 2005-05-24
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05年に発表されたデビュー作にして最後の作品。コンヴァージのギタリスト、クルト・バルーによってプロデュースされた作品で、世間ではスクリーモとして認知されている。

05年といえばユーズドやサーズディ、アトレイユなど、メタルから進化したスクリーモが席巻していた時代だ。そんなサウンドスタイルが流行していたときに、彼らはハードコアから進化したスクリーモで、周りとは違ったサウンドを展開していた。

その彼らのサウンドスタイルとは、スクリーモの絶叫に、エモーショナル・ハードコアのナイーブなメロディーやプログレの壮大な世界観を取り入れた。スクリーモとプログレの折衷スタイルのサウンドなのだ。

12弦ギターが作り出す音が反響するメロディーに、変則的でトライバルな独特のリズムをたたくドラム、9分からなるプログレの壮大な曲に、ジミヘン的なくるくると性格が変わるギターの要素を加えた楽曲には、エクスペリメンタルで独特な世界観を追求している。そこには勢いと衝動に満ちあふれながらも、怒りと悲しみと寂しさが入り混じった感情が支配している。神経質で孤独に満ちあふれたメロディーと、限界を突き抜けるような衝動と憤りに満ちあふれたスクリームの調和には、
ダンテの神曲のような特異で孤高の芸術性すら感じる。

9分を超える遠大な曲もありながらも、衰えることのない勢い。スクリーモのなかでも独特な作品なのだ。

2016/05/05

City Of Caterpillar (シティー・オブ・キャタピラー)

City of CaterpillarCity of Caterpillar
City Of Caterpillar

Level Plane 2003-06-20
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02年に発表されたデビュー作にして最後の作品。エモからスクリーモ、カオティック・ハードコアにシーンが変わっていく過程に現れたバンドで、そのサウンドは現在ではリアル・スクリーモと呼ばれている。

このバンドもジュリアと同様に、テキサス・イズ・ザ・リーズンに影響を受けたエモーショナル・ハードコアをさらに過激なサウンドへと進化させたバンドのひとつだ。このバンドの特徴はアップダウンするエモのサウンド形態に、不気味な静寂のメロディーが延々と続く中期ソニックユースのサウンドスタイルや音が反響する幻想的なスライドギターなどの要素を加えた部分にある。

不気味な静寂のなかにキラリと光る万華鏡のように幻想的で美しいメロディーと、洪水のように襲いかかるノイズギターの音の壁。激しさと静かさが交互に繰り返されるサウンドには、渡ることのできない川の岸辺で一人ぽつんとたたずんでいるような寂しさが漂っている。対岸にある華やかで人の賑あう世界。そこにたどり着くことのできない寂しさや悔しさ。そんな感情がどことなく漂っているのだ。

この暗く陰りのある美しさは、後世のバンドに多大な影響を与えた。初期スクリーモのなかでも独特な世界観を持ったバンドといえるだろう。

2016/03/22

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アメリカはバージニア州出身のスクリーモ・バンドの01年に発表された2作目となるアルバム。メンバーはボーカルが2人、ギターが3人、ベースが2人、ドラムが1人の計8人からなる大所帯で、彼らの作品は、スピリット、シングル、EP、アルバム、すべての音源がDocument No.○○という形で発表されている。そのうちNo.8はアルバムで9曲が収録されている。

彼らはエモがスクリーモに進化する過程に活動していたバンドで、スクリーモがメタルの亜種となる前の、ハードコアの残り香が残ったスクリーモ・バンドとしてジャンル分けされていた。アメリカではリアル・スクリーモのレジェントとして語られてきたバンドの一つだ。

スクリーモのレジェントとして語られている彼らだが、ここで展開されているサウンドは、スクリーモというよりカオティック・ハードコア。その証拠にリミキシングにコンヴァージのカートが担当している。躁病的なけたたましい叫び声のボーカルや狂ったような勢いで叩くドラム、洪水のような激しさのノイズギターからは、まさしくコンヴァージからの影響を色濃く感じる。だがコンヴァージとの明らかな違いは、メロディーと静のパートを導入している部分にある。そのメロディーだが、深い沈黙の先で不気味に鳴り響いているようなメロディーがループし、まるで高速回転する万華鏡を除いているのような、カオティックな気分に陥る。静の部分はほかのエモバンドとは違い、いじけたようなナイーブなメロディーではない。そこにあるのは中毒患者が夢見るような不気味にキラキラと光る妖しげで幻想的な世界だ。静を妖しく妖艶に変化させ、動をエモよりさらに激しくカオティックにデフォルメさせたサウンドなのだ。いまカオティック・ハードコアとは、突発的な発生したジャンルとして語られているが、元来はエモから進化したサウンドなのだ。この作品はエモからカオティック・ハードコアの進化の過程で現れた作品なのだ。

2015/10/02

Heroin (ヘロイン)


HeroinHeroin
Heroin

Gravity Records 1997-01-24
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89年から93年にかけて活動していたヘロインの、97年に発表したすべての作品を網羅したディスコグラフィー的な作品。その内容は、91年に発表された7インチ・シングル『オール・アバウト・ヘロイン7』から6曲。92年に発表された7インチ『ヘロイン』から4曲。93年に発表された12インチ・シングル『ヘロイン』から6曲に、3曲プラスされた、計19曲が収録されている。

 ぼくが彼らの存在を知ったのは、アップルシード・キャストのインタビューでの発言だ。エモの先駆者である彼らが影響を受けたバンドとして挙げていたのが、ライツ・オブ・スプリング、ヘロイン、ジュリアといったバンドたちだ。そのとき以来個人的に、ヘロインというバンドのことがずっと気になっていたが、日本の雑誌では彼らのことを紹介されることがまったくなく、つねに無視し続けられてきた存在だったのだ。このたび彼らのCDを入手したので、レビューを書くことにした。

 とうやらヘロインというバンドは、アメリカではスクリーモの先駆者として語られているようだ。エモーショナル・ハードコアというジャンルが、エムブレイスやライツ・オブ・スプリングなどによって産声を上げたころ、そのバンドたちやオールド・スクール・ハードコアを聴いた育ったヘロインのメンバーたちは、ライツ・オブ・スプリングのサウンドスタイルをさらに推し進めた。熱く叫ぶボーカルは、しゅうし絶叫するスタイルへと進化し、センチなメロディック・ギターはなくなり、分厚くノイジーでカオティックに変化した。

 このアルバムで展開されているサウンドは、終始絶叫するスタイルのボーカルと、分厚くノイジーなギターサウンドだ。ギタースタイルはハードコアをベースにしているが、ところどころにメロディー・パートが加わっている。そして高速スピードのドラミングによって、分厚いギターとメロディー。絶叫ボーカルという個々に際立つ要素が歪な不協和音を生み、全体の印象をカオティックなものにしている。そのあたりが終始ハイテンションで闘争的なハードコアとは違うし、静と激のコントラストがあるエモーショナル・ハードコアとも違う。精神状態がめちゃくちゃで、マッドなカオティックを生んでいるのだ。

 その絶叫するボーカル・スタイルから、スクリーモの先駆者として語られることになった。だが実際に一部の例外を除いたスクリーモと呼ばれているジャンルのバンドたちは、メタルやハードロックからの影響が強い。メタルやハードロックのメロディーパートにハードコアのコントラストがあるバンドたちが、スクリーモと呼べるだろう。そういった意味で、ヘロインはスクリーモからかけ離れている。いうならエモーショナル・ハードコアとカオティック・ハードコアの間をつなぐ存在が彼らとは言えるのではないか。エモーショナル・ハードコアよりも過激なサウンドで、カオティック・ハードコアよりも混沌とはしていない。それがヘロインのサウンドなのだ。

 おそらく彼らの存在がなければ、コンヴァージもデリンジャー・エスケープ・プランも存在しなかったのではないか。日本ではそれほど評価されていないが、エモーショナル・ハードコアとカオティック・ハードコアの間をつなぐ上で、重要なバンドだったのだ。

2014/10/25

ISSUES 『ISSUES』

イシューズ
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インディーズレーベル 2014-02-18
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 14年に発表されたデビューアルバム。デビューEP発表から2年もの歳月がかかった理由は、メンバーが大幅に入れ替わったからだ。そもそもイシューズは、ウォウ、イズ・ミーというスクリーモ・バンドから脱退したタイラー・カーター、マイケル・ボン、コリー・フェリス、ベン・フェリス を中心に結成された。そして13年には、ベースのコリーとキーボードのベン、ドラムのケースが脱退。メンバーがいままで安定しなかったのだ。

 今作では、前作で確立したリンプ・ビスキッドのようなスクラッチを取り入れたニューメタルやエンターシカリなどのユーロビート、ヒップホップなどの要素をブレンドした、メロディック・デスメタル、もしくはスクリーモの進化系のサウンドをさらに極めた作品に仕上がっている。その深化とは、前作よりもさらに美しさが増しながらも、エキゾチックでミステリアスさが強調されている部にある。野獣の咆哮のようなデス声、暴力的に荒々しいギターのリフ、ミステリアスななヒップホップとユーロビートに、カオティックなスクラッチに、地獄の底で桃源郷の幻覚を見ているような高く美しい女性の歌声のようなボーカル。それらの要素が違和感なく一曲にまとめられている。美しさと醜さや、弱さと強さ、軽やかさと重たさなどの二律背反する要素が、さらに際立つようになりながらも、幻想的な美しくミステリアスなサウンドに仕上がっている。ニューメタルだとリンプビズキットの流れを踏襲しているし、メロデスだとインフレイムの影響をうえのでの進化だ。そしてそこにア・スカイリッド・ドライブの美と醜のアンビバレンスなスクリーモを加え、スペイシーで近未来的なミステリアスで幻想的な世界観に統一している。前世代的な要素をひとまとめにしたサウンドは、まさに10年代を代表するスクリーモ、メロディック・デスメタルの最新進化型といえるだろう。

 

2014/06/21

Taking Back Sunday (テイキング・バック・サンデイ)  『Happiness Is (ハッピネス・イズ)』

Happiness IsHappiness Is
Taking Back Sunday

Hopeless Records 2014-04-01
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 14年に発表された6作目。じつに3年ぶりとなる作品。6作目となると円熟期に突入し、マンネリが続き、倦怠ぎみになりがちになる。だが海外からの評価が高い作品に仕上がっている。前作『テイキング・バック・サンディ』は、自らのバンド名を関し、原点回帰の意味合いが強い作品だった。そういった意味では、2作目と5作目のミドルテンポのスピード感と、荒々しいギターのパンク・サウンドを今作もベースにしている。とくに変わった部分をあげれば、メロディーの変化とスクリームがなくなった部分にある。とくに変わった部分はメロディーだ。前作は激しさとクールさという2面性がいったりきたりするサウンドで、激しいギターコードの隙間を一筋の光が刺すようなメロディーが魅力的であった。今作ではそのメロディーの部分にスポットをあて進化させている。

 今作は、アルバム・タイトルの『ハッピネス・イズ』にあるように、至福感がテーマになっているようだ。今作ではさまざまな形のハッピネスを表現している。たとえば“フリッカー,フェイド”では、蜃気楼のようなスライドギターの奥底でひっそりと響く洞窟で落ちる雫のようなアンビエントなメロディーが印象的で、“オール・ザ・ウェイ”では、夜空の星々のようにキラキラ光るロマンティックなギターのメロディーを展開している。“ビート・アップ・カー”では、尺八のような落ち着いた音色が、暗がりにまどろむような大人のムーディーな雰囲気を作っている。そして“ナッシング・アット・オール”は子守唄のようにささやく癒しにあふれた歌声が魅力だ。

 アルバム全体を通して感じられるのは、都会的な洒脱なクールさをベースにした至福感や、おしゃれに酔うようなロマンティックな気分、大自然の空気を吸うような癒しなどだ。それが彼らの提示するハッピネスの形なのだろう。その落ち着いた雰囲気は、前作の熱量や衝動などとは対極にあるサウンドを展開している。そういった意味では、今作も新しいことにチャレンジしているのだ。

 その新しい音楽を作る意欲が倦怠気味にならなかった理由だろう。彼らが表現したい感情や演りたいサウンドというモチベーションがある限り、彼らはまだ健在なのだ。安定した良作といえる作品だ。

2014/06/13

Chiodos (チオドス)  『Devil (デビル)』

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Chiodos

Razor & Tie 2014-03-31
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 14年に発表された4作目。じつに4年ぶりとなる作品。これがすばらしい作品に仕上がっている。今作を発表する2年前の12年3月27日にボーカルのボルマーとドラムのウェインが脱退した。そしてオリジナルメンバーであったギタリストのジェイソン・ヘオルも脱退。普通、メンバーの脱退とは、最悪な出来事のひとつだ。だがチオドスの場合、それがいい方向に進んだ。

 直後の4月に、前ボーカルであるクレイグが正式に復帰。グレイグが誘う形で5月にこれまた前ドラムのデリックも復帰した。彼らが復帰した理由は、おそらく確執があったメンバーの脱退が大きく関係しているのだろう。それと新メンバーで活動したチオドスがうまく軌道に乗ることができなかったから、バンドの中心メンバーであるブラッドリー・ベルが彼らの復帰を望んだのだろう。そして新ギタリストの元フォール・オブ・テロリーのトーマス・エラクを迎えた。

 そんな紆余曲折を経て発表された今作は、まさに新しく生まれ変わったという言葉がフィットする内容の作品に仕上がっている。ベースにあるのは、前々作のクラッシックの上品で華麗なメロディーと、地獄の叫び声ようなスクリーム。上流階級の優雅で華やかな世界観自体は前々作の要素を復活させている。今作ではそこに希望に満ち溢れたメロディックパンクや、不気味なバラード、アコースティックな曲など、新しい要素の曲が加わった。そしてなにより今までとの違いは、1曲にいろいろな要素を詰め込んだカオティックな展開にある。

 たとえば、“オレ・イズ・フィッシュリップス・デッド・ナウ”では、ブラストビートのドラムと凶暴なスクリームで始まり、リヴァーヴする反響ギター、ハンマーのようなギターのリフ、ナイーヴなピアノがカオティックに入り混じっている展開に変化していく。また“ホワイ・ザ・マンスターズ・マター”では、悲劇のようなドラマティックなメロディーで始まり、フォール・オブ・テロリーのようなカオティックなギターのリフへと移行していく。そして7では不気味で恐怖を感じる中世の館のようなメロディーで始まり、そこから極楽浄土へ導かれるハープの音色に変わっていく。そこには、上流階級の優雅で華やかな世界観をベースにしながらも、クラシックなピアノ、暴虐なスクリーム、透明で力強く伸びのあるメロディックな歌声、ブラストビート、リヴァーヴ・ギターがめまぐるしく変化していくカオティックな展開がある。メンバーそれぞれの特徴が1曲に反映されながらも、綺麗に整えまとめられているのだ。その理由は曲の作り方を変えたからだという。以前は特定のメンバーが一人で作曲をしていたそうだが、今作ではグレイグがアコースティック・ギターで曲の輪郭を作ってきたそうだ。その骨組みにほかのメンバーのアイデアを加えた。メンバーそれそれがスタイルの音楽を聴いているから、いろんなタイプの曲ができたという。それがバラエティーの富んだサウンドの理由なのだ。

 ボーカルのグレイグが復帰したが、もはや脆さや危うさはなくなり、芯の強さを感じるタフさに変化してしまった。そういった意味では、脆さや危うさといった初期衝動は失われてしまった。たしかに初期衝動は失われてしまったが、代わりに団結力という新しい魅力を獲得した。その団結力が、お互いの長所を引き出し、チオドスというバンドを新しく生まれ変わらせた。そこには全メンバーが、純粋に自分の好きな音楽を楽しんでいる熱情を感じ取ることができる。ある意味、全盛期以上の輝きを放ち、熱く情熱的な姿勢を感じるのだ。個人的には前々作と同じくらい好きな作品だ。

2014/06/08

Chiodos  『Illuminaudio』

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チオドス

CR JAPAN 2010-10-23
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 ボーカルがグレイグ・オーウェンからにブランドン・ボルマーに代わり発表された10年発表の3作目。今作を発表する前、まずグレイグ・オーウェンが脱退した経緯から説明しよう。話は07年にさかのぼる。この年の9月にバンドは2作目となる『ボーン・パレス・バレー』を発表した。その作品が世間の評価が高く、全米アルバムチャート初登場5位を記録し、全米最大のパンクの祭典、ワープド・ツアーで、見事メインステージ公演を果たした。

 その作品とバンドの評価が高まり、バンドの絶頂期を向かえていくのとは裏腹に、08年7月24日にグレイグはオーバードースで倒れた。以前から彼は双極性障害や不安発作に悩まされていたという。そして08年の10月には、2ndアルバムに新曲をプラスした『ボーン・パレス・バレー:グランド・コーダ』をメジャーレーベルのワーナー・ブラザーズから再リリースされた。セールスも20万枚を超え、世間の評価は高まる一方だった。そんな矢先に起きた事故だったのだ。

 そして09年5月にはドラムを担当していたデリック・フロストが、バンドとの不和を理由に、脱退を表明。結局グレイグも、オーバードスが原因で09年9月24日に脱退させられた。後に自身のホームページで「動揺し怒りが込み上げている。本当にショック」。と語っており、本人の意思とは関係なく、強制的に脱退させられたようだ。

 そして新ボーカルであるブランドンが加入し、10年10月5日に、3作目となる今作が発表。そんな紆余曲折を経て発表された今作は、もはやスクリーモとは呼べないくらい変化している。とくにメロディーは、優雅で上品なピアノは薄まり、スペイシーなデジタル音と、バヴハウスやコーンなどのホラーやゴズ的な要素を感じるメロディーに変化している。そしてギターのリフには重さが加わり、さらにノイジーでヘヴィーに激しさが増している。前作の上流階級の華麗な世界観に、ゴズやホラーなどの新しい要素を加え、改良し、幻想的で薄暗い世界観に変化させた。新しい形のスクリーモを提示したのだ。

 だがここまで変化すると、彼ら本来の良さが失われている。とくに変化を感じるのは、やはりブランドンのボーカルスタイルだ。甘く滑らかで美しい歌声のボーカリストだが、そこには意志の強さを感じる。先ほど述べたようにグレイグは双極性障害や不安発作に悩まされていたとように、神経質で精神的に脆く、不安定なボーカルだった。だがその不安定で精神の限界のふちをギリギリで渡るかのような危うさと脆さというチオドス特有の世界観を構築し、チオドスの魅力になっていたのだ。ブラントンの意志の強さを感じる歌声が、チオドス独特の繊細な世界観を壊してしまったのだ。いうならボーカルのリアリティーが、虚飾に満ちた世界に変えてしまったのだ。

 サウンドとしてはよくできている作品だ。ただボーカルの交代が裏目に出てしまっている。それが残念に感じた。

2014/05/29

Chiodos  『Bone Palace Ballet』

ボーン・パレス・バレー:グランド・コーダボーン・パレス・バレー:グランド・コーダ
チオドス

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 メジャーデビューをはたし、07年に発表された2作目。彼らの最高傑作はこの作品。前作のクラッシクをベースにした華麗で上品なメロディーと、スクリーモ・サウンドを踏襲し、さらに深化させている。

 今作ではとくにクラッシクの要素がさらに濃くなった。前作はピアノを中心としたメロディーだったが、今作ではエレガントなバイオリンなどの楽器が加わり、サウンドにより深みが増している。“トゥ・バーズ・ストーンド・アット・ワンス”では、ショックな告白を聞くよな劇的でドラマティックなバイオリンの音色が切迫感を煽り、“ウィ・スワム・フロム・アルバトロス~”では、怒りに満ちたノイジーな激しさが静けさへと急激に変わり、穏やかで洒脱なピアノの音が物哀しいメロディを奏でる展開。総じてエレガントなメロディーのバラエティーが増えている。そしてスクリーモの激しさの部分では、“レキシントン”のようにスクリームがない曲もあれば、怒りの咆哮や、恐怖の叫びなど、新しい形のスクリームが加わっている。ギターもアレンジが多彩になり、“ア・レター・フロム・ジャネル”では、蜃気楼のようなようなリヴァーヴ・ギターなどがあり、スクリーモ一辺倒だった前作よりも、演奏力と技術力が飛躍的に成長しているのだ。

 アルバムも全体を通して物語のような構成になっており、ショックな告白を受けるような悲劇から始まり、“インテンシティー・イン・テン・シティーズ”ではピアノの音が川のせせらぎのように優雅に繊細にキラキラと光っている希望に満ちた展開へと進んでいく。そして“ジ・アンダーテイカーズ~”では再び、地の底に落ちたような激しい苦悩で幕は閉じられる。紆余曲折がある展開に作品は仕上がっている。

 アルバムを全体を取り巻くクラシックの上流階級のような華麗な世界観は、前作から変わっていない。ただシェイクスピアの小説からインスピレーションを受けた歌詞は、ビートジェネレーション詩人であり、酒と喧嘩と女が大好きだったハードボイルド作家、チャールズ・ブコウスキーからの影響に、今作は変わっている。アルバムタイトルは、彼の作品からとったそうだ。

 だがそこにはチャールズ・ブコウスキーような、猥雑でハードボイルドな世界観はない。上流階級の気品と華麗で優雅な華やかさに、アルバムの雰囲気は満ちている。だがその内側には、アルバムジャケットにある上流階級の優雅で華麗な舞踏会に踊るドクロと同じ世界観の、華やかさのダークサイドに潜む、精神の破綻と死の匂いがある。そこにまるで蜘蛛の糸を渡っているかのような、精神の限界のふちをギリギリで渡るかのような危うさと脆さを感じることができる。蜘蛛の糸とは正気で、少しでも負荷をかけると切れてしまう。切れた先にあるのは精神の破綻だ。そんな精神の脆さをこのアルバムでは感じることができる。しかもその脆さがエレガント輝きを放っている。それがこのアルバムの魅力だろう。雨後の竹の子のように、似たようなサウンドのバンドが大量発生しているスクリーモ界のなかで、歪な個性を放った作品なのだ。

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