THRICE『VHEISSU』

ヴィースーヴィースー
スライス

ユニバーサル インターナショナル 2005-11-09
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 劇的に変化した5作目にして問題作。スライスの個性であるメタルとハードコアの折衷スタイルと、激しい衝動と熱さがなくなった。そのかわりに前作でもみせたプログレ的アプローチがさらに深まり、終始ゆっくりした曲で、たゆたうように穏やかさと美しい雰囲気がアルバムを支配している。もはや初期衝動が完全に失われ、技巧を極めることにバンドのベクトルが向かっているのが理解できる。

 といってもけっして悪い作品ではない。冷たく繊細なギターフレーズに、暴力的なスクリーモヴォイスが絡んでいく曲からは、まるで映画レッドドラゴンのような特異な美意識を感じる。“さくらさくら”のフレーズに代表される“ミュージック・ボックス”ように、儚く切ない曲もあり、胸が詰まるような寂しさを覚える。特異な美意識を感じる美しいサウンドと、儚さを感じる寂寥感がなんともいえないほどいい。自分たちの持ち味を捨ててまで新しいことに果敢に挑んだ姿勢も、評価が出来る。

 でもなんだろ。この精神世界に入り込んでしまったような暗さは。まるでどこの世界ともつながっていないような孤立と寂寥を感じる。そのへんがちょっと気になるところ。

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RANCID『LET THE DOMINOES FALL』

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ランシド

SMJ 2009-06-03
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 ん~。枯れた円熟味というか、妙にユルユルになってしまった印象を受ける。じつに6年ぶりとなる7作目は、カリプソとかカントリーなどの新機軸を見せながらも、いつものランシド節は健在。クラッシュやラモーンズを下地にした初期パンクに変わりはない。変わったところといえば、ウクレレっぽいギターの、極端にミニマムな曲などがある。そこでは、南の島の穏やかな夕暮れ時を連想させ、日が暮れ一日が終わる寂しさと、さざ波が砂浜をひっそりとぬらす、のどかな雰囲気が漂っている。

 でもランシドって、パンクスの格好をした労働者階級特有の、育ちの悪さからくる情念が魅力ではなかったのか。たとえばハードコアを基調とした2ndや5stでは、荒くれた不良の匂いがガンガンに漂っているし、スカを推し進めた3rdや4stでは、貧しい黒人たちへのリスペクトやシンパシーが感じられた。嬉しさや悲しさ楽しさといった感情がスパークし、激しいエナジーを飛び散らせていた前作までと比べると、今回はやけに丸くなった印象を受ける。だが、けっして悪い作品ではない。富裕層や体制側には中指を立てているし、媚びていない。いい意味でチープな録音で、味わい深いギターの音色を出している。ただ今回、癒しやまったりした方向に向かっただけだ。その時々のリアルな精神性が反映されている。そういった意味では、純朴で素直な人たちなんだろうな。

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FROM FIRST TO LAST/フロム・ファースト・トゥー・ラスト

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フロム・ファースト・トゥ・ラスト

ユニバーサル インターナショナル 2008-06-25
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 これは問題作。ダークなメタルから哀愁やサイケ色の強いギターポップへと変化をした。今回はメタル好きのSonnyが脱退。メロディック・パンク好きのギターMatt・Goodが、ボーカルを兼任し、自身の好きなサウンドを展開。持ち味である渋みのある歌声を中心に、幻想的なメロディーを持つギターポップへと変化を遂げた。だがいくら重く暗くヘヴィーなサウンドから、哀愁漂うメロディックサウンドに変化したといても、サウンドフォーマットは変わっていない。むしろ多彩なジャンルの影響が窺える色彩豊かなギターフレーズは、ギターポップなどを取り入れた最新型のメロディックパンクといえるだろう。そういった意味では、今作もまた実験的な作品。ポップ好きのぼくとしては、この変化を大いに歓迎する。前2作のイメージを捨てて、もっと素直に聴けば、この作品すごさがもっと理解できるはず。

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FROM FIRST TO LAST/フロム・ファースト・トゥー・ラスト『HEROINE』


ヒロインヒロイン
フロム・ファースト・トゥ・ラスト

ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル 2006-05-03
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 06年に発表された2nd。パンク、メタルの折衷スタイルのカオスから、重いグルーヴだけを抽出し、より暴力的に変化を遂げた。その変化の理由は、おそらくメタル好きのDerekの意見を重視したからだろう。ハードロックのテックニックギターや、インダストリアル、重厚なリフを重視し、ブルータルなど、ヘヴィーなサウンドをいろいろと取り入れている。ここではパンクの影響はあまり伺えない。歌い方も力強く攻撃的に、慰めなどの叙情性も排除されている。重くつらく暗くシリアスに、怨嗟をただただ吐き出している。最後の曲“ヒロイン”だけが叙情ナンバーで、パンクの影響を感じる。そこには、厳しい現実に敗残していくむなしさや徒労感が漂っている。強気で攻撃的な前半と、疲弊感漂う弱さで終わる結末。その一連のストーリーのような展開が、アルバムをうまくまとめ、味わい深いものにしている。個人的には最後の曲が好きだ。

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FROM FIRST TO LAST/フロム・ファースト・トゥー・ラスト『dear diary,my teen angst has a bodycount.』


ディア・ダイアリー、マイ・ティーン・アングスト・ハズ・ア・ボディカウントディア・ダイアリー、マイ・ティーン・アングスト・ハズ・ア・ボディカウント
フロム・ファースト・トゥ・ラスト

ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル 2004-08-18
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 衝撃のデビュー作。昨今のパンク、メタルシーンでは、メタルにパンクを取り入れたり、はたまた逆にパンクにメタルを取り入れたりと、ベースとなる音楽に、プラスアルファーを加えたバンドばかりが流行している。そんななか、メロディックパンクからブラックメタルなど、趣味も違えばルーツも違うメンバー同士が、ぶつかり合うサウンドのバンドが現れた。デス声と叙情的な歌声が交錯するシンガロングスタイルのボーカルに、ブラックメタルの冷たいメロディーと重厚なリフ、パンクの影響を感じるギターコード、心の傷を不規則に刻むメタル色の強いドラムのブラストビート。不協和音をギリギリで回避する緊迫したバンドアンサンブル。多種多様の音楽が亜種混合したカオス。氷細工のような冷たい美しさと、それを瞬時に破壊する衝動が、甘美で息苦しく、そして心地よい。異彩なオリジナリティーを放ちながらも、尋常でないテンションの高さの初期衝動が魅力的な作品だ。

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THE FAINT/ザ・フェイント『FASCINATION』

FASCIINATIIONFASCIINATIION
ザ・フェイント

LR2(バウンディ) 2008-08-20
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 4年ぶり通産5枚目。最高傑作と名高い前作『ウエット・フロム・バース』は、ファンクビートの隙間に、厳かなヴァイオリンや、音程のずれたシンセ音が不気味に響き、ギャング・オブ・フォーあたりに通じるカッティングギターが鋭利の刃物のように空間を切り裂く独特のグルーヴ感があった。初期パンクのような派手さと、攻撃的なラディカルさイメージに、踊りたくもないダンスを強制的に踊らされているような恐怖と違和感。そんな前作と比べると、今作は明るくポップになり、攻撃性が丸くなった印象を受ける。鋭利なギターは後退し、ビブラートをかけたボーカルを多用。よりダンサンブルに、ノリのいいデジタルな音を前面に出している。これはパンクじゃねぇ、と思いきや、つい踊りたくなるようなウキウキする曲に、憎しみを込めた歌詞があり、アイロニカルに、もっと内面的な不気味さや恐怖を演出しているようだ。やはり、アメリカン・ハードコアを経て、オルタナティヴを通過した、アメリカンパンクのスピリットを捨てていないようだ。

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