プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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ハードコア

2018/01/24

REAGAN YOUTH( レーガン・ユース) 『COMPLETE YOUTH ANTHEMS FOR THE NEW ORDER 』

The Complete Youth Anthems forThe Complete Youth Anthems for
Reagan Youth

Cleopatra 2016-03-31
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80年から90年にかけてニューヨークで活動していたアナーコパンク・バンドの16年に発表された全作品を網羅したコンプリート盤。ここに収録されている作品は、83年と84年に発表された作品をまとめた『Volume1』と解散することが決まったあとに録音された『Volume2』の両作品をまとめたCDが一枚、98年に発表されたライヴ盤『Live&Rare』と、84年にレコーディングされた未発表の7インチEPが2枚、CDと7インチレコードを合わせた計4枚、全69曲が収録されている。そこにブックレットと缶バッチが付いた内容だ。

ニューヨーク出身の彼らだが、その存在は異彩を放っていた。アルバムジャケットのKKKの儀式とナチスに忠誠を誓うヒットラーの写真には、逆説的で皮肉な意味が込められていた。一見保守色の強い政治思想に思えるが、実際には反人種主義、社会主義、アナーキズムな思想を掲げていた。彼らはロナルド・レーガンの政策が、キリスト教の権威とアメリカ保守主義、レイシストたちと共通していること自らの持論を述べ、メインテーマとして取り上げていた。彼らの名曲である“Reagan Youth(レーガン・ユース)”では、私はレーガンという一人称で始まり、平和のために異教徒や共産主義を殺すと恫喝し、レーガンの野望と政治政策の恐ろしさを歌っている。彼らがDead Kennedys (デッドケネディーズ)ほど話題にならなかった理由は、ある種のユーモアや冷笑、嘲笑といった要素がなかったからだ。モノトーンの不気味なジャケットからはクラスの影響が強く、まさにクラスのアメリカ版というバンドだった。それとぱっと見右寄りの思想に思える分かりづらい皮肉に満ちたアティテュードを持っていた。個人的にはややインパクトに欠けたその2点が、彼らがそれほど話題にならなかった理由に思える。

肝心の内容だが、レコーディング曲が収録された『Volume1』では、スピーディーなハードコアな曲から、多彩なメロディーフレーズが特徴的なパンクまで、じつに色々な要素を感じる。とくにクラスやダムドからの影響を色濃く感じ、そこに多彩なメロディーフレーズやスピーディーなハードコアなどをちりばめている。そしてライヴ盤である『Live&Rare』は、勢いや迫力を重視している。とくに面白いのが“レーガン・ユース”という曲。メロディーフレーズが印象的な曲だが、メロディックな要素が一切ない。バリバリと音が割れるノイズギターやブンブンうねるベースの重低音を中心に勢いと迫力のあるライヴを展開している。自らが抱える怒りをリズムに刻み、扇動し過激な方向に周囲を煽っていくライヴには、ロナルド・レーガンと共和党を徹底的に嫌い、戦っている姿が生々しく映しだされている。アルバムとはまた違った魅力のある素晴らしいライヴ作品なのだ。

そんな彼らの活動もレーガンが辞任した89年からモチベーションが下がり、90年に解散する。そして93年にはボーカルのDave Rubinstein (デイヴ・ルビンスタイン)が自殺し、永遠に復活することがないと思われた。だが16年後の06年に、もうひとりの中心メンバーであるギターのPaul Bakija(ポール・ベイキア)を中心に活動を再開する。現在も彼らのモチベーションは失われていない。あまり話題にならないバンドだったが隠れた名盤といえる作品だ。


2017/12/19

VA GIVE ME BACK COMPILATION (ゲット・ミー・バック・コンピレーション)

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08年に発表されたコンピレーションアルバム。発売元であるEBULLITION RECORDS(エボリューション・レコーズ)といえばオーナーであるケントがストレート・エッヂに対して尋常でないこだわりを持っていることで知られている。自らがヨーロッパまで足を運び、徹底した現場主義で選び抜かれたバンドのみコンピレーションアルバムに収録。ストレートエッヂに対する尋常でないこだわりをもったレーベルとして有名だ。

そのケントがコンピレーションアルバム第一弾として発表をしたのがこの作品。ここではストレートエッヂに対して、全く触れられていない。だがInternational P.E.A.C.E. Benefit Compilation(インターナショナル・ピース・ベネフィット・コンピレーション)やStone To Mark a Fire(ストーン・トゥ・マーク・ア・ファイヤ)などのハードコア界のコンピレーションアルバムに匹敵するほど、歴史的な価値を持つ名盤なのだ。

ここで取り上げているテーマは、ジェンダーフリーや同性愛者の権利、フェミニズム運動など。性差別を受けている者たちが、平凡な市民生活を送るため、権利獲得を目的とされたベネフィットコンピレーションアルバムなのだ。32ページにわたる小冊子には、ジェンダー問題に関する記事やエッセイが掲載されている。なお売り上げは、ゲイやレズビアンなどの団体と、コンドームなどの避妊薬や乳がんやHIV検査などを無料で行っている非営利団体『プランドペアレントフッド(Planned Parenthood)』、男性に暴力を振るわれた女性が緊急避難できるシェルターサービスの、3箇所に寄付されている。

ここで収録されているのは、BORN AGAINST(ボーン・アゲインスト)、DOWNCAST(ダウンキャスト)、STRUGGLE(ストラグル)、SPITBOY(スピット・ボーイ)、ECONOCHRIST(エコノクライスト)、Seein' Red(シーイン・レッド)、BIKINI KILL(ビキニ・キル)、END OF THE LINE(エンド・オブ・ザ・ライン)、Amenity(アメニティー)、Man Lifting Banner(マン・リフティング・バナー)といったバンドたち。エボリューション・レコーズのXXX SOME IDEAS ARE POISONOUS(XXX・サム・アイデアズ・アー・ポイズネス)やILLITERATE COMPILATION(リトルレイト・コンピレーション)などのコンピレーションアルバムとは違い、ボーン・アゲインストやビキニ・キルなど、有名なバンドたちが参加している。

Riot Grrrl(ライオットガール)というパンクバンドのフェミニズム運動の中心人物であったビキニ・キルは、ロカビリー調のパンクナンバーで、生きていくために援助交際をしている女性の心情を歌い、男女平等やジェンダーフリーを訴えつけているサンフランシスコの女性アナーコパンク・バンドのスピットボーイは、パーティーで男性に性的嫌がらせを受けたことについて歌っている。ニューヨークハードコアの裏番長といわれるボーン・アゲインストは、容姿だけですべて判断する美女コンテストを痛烈に批判し、LOCUST(ロカスト)やRETOX(リトックス)の中心メンバーでも知られるJustin Pearson(ジャスティン・)が在籍するサンディエゴのSTRUGGLEは、マッチョイムズの男性が女性よりも優れていると錯覚し、性的虐待や差別をすると歌っている。そしてレーベルオナーでありケント率いるダウンキャストは、ゲイやレズヒアンなどの同性愛は、自己表現のひとつであり、彼らの愛の形を否定すれば、自分たちが愛を知らない人間だと訴えている。どのバンドもジェンダーフリーに対する見解や感情論、主張も異なるが、性差別に対して解消する必要があるという部分では共通しているのだ。

当時、激情コアの始祖的な存在のバンドが収録され、音楽的にも最先端のバンドが収録されていた。ハードコアの定義のひとつに“行動を起こす”という信念がある。そういった意味では、まさしくハードコアらしいコンピであるし、ジャンダーフリーという価値観を提示した意味では、ものすごく価値のある作品なのだ。

2017/12/13

SECT (セクト)  『NO CURE FOR DEATH (ノー・キュア・フォー・デス)』

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Sect

Southern Lord 2017-11-23
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ヴィーガン・ストレートエッヂ思想を掲げるハードコアバンドの2作目。あいかわらずブレることのない信念を貫き、尋常でない怒りに満ちた熱いサウンドを展開している。

今作でも前作同様のバリバリの轟音を立てるノイズ系ハードコアを踏襲している。だが前作よりも破壊力と激しさと強度が増し、よりパワーアップしている。基本的にはミディアムテンポのハードコアと、怒涛のブラストビートのドラムに、スピーディーでパワーヴァイオレンスな曲が交互に入れ替わる展開。それにしてもものすごいギターの音圧とノイズの嵐の轟音だ。そして怒りの言葉を吐き捨てる雷のような怒声に満ちたボーカル。スローテンポな曲では、怒りの言葉が鮮明に伝わるようじっくりと聴かせ、スピーディーな曲ではギターの音圧とノイズの津波が体全体に被いかぶってくるような圧倒的な音の迫力がある。

そこにあるのは尋常でない怒り。怒りの根源にあるのは、彼らのヴィーガン・ストレートエッヂ思想に対するこだわりのせいなのかもしれない。彼らの考えるストレートエッヂ思想とは、地域性や歴史、信仰する理由によって考え方がかなり異なるものだという。ポップでおおらかな部分もあるという。それに比べヴィーガンは、人間だけが利益になることを嫌い、生物全体の生命の尊厳が守られなければいけないものだと、彼らは考えている。そのためには行動に出ることも厭わないという。そんな生命の尊厳を守らない人間に対する怒りが、この作品には尋常でなくにじみ出ているのだ。その尋常でない怒りと津波のような爆音ノイズ。どれをとっても前作以上に素晴らしい作品だ。

2017/10/23

LIFELESS(ライフレス) 『 No Love For The World (ノー・ラブ・フォー・ザ・ワールド)』

Index

No Love for the WorldNo Love for the World
Lifeless

Fwh Distribution 2011-10-20
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ニュージャージ出身のニュースクール系ハードコアの11年に発表されたデビュー作。彼らもまたアースクライシス以降のスローでグルーヴを重視したニュースクール・ハードコアから進化したバンドなのだ。サウンド的にはMERAUDER(メラウダー)やALL OUT WAR(オール・アウト・ウォー)をもっとヘヴィーに、金属質なリフとデスメタルの要素をさらにパワーアップさせたサウンドだ。

巨大なハンマーで叩き潰すような暴力的なリフ。苦痛のなかで生まれたうめき声や怨霊に近いボーカルの怒声。そこにあるのは圧倒的な音の迫力と憎悪や苦痛。バンド名のLIFELESS(ライフレス)とは、生気や覇気がない、死んだようなという意味。そのバンド名が示す通り、彼らの歌っている内容は、生きることへの苦しみや憎しみや絶望など。おおよその自己破壊的な要素が詰まっている。

アティテュードこそ真逆の位置にいたEARTH CRISIS(アース・クライシス)とメラウダーだが、外の世界に対して闘争的だった部分で共通していた。その2バンドと比べると、彼らのサウンドはあきらかに内省に根付いている。ニュースクール・ハードコアのなかでも異質なアティテュードを持った存在だったといえるだろう。その憎悪と苦痛に彩られた迫力あるサウンドは、彼らにしかない魅力が詰まっている。

2017/10/11

Free (フリー) 『Ex Tenebris (EX・テネバリス)』

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Warner Proper 2017-06-15
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マサチューセッツ州はボストン出身のハードコアバンドのデビューEP。まさにハードコアのなかのハードコアといえるサウンドで、ハードコア・パンクよりのアグレッシヴで攻撃的なサウンドが魅力のバンドだ。

ほとんどが解散したHave Heart(ハヴ・ハート)からの移行組で、在籍メンバーの経歴はGive(ギヴ), Mindset(マインドセット), NYC Headhunters(NYCヘッドハンターズ), Sweet Jesus(スウィート・ジーザス)など、東海岸を代表するハードコア・シーンの第一線で活躍。とくにHave Heartは、ストレートエッヂで、自分が正しいと思ったことを行動しろと、自らのパンク思想をライブに来る観客に向かって訴え続けている熱いバンドだった。FreeもHave Heartのアティテュードを踏襲し、自分たちができる正しい行動とは?とか、無駄と分かっていてもそれでも立ち向かっていく姿勢など、意識改革や問題提起を投げかけている。

パーカー姿に怒声のボーカル、シンガロング・スタイルからは、同郷のBANE(ベイン)からの影響を多大に感じる。サウンドは前身のバンドHave Heartのテクニカルな部分やクリーンな録音を徹底的に排除し、勢いと怒りという衝動で、体力と精神力のすべてを振り絞り突き抜けていく。Have Heartをより破壊的によりノイジーにパワーアップしたサウンドなのだ。

破壊音のようにブンブンうねるベース。土石流のような勢いで迫ってくるギター。天を衝く怒りのようなボーカル。体中の気合を集め全身全霊を注ぐ攻撃的なサウンドからは、立ち向かっていく気迫と勇気に満ちている。弱さは微塵も感じない熱いサウンド。ゆるぎない信念と熱い魂を持ったハードコアバンドなのだ。

2017/10/02

Brun (バーン)  『 Do or Die (ドゥ・オア・ダイ)』

Do Or DieDo Or Die
Burn

Deathwish Inc 2017-09-07
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89年から活動し、ニューヨーク・ニュースクール・ハードコア・シーンを代表するバンドのひとつでもあるBrun(バーン)の初のフルアルバム。28年の活動のなかで、いままで4枚のEPを発表しているが、フルアルバムは初めてである。昨年発表された『From The Ashes(フロム・ザ・アッシュズ)』で、手ごたえと演りたい音楽性が固まったのか、1年という短いスパンで今作は発表されている。

前作『From The Ashes(フロム・ザ・アッシュズ)』は、ピップホップなリズムとボーカルの韻に、Rage Against the Machine(レイジアゲインストザ・マシーン)のような扇情的なギターが、怒りや苛立ちを刻んでいくようなサウンドだった。今作でもそのサウンド路線は踏襲され、さらに突き詰めている。

The Dillinger Escape Plan (デリンジャー・エスケープ・プラン)のような目まぐるしく変わる展開に、HELMET(ヘルメット)のトリッキーで変則的なリズムのギターのリフ、オールドスクールなスピーディーなハードコアに呪術的なコーラスを取り入れた意外性、スローテンポから突如加速していくドラム、エフェクターの歪みを利かせたギターなどの要素を、溶鉱炉にぶち込み、金属質に固く重く鋳造した。怒りをたたきつけるようなヒップホップのリズムと、多彩なギターアレンジのリフが印象的なサウンドだが、そこには不安や苛立ち怒りといった感情が漂っている。まるでニューヨークの路地裏のスラムな想起させる薄汚れた匂いだ。

90年代の忘れ去られた古きよきものを現在によみがえらせブラッシュアップしたサウンドで、ハードコア特有のテンションの高さやストレスを発散させるような爽快感はない。だがグルーヴとニューヨークの危険な匂いと雑多性という空気感を閉じ込めたサウンドで、アティテュードはまぎれもなくハードコアだ。

2017/09/19

Forced Order (フォース・オーダー) 『One Last Prayer (ワン・ラスト・プレイヤー)』

One Last Prayer
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Triple B. Records 2017-09-22
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TWITCHING TONGUES (トゥイッチング・タングス)、HARNESS (ハーネス)、DISGRACE (ディスグレイス)などの、現在を代表するカルフォルニア・ハードコア・シーンの豪華メンバーからなるバンドの2作目。前作『VANISHED CRUSADE (バニッシュド・クルセイド)』は、IN COLD BLOOD(イン・コウルド・ブラッド)系の硬質でメタリックなギターとスピーディーなハードコア路線に、勢いと迫力がさらに増したサウンドを展開していた。

基本的なサウンド路線は今作も変わらない。だが前作よりも迫力が増している。とくに変化が顕著なのは、ニュースクール・ハードコア的なアプローチと、メタルなギターソロが増えた部分。ここでいうニュースクールの要素とは、スローテンポなリズムとヒップホップな歌い方。その要素が加わったことによって、曲のバラエティーが増えた。これほどスピーディーなハードコアを展開しているバンドがニュースクール的なアプローチを加えると、曲がばらばらになり、大抵が音のまとまりがなくなる。だが彼らの場合、ニュースクールを一部分として取り入れ、終始アグレッシヴな闘争心と熱気で統一されているから、一貫性のあるサウンドになっている。音楽に対する情熱もありモチベーションも高く、前作に引き続き、エネルギッシュで気迫に満ちたいい作品だ。

2017/09/10

Really Red (リアリー・レッド) 『Teaching You the Fear: the Com (ティーチング・ユー・ザ・フィア:ザ・カム) 』

Teaching You the Fear: the ComTeaching You the Fear: the Com
Really Red

Alternative Tentacle 2015-01-19
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79年から85年にかけて活動したテキサス州出身のハードコア・バンドの全作品を総まとめし2015年に発売されたコンプリート・アルバム。彼らはアメリカン・ハードコアのなかでも、BIG BOYS(ビック・ボーイズ)やDICKS(ディックス)、MDC(ミリオンズ・オブ・デッド・コップ)などのバンドと一緒に活躍し、テキサス・シーンを代表するバンドのひとつとしても知られている。

アメリカ国内でも中部の田舎で保守的な土地柄として知られるテキサス。その保守への反動なのか、テキサス出身のバンドたちは、反体制的なアティテュードを掲げているバンドが多い。サウンドは、初期パンクをベースに、プラスアルファを加えたバンドが多い。ゴリゴリのハードコアはいないが、ユニークなアイデアにあふれたバンドたちが多く存在する。

MDCはハードコアパンクにカントリーを取り入れ、ビックボーイズはファンクのリズムを消化した。アメリカルーツミュージックのR&Bに初期パンクを折衷したディックスなど、どのバンドもいろいろな要素を取り入れ自由に実験的なサウンドを展開している。それがテキサス・シーンの特徴でもある。Really Red(リアリー・レッド)もその例にもれず、初期パンクから、ニューウェーヴを取り入れ変貌を遂げてきた。テキサスという保守的な土地柄の反動ゆえ、マイノリティーな立場でシリアスな怒りをモチベーションに掲げているバンドが多い。彼らも人種差別や飢餓、商業主義のミュージシャンへの批判など政治的なメッセージを掲げているが、どこか牧歌的なのどかさが漂っている。それがこのバンドの特徴でもあるのだ。

このアルバムは、79年のデビューEP、『Crowd Control/Corporate Settings』から、80年のEP『Modern Needs/White Lies』、81年のEP『Despise Moral Majority』、1stアルバム『Teaching You the Fear』、82年のEP『New Strings for Old Puppets』、84年の2nd『Rest in Pain』、96年にコンピレーション・アルバム『Rather See You Dead』にデモ曲を加えた2枚組CDの計44曲が収録されている。しかもALTERNATIVE TENTACLESからリリースされジェロ・ビアフラ自らマスタリングを担当している。

彼らはバリバリ響くノイズギターが印象的なパンク路線の初期から、金属的にヒステリックに響くポストパンク路線、感情が高揚していくパーカッシブなピアノとホーンが印象的なフリージャズ、プログレのようなサイケデリックなサウンドなど、パンクの制約を受けることなく、自由にいろいろなことを演っている。ポップでのどかな曲から、暗くドロドロした情念の曲、アグレッシヴで攻撃的な曲など、多重人格者を思わせるような多彩な感情の奥行がある。

サウンドの一貫性はあまり感じられないが、だからといって悪い作品ではない。自分たちの演りたい音楽を楽しんでいる姿勢が、高いクオリティーを保有している。アメリカン・ハードコア・シーン全体から見れば、異端だが素晴らしい作品であることに間違いはない。彼らが存在しなければ、Butthole Surfers(バッドフォールサファーズ)のサウンドも大きく変容していただろう。テキサスではそれほど影響力のあるバンドだったのだ。

2017/08/31

INTEGRITY (インテグリティ) 『 Howling, For The Nightmare Shall Consume (ハウイング,フォー・ザ・ナイトメア・シャル・コンセウム)』

HOWLING, FOR THE NIGHTHOWLING, FOR THE NIGHT
INTEGRITY

RELAP 2017-07-13
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アメリカ中部クリーブランド出身のハードコア・バンドの10作目となる作品。ハードコア界のなかでも彼らは特殊なアティテュードをもつバンドだ。暗黒デスメタリック・ハードコアとでも形容するべきか?悪魔崇拝やカルトなど、ダンテの新曲『地獄篇』のような世界観をもっている。そういった意味ではメタルよりのアティテュードを持ったバンドだが、サウンドはハードコア。典型的なメタルとハードコアの折衷スタイルだが、その折衷の具合が独特だ。オールドスクールなスピーディーなハードコアと怒声ボーカルを堅守しながらも、スラッシュメタルのリフからテクニカルなギターソロ、ドローン、ドゥーム、デスメタルにいたるまで、いろいろな要素を幅広く取り入れている。メタル側から見ればメタルと見えるし、ハードコア側からいえばハードコアといえる、モーターヘッドのような不思議な立ち位置にいるバンドなのだ。

今作では前作のテクニカルギター中心のサウンドをさらに突き詰め、より輪郭のはっきりとしたサウンドを展開している。それにしてもギターがすごい。鳴きまくっている。ギターメロディーの際立ったサウンドは、スラッシュメタルよりLAメタルからの影響を強く感じる。性急なスピードに怒声とブラストビートで駆け抜け、テクニカルなメロディーギターが絡むサウンドは、誰か演っていそうで誰も演っていなかった独特なサウンドを展開している。

それにしてもLAメタルのような暑苦しさはなく、むしろ冷たさを感じる。暗くひっそりとした魔界の沼地のような、背筋に恐怖を感じ、氷を引き詰められたような冷たさなのだ。LAメタルとオールドスクールなハードコアを折衷させたサウンドは、メタルコアでもクロスオーバーでもない新しい形のハードコアなのだ。

2017/08/03

DOWNCAST(ダウンキャスト) 『LP』

Downcast

激情エモ/ハードコアのルーツとされているDOWNCAST(ダウンキャスト)の91年に発表されたデビュー作にして最後となるアルバム。

彼らを語る前にますEbullition Records(エボリューション・レコーズ)から説明したい。Ebullition Recordsとは90年にRock Rock Rollのコラムニストであったkent Mcclard(ケント・マクランド)によって、カルフォルニア州ゴレタに創設されたレーベルだ。ケントは動物愛護や環境保全に力を注いでいる筋金入りのストレートエッヂで、レーベルに所属するアーティストは、ストレートエッヂでなければ、音源をリリースしないという徹底したこだわりを持っている。リリースされた作品のなかではとくにコンピレーション・アルバムが印象的で、『VA(EBULLITION)/HEARTATTACK』では、ケントがヨーロッパに出向き、ストレートエッヂ・バンドに声をかけ、コンピレーション・アルバムに参加してもらった作品だ。ヨーロッパか各地のライヴハウスを周り、ストレートエッヂを掲げるバンドをリサーチし、バンドのスタンスやポリシー、アティテュードへのこだわりを聞き、選び抜かれた14組を集め収録した作品なのだ。それほどストレートエッヂへの並みならぬこだわりと情熱をもった人物なのだ。

そのケントが唯一メンバーとして参加していたバンドがダウンキャストなのだ。彼らが発表した作品は4曲入りのEP『Downcast(7)』と10曲入りのフルアルバム『Downcast(LP)』の2作だ。EMBRACE(エムブレイス)のボーカルスタイルに、Helmet(ヘルメット)のスローデンポに重厚なリフのサウンドを合わせたスタイルだった『Downcast(7)』。そのEPと比べると、違い格段に曲のバラエティーが広がっている。今作でもEPのサウンドスタイルがベースとなっているが、リズムとともに叩きつけるようなリフや激しさと静けさのアップダウンを繰り返すギターなど、新しい要素を加えている。エモーショナル・ハードコアが激情コアへと進化し、カオティック・ハードコアへたどり着いた。極限まで過激に進化したバンドがConverge(コンヴァージ)とするなら、絶叫ボーカルやアップダウンを加えた部分で、エモーショナル・ハードコアを少しだけ前に進めたサウンドといえるだろう。

もしかしたら当時としては激しさのなかでも上位に入るサウンドだったのかもしれない。リアルタイムで聞くともっと違った印象だったのかもしれないが、だが今聞くとハードコアバンドならではの迫力や闘志、尋常でないテンションの高さは、あまり感じられない。暗闇で瞑想するようなシリアスや、修行僧のように厳しく内面を見つめ、煩悩を消し去ろうとするような精神の安定と、内省の葛藤が感じられる。ストレートエッヂならではのストイックさが感じられるのだ。

現在ダウンキャストは15年に活動を再開し、新曲をレコーディングしたとのこと。その後の活動は伝わってこない。現在復帰が一番待ち遠しいバンドなのだ。

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