プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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ハードコア

2018/07/07

Krimewatch (クライムウォッチ)

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ニューヨーク出身のハードコアバンドのデビュー作。ニューヨークのハードコアバンドといえば、MADBALL(マッドボール)やEARTH CRISIS(アース・クライシス)など、バンダナにジーパンなどのアメリカ的なファッションで、ギャング的アティテュードか、もしくはストイックなバンドたちが思い浮かぶ。だがこれらのバンドたちと比べると、彼らは一線を画したアティテュードを持っている。

日本人の女性、Ogiura Rhylliがボーカルのバンドで、そのアティテュードは、フェミニズム思想が強い攻撃的なハードコア。歌詞には、“腰抜け”、“ゴキブリ男”、“小便たれ”、“マチズモ(男性優位主義)”など、挑発的で汚い言葉が並ぶ。Lil Kim(リム・キム)、Big L(ビッグ・エル)、Nas(ナス)、Mobb Deep(モブ・ディープ)、Jay-Z(ジェイZ)、Missy Elliot(ミッシー・エリオット)などのヒップホップから影響を受けていると発言しているが、そのアティテュードは、BIKINI KILL (ビキニ・キル)などのRiot grrrl(ライオットガール・シーン)に近く、80年代の日本のハードコアバンド、THE COMES(カムズ)からの影響も多大に感じる。

そのサウンドはカムズのヒステリックで甲高いボーカルに、ユースクルーやマイナースレットなどの野太くノイジーなギターを合わせた、シンプルなハードコアパンク。ボーカルスタイルや汚い言葉を吐き捨てるリリックからはカムズの影響を多大に感じる。女性を軽んじる男性への嫌悪と怒りにあふれている。差別や見下されることに対する怒りがヒステリックで悲痛な叫びとともに巨大な塊となって襲い掛かってくる。まさにやさぐれたハードコアなのだ。

ニューヨーク・ハードコアのなかでも80年代の日本やイギリスの匂いを感じさせるクライムウォッチは異質で孤立した存在なのだ。

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2018/06/16

Illusion (イリュージョン) Demo (デモ)

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ニューヨークはブルックリン出身のハードコア・バンドのデモ。ピップホップな歌いまわしからは、MADBALL(マッドボール)からの影響を色濃く感じる。だがメタルからの影響は一切ない。独特なリズムで刻むギターのリフからユースクルーからの影響を感じるし、スピーディーでスラッシュメタルを取り入れたハードコア・サウンドからはCROMGS(クロマグス)の影響を感じる。金属質なリフを取り入れる前の、古き良きニューヨーク・ハードコアを集約したサウンドだ。

歌詞は、友情や怒りや憎しみなど、日常的なことについて。<愛だった感情が憎しみに変わる>とか、<友人の死の瞬間>といった内容からは、息詰まるような緊迫した空気を感じることができる。まるでニューヨークのスラム街にたむろするギャングのようなアティテュード。マッドボールと同くギャングや不良の匂いがするハードコアなのだ。

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2018/05/30

The Lion's Cage(ザ・ライオンズ・ケージ)  『Raw 2017(ロウ2017)』

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ニューヨークはブルックリン出身のハードコア・バンドのデビュー作。日本語でライオンの監獄と名付けられたバンド名からは、実際のところは分からないが、なにやらスラム街の閉ざされた監獄という隠語のように感じる。

彼らのアティテュードとは、MADBALL(マッド・ボール)やSheer terror(シアー・テイラー)やMERAUDER (メラウダー)などの流れをくむギャングの要素が強いハードコア。歌詞には“綱渡り”や、“運の悪さ”、“プレッシャー”など、ギャングの世界を彷彿とさせる死と隣り合わせな緊迫感に満ちた言葉が並ぶ。

緊迫感に満ちた静けさから濁流のような激しさに変わる展開からはマッドボールの影響を色濃く感じ、そこに狂ったような激しスピードと、躁病的なテンションのボーカルを加えた。

レコーディング状態が悪いためか、若干音の悪さを感じる部分が残念ではあるが、だがメタルからの影響を感じない攻撃的なハードコア・スピリットだけで突き抜けていく初期衝動には、アグレッシヴさがあるし、不良の匂いがする。まさにやさぐれたハードコアなのだ。今後が期待できる作品だ。

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2018/05/19

The Fight (ザ・ファイト) 『U.H.T.R.N.H.T.B! Promo』

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ニューヨークはロングアイランド出身のハードコア・バンドの2作目となるEP。最近のニューヨークでは珍しいスタイルのバンドで、ギャングのような不良性が多いニューヨーク・ハードコアのなか、知的でユニークで異端な存在感を放っている。

そのサウンド、80年代のUKハードコアから影響に、SHEER TERROR(シアー・テラー)のニューヨークの伝統を合わせたサウンドを展開。ノイジーなギターからは、Chaos UK (カオスUK)やDischarge (ディスチャージ)からの影響を感じ、2コードでハイスピードにゴリゴリ押していくサウンドと地獄の怨霊のようなボーカルからはシアー・テラーの影響を色濃く感じる。

ぼくがユニークに感じる理由は、そのアティテュードにある。前作ではトランプ政権への批判や反キリスト、反体制的な内容が占められていた。まさにREAGAN YOUTH(レーガン・ユース)以来の皮肉と怒りに満ちたアナーコパンクだった。

今作では環境汚染と健康被害にスポットを当てている。スモッグなどの大気汚染が病を侵し、入院すれば高額医療費を取る。まさにジョージ・オーウェルの小説のような、金持ちや支配者層のためだけに、庶民が飼いならされ、搾取されことへの怒りがそこにはある。UK初期ハードコアのようにシンプルでなつかしさが際立つ作品だ。

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2018/05/11

Trail of Lies(トレイル・オブ・ライズ) 『WAR(ウォー)』

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TRAIL OF LIES

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ニューヨークはシラキューズ出身のニュースクール・ハードコアの1stアルバム。シラキューズといえばEarth Crisis(アース・クライシス)やAnother Victim (アナザー・ヴィクティム)などのニュースクール系ヴィーガン・ハードコア・バンドを輩出した土地として有名だ。彼らもその伝統を受け継ぎ、ストレートエッジにして、巨大なハンマーを振り下ろすような金属質で重厚なギターのリフを中心としたスローでグルーヴィーなサウンドを踏襲している。サウンド的にもアティテュードもシラキューズの伝統を受け継ぎ、自分たち流にアレンジしたバンドなのだ。

とくにストレートエッジ思想をさらにストイックな求道者のように突き詰めている。この作品で語られているのは、力不足の克服や、欲望に打ち勝つ自分との闘い、困難を乗り越えた勝利のための戦いなどについて。

心の奥底からにじみ出る気合の入ったボーカルの怒声からは、精神統一し、戦いに挑む空手家のような、落ち着きと闘争心を感じ取ることができる。変化の力を促す自己啓発や、高い目標設定をしあえて困難な状況を作り乗り越えようとする高い意識。アルバムタイトルの『WAR』とは自分の権利を獲得する戦いだけでなく、弱い自分の内面との闘いでもあるのだ。

2018/04/29

T.O.S 『DEMO』

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ニューヨークはロングアイランド出身のハードコアバンドの4曲入りのデビューデモ作品。近年ハードコア界では、FORCEDORDER(フォースオーダー)やPOWERTRIP(パワートリップ)などのバンドに代表されるように、スラッシュメタルとオールドスクールなハードコアをクロスオーバーさせたサウンドが、一部トレンドになっている。

彼らもそのシーンの一翼を担うバンドだが、ほかのクロスオーバーバンドとの決定的な違いは、S.O.Bなどの日本のハードコアに色濃い影響と、ロングアイランド特有の雰囲気を保有した部分にある。骨太でメタルのようなメロディーラインのあるギターサウンド。叫びとハイトーンの中間にある咆哮ボーカル。

そのロングアイランド特有の雰囲気とは、“自分に屈する”や“殺すために行く”、“あなたは何も感じない”“魂を取る”など、シンプルな単語で簡潔な歌詞に代表される、パラノイアックな世界のことだろう。偏執的でムンクのような芸術性。それがこのバンドの個性といえるだろう。ちなみにバンド名であるT.O.SとはTaking Of Soul(魂を取る)という意味だ。

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2018/04/21

World of Difference (ワールド・オブ・ディファレンス)  『DEMO』

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ワシントンDC出身のストレート・エッジ・バンドで、元MINDSET(マインドセット)のメンバーによる新バンド。18年に発表されたでも音源。マインドセットはCHAIN OF STRENGTH(チェイン・オブ・ストレングス)やYOUTH OF TODAY(ユース・オブ・トゥディ)の影響が強いユースクルー系ハードコアだった。

新バンドでは、MINOR THREAT (マイナースレット)直系のスピーディーでタイトなハードコアを中心に、ユース・オブ・トゥディから影響を感じるストップ&ゴーや、力強く熱いOiコーラスを合わせたサウンド。

バンドが変わっても、彼らの根幹となしているアティテュードに変わりはない。今作でもストレートエッジ思想は健在。歌詞の内容は、ドラッグや酒のせいで命や友達を失う自己破滅の怖さなど。欲望を捨て自己制御し、自制や節制の大切さと説いている。人を破滅させるドラッグや酒などへの怒りと、修道士のように、欲望を捨て、真理を追究していくストイックな姿勢がこのアルバムにはある。決して目新しさのないサウンドだが、熱い気持ちにさせる作品だ。

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2018/04/06

Combust(コンバスト) 『Demo(デモ)』

Cover

ニューヨークはスタテン島を拠点としているハードコア・バンドの17年に発表された6曲入りのデモ。彼らもまたニューヨーク・ハードコアをこよなく愛し、その伝統を誇りにしているバンド。

そのサウンドは、Killing TimeやBreakdown直系の極悪ハードコア。ヒップホップの歌いまわしと、メタリックな要素は一切ないシンプルなギターが魅力のオールドスクールなハードコアだ。ニュースクール・ハードコアの先駆けとなるスローパートやOi、ヒップホップの要素を1割ほど加え、9割のベースとなるオールドスクールなハードコアに、エッセンスとして加えている。日本では極悪ハードコアと呼ばれた不良の匂いがするギャング系のサウンドだ。

彼らもまたKilling TimeやBreakdownと同様に、アウトサイダー的なスタンスで活動している。歌っている内容は、未来への不安や恐怖、パラノイアに、夢が壊れた悲惨さなど。だがそこには最悪な状況に立たされても生き残るために戦っていく闘争心、熱さがある。熱く燃え滾っているその精神がこのバンドの魅力なのだ。

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2018/03/26

TONNY RETTMAN(トニーレットマン著) 『STRAIGHT EDGE (ストレートエッジ)』

Straight Edge: A Clear-headed Hardcore Punk HistoryStraight Edge: A Clear-headed Hardcore Punk History
Tony Rettman

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ニューヨーク・ハードコアやデトロイト・ハードコア『Why Be Something That Youre Not』の著者として知られるトニーレットマンが、17年に発表したストレート・エッジ・シーン全般を紹介した本。

アメリカン・ハードコアの細分化されたジャンルのひとつとして知られるストレート・エッジ。この本では37年に渡るストレートエッジの歴史を、当事者の発言を引用する形式で執筆している。当時のシーンの裏側や、知られることのなかったエピソードや、実際の話とは異なる事実など、くまなく紹介している。

まずストレート・エッジとは、「喫煙をしない」「麻薬をやらない」「アルコールを飲まない」「快楽目的のセックスをしない」という基本理念を柱に掲げたパンク・ハードコアの思想だ。その始まりはティーンアイドル、マイナースレットのボーカルであったイアン・マッケイの発言から始まる。

この本でチャプター分けされ紹介されている内容を説明していくと、

WASTED YOUTH…ヒッピー・カルチャーやTHE BEATLES(ビートルズ)やTHE DOORS (ドアーズ)、THE ROLLING STONES (ローリング・ストーンズ)などの、60年代のロックバンドを象徴する「セックス、ドラッグ、ロックンロール」の価値観を否定するためのアンチ・テーゼとして、ストレート・エッジ思想が生まれた。

D.C.: SNEAKERS…当時10代であったIan MacKaye(イアン・マッケイ)が結成したバンド、THE TEEN IDLES(ザ・ティーン・アイドルズ)が、未成年でもライヴハウスに入る方法として未成年の手の甲にマジックでバツ印(×)印を付けることを提案。以来、手の甲のバツ印は、反アルコールと反ドラッグのシンボルとなった。

MINOR THREAT : STRAIGHT EDGE…MINOR THREAT(マイナー・スレット)が81年に発表したEP。『MINOR THREAT』のなかの“Straight Edge (ストレート・エッジ)”と、同年発表のEP『In My Eyes』のなかの“Out Of Step (アウト・オブ・ステップ)”との2曲から、ストレートエッジに対する思想やアティテュードが生まれた。歌詞の内容を説明すると、“ Straight Edge”ではと歌い、“ Out of step”ではと歌った。この歌詞によって、ストレート・エッジ思想が確立された。

BOSTON : THE KIDS WILL HAVE SAY…ボストン・ストレートエッジ・シーンについて。イアン・マッケイが単独で歌っていた内容を、ボストンでSSDやDYSなど複数のバンドが共鳴し、シーンとして確立した。ボストンではDCと違い、酒やクスリをやっているバンドを、暴力で強制的に排除するなど武闘派も多く、激しく体を動かす体育会系のようなシーンだった。

7 SECONDS : COMMITTED FOR LIFE…初期ストレートエッジからユースクルー・シーンへの橋渡しをした7 SECONDS(7セコンズ)。
OUTHERN CALIFORNIA : IN CONTROL…西海岸のストレートエッジの創始者として知られるUNIFORM CHOICE (ユニフォーム・チョイス)。

YOUTH OF TODAY : TAKE A STAND! …ストレートエッジをアメリカ全土に広めるきっかけとなったYOUTH OF TODAY(ユース・オブ・トゥディ)。7セコンズやユニフォームチョイスなど、各地で細々と活動していたストレートエッジ・バンドに連帯感を促し、ユース・クルーと呼ばれることになるシーンでまとめ上げた。ポジティヴで健全なストレートエッジとして、新しいライフスタイルを提示した。

SLAPSHOT : BACK ON THE MAP…メタル化したボストン・ハードコアに、もう一度昔のストレートエッジ・ハードコアの活気を取り戻すため、元NEGATIVE FX(ネガティヴFX)のメンバーによって結成されたSLAPSHOT(スラップショット)。

BOLD : JOIN THE FIGHT…JOGCORE(運動部コア)といわれたBOLD(ボールド)。友情、団結をテーマに、弱い自分をみつめ、勇気を振り絞り行動していくスタイルを提示。

YOUTH CREW STYLE : MORE THAN FASHION…ユース・クルーのファッションについて。

ORANGE COUNTY : WE’LL MAKE THE DIFFRENCE…オレンジカウンティ周辺の、ドギースタイルと呼ばれたストレートエッジのバンドたち。INSTEAD(インステッド)を筆頭に、ベジタリアンだったRAGE AGAINST THE MACHINE (レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン)のZack de la Rocha (ザック・デ・ロチャ)が在籍していたバンドINSIDEOUT(インサイド・アウト)。なかでもCHAIN OF STRENGTH(チェイン・オブ・ストレングス)は、カリスマ性に富み、ストレートエッジ・アンセムのひとつとして数えられている“Ture Till Death(死ぬまで事実)”という曲を発表。

JUDGE : FED UP!…ドラッグによって崩壊した家庭に育ったJUDGE(ジャッジ)。心からドラッグを憎み、闘争的なアティテュードを持っていた。ポジティヴで健全だったストレートエッジ・シーンを暴力化し、全体主義化していった。

VEGETARIANISM : NO MORE…ユース・オブ・トゥディのRay Cappo (レイ・キャポ)がクリシュリナ教に改宗したことや、イアン・マッケイがベジタリアンであったこともあって、ストレート・エッジに菜食主義的な考えが加わった。ベジタリアンに辟易してストレート・エッジを辞めていく人もいた。

NO ONE CAN BE THAT DUMB : THE U.K.&EUROPE…オランダ出身でヨーロッパ初のストレート・エッジ・バンド、Larmについて。

HARDLINE : THE WAY IT IS…HARDLINE(ハードライン)というコミュニティーを作り、ストレートエッジをヴィーガン・ストレート・エッジにストイックに推し進めたVEGAN REICH(ヴィーガン・リッチ)とRAID(レイド)。

DESPERATE STATE : UMEA STRAIGHT EDGE…REFUSED(リフューズド)を中心としたスウェーデンのストレート・エッジ・シーン。

EARTH CRISIS : A FIRESTORM TO PURIFY…ヴィーガン・ストレートエッジ思想を全世界に普及させたEARTH CRISIS(アースクライシス)。メタルエッジのサウンドに、ヴィーガン・ストレートエッジ思想を載せたサウンドは画期的だった。アニマルライツ(動物権利)の歌詞と、コンピレーションの売り上げをシーシェパードなどに支援するなど、具体的に行動に出るバンドでも有名だった。

SALT LAKE CITY:IDENTITY CRISIS…97年にユタ州ソルトレークシティーでストレート・エッジを名乗る集団が酒屋やドラッグストアなどを襲撃した事件。日本で例えるならチーマーのような暴力行為を行う存在として、ストレートエッジがアメリカ全土に認識された。

YOUTH CREW REVIVAL : DO YOU REMEMBER HARDCORE ? …IN MY EYES(イン・マイ・アイズ)やBANE(ベイン)、TEN YARD FIGHT(テン・ヤード・ファイト)などのボストンのバンドたちによるユースクルー・リバイバル。80年代のユースクルー・サウンドをベースに90年代風にブラッシュアップさせたサウンドを提示。

EAST COAST 2000 : THE UNBREAKABLE… THE FIRST STEP(ザ・ファースト・ステップ)やDOWN TO NOTHING(ダウン・トゥ・ナッシング)、HAVE HEART(ハヴ・ハード)など、新世代のバンドたちによるユース・クルー・リバイバル。前者とは違い、メロディックな要素を加え、家族のきずなや友情を歌った健やかで健全なストレートエッジ。メジャーリーガーのピッチャーであるChristopher John Wilson(CJウィルソン)が、ストレートエッジであることを表明。プロレスラーのCMパンクもストレートエッジ・ソサエティーを作った。アンダーグランドなものであったストレートエッジが、一躍メインストリーム化した。

THE VALUE’S HERE : ASIA AND THE WORLD’S EDGE…日本と韓国のストレートエッジ・バンドについて。

BACK TO DC : BUILDING TOMORROW…約30年ぶりにワシントンDCで誕生したストレートエッジ・バンド、MINDSET(マインドセット)について。D.I.Yでベジタリアン。自分たちでツアーをブッキングし、Tシャツを作り、フェアトレードを無視し、庶民から搾取する大企業の靴は履かないという姿勢を貫いている。

と、以上のようにストレート・エッジ史の重大な出来事は、ほとんどすべて網羅している。イアン・マッケイの何気ない一言で始まったストレートエッジも、ベジタリアンから、アニマルライツ、天然由来の穀物しか食べないヴィーガンまでと、30年という時間を経るなかで、時には過激に、拡大解釈が進んだ。とくにソルトレークシティーでの事件は、正しいと信じて行動したものが、社会的な悪へと転換する格好の事例だったし、シーシェパードのような拳銃で発砲し船を沈没させる行為は、もはやテロとかわらないだろう。何にしても行き過ぎはよくないのだ。

いままで個人的にストレートエッジを遵守するひとは、長生きをするための健康志向なのか、それとも不良のすることを嫌う真面目な人間という捉えかたをしていた。だがこの本で酒やドラッグのせいで家族が崩壊し、心の底から酒とドラッグを憎んでいるストレート・エッジバンドもいる事実を知り、あらためて日本とは違うアメリカ社会の闇を考えさせられた。ユースクルーという一過性のムーブメントが過ぎ去り、ストレートエッジを辞めていくバンドが意外にも多いことや、酒やクスリまで手を出すニセ・エッジ・バンドもいることにびっくりさせられた。定義がはっきりしている思想だけに、その考えを10年、20年のその遵守するのは困難だといえるだろう。それほど人は弱い生き物なのだ。

個人的にこの本で一番面白かった部分は、日本であまり知られていないバンドでも、それぞれに異なるバックボーンや物語を持っているということ。その背景やバンドでなにを伝えたいのか、どんなサウンドを表現したいのかなどの細かいディティールを知ることによって、いままでとは違った音楽のように聴こえる。そのへんが○○に影響を受けてバンドを始め、二番煎じ、フォロアー的な意味合いが多かったメロディック・パンクやエモなどのシーンとの違いなのだ。

ストレート・エッジとは精神性を主とする考えなので、サウンド的な特徴が捉えづらいシーンでもある。だが映画『ザ・コープ』やシーシェパード、ベジタリアンなど、日本人に対して間接的ではあるが、広く知られている思想も珍しいといえるだろう。個人的にはEbullition Records(エボリューション・レコーズ)について、もっと紹介して欲しかったことが不満だが、ストレートエッジのいろいろな部分が知れ、個人的に楽しめた。ものすごく価値のある本なのだ。

2018/01/24

REAGAN YOUTH( レーガン・ユース) 『COMPLETE YOUTH ANTHEMS FOR THE NEW ORDER 』

The Complete Youth Anthems forThe Complete Youth Anthems for
Reagan Youth

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80年から90年にかけてニューヨークで活動していたアナーコパンク・バンドの16年に発表された全作品を網羅したコンプリート盤。ここに収録されている作品は、83年と84年に発表された作品をまとめた『Volume1』と解散することが決まったあとに録音された『Volume2』の両作品をまとめたCDが一枚、98年に発表されたライヴ盤『Live&Rare』と、84年にレコーディングされた未発表の7インチEPが2枚、CDと7インチレコードを合わせた計4枚、全69曲が収録されている。そこにブックレットと缶バッチが付いた内容だ。

ニューヨーク出身の彼らだが、その存在は異彩を放っていた。アルバムジャケットのKKKの儀式とナチスに忠誠を誓うヒットラーの写真には、逆説的で皮肉な意味が込められていた。一見保守色の強い政治思想に思えるが、実際には反人種主義、社会主義、アナーキズムな思想を掲げていた。彼らはロナルド・レーガンの政策が、キリスト教の権威とアメリカ保守主義、レイシストたちと共通していること自らの持論を述べ、メインテーマとして取り上げていた。彼らの名曲である“Reagan Youth(レーガン・ユース)”では、私はレーガンという一人称で始まり、平和のために異教徒や共産主義を殺すと恫喝し、レーガンの野望と政治政策の恐ろしさを歌っている。彼らがDead Kennedys (デッドケネディーズ)ほど話題にならなかった理由は、ある種のユーモアや冷笑、嘲笑といった要素がなかったからだ。モノトーンの不気味なジャケットからはクラスの影響が強く、まさにクラスのアメリカ版というバンドだった。それとぱっと見右寄りの思想に思える分かりづらい皮肉に満ちたアティテュードを持っていた。個人的にはややインパクトに欠けたその2点が、彼らがそれほど話題にならなかった理由に思える。

肝心の内容だが、レコーディング曲が収録された『Volume1』では、スピーディーなハードコアな曲から、多彩なメロディーフレーズが特徴的なパンクまで、じつに色々な要素を感じる。とくにクラスやダムドからの影響を色濃く感じ、そこに多彩なメロディーフレーズやスピーディーなハードコアなどをちりばめている。そしてライヴ盤である『Live&Rare』は、勢いや迫力を重視している。とくに面白いのが“レーガン・ユース”という曲。メロディーフレーズが印象的な曲だが、メロディックな要素が一切ない。バリバリと音が割れるノイズギターやブンブンうねるベースの重低音を中心に勢いと迫力のあるライヴを展開している。自らが抱える怒りをリズムに刻み、扇動し過激な方向に周囲を煽っていくライヴには、ロナルド・レーガンと共和党を徹底的に嫌い、戦っている姿が生々しく映しだされている。アルバムとはまた違った魅力のある素晴らしいライヴ作品なのだ。

そんな彼らの活動もレーガンが辞任した89年からモチベーションが下がり、90年に解散する。そして93年にはボーカルのDave Rubinstein (デイヴ・ルビンスタイン)が自殺し、永遠に復活することがないと思われた。だが16年後の06年に、もうひとりの中心メンバーであるギターのPaul Bakija(ポール・ベイキア)を中心に活動を再開する。現在も彼らのモチベーションは失われていない。あまり話題にならないバンドだったが隠れた名盤といえる作品だ。


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