プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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ポストハードコア

2016/12/13

Vanishing Life (ヴァニシング・ライフ) 『Surveillance サーヴェイランス』

サーヴェイランスサーヴェイランス
ヴァニシング・ライフ

Hostess Entertainment 2016-12-21
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元ゴリラビスケッツのウォルター・シュレイフェルズ(Vo)、ライズ・アゲインストのザック・ブレア(Gt)、AND YOU WILL KNOW US BY THE TRAIL OF DEAD(アンド・ユー・ウィル・ノウ・アス・バイ・ザ・トレイル・オブ・デッド)のオートリー・フルブライト(ba)、バッド・レリジョンのジェイミー・ミラー(Dr)ら、アメリカパンク界のスパースターたちにより結成されたバンドのデビュー作。

そもそもこのバンドが結成された経緯は、ベースのオートリー・フルブライトがウォルターに声をかけたことがきっかけだそうだ。ウォルターは当初、オートリーが声をかけてれたが、何も起こらないと思っていたらしい。そしたらある日、ジェミーとオートリーがデモを作ってウォルターに送ってきたそうだ。坂を転げるように瞬く間にバンドが進展していったそうだ。

そんな経緯があるせいなのか、このバンドに関してウォルターは、サウンドのことに対してはほとんどノータッチで、すべてジェミーとオートリーとザックに任せている。もっぱらボーカルに専念しているそうだ。

ウォルターとしてはいままでバンドを組んだ人たちは、ほぼレベシューション・レコーズと関係した人たちだった。ニューヨーク・ハードコアのコミュニーティーに何が知ら関わっていた人たちとしてしか、バンドを組んだ経験がなかったそうだ。それが今回初めて、西海岸の人たちやメロコア、オルタナなどの違うジャンルの人たちとバンドを結成したそうだ。ウォルターにとって何もかも新しいチャレンジだったそうだ。

肝心のそのサウンドは、2コード2フレーズを繰り返していくエクスペリメンタルなポスト・ハードコア。煽情的な2コード2フレーズを、同じ調子、同じ勢い、同じ感情で突き抜けていく。ギターアレンジにこだわったサウンドで、ところどころにアンド・ユー・ウィル・ノウ・アス・バイ・ザ・トレイル・オブ・デッドぽさを感じることができる。だがライズ・アゲインストっぽさは全く感じられない。8曲目の“Image(イメージ)”などからはクイックサンドのようなギターを感じるし、聴けば一発でウォルターのギターだと分かるようなサウンドの曲もある。

サウンドに対しては全く関知していないというが、ところどころにウォルターのギターの個性を感じるのは、ぼくだけなのか?個人的にはこのバンドもまたウォルターの趣味が大爆発した作品といえる。

決してそれが悪いわけではない。むしろぼくはウォルターらしさを感じるからこそ、この作品がとても好きだ。その理由はシンプルな2フレーズ2コードを執拗に繰り返すことによって、むしろ混乱した内面世界のような複雑さが生まれているからだ。まるで印象派の画家の絵のように光の部分がはっきり目立つから余計に影の部分が際立ってくる。サイケデリックでありながら攻撃的で煽情的な気分を煽り立てるサウンドなのだ。サウンドの姿勢が攻撃的なパンクだし、とてもカッコいい音だ。個人的には今年はベスト10に入るほど好きな作品。

2016/08/09

letlive.(レットライブ)  『If I'm The Devil... (イフ・アイム・ザ・デビル)』

IF I'M THE DEVILIF I'M THE DEVIL
LETLIVE

EPITA 2016-06-09
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おそらく現在のへヴィー系音楽の最前線にいるのは、彼らだろう。メタリカなどのスラッシュメタルから、パンテラのパワーメタル、リンプビズキッとなどのニューメタルとシーンが変遷し、そして現在、スリップノットやイン・フレイムなどのメロデス・デスコアが音楽シーンの中心いる。どのバンドもスリップノットやイン・フレイムの影響下から抜け切れず、デス声を中心に据えた音楽を展開している昨今、彼らは主流派とは全く異なるアプローチで、新しい形のへヴィネスを提示している。

とくに前作『ザ・ブラッケスト・ビューティフル』は、コンガのリズムをヘヴィネスサウンドに取り入れ、新しいスタイルのへヴィーロックを展開していた。トライバルなリズムが闘争心を掻き立て、性急なスピード感が苛立ちといった感情を煽っていく。そして怒りの感情をマックスまでに振り切った、ボーカルのシャウト。そこには理性のかけらもない本能だけで動く暴力衝動がある。理性を失った究極の躁病的なサウンドだったのだ。

そんな激しかった前作と比べると、今作では静かさや穏やかさなどの、鬱な感情を追求している。今作でもア・トライブ・コールド・クエストやカニエ・ウエストなどのヒップ・ホップから、ニューロマンティックやゴズ、ヨーロッパのクラッシク調のメロディーなど、いろいろな要素をハードコアに取り込んでいる。いろいろな要素を取り込む無国籍で雑多なハードコアという姿勢は変わらないが、そのなかでもとくに目立つのがスローテンポのバラード曲の多さ。スピーディーな躁から、スローテンポな鬱へと180度異なるアプローチのサウンドを展開している。

ここにあるのは叙情的で、繊細さと妖艶な美しさのある穏やかなメロディー。繊細さの奥にデリケートな神経質さを感じる。メロディックになったといっても、けっしてポップで大衆受けするノー天気な明るさを追求しているわけではない。今作もパンクな姿勢はブレることなく一途に貫かれている。とくに3曲目の“グッド・モーニング・アメリカ”は、白人警察から不当に暴力を受ける黒人や、マルクスとゲバラの理想論を掲げ、貧困からの脱却など、差別と虐待を受けている弱者の気持ちを代弁している。そこには迫害されている者たちの悲惨な苦しみの感情が、切実なほどひしひしと伝わってくるのだ。

レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンから受け継ぐ、政治的なメッセージは今作でも健在なのだ。サウンドが変わったからといっても、反逆のパンクバンドでいることに変わりはない。今作もまぎれもなくパンクロックの最前線にある作品なのだ。

2015/10/02

Heroin (ヘロイン)


HeroinHeroin
Heroin

Gravity Records 1997-01-24
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89年から93年にかけて活動していたヘロインの、97年に発表したすべての作品を網羅したディスコグラフィー的な作品。その内容は、91年に発表された7インチ・シングル『オール・アバウト・ヘロイン7』から6曲。92年に発表された7インチ『ヘロイン』から4曲。93年に発表された12インチ・シングル『ヘロイン』から6曲に、3曲プラスされた、計19曲が収録されている。

 ぼくが彼らの存在を知ったのは、アップルシード・キャストのインタビューでの発言だ。エモの先駆者である彼らが影響を受けたバンドとして挙げていたのが、ライツ・オブ・スプリング、ヘロイン、ジュリアといったバンドたちだ。そのとき以来個人的に、ヘロインというバンドのことがずっと気になっていたが、日本の雑誌では彼らのことを紹介されることがまったくなく、つねに無視し続けられてきた存在だったのだ。このたび彼らのCDを入手したので、レビューを書くことにした。

 とうやらヘロインというバンドは、アメリカではスクリーモの先駆者として語られているようだ。エモーショナル・ハードコアというジャンルが、エムブレイスやライツ・オブ・スプリングなどによって産声を上げたころ、そのバンドたちやオールド・スクール・ハードコアを聴いた育ったヘロインのメンバーたちは、ライツ・オブ・スプリングのサウンドスタイルをさらに推し進めた。熱く叫ぶボーカルは、しゅうし絶叫するスタイルへと進化し、センチなメロディック・ギターはなくなり、分厚くノイジーでカオティックに変化した。

 このアルバムで展開されているサウンドは、終始絶叫するスタイルのボーカルと、分厚くノイジーなギターサウンドだ。ギタースタイルはハードコアをベースにしているが、ところどころにメロディー・パートが加わっている。そして高速スピードのドラミングによって、分厚いギターとメロディー。絶叫ボーカルという個々に際立つ要素が歪な不協和音を生み、全体の印象をカオティックなものにしている。そのあたりが終始ハイテンションで闘争的なハードコアとは違うし、静と激のコントラストがあるエモーショナル・ハードコアとも違う。精神状態がめちゃくちゃで、マッドなカオティックを生んでいるのだ。

 その絶叫するボーカル・スタイルから、スクリーモの先駆者として語られることになった。だが実際に一部の例外を除いたスクリーモと呼ばれているジャンルのバンドたちは、メタルやハードロックからの影響が強い。メタルやハードロックのメロディーパートにハードコアのコントラストがあるバンドたちが、スクリーモと呼べるだろう。そういった意味で、ヘロインはスクリーモからかけ離れている。いうならエモーショナル・ハードコアとカオティック・ハードコアの間をつなぐ存在が彼らとは言えるのではないか。エモーショナル・ハードコアよりも過激なサウンドで、カオティック・ハードコアよりも混沌とはしていない。それがヘロインのサウンドなのだ。

 おそらく彼らの存在がなければ、コンヴァージもデリンジャー・エスケープ・プランも存在しなかったのではないか。日本ではそれほど評価されていないが、エモーショナル・ハードコアとカオティック・ハードコアの間をつなぐ上で、重要なバンドだったのだ。

2015/07/13

Refused (リフューズド)   『Freedom (フリーダム)』


FreedomFreedom
Refused

Epitaph 2015-06-29
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 15年7月に発売されたじつに17年ぶりとなる作品。2012年の再結成からワールドツアーを重ねて、よほどの手ごたえを感じたのだろう。一回限定の再結成ツアーが、アルバム発売までいたったのだから。あくまでも憶測だが、おそらく今作を発表した理由は、彼らの人気がスウェーデンだけに留まらず、全世界へと広がっていることに気付いたからではないか。日本でもそうだが、いままでおそらくアメリカでも伝説のバンドという、扱いだったのではないか。アメリカの大手インディーズメーカー、エピタフからの発売も手伝って、前作『シェイプ・オブ・パンク・トゥ・カム』は、それほど絶大なインパクトを残し、全世界へと普及した作品であったのだ。その実験的なサウンドは、安易な商業主義的な音楽とは一線を画し、一部の金持ちだけが暴利をむさぼる資本主義的な体制を徹底的に批判していた。たとえ周囲に評価されなくても、自分たちにしかありえないオリジナルティーを追求し、演りたいことを貫く。その実験性と攻撃的な闘争心にあふれたサウンドで、妥協を許さない信念に満ちたハードコア精神を貫いていた。その姿勢が神格化された要因だろう。

 あれから17年の歳月が経ち、発売された今作は、前作の切り貼りしたフレーズがめまぐるしくクルクル入れ替わるカオティックなサウンド・フォーマットを踏襲している。だが、別のアプローチから進化させているため、前作とはまったく異なるサウンドを展開している。とくに70年代のエレクトロ・ファンクのリズムや80年代のLAメタルやスラッシュメタルなどのフレーズが目立つ。“ドーキンス・キリスト”は甘く魅惑的な女性のボーカルの声で始まるが、全体の骨格を担っているスラッシュメタルのリフが、地獄の黙示録のような雰囲気を作っている。“オールド・フレンズ/ニュー・ウォー”は、エレクトロ・ファンクという現代的な音楽に、12モンキーズのドラッギーな要素を組み合わせ、現代風にアレンジしているが、リズムがファンクだけにどこか古さを感じる。“ウォー・オン・ザ・パレス”はホーンや土臭いバーボンロックのようなギターフレーズが、ゴージャスなロックサウンドをイメージさせる。総じてこのアルバムから感じる雰囲気は、豹柄の服と革パンをはいた、キャバレーや派手なネオン管のサインと結びついた80年代末のアメリカロックのようなゴージャスで派手で淫靡な雰囲気。あるのは80年代の古いものを蘇らせたノスタルジー。ここには、前作のよさであった、道なき道を切り開いていくようなフロンティアスピリッツや、まだ誰もなしとげていない未知なるサウンドに挑戦していく気迫がない。いまの時代性の音楽を自分たちのサウンドに取り入れたり、前作を超える作品を作ろうとする気概や、ハードコアをさらに進化させようとする意思なども感じられない。

 個人的な見解だが、おそらく本人たちもあまりにも神格化されすぎた前作を超える作品を作ることは不可能だと理解していたのだろう。だから、過去に発表したサウンドとは180°異なるジャンルの作品を発表するKYなアメリカアーティストのような自由さで、今回の現代のトレンドや過去の自分たちのサウンドを無視した作品を作ったのではないか。まさにタイトルどおり自由にやっている。まるで伝説と化した過去の評価を、自分たちで壊し、再構築している作品だ。そういった意味では、彼らのパンク精神は失われていないのだ。


2015/07/04

Refused (リフューズド)   『Shape of Punk to Come (シェイプ・オブ・パンク・トゥ・カム)』

Shape of Punk to ComeShape of Punk to Come
Refused

Burning He 2010-06-06
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 98年発表の3作目。これがラストアルバムとなる作品。このアルバムを発表後、彼らは解散を発表する。解散を決意したバンドの作品というのは、たいてい目指していたサウンドの方向性が臨界点を超えたため、いささか倦怠的なムードの漂っていることが多い。だがここには弛んだところは一切ないし、覇気もいささかも衰えていない。倦怠期を迎えたバンドの作品とは思えない、クオリティーの高い出来に仕上がっている。

 おそらくハードコア・バンドとしてのリフューズドは、前作が最高傑作だったのだろう。今作ではハードコアの荒々しいギターが減少している。だがらといってけっして悪い作品ではない。なぜなら前作で確立したボーン・アゲインストのカオティックな要素と、フガジの実験性あふれるフレーズを切り貼りしたサウンドを、さらに推し進めているから、確実に進化を遂げている。彼らの目指していたサウンドスタイルが完成したのは、今作といえるだろう。アルバム名はサックス奏者、オーネット・コールマンが59年に発表し、フリージャズという前衛的なサウンドを確立した作品『ザ・シェイプ・オブ・ジャズ・トゥ・カム』からをもじり、『シェイプ・オブ・パンク・トゥ・カム』と名付けた。そのアルバム名からは、前衛的なパンク・サウンドを確立したという自負と表明を感じることができる。

 前作でベースとなっていた荒々しいハードコアのギターサウンドこそ減少したが、車の音やインダストリアルな工場の音のSEや、フリージャズ、アコースティック、スカ、ノイズ、デジタルのフレーズが、カオティックにめまぐるしく入れ替わるサウンドを展開している。

 これだけいろいろな要素を詰め込むと音の整合性が難しく、消化不良に終わるケースも多々ある。だがこの作品がすばらしいのは、一つ一つのフレーズのかっこよさにある。ここで使われているフレーズは、美しいメロディーとは一線を画したどれもマイナーな音ばかり。たとえば“ニュー・ノイズ”では、時限爆弾のタイマーが刻々と時間を刻むような緊迫感を孕んだフレーズで、“リベラシオン・フィクンシー”では、壊れたラジオのノイズ音とスカのフレーズが静かに闘争心を煽る展開だ。どのフレーズも鋭利に尖りカッコいい音だ。フリージャズのパンク版とでもいうような前衛的なサウンドに、絶叫するボーカルや、緊迫感をはらんだ熱く魂をたぎらせるようなハードコアの衝動で、アルバム全体を統一している。激しい闘争心を感じるハードコアスピリッツと、前衛的な新しいサウンドを確立していく熱意が、奇跡的なグルーヴを生んだ。すばらしい作品なのだ。

 この後、彼らは解散をするわけだが、おそらく決意した理由は、この作品で彼らが目指していたサウンドが完成し、バンドとして演りたいことをやりつくしたからではないか。ここでは、燃え尽きる前の激しい火花が散る瞬間をアルバムに閉じ込めている。まさに奇跡的な瞬間を収めたアルバムでもあるのだ。

 なお10年に発売された2CD+DVDの3枚組みでは、ライヴCDと06年に発売されたDVD『リフューズド・アー・ファッキング・デッド』が収録されている。

2015/05/30

Refused (リフューズド)   『Ep Compilation (EP・コンピレーション)』


Ep CompilationEp Compilation
Refused

Burning Heart 2004-05-24
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 97年に発表されたEP・コンピレーション。02年に再リリースという形でアメリカのエピタフ・レコーズから全世界盤が発売された。97年と02年盤では収録されている曲数が違う。世界普及された02年盤のほうが、曲数が少ない。その理由はとくにカヴァー曲で著作権の承諾が取れなかったそうだ。97年盤のほうを入手できなかったので、ここでは02年盤のほうを紹介したい。

 アルバムは年代が新しい順に収録され、1から4は98年に発表されたEP『ザ・ニュー・ノイズ・ジオロジー』から全曲収録。5から9は96年に発表された『ラザー・ビー・デッド』から全曲。10から16は95年に発表された『エヴィリラスティング』から全曲収録され、計16曲が収録されている。

 『ザ・ニュー・ノイズ・ジオロジー』は、98年の3作目のアルバム『ザ・シェイプ・オブ・パンク・トゥ・カム』のなかに収録されている“ニューノイズ”のシングルカットといえる内容で、そこに未発表曲が2曲収録されている形だ。このシングルは『ザ・シェイプ・オブ・パンク・トゥ・カム』とは違い、まだハードコアの残滓が残っている。とくにアルバム未収録曲である“2”は、エモのようなアップダウンを取り入れハードコアの新しい形を追求し、執拗に繰り返す重厚なギターフレーズにデジタルとプログレ的な要素を取り入れた“3”は“2とは異なるアプローチでハードコアの新しい形を追求している。

 そして『ラザー・ビー・デッド』は、これも『ソング・トゥ・ファン・ザ・フレイム・ディスコンテスト』のなかに収録されている“ラザー・ビー・デッド”のシングルカットといえる内容で、自由で遊び心にあふれた曲が多い。“6”では、スウェーデン語で歌い、いままでと違った滑らかさがある。“8”はクイックサンドのようなギターラインで、アルバムでは収録されていない実験的なタイプの曲だ。そして“9”も、ギターフレーズのみのイントロという実験的な要素をたくさん盛り込んでいる。

 最後の『エヴィリラスティング』は、デビュー作の『ディス・ジャスト・マイト・ビー・ザ・トゥルース』同様、まだ自分たちのスタイルを模索している段階で、先駆者の影響から抜けきれていない。 “11”は歌い方こそニュー・スクール・ハードコアそのものだが、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの“フリーダム”のように、ラストが急にスピードが上がりなだれ込むような展開で、“13”ではヘルメットのような重厚で金属的なリフに、ブラストビートのような、なだれ込むようなスピードを合わせた曲だ。全体的にスローテンポから急スピードに変わる曲が多く、ボーカルはニュースクール・ハードコアのような歌い方で、とくにヘルメットメタリックなギターからの影響が強い。このEPでは、まだリフューズドのスタイルが確立されていないのが理解できるし、ここで提示したニュースクール・ハードコアにプラスアルファーを加えたサウンドは、この先この路線を追及せず、捨ててしまった要素が強いのだ。そういった意味ではレアなサウンドといえるだろう。

 この3枚のEPを通じて共通していることは、太く荒々しいギター・サウンドをベースにしながらも、そこにプラスアルファを加え、ハードコアをつねに変化させている部分だ。たしかに失敗と捉えてこの先サウンド路線を追及するのを辞めた方向性の曲もあるが、全般的にアルバム・コンセプトという制約のない分、プログレなどを取り入れたり、スウェーデン語で歌ったりと、自由で遊び心あふれた実験なものを提示している。アルバムにないタイプの曲が多く、彼らのレアな一面が見られる作品だ。

2015/05/22

Refused (リフューズド)   『Demo Compilation (デモ・コンピレーション)』


Demo CompilationDemo Compilation
Refused

Epitaph Import 1997-09-14
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 97年に発売されたデモ・コンピレーション。リフューズドが結成して間もない初期のころのデモを収録した作品。その内訳は、1曲目から8曲目は、92年に初レコーディングされた『ファースト・デモ』と名付けられたEPからで、全曲収録。9曲目から15曲目は、92年にレコーディングされ発売された2作目のEP『セカンド・デモ』から、全曲収録。16曲目から21曲目までは未発表曲で、計21曲が収録されている。

 『ファースト・デモ』は、2ビートのスピーディーなハードコアな作品で、スウェーデンハードコアのレジェンドであるモブ47のゴリゴリの2ビート、2コードサウンドや、アグノスティック・フロントばりのギターソロなど、彼らが影響されてきたものを色濃く感じる。バンドを始めたころにありがちな、自分たちのサウンドのベースを固めることに必死で、先駆者の影響から抜けきれておらず、オリジナルティーを確立するにいたっていない作品といえるし、とくに途中で音のボリュームが大きくなるなどマスタリングの状態も悪い。まさにデモをそのまま収録している。

 そして『セカンド・デモ』は、演奏技術が前作よりもさらに向上している。とくにギターは音の厚みは増し、ヘヴィーに重く仕上がっている。前作の2コードと3コードのハードコアだけでなく、ユース・オブ・トゥデイのようなザクザク刻むリフや変則的なリズムなどのプラスアルファーな要素を取り入れている。緩やかであるが成長に進化を遂げていることを感じる作品だ。

 確かに両デモとも演奏技術的が未熟であることは間違いない。だが、この作品の魅力はリフューズドのツールがスウェーデンの伝統に沿って出てきたということと、ハードコア以外のバンドで影響を受けたのが誰であるかが理解できるという、その2点に尽きるだろう。とくに面白いのがハードコア以外の影響の部分だ。今作では、AC/DCやモトリークルー、ビスティー・ボーイズなどをカヴァーしている。ハードコア・バンドではない彼らをカヴァーした理由は、おそらくただ純粋のそのサウンドが好きだからだろう。AC/DCからはギターフレーズの間の取り方を学び、モトリークルーからは、執拗に繰り返されるカッティングギターなどの演奏技術を取り入れている。そしてビスティーボーイズから、ピップホップというロックとは関係のないジャンルのサウンドを柔軟に取り入れる方法を学んでいる。

 社会主義者という思想的や、スウェーデン・ハードコアの伝統という、ハードコアに対する尋常でない誇りと拘り持ちながらも、サウンド的には従来のハードコアに固執をせず、柔軟にいろいろなテクニックを取り入れている。それがリフューズドというバンドの特徴といえるだろう。ハードコアの伝統と革新性が結びついたそのアティチュードが、このバンドが一番評価されなくてはいけない部分なのだ。そこ事実を気付かせてくれる作品だ。

2015/05/04

Refused (リフューズド)   『Songs to Fan the Flames of... (ソング・トゥ・ファン・ザ・フレイム・オブ・ディスコンテント)』


Songs to Fan the Flames of...Songs to Fan the Flames of...
Refused

Burning Heart 2004-05-23
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 96年に発表された2作目。これがすばらしい作品に仕上がっている。前作のユース・オブ・トゥディに影響を受けた、変則的なリズムのギターのリフやOiコーラスなどが特徴的なハードコアを、さらに進化させた。ここまでくるともはやユース・クルー・ハードコアではなく、独自の進化を遂げたオリジナルティーあふれるハードコアに仕上がっている。

 今作ではフガジのいろいろな要素を詰め込んだ実験性あふれるフレーズと、ユース・オブ・トゥディの変則的なリズムのハードコアをベースに、ボーン・アゲインストのようなカオティックな要素、クイックサンドのような裏側でなっているような音、テキサス・イズ・ザ・リーズンのエモーショナルに、リフューズドならではのオリジナルティーを加え、独自な進化を遂げている。

 とくにすごいのが、簡潔な言葉で怒りを叫ぶスタイルのボーカル、デニスの怒声。尋常でない怒りと闘争心がアルバム全体を支配している。アルバムタイトルにある『ソング・トゥ・ファン・ザ・フレイム・オブ・ディスコンテント』とは、スウェーデンの産業労働者を支援する活動家で、IWWという労働組合のための応援・団結ソングを作っていたジョー・ヒルの“リトル・レッド・ソング・ブック”という曲から採られている。歌詞の内容もその曲からインスピレーションされ書かれ、たとえば “ラーダー・ビー・デッド”では、<あなたの言いなりになって生きるなら、いっそ死んだほうがいい>と歌い、“クルセイダー・オブ・ホープレス”では<彼らは1000の言い訳と謝罪をする。そして同じ過ちを繰り返す>と歌っている。そこには、権力者への反抗と、資本主義というシステムへの欠陥と怒りが込められている。労働者が一生懸命働き生産した利益の上前をピンはねして富をむさぼる富裕層への尋常でない怒り。まさに弱者のためのハードコアなのだ。

 スウェーデンというアメリカとは離れた土地柄が功を奏したのか、彼らのサウンドはポスト・ハードコアのなかでも独特の進化を遂げている。独特のリズムで怒りを刻み込むようなノイジーで分厚い音のギター、厳かな重低音のベース、雪崩のようなドラム。そこには不穏な空気を漂わせる不気味な静けさに満ちたギターのメロディーが突如激しさへと変わり、急激にギターのイズの洪水が押し寄せて、躁病のようにめまぐるしくギターフレーズがくるくると変化していく展開がある。あとにリフューズドが提示したサウンドがさらに進化してカオティック・ハードコアと呼ばれるようになるが、ちょうどこのころは、実験的なギターのリフやトリッキーなリズムのドラムなどの要素を詰め込んだフガジや、ネオ・サイケデリックな要素をハードコアに取り入れたクイックサンドとは違ったガラパゴス的な進化を遂げた亜種のポスト・ハードコアとして捉えられていたのだ。

 スローテンポでメタルのリフやヒップホップの要素を取り入れたニュースクール・ハードコアがシーンの主流となっていた当時、突然変異な進化を遂げた彼らのハードコアには唯一無二のオリジナルティーがあったのだ。すばらしい作品だ。


2015/01/06

Fugazi (フガジ)   『First Demo (ファースト・デモ)』

First DemoFirst Demo
Fugazi

Dischord 2014-11-16
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 ポスト・ハードコアを代表するバンドで知られるフガジの14年に発表されたデモ集。88年にフガジを結成してインナイヤースタジオにて収録された初めてのデモ音源で、その内容は後の2枚のEPを合わせたデビュー作の『13ソングス』に収録された曲が3曲、2ndアルバム『リピーター』から4曲、01年に発表されたEP『ファニチャー』から1曲、89年にフガジが参加したコンピレーションアルバム『ステイト・オブ・ザ・ユニオン』から“イン・ディフェンス・オブ・ヒューマンズ”、02年にディスコード・レーベル創設20周年を記念して発売されたボックス・セットから“ザ・ワールド”、96年に来日したフガジのライブ音源でのちに1000枚日本限定で発売された『10/30/96 SAPPORO JAPAN COUNTERACTION』から“ターン・オフ・ユア・ガンズ”のデモ・ヴァージョンが計11曲が収録されている。

  あくまでもデモだけあって、全体的にラフな仕上がりだ。だからこの作品の最大の価値は、“イン・ディフェンス・オブ・ヒューマンズ”や“ザ・ワールド”などのレアトラックと、いままで日本限定のライヴCD、もしくはダウンロード音源でしか聴くことのできなかった“ターン・オフ・ユア・ガンズ”のレコーディング音源にあるだろう。だが細部まで目を配らせると、この作品の魅力はほか曲にもある。たとえば“ウェイティング・ルーム”では、ラフな感情で作られていて、今作ではあくまでもベースが中心に作られている。それが『13ソングス』では、ボーカルが奥に引っ込み、ギターアレンジが肉付けがされて、曲の深みが増している。そして何より面白いのは、フガジを結成して一番最初に収録されたデモなのに、作品としては一番最後の年に発表された“ファニチャー”だろう。約13年間寝かせ発表された曲だが、フガジは似通った作品を作らないバンドだし、アルバムを重ねるごとに、新しいエッセンスが加わえ、技術的に確実に進化をしている。だがここでは初期のギターのフレーズがループするよさを残しつつも、突如激しくなるパートの部分が洗練されたギターサウンドを肉付けした形に仕上がっている。初期の荒削りなよさと後期の技巧がうまいこと混ざり合っているのだ。

 上記のような初期と最終期がまざった珍しい曲もあるが、デモだけあってやはり全体的に完成度は低い。だがここではバンドを結成した当初の生々しい感情が詰まっている。とくにトリッキーで変則的なリズムと、力強く爪弾くギターアレンジには、どこにもないオリジナルなサウンドを作ってやろうとする気迫を感じ取ることができる。青春時代を真空パックに閉じ込めたような青々しいころの彼らが見える作品なのだ。


2014/10/13

Issues (イシューズ)  『Black Diamonds (ブラック・ダイヤモンズ)』

Black DiamondsBlack Diamonds
Issues

Rise Records 2012-11-12
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 アトランタ出身のポストハードコア?バンドの12年に発表された6曲入りのデビューEP。オルタナプレスの未来を担うメタルコア・バンド10選の1位に選ばれた実力だけあって、現在、注目されているバンドでもある。

 個人的にはメタルコア・バンドというよりも、スクラッチなどのリンプ・ビスキッドのようなニューメタルやエンターシカリなどのユーロビート、ヒップホップなどの要素をブレンドし、発展させた、メロディック・デスメタルバンドの進化系だと捉えている。

 そのサウンドは、ユーロビートの近未来的でミステリアスなデジタル・サウンドに反響する美声と、荒廃した都市のような重厚でノイジーなギターのリフとデス声の、二律背反する要素がぶつかり合うサウンド。たいていの人ならば、ヘヴィーミュージックに対してうるさく不快な要素を追求した音楽だという印象を持っている人も多いと思うが、ここでは都会的でおしゃれなものとして処理している。それがこのバンドの魅力といえるだろう。まさに新世代を代表するいろいろな要素が混ざった新しい形のヘヴィーロックなのだ。

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