プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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メタルコア

2016/10/20

A Day To Remember(ア・デイ・トゥ・リメンバー)  『Bad Vibrations(バッド・バイブレーション)』

バッド・バイブレーションバッド・バイブレーション
ア・デイ・トゥ・リメンバー

ワーナーミュージック・ジャパン 2016-09-01
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16年発表の6作目。彼らについて散々書いてきた。くどいようだがもう一度説明しておく。彼らの個性とは、メタルコアのポップ・パンク化にある。05年当時、メタルコアをポップ化するというアイデアのバンドは、誰もいなかった。激しくヘヴィーで不快なデスメタルに、感情のひだを震わせるメロディックな要素を加えることによって、スカッと爽快に、憎悪から発散に変化させ、彼らならではの個性を確立することに成功した。それが『ホームシック』いうアルバムが50万枚売れた理由なのだ。

6作目となる今作だが、カラッと明るいサウンドだった前作と比べると、ダークで内省的な仕上がっている。エモっぽい曲など、新しいことにチャレンジしている曲もあるが、総じていうなら前々作、『ホームシック』の世界観を、さらに掘り下げた作品といえるだろう。彼らの作品のテーマの一つといえる疎外感や内省、心の闇を描いたアルバムジャケットも復活している。

アメリカでは『ホームシック』以来の快作と評価されている。その理由は暗く陰りのあるメロディーが復活したらだ。その憂いと切なさを含んだロディーからは、湖畔で黄昏ているような美しさがある。そしてメタルコアナンバーのデス声ボーカルからは、内面の憤りの叫びのように感じる。すべてが外向けの発散ではなく、シリアスで内向きなのだ。まるで人間の陰の部分にスポットを当てているかのようだ。ひさびさに彼ららしさが戻ってきた作品だ。


2015/03/03

Overcast (オーバーキャスト)   『Only Death Is Smiling 1991-1998 (オンリー・デス・イズ・スマイリング:1991-1998) 』


Only Death Is SmilingOnly Death Is Smiling
Overcast

Bullet Tooth 2015-02-03
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 アフターショックと並びメタルコアの基礎を作った伝説のバンドの、91年から98年にかけてのすべての作品を収録した3枚組みのコンピレーション・アルバム。メンバーは現シャドウズ・フォールのボーカル、ブライアン・フェアと、現キルスイッチ・エンゲージのギターマイク・D’アントニオを中心に、メタルコアのレジェントで構成されている。

 その内容はディスク1には、1曲目から8曲目までは、94年に発表されたデビュー・アルバム、『エクスぺテイション・ディヌッション』から全曲と、9曲目から12曲目までは92年に発表されたデビューEP『ブリード・イントゥ・ワン』。14と15曲目は95年の2作目のEP、『スティアリング・ザ・キラー』から全曲。ディスク2の1曲目から9曲目までは97年に発表された2作目『ファイト・アンビション・トゥ・キル』全曲と、10曲目は96年に発表されたariseとのスプリットから。11、12曲目は96年に発表されたEP、『ベキニング・フォー・インディファレンス』、13から16曲目は『エクスぺテイション・ディヌッション』に収録された曲のデモヴァージョン。そしてディスク3の1から8はライヴ曲で、9から11曲目までは93年に発表されたデモ・シングル。12と13曲目は未発表曲で、14曲目がブラック・サバスのトリビュートから。91年か98年まで活動した際に発表された曲がすべて網羅されている内容だ。

 オーバーキャストのデビューEPが発表されたのが92年で、デビューアルバムが94年。彼らの活動期間はちょうどアース・クライシスとかぶる。当時のヘルメットのようなスローテンポで金属質で重いリフを中心としたサウンドのメタルが主流で、アース・クライシス系のニュースクール・ハードコアもそこから発展した。オーバー・キャストも同様でそのサウンドからは、ヘルメットの影響が色濃く感じる。だがアースクライシスとの違いは、メタルパートをさらに貪欲に取り入れた部分だろう。ナパームデスばりのブラストビートと絶叫、メタリカのような叙情的なメロディー。スピード感こそまったくないが、グラインドコアやデスメタル、スラッシュメタル(叙情的な部分だけ)などのいろんなメタルを貪欲に取り入れたサウンドなのだ。たとえるなら、アースクライシスのニュースクール・ハードコアに、メタルのエッセンスを5倍近くさらに追加したサウンドといえるだろう。

 ニュースクールをさらにメタル化したサウンドで、メタルコアの先駆者として当時としては新しいサウンドであったことは事実だ。だが彼らがブレイクしなかった理由は、ヘルメットという先駆者からの影響が抜けきれなかったからだ。そのあと結成されるキルスイッチ・エンゲージやシャドウズ・フォールでは、もはやヘルメットからの影響がまったくなくなっている。デスメタルを含むメタル7割でハードコア3割の折衷スタイルで、スピーディーなメタルコアは、当時としては画期的なサウンドであった。まさに新しい時代のサウンドであったのだ。

 そういった意味ではオーバーキャストはメタルコアの先駆者であるが、時代そのものを変えるサウンドではなかった。ちょうどニュースクールとメタルコアをつなぐ中間的な役割をしたバンドなのだ。だがメタルコアの進化を知るうえでは、このうえなく重要な作品であることはまちがいない。


2014/03/01

Letlive (レットライヴ) 『Exhaustion, Salt Water, and Everything in Between (エクハーション・ソルト・ウォーター&エヴリシング・イン・ビトイーン)』

Exhaustion Salt Water & Everything in BetweenExhaustion Salt Water & Everything in Between
Letlive

2007-12-25
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 ロサンゼルス出身のポスト・ハードコア・バンドの、03年に発表された8曲入りのデビューEP。00年から03年といえば前年にユーズドやテイキング・バック・サンディー、グラスジョーなどのスクリーモ・バンドが出世作を発表し、かたやキルスイッチ・エンゲージなどのメタルコア・バンドも出世作を発表した。スクリーモとメタルコアがハードコアの最先端のシーンとして盛り上がっていたのだ。エモから進化したスクリーモ、メタルとハードコアの折衷スタイルであるメタルコアと、大雑把に分けるとシーンはこの2つが主流になっていたのだ。

 そんなスクリーモとメタルコアがシーンを席巻している03年にデビューしたレットライヴ。彼らのサウンドとは、ヘルメットから発展を遂げたポスト・ハードコア。ヘルメットの変則的リズムの金属質なリフに、ハードロックのようなギターフレーズを加えたサウンドだ。この時点ではまだ、あどけなさが残る子供の声のようなボーカルと悲痛な叫び声には、ザ・ユースドあたりのスクリーモからの影響が強く、ボーカルとサウンドともにオリジナルティーはあまり感じられない。音の厚みがなく、まとまりが悪い印象も受ける。スクリーモという流行を意識したサウンドだった。だが屈強なハードコアに、まにも泣き出しそうな弱々しいボーカルが乗る不協和音には、暴力に裏打ちされた恐怖やおびえを感じることができる。加害者意識の強いハードコア、華奢で被害者意識の強いスクリーモとは一線を画す世界観を持っていたのだ。オリジナルティーを発揮していくのはこれから先になるが、彼らのルーツを知る上では貴重な作品といえるだろう。

2014/02/18

A Day to Remember (ア・デイ・トゥ・リメンバー)  『Common Courtesy (コモン・コートスィー)』

Common Courtesy (CD+DVD)Common Courtesy (CD+DVD)
A Day To Remember

Adtr 2013-11-25
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 13年発表の5作目。本作を発表する前、所属していたレコード会社、ヴィクトリーとの確執があった。2012年に起こったア・ディ・トゥ・リメンバー側がヴィクトリー・レコーズを訴えた裁判だ。うわさではア・ディ・トゥ・リメンバーに7万5千ドルのロイヤルティーを、ヴィクトリー・レコーズが支払わなかったため、提訴したそうだ。ヴィクトリーは金儲けのために、デビュー作のリメイクを発表したり、大ブレイクを果たした“ホームシック”を、DVD付きで再発したりと、同じ作品で再度儲ける商売方法をとっていた。おそらく再発分のロイアルティーがバンド側に支払わられていなかったたのだろう。それでア・ディ・トゥ・リメンバー側が提訴に踏み切ったと思われる。裁判はア・ディ・トゥ・リメンバー側が勝訴で終わるのだが、そこで勝ち取った条件は、自主制作でアルバムを発表できる権利も含まれていた。ヴィクトリー・レコーズとは、まだアルバムを2枚リリースする契約が残っていたため、裁判が長引いたのだ。けっきょく裁判は、ア・ディ・トゥ・リメンバー側の勝訴に終わり、バンドは無事2013年10月8日に5thアルバム『Common Courtesy』をリリースした。当初は公式サイトでの配信のみのリリースだったが、後に新曲を3曲追加した「Common Courtesy」のデラックス盤をCDと共に、2013年11月25日にリリースされた。

 そんな紆余曲折を経て発表された今作は、スコーンと突き抜けた作品に仕上がっている。今作も、前々作で確立したメタルコアのメロディック・パンク化というサウンド・フォーマットを踏襲している。変わった部分を挙げるなら、メロディック・パンクの曲の“シティー・オブ・オカラ”と“5”、メロディック・パンクをベースにデスメタルの要素を取り入れた“ライト・バック・アット・イット・アゲイン”、メロディック・デスメタルをポップ化した“サムタイムス・ユーアー・ザ・ハマー~”、メタルコアな曲の“デッド&ベリード”と“ヴァイオレンス(イナフ・イズ・イナフ)”、カントリー調のアコースティックな曲の“アイ・オールレディー・ゴーン”など、5つのタイプに分かれている。新しさが加わったという点ではアコースティックな曲だろう。それ以外のさほど変化を見せていない。

 今作で大きく変わった点を上げるなら、支配している空気だ。前作の内省的で、疎外や自閉といったネガティヴな要素がなくなった。今作では、ボーカル、ジェレミー・マッキノンがア・ディ・トゥ・リメンバーというバンドで過ごした人生を振り返り、集約した内容がテーマになっている。たとえば“シティー・オブ・オカラ”では、故郷の街で、バンドを始めたころの思い出を歌い、“ライト・バック・アット・イット・アゲイン”では、バンドで経験した失敗や挫折に挫けず、立ち向かっていく不屈の精神について歌っている。“アイ・サレンダー”では、つらさを乗り越えた先にある至福に満ちた感情について歌い、そして最後の“アイ・リメンバーでは”広大なアメリカ大陸を周る過酷なツアーで、辛かった思い出もたくさんあるけど、バンドでライヴをすることこそが、自分がこの世で生を受けた証であり、生きがいであり、この世に存在している証明になっていると結論付けている。

 ここで展開されているのは、バンドの歴史とそのエピソードだ。印象的な出来事について歌い、バンドで経験した嬉しかったこと、悲しかったエピソード、辛かった出来事など、喜怒哀楽すべての感情を吐き出している。だが全曲共通しているのは、人生にチャレンジしていく情熱と希望と明るさ。悲しくつらい出来事もあったが、前向きに自らの人生に立ち向かっていこうとする姿勢があるのだ。原点を失うことなく、未来に対する希望が貫かれている。外との世界に向かって挑んでいる姿があるのだ。未来へ向かって進んでいる姿勢が全面に出ているから、思い出に浸りながらも、けっしてノスタルジーになっていない。それが今作を希望に満ちたキラキラ光る作品にしている理由のだろう。その挑んでいく姿は、情熱的なわりにはさわやかで開放感に満ちている。その彼らの無色透明な純粋な姿勢はすばらしいし、今作もいい作品だ。

2014/02/05

ア・デイ・トゥ・リメンバー  『ワット・セパレート・ミー・フロム・ユー』

What Separates Me from YouWhat Separates Me from You
A Day To Remember

Victory Records 2010-11-15
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 10年発表の4作目。今作も前作と同じくらいのクオリティーを保ったいい作品に仕上がっている。前作『ホームシック』は、ビルボードのインデペンデント・チャートで1位を記録し、彼らの最高傑作と呼び声高い作品だった。今作を制作する上でモチベーションとなったのが、前作のヒットだそうだ。世間から『ホームシック』が最高傑作と評価されればされるほど、彼らには重荷になっていた。過去の自分たちを超えることが、今作を作る動機になっていたという。

 そんな彼らの世情がアルバム全体に反映されており、熱い作品に仕上がっている。サウンド的には今作も前作で確立したメタルコアのメロディック・パンク化というサウンド・フォーマットに変わはない。変わった部分を強いて挙げるのなら、ニュー・ファウンド・グローリーからの影響がなくなり、サニーディ・リアル・エステイト系のエモのメロディーを取り入れた部分か。あとはメタルコアな曲やメロディック・パンクの曲など、折衷スタイルではないストレートな曲が目立つ。

 サウンドを重視した今までの作品とは違い、今作では情緒的だ。絡み合っていた要素を2つに切り離すことが、アルバムのコンセプトだ。具体的に説明するなら、人間社会から自閉症のように隔絶された自分と、友達とコミニケーションをとる社会性にあふれた自分。善と悪。岐路に立たされどの道を選択するかの決断などだ。たとえば“ベター・オブ・ディス・ウエイ”では<人生の壁をこわす自分を誇りに思う/またはそこで躓いたら、最後に戻ってまたやり直す。私の人生は待つことに費やされた>と歌い、壁を壊している自分と、壊せる時期まで待った自分の気持ちを歌っている。“オール•アイ•ウォント”では、<私は正直なものを維持したい。私はあなたの人生の賭けた。私はあなたのすべてを疑問に思っておくことを憎む。そして壊れたため後悔を保存。>維持するものと、それを捨てて賭けに出ることの2つの気持ちを歌っている。

 その2つの要素から決断にする感情とは、人生の困難に立ち向かい前へ進んでいくような熱さ。そこには逡巡や優柔不断な感情はない。選択しやるだけのことをやって駄目ならしょうがないと覚悟を決めた決意を感じる。熱く情熱的な姿勢の裏側に、桜のように散っていくような清々しさと潔さがあるのだ。

 そこには、今作でこれだけ熱い作品を作った。これで前作を超えることができなければ、しょうがないではないかと、覚悟を決めた決意を感じる。前作を超える作品を作るという意気込みが、全作品のなかで一番熱く情緒的な作品に仕上がった理由だろう。自分の感じたことをありのまま吐き出した感情。過去の栄光と闘い、挑む気持ちが今作という傑作を作ったのだ。個人的には今作も前作と肩を並べるくらいこの作品が好きだ。

2014/01/22

ア・デイ・トゥ・リメンバー  『ホームシック』

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A Day To Remember

Victory Records 2009-10-04
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 09年に発表された3作目。彼らの最高傑作はこの作品。メタルコアをメロディック化した前作よりも、さらにポップに進化し、飛躍を遂げた。今作ではニュー・ファウンド・グローリーのチャドがプロデュースしたことによって、今までの作品とは異なるアイデアが盛り込まれている。そのアイデアとは、メロディック・パンクにデスメタルの要素を取り入れたサウンド。今作ではより進化した部分に、サウンド・フォーマットの違いにある。前作まではスクリーモをベースにしたサウンドで、メロディー側にキラキラ・メロディーや映画音楽からのメロディーなどを取り入れ、ほかのバンドとの違いを見せていた。いうならスクリーモの静(メロディック・パート)と動(スクリームなどの激しいパート)のアップダウンを繰り返すサウンド・フォーマットの、メロディー側を改築したサウンドだったのだ。

 それが今作では、メロディック・パンクをベースにし、そこにメタルコアのリフやデス声などを取り入れている。とくに歌メロの部分では、メロディック・パンクやニューウェーヴからの影響を色濃く感じる。サウンドのベースにしているのは、フォール・アウト・ボーイやニュー・ファウンド・グロリー系のメロディック・パンク。とくに“ハヴ・フェイス・イン・ミー”の星空のような神秘的で暗く陰りのあるメロディーでは、フォール・アウト・ボーイからの影響を感じるし、“nj・レギオン・アイス・ティー ”では、青空のような明るいメロディーと重厚なリフや青春コーラスからは、ニュー・ファウンド・グローリーの影響を感じる。

 そしてそのなかでもこのアルバムのハイライトというべき“ホームシック”では、熱く激しいデス声のサビから始まり、切なく繊細なメロディーへと流れていく展開。そこには、激情に身を任せたケンカを経て、失っていく家族の崩壊を歌っている。怒りや憎しみすれ違いを経て失ってしまった家族に対する後悔や楽しかったころ振り返り、栄華を失う儚さなどが今作のテーマになっているようだ。

 ここではスクリーモ・バンドに多い静と動とのアップダウンや、強さと弱さや醜さと美しさといった二律背反や対比といったサウンドや感情はここにはない。感情が一番あがってくるサビの部分にデスの咆哮やときには美しいメロディーを持ってくることによって、ナイーブさや、悩みなどの悶え、儚さや寂しさといった感情をさらに強調している。いうなら甘いものに塩を振り、甘さをさらに際立たせるような手法だ。メタルコアやデスメタルなどの激しさや重厚さなどを、デフォルメされた感情として表現し、すべてをポップ側に引き寄せている。それが今作でア・ディ・トゥ・リメンバーが確立した個性なのだ。

 ヘヴィーなパートを入れてもポップに聴かせる手法は、日本のバンドでたとえるなら初期9ミリ・パラグラム・バレットによく似ている。彼らはJポップをベースに、カオティック・コアやブレイクビーツなどのヘヴィーなサウンドを取り入れている。もちろん9ミリとはサウンド自体の影響や方向性、表現している世界観や感情もまったく異なるが、ヘヴィーなサウンドをポップに聴かせるセンスは似ているところを個人的には感じる。

 だが切迫感や疾走していくスピーディー感、エモーショナルな衝動がないため、9ミリのようなテンションの高さはないのが欠点だが、メタルコアのパンク化という新たの個性を確立したのは事実。怒りや憎しみから悲しみや寂寥に変化していく展開がすばらしい作品だ。

2014/01/09

ア・デイ・トゥ・リメンバー  『フォー・ゾウズ・フー・ハヴ・ハート』

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Victory Records 2008-02-18
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 07年に発表された2作目。メタルコアのメロディック化という個性を確立したのはこの作品から。基本路線であるスクリーモやメタルコアに、メロディック・パンクを加えたサウンドに変わりはない。今作ではメロディー側にメロディック・パンクからの影響がさらに強くなり、よりポップで聴きやすいサウンドに深化した。映画音楽からの影響こそ薄れたが、メタルコアのポップ化がさらに進んでいる。

 今作ではメタルコアのポップ・パンク化という彼らの個性が遺憾なく発揮されている。たとえば“スピーク・オブ・ザ・デビル”では、スピーディーで爽やかなメロディック・パンクに地獄のうめき声のようなデス声が絡む展開で、疾走感のなかに切なさが漂い、デス声とともに切ない感情が行き場のない怒りへと変わっていく。“モニュメント”では、ジミー・イート・ワールドのような野太いギターとキラキラメロディーを中心に、そこにデスメタルのデス声や重いリフ、メロディック・パンクの青春コーラスが絡み、明るさや、暗さ、純粋さがめまぐるしく変わる展開で、まさに情緒不安定を表しているような混沌がある。

 いままでニュー・スクール・ハードコアやスクリーモ、絶叫や怒声にメロディーを取り入れたバンドは数多くいた。だから厳密な意味で言えば彼らは先駆者ではない。だがそのバンドたちと違い、ア・ディ・トゥ・リメンバーが、この作品で2万部を売り上げ、人気が出た理由は、そのサウンドに引き込まれるような聴きやすさにある。

 彼らのメロディーは透明で爽やかではあるが、総じてシリアスで切なく憂鬱で暗い。そして性急に疾走していく切ないメロディーと怒りの感情を叩きつけるデス声と重厚なリフとの融合には、切なさから前へ突き進むような熱い感情へと変わる瞬間を表現している。サビの部分がヘヴィーに変わっても、メロディーがしっかりしているから、不快さは残らない。むしろヘヴィーな部分が、心の深い感情を表現してさえいる。それが彼らが魅力であり、人気の理由なのだ。

 彼らのサウンドは、ハードコアにメロディーを載せたバッド・レリジョンに発想が近い。ぼくは彼らの才能をかなり評価している。

 なお08年に発売された再リリース盤には、DVDと、デビュー作の“ハートレス”と“ユー・ショウド・ハブ・キルド~”が再録され、ケリー・クラークソンのカヴァー“シンス・U・ビー・ゴーン”と“ホワイ・ウォーク・オン・ウォーター~”の2曲の追加ボーナス・トラックが加えられた。商売目的に発表されたこの作品が、のちにヴィクトリー・レコーズと遺恨を残すきっかけとなるわけだが。

2014/01/03

ア・デイ・トゥ・リメンバー  『アンド・ゼア・ネイム・ワズ・トゥリーズン』

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Indianola Records 2005-05-09
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 フロリダ出身のメタルコア/メロディック・パンク・バンドの05年に発表されたデビュー作。アメリカではメタルコアにポップ・パンクを融合したバンドとして語られているが、彼らの功績とは、メタルコアのポップパンク化。このデビュー作では、まだメロディック・デスメタルやスクリーモから発展したサウンドを展開している。メロディーには、アイアン・メイデンやヴァンヘイレン、映画音楽からの影響がうかがえる。いうならスクリーモやメロディック・デスメタルに、映画音楽などポップの要素を加えたバンドだ。

 今作はそれほどオリジナルティーあふれた作品ではないが、彼らならではの個性がうかがえる。その個性とは、アクション映画の死を意識したワンシーンのような緊迫した空気とクールな世界。“イントロ”では、映画のワンシーンのようなボーカルの台詞が厳かな緊迫感をつむぎだし、<あなたを信じながらも、嘘を探した>と、疑心暗鬼に陥っている自分の心情について歌っている。スクリーム(叫び)が痛々しい“ハートレス”では、<私は内側からダメージを受けている~私は壊れた>と、傷つきささくれ立った心情風景を描いている。

 ここで歌われているのは、内面世界と外の世界とのギャップと乖離。自分の気持ちを理解してもらえないことへのもどかしさ。裏切りによる悲しみなどが、まるでラブコメのように、ロマンチックに彩られた世界がある。思慮的で憂いと暗さに満ちたピアノの音とスクリームとの組み合わせはとてもクールでカッコいい。オリジナルティーが希薄に感じる部分もあるが、聴きやすい作品に仕上がっている。

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