プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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ニュースクール・ハードコア

2017/07/15

DESPAIR (ディスパイヤ) 『4 Years Of Decay  (4イヤーズ・オブ・ディキャリー)』

4 Years Of Decay4 Years Of Decay
DESPAIR

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現TERRORでボーカルを務めているScott Vogel(スコット・ボーゲル)が在籍していたバンドとして知られ、94年から98年にかけて活動したニューヨーク州バッファロー出身のニュースクール・ハードコア・バンドのディスコグラフィー・アルバム。彼らもまたSNAP CASE(スナップケース)やSlugfest (スラッグフェスト)、Buried Alive(ビルド・アライブ)などのバンドと同様、チュガ・チュガ・バッファロー・ハードコア・シーンを代表するバンドのひとつだった。

ここにはデビュー作である『One Thousand Cries (ワン・サウザント・クライズ)』から『Pattern Life (パターンライフ)』『As We Breed (アズ・ウィー・ブリード)』『Kill (キル)』まで、4作品が収録され、彼らの歴史すべてがこの作品に収められている。DESPIR(ディスパイヤ)とは日本語で<絶望>を意味するバンド名で、歌詞のタイトルが示すように、ここで歌われている内容は、ブラット・ピット主演の映画『セブン』のような世界観。4の Decay(腐朽)、5のDay Of Atonement(贖罪の日)、9のSeven Layers Of Waste(7層の廃棄物)、15のSalvation's Slave(救済の奴隷)、21のTo The Depths Of Despair(絶望の深み)など、自分が抱える憎悪に対する罪悪感や、腐った世の中への怒り、考えれば考えるほど絶望の深みにはまる悪循環など、すべてが思慮的で暗い。自分が絶望と感じるすべてを歌詞にしている。

肝心のサウンドだが、スナップケースの変則的なリズムに、Earth Crisis (アース・クライシス)のスローテンポ、ギターコード、怒声を合わせた、スローテンポでグルーヴを重視し、怒声でがなり上げる展開。ニューヨーク・ハードコア以外のバンドからの影響を感じさせないドメスティクなハードコアだ。そのスローな展開、怒声、怒りをハンマーで叩きつけるようなリフやリズムは、典型的なニュースクール・ハードコアなサウンドで、彼らもまたニュースクールを象徴したバンドといえるだろう。

Hatebreed (ヘイトブリード)やConverge(コンヴァージ)など新しいスタイルのバンドたちが現れ始め、ニュースクール全盛期から徐々に衰退に向かっていた98年、彼らは解散をする。時代に取り残される前に。彼ら自身もおそらくニュースクール・サウンドへのマンネリ化が倦怠に感情が変わっていたのではないか。だからスコット・ボーゲルは、ニューヨークを離れてカルフォルニアに移り住み、環境もバンドも精神面でも何から何まですべてを変え、ゼロから再出発を図りたかったのだろう。結果、サウンドはスピーディーでエネルギッシュで闘争的で外向きな感情のテラーという、ディスパイヤとは真逆のベクトルのバンドを立ち上げた。すべては新しくもう一度、音楽への情熱を取り戻すために。

現在、オールドスクール・ハードコア・シーンを語った本やDVDはたくさん存在する。だがニュースクール・ハードコア・シーンに限っては不思議と再検証をした本やDVDが全く存在しない。もしニュースクール・ハードコアを検証した本やDVDが発売されるとするなら、おそらく彼らは外せない存在だろう。それほど一時代を象徴したバンドでもあるし、重要なバンドなのだ。

2017/06/14

TERROR(テラー) 『The Walls Will Fall(ザ・ウォールズ・ウィル・フォール)』


The Walls Will FallThe Walls Will Fall
TERROR

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西海岸はロサンゼルス出身のハードコア・バンドの17年に発表された(アルバムを合わせ計11枚目となる)5曲入りのEP。西海岸のバンドだが、フロントマンであるボーカルのスコット・ボーゲルがニューヨーク州バッファロー出身で、そのため彼らのサウンド的な特徴は、ニューヨーク・ハードコアの伝統的なスタイルを受け継いでいる。シック・オブ・イット・オールのOiコーラスを交えた男臭く硬質なサウンドから、アースクライシスのスローパートやノイジーなギターなど、ユースクルーとニュースクールのニューヨーク・スタイルを集約したバンドといえるだろう。

全作品を通してニューヨークのストイックで硬質なハードコアサウンドに変わりはない。だが、アルバムを発表するたびに、メタルサウンドをふんだんに取り入れたアルバムや、oiコーラスとシャウトにこだわったアルバム、ノイジーでよりアグレッシブになったアルバム、ブラストビート、メタルのギターフレーズ、ドラムのテンポの変化など、色々な要素を取り込み、バラエティー豊かに深化してきた。

そして今EPでは前作『The 25th Hour』の延長上にある、スローから急激にスピードが上がるストップ&ゴーの重く重厚なリフが特徴的なサウンドを展開している。そして注目すべきは、5曲目に収録されている“Step To You”。この曲はMADBALL(マッドボール)のカバー曲で、ゲストヴォーカルにはマッドボールのヴォーカル、Freddy Cricien(フレディー・)と、AGNOSTIC FRONT(アグノステッィク・フロント)のヴォーカル、Roger Miret(ロジャー・ミレット)が参加。ニューヨークのオールドスクール・ハードコアと、ニュースクール・ハードコアを代表する新旧世代のレジェンドによる夢の競演をはたしている。

肝心の曲だが、原曲のアレンジを変えず、忠実にカヴァー。違いがある部分といえば、ギターサウンド。全体に拡散するノイジーだったマッドボールのギターと比べると、音を絞った硬質なギターが持ち味のterror(テラー)の個性が発揮されている。ここには自分たちが好きだったマッドボールやアグノステッィク・フロント、それをひっくるめたニューヨーク・ハードコアへの限りない愛情と、伝統に対する誇らしい気持ちがひしひしと伝わってくるのだ。彼らの気合や、音楽への情熱、高いモチベーションになにも変わりはない。好作品だ。


2017/05/24

Incendiary(インセンダイアリー) 『Thousand Mile Stare (サウザント・マイル・ステア)』

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Thousand Mile StareThousand Mile Stare
Incendiary

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ニューヨーク州ロングアイランド出身のニュースクール系ハードコア・バンド3作目。これが成長を感じさせるすばらしい作品に仕上がっている。前作までは、108, Visions Of Disorder(ヴィジョン・オブ・ディスオーダ)や Buried Alive(ベリッド・アライブ)などのスローテンポでグルーヴ感を意識したニュースクール系ハードコアからの影響が勝った。

今作では前作までのサウンド路線にプラスアルファを加え、自分たちのサウンド・スタイルを確立している。終始ゆったりとしたリズムで、変則的なリズムでザクザク刻むギターのリフ、グルーヴ感の強いドラムの、グルーヴ感を重視した展開こそ変わりはない。今作でとくに印象的なのが、怒りの言葉をヒップ・ホップのリズムに乗せまくし立てるボーカル。そこにはRage Against the Machine (レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン)のような、虐げられたマイノリティーの怒りを感じる。

とくに怒りが顕著なのは1曲目の“Still Buming(いまだ燃えている)”の歌詞。ここではwe got to know some pain to show we’re still here~still beating、still burning(私たちはいくつかの痛みを知るようになった。私たちがまだここにいることを示す。~また殴られる。また燃える。)と、歌われている。その内容は、抗議デモで警官に殴られるような場面を想起させる。正当な権利を主張すれば、政府によって弾圧され暴力を振るわれる虐げられた者の悲惨さ。そんな弱者の怒りに満ちているのだ。

マッチョでギャングな不良の匂いがするバンドが多いニューヨーク・ハードコア・シーンでは、ポリティカルで闘争的なアティーテュードを持ったバンドは珍しい。だがこれほどの怒りや闘争心を持ったバンドもニューヨーク・シーンでは少ない。ぼくのフラストレーションを発散させ熱い気持ちを掻き立てるいい作品だ。

2017/01/10

Incendiary(インセンダイアリー) 『Crusade(クルセイド)』

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ニューヨークはロングアイランド出身のニュースクール系ハードコア・バンドの09年に発表されたデビュー作。廃盤になっていたデビュー作が、今回、ヴァイナル盤にて再発された。

彼らのサウンド・スタイルとは、初期SNAPCASE(スナップケース)のニュースクール・ハードコアを、シンプルに熱くアグレッシヴに解釈したスタイル。彼らもまたニューヨーク・ハードコアの伝統を受け継ぐバンドのひとつなのだ。

スナップケースからの影響が強い甲高い声のボーカルを中心に、重くメタリックなギター、Oiコーラス、性急なスピードのドラムと、ときおりグルーヴィーなミディアムテンポを加えながら、怒りがオーバードライブしていく。ボーカルの素の声で、複雑な展開はなくいたってシンプルなハードコアな分、怒りや気合がダイレクトに伝わってくる。

その彼らの特徴とはギターの音にある。金属質な重さの中に電気系統がショートした音が余韻を残す独特な音なのだ。それが彼らならではの一番の特徴だ。この金属質でずっしり重いハードコアは、現在のニュースクール・ハードコアの最先端を行くサウンドだ。

2016/11/28

Heaven Shall Burn (ヘヴン・シャル・バーン)  『Wanderer(ワンダラー)』


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ドイツのメタルコア・バンドの8作目。このバンドも現在のハードコアを語る上では外すことのできない重要なバンドだ。現在のハードコアの中心であるアメリカとは離れた環境にあるためか、欧米のバンドらしく、メタルコアの中でもユニークなサウンドを展開している。

その彼らの個性とは、アース・クライシスのニュースクール・ハードコアをさらに進化させたサウンド。アースクライシスの影響が色濃く残る怒声ボーカル、ハンマーを打ち付けるような重厚なリフと、ナパーム弾のように全体に響き渡るギターサウンドを、ブラストビートを加えさらにスピードアップさせた。そしてそこにメロディック・デスメタルや、テクニカルなメタルの要素を加えた。ほかのバンドにはない独特なサウンドを展開しているのだ。

アース・クライシスからの影響はサウンドだけにはとどまらず、彼らもまたメンバー全員がヴィーガンで、レイシストに対する徹底抗戦する姿勢や、ハードコア精神を貫いているのだ。そういった意味では今はなきニュースクール・ハードコアの、正当な後継者といえるだろう。

彼らの作品は、2作目の『Whatever It May Take(ワットエバー・イット・メイ・テイク)』で確立したサウンドスタイルをベースに、そこにプラスアルファを加え、バラエティー豊かに進化してきた。前々作の『Invictus(インビクタス)』では、メロディック・デスメタルの要素を加え、攻撃的な激しさベースにしながらも、陰鬱な要素を加え、怒りや攻撃性の裏側に潜む悲しく陰鬱な感情を表現していた。前作『Veto(ヴィート)』では、全作品中一番激しいサウンドを展開し、デスメタルをさらにパワーアップさせ、すさまじい音圧のサウンドで、攻撃的に進化していた。

そして今作では、シンフォニックメタルの要素が加わった。今作も『ワットエバー・イット・メイ・テイク』で確立したサウンドスタイルをベースとしているが、前々作よりもさらにメロディーに重点を置いている。メロディック・デスメタルな要素を加えた前々作との違いは、メロディーの質にある。そこにあるのはクラッシクの交響曲のような芸術性と、北欧神話のような世界観。まるでヨーロッパ中西部をイメージさせる深い森と霧と寒さに包まれたサウンドなのだ。

そこにあるのは前作までの激しい怒りや憤りを発散するというより、過酷な冬の厳しさや忍耐力、孤独に耐えゆる精神力といった方向にベクトルが向いている。外への発散から内面と向き合ったサウンドなのだ。ハードコアの対極にある美しさを追求したアルバム。だが決してそれが悪いわけではない。なぜならこの、ストイックなまでに突き詰めた美しさも魅力的だからだ。同じ時点にとどまらず、新しいことにチャレンジした意欲作ともいえる作品だ。

2016/10/31

BURN(バーン) 『​From the Ashes (フロム・ザ・アッシュズ)』

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 89年から活動を続けるニューヨーク・ハードコア・バンドの、じつに14年ぶりとなる4作目のEP。

 今作を含め過去4作は、4曲入りのEPが3枚、6曲入りのアルバムが1枚と、活動期間のわりには持ち歌の数が極端に少ないバンドだが、それだけ曲にこだわりをもっている。気に入らない箇所は修正され手直しを加え、試行錯誤を繰り返しながら、選ばれた曲たちなのだ。まるで日本酒の大吟醸の米のように、極限まで研ぎ澄まされ、吟味されている。だからハードコア・バンドにありがちな、どれも同じ曲に聞こえるような駄作と呼ばれる曲はそこには1曲も存在しない。

 彼らのいままでの作品の変遷を説明すると、ゴリラビツケッツやシック・オブ・イット・オールなどのユース・クルー・シーンを集約したサウンドを展開したデビューEP。スピードよりもスローテンポのグルーヴを重視した曲に、ファンクやヒップ・ホップ、オレンジ9㎜やレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの要素を加えた、同時の最先端をいったニュースクール・ハードコア。そして今作では、また違った別のアプローチを展開している。

 そのサウンドは次世代のハードコアと呼べるオリジナルなハードコア。1曲目の“Novelist”はまるでミクスチャーロックのように複雑に入り組んだ展開のテクニカルなギターが魅力な曲。2曲目の“You Can’t Stop Me”は2ビートでハイテンポのオールドスクールなハードコア。3曲目の“We Don’t Stand A Chance”はジーザス・リザードから発展したポストコアにサイケデリックなギターを合わせた展開。

 歌声はボーカルそのものが代わったのかと思わせるぐらい甲高く危機感を煽るような声に変化し、それぞれにジャンルが異なる方向性の曲で、過去の面影を感じないくらい変化をしている。だがどの曲もハードコアのスピリッツにあふれている。なにより全作品で共通する、薄汚れた路地裏の地下道で、銃口を向けたギャングたちに絡まれるような、危なさを感じる緊迫したニューヨーク・ハードコアの独特な雰囲気は失われていない。今作も3曲と少ないがそれぞれに魅力の詰まった作品だ。

2016/06/06

Shai Hulud(シャイハルード) 『Just Can’t Hate Enough X 2 – Plus Other Hate Songs』(ジャスト・キャント・イナフ×2-プラス・アザー・ヘイト・ソングス)

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 15年にヴァイナルのみで発表された8曲入りEP。4曲のカヴァーと多彩なゲストをボーカルに据えた4曲で構成された作品。今作ではボーカルがマットからマッティ・カロックに代わり、心機一転を図った作品といえるだろう。自分たちの影響を受けたミュージシャンや、現在の嗜好するサウンドを徹底的に見つめ直した。いわば再生をテーマに掲げたカヴァー集なのだ。

 06年に発表したカヴァー集『ア・プロファウンド・オブ・マン』( A Profound Hatred of Man)では、NOFX、バッド・ブレインズ(BAD BRAINS)、バッド・レリジョン(Bad Religion)、ネガティヴ・アプローチ(NEGATIVE APPROACH)、メタリカ(Metallica)と、オールドスクール・ハードコアからスラッシュ・メタル、メロディック・ハードコアなど、彼らのルーツが垣間見れるカヴァーだった。

 今回もハードコアからメロディックパンク、スラッシュメタル、クロスオーバーなど、パンクやハードコア、メタルなど特定のジャンルに焦点を絞っている。だが『ア・プロファウンド・オブ・マン』と比べると、今作ではエクセル以外は比較的最近活動しているバンドが多い。自らのルーツをカヴァーするというより、いろいろなバンドの異なるアイデアを、自らのサウンドに取り込むためのカヴァーといえる。自分たちの原点を見つめ直すカヴァーではなく、異なる視点からハードコアを学ぶためのカヴァーなのだ。

 肝心の内容だが、1~4はオリジナルの曲で、5~8はカヴァー曲。1曲目の“Sincerely Hated”(センシリティー・ヘイテッド)から3曲目の“How Hates The Heart”(ハウ・ヘイツ・ザ・ハート)は新曲で、4曲目の“A Profound Hatred Of Man”(ア・プロファウンド・ヘイテッド・オブ・マン)は97年に発表された『Hearts Once Nourished With Hope & Compassion』(ハーツ・ワンス・ノーリッシュド・ウィズ・ホープ・コンパッション)からの再録。Further Seems Forever (ファーザ・シームス・フォエバー)のチャド・ネプチューンやComeback Kid (カムバック・キッド)のアンドリュー・ニューフェルドなど、多彩なゲストを招いて制作された曲だが、カヴァー曲を含め、2曲目以外はHate(憎しみ)という言葉が引用されている。自己嫌悪や相手に対する憎しみなど、多種多様な憎しみが表現されているのだ。そして5~8のカヴァー曲は、5曲目の“I Just Can't Hate Enough”(アイ・ジャスト・キャント・ヘイト・イナフ)はカルフォルニアのオールド・ハードコア・バンド、 A Chorus Of Disapproval(ア・コーラス・オブ・ディサプルーヴ)のカヴァーで、6曲目の“Just Can't Hate Enough”(ジャスト・キャント・ヘイト・イナフ)はニューヨークの極悪ハードコアと呼ばれたSheer Terror(シアー・テーラー)のカヴァー。7曲目の“Blaze Some Hate”(ブレイズ・サム・ヘイト)はスラッシュメタルとスケーターパンクをクロスオーバーさせたExcel(エクセル)のカヴァー。8曲目の“Hate, Myth, Muscle, Etiquette”(ヘイト、メス、マッスル、エチケット)はカナダのメロディック・パンクバンド、Propagandhi(プロパガンティー)のカヴァーだ。

 今回も自分たちのサウンドスタイルを強調しつつも原曲の個性も残す、折衷スタイルのカヴァーだ。5曲目の“アイ・ジャスト・キャント・ヘイト・イナフ”はア・コーラス・オブ・ディサプルーヴのメロディーラインを残しつつも、シャイハルードの特徴である気合の入った叫び声を全面に出したカヴァーで、“ジャスト・キャント・ヘイト・イナフ”はシアー・テーラー特有の重くグルーヴィーなギターのリフを、スピーディーな激しさに変化させている。“ブレイズ・サム・ヘイト”はエクセルのリズム感とギターコードを残し、そこにシャイハールドの個性である激しさを加えたカヴァーだ。そして“ヘイト、メス、マッスル、エチケット”はプロガンバティーのスピード感とメロディーラインを重視したカヴァー。そこにシャイハルードらしい叫び声を加えた。どの曲も両者の個性が顕著に表れているのだ。

 今回シャイハルードが、カヴァーと新曲、そして思いいれの強い旧曲の入り混じったこの作品を発表した理由は、自分たちがバンドを始めた動機を再確認するためだろう。だから自分たちがバンドを始めた動機であり、フラストレーションを発散する理由であり、バンドを続けているモチーベションの原因でもある<憎しみ>という感情を、追求したのだろう。そして多彩なゲストと一緒に曲を作ることによって、新しい手法を手に入れた。自分たちのサウンドを貫く変わらない自分であるためには、ハードコアの違った手法を取り入れることによって変わり続けていくことによって、成し遂げられる。新しく生まれ変わるために必要な作品だったのだ。

2016/02/02

Forced Order(フォースド・オーダー)  『Vanished Crusade(ヴァネッシュド・クルセイド)』

Vanished CrusadeVanished Crusade
Forced Order

Revelation 2015-07-16
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 15年に発表されたデビュー作。今作も引き続き“レボレイション・レコーズ”からのリリース。サウンド路線は前2作と変わらない。今作では前2作で確立したサウンド路線を総まとめにし、さらに研磨したサウンドを展開している。ごつごつした部分が綺麗に整えられつつも、勢いと迫力と衝動に満ちたデビュー作といえる気合の入った内容なのだ。

 彼らの確立したサウンドとは、インテグリティーや イン・コールド・ブラッド、リングウォ-ムなどのバンドから影響を受けた、スピーディーで重くグルービィーなハードコア。上記で述べたとおり、今作でもそのサウンド路線は変わりない。だが余分な部分はそぎ落とし、強調するところは強調し、前作までのごつごつした部分が確実に磨かれ、研磨されたサウンドを展開している。

 とくに目立つのは金属板のように厚く重い低音のギターのリフのなかに妖艶に鳴り響く高音のギターソロ。そして最後に収録された、魔界に森を一人彷徨っているような不気味さを紡ぎだすアコースティックと暗く沈んだ寂寥と孤独ノイズ。

 そこには熱く男くさく立ち向かう勇気を急き立てるような闘争心と、はっとする勢いで駆け抜けていくし初期衝動にあふれている。そして強気に向こう見ずに突き抜けたあとに不気味な静けさとともに漂うに最後のアコースティック・ノイズからは、闘争心やアブレッシヴな感情から開放され、一人逃げ出し癒されているような、神秘に満ちた美しさが漂っている。最後にさらけ出した自分のダークな部分が、独特な美しさ放っている。これもダークサイドNYCに通じる亜種のハードコアの進化版の作品なのだ。


2016/01/26

Forced Order(フォースド・オーダー)  『Retribution (レトリューションEP)』

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 ハードコアの老舗レーベル【レボレイション・レコーズ】に移籍して14年に発表された4曲入り2作目のEP。ここでは4曲すべてが異なるアプローチを展開している。前作との違いは、性急なスピードとスローな緩急を使った曲や、ノイズなどのバラエティー豊富なサウンドを展開している部分にある。

 1曲目の“レトリューション”は沈黙を破る地響きのようなベース音と、重く闘争心を煽るギターコード、カルトなギターソロが絡み合うスピーディーなオールドスクール・ハードコアを展開。スラッシュメタルからの影響が強いダークで怪しげな雰囲気を想像させるイントロの2曲目の“ジノシス”。ドスの効いた迫力ある怒声を張り上げるボーカルと、おいコーラスで男くささと団結信をさらに強調し、これまたスピーディーなサウンドを展開している3曲目の“スパマシー・フォーレン”。魔界の沼地を彷徨うようなノイズの砂嵐の4曲目の“Ekloh”。と、カルトな要素やハードコアという枠を堅持しながらも、いろんなことにチャレンジしているのだ。気迫に満ちた性急なスピードと妖艶なメロディーとのコントラストがすばらしい作品だ。

2016/01/25

Forced Order(フォースド・オーダー)  『Eternal War(エターナル・ウォーEP)』

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 ソウル・サーチ、トウィッチング・タングス、ディスグレイス、ハーネスなどのメンバーによって結成されたフォースド・オーダーの14年に発表された8曲入りのデビューEP。

 インテグリティー、 イン・コールド・ブラッド、リングウォ-ムなどのバンドからの影響を受けて始めたらしいが、総じてスピーディーで重くグルービィーなハードコア。イン・コールド・ブラッドに影響を感じるのは、重く金属的でグールィーなギターのリフ。カルト的なメロディーのギターソロからは、インテグリティーからの影響を感じる。そしてピップホップの要素が混ざったボーカルの歌い回と矢継ぎ速に繰り広げられるスピード感からは、リングウォームの影響を感じる。90年代のグルーヴィーで金属質なニュースクール・ハードコアを、スピーディーに進化させたサウンドなのだ。

 普段はソウル・サーチ、トウィッチング・タングス、ディスグレイス、ハーネスという異なるバンドで活動している彼らがこのバンドを結成した理由は、おそらく4つのバンドのケミストリーを期待して、このバンドを結成したのだろう。カルト的とデス的な要素はトイッチングとディスグレイス。スピード感はハーネス。ボーカルの歌い回しはソウル・サーチ。ソウル・サーチ、トウィッチング・タングス、ディスグレイス、ハーネスという4つのバンドの個性と、インテグリティー、 イン・コールド・ブラッド、リングウォ-ムという3つの影響を受けたバンドの部分とが、混ざり合ったサウンドを展開しているのだ。

 サウンド的にはいろいろな要素が混ざっているが、アティードは前者のバンドとは全く異なるスタンスを貫いている。ここには悪魔崇拝や死神を崇めるようなカルト的な要素はない。あるのは社会に対して攻撃的であるアグレッシヴなハードコアだ。怒りの言葉を捲くし立てる気合の入ったボーカルと、苛立つ性急なスピード感、怒りを叩きつける金属的なギターサウンドからは、このバンドが反体制側のスタンスに立って、怒りや不満をアティテュードに掲げていることが理解出来る。これはメルファンクションとは異なる別のアプローチからのニュースクール・ハードコアの進化系なのだ。

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