プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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D

2018/03/16

Dashboard Confessional (ダッシュボード・コンフェッショナル)  『Crooked Shadows (クロケット・シャドウズ)』

Crooked ShadowsCrooked Shadows
Dashboard Confessional

Fueled By Ramen 2018-02-08
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じつに9年ぶりとなる作品。このアルバムを語る前に、まずはChris Carrabba (クリス・ギャラハー)の活動から振り返りたい。09年に発表したアコースティックギター1本でシンプルに語り弾きをしたアルバム『Alter the Ending(アルター・ザ・エンディング)』を最後に、Dashboard Confessional(ダッシュボード・コンフェッショナル)の活動を休止した。10年10月にはデビュー作である『The Swiss Army Romance(ザ・スイス・アーミー・ロマンス)』のデラックス・バージョンの発表。『ザ・スイス・アーミー・ロマンス』の曲を完全再現したソロライヴを行った。同じく10年に、クリス・ギャラハーが初めて結成したハードコア・バンド、FURTHER SEEMS FOREVER (ファーザ・シームズ・フォーエバー)を再結成。12年に『Penny Black(ペニー・ブラック)』を発表。そして11年には、REMやArchers of Loaf(アーチャー・オブ・ローフ)やJohn Prine(ジョン・プランイン)などの往年のアーティストからマニアックなインディーロックアーティストまでをカヴァーしたクリス・ギャラハー名義のソロ活動を展開。11年からカントリーやフォークなどのルーツ・ミュージックを追求したTwin Forks(ツイン・フォークス)を結成。13年にEP、14年にLPを発表した。

ダッシュボード・コンフェッショナルの活動を休止し、色々な活動を展開していた理由には、おそらく様々な角度から音楽を見つめ直す必要があったのだろう。『ザ・スイス・アーミー・ロマンス』の再現ライヴでは、ダッシュボードコンフェッショナルを始めたころの痛々しい感情を思い出し、ファーザ・シームズ・フォーエバーの再結成では、バンドを始めたころの立ち向かっていく気迫などを取り戻した。そしてソロ活動では好きな曲をカヴァ―することによって、自分が音楽を好きになった理由を再認識した。ツインフォークでは、自らの魅力である透明でパッショナブルな美声を最大限に引き出し、まどろみや穏やかな幸せなど多幸感を表現してきた。ミュージシャンを続けていくために色々な感情を知る必要があったのだ。

とくに音楽の幅を広げたツイン・フォークでの活動は、肩の力を抜いた、いままでと真逆のスタイルで、自らの美声の生かし方を学び、多彩な感情を表現した。自らの可能性を最大限にまで広げたという意味では貴重な体験だったのだろう。その作品も素晴らしく、ミュージシャンとして円熟期を迎えているように思えた。

だがまたダッシュボード・コンフェッショナルの活動に戻ってきた。今回、復活した理由は、もう一度、エモいと呼ばれる熱い感情を取り戻したかったからだろう。クリス・ギャラハーはBillboardでのインタビューで、「これを言うのをあまり良くないが、ぼくはむかし自分が作ったアルバムのほうが好きだと認め始めたんだ。その理由も分かっている。他のミュージシャンを見ていると、アルバムを発表するたびに新しい音楽を取り入れ、モチベーションを維持している。時が経つにつれ、音楽へのこだわりは重要視されるが、歌詞の内容は希薄になっていく。人から聞いた話のひとつが歌詞は重要じゃないってことだった。ぼくはそう思わない。彼らの考え方は正しいのかもしれないけど、だからこそぼくは歌詞を重要視したい。新作はぼくにとって初期3枚くらいのころにすごく似た作品になるよ」。と語っていた。

そもそもダッシュボード・コンフェッショナルのバンド名は、“The Sharp Hint of New Tears(シャープ・ヒント・オブ・ニュー・ティアーズ)”という曲から生まれたもの。一人運転する車の中で、彼の告白を聞いたダッシュボート(車の精密機器)から、 "Dashboard Confessional"というネーミングを思い浮かんだという。そこでは失恋で感じる心が引き裂かれるような思いや、傷つけられたことによる恥辱など、生々しい経験が語られていた。倒れそうになりながらも歯を食いしばって前へ進んでいくエモい姿が魅力のアーティストであった。

そして9年ぶりとなる今作も今までのアルバム同様、熱い作品に仕上がっている。だが初期3作にあったような、心の痛みや裏切りといった悲しみに彩られた感情はそこにはない。『曲がった影』と名付けられた今作では、逃げることのできない影のようについて周る自分の人生の闘いについて歌っている。“We Are Fight(ウィー・アー・ファイト)”は自分の道を切り開く決意や人生との闘いを歌い、“About Us(アバウト・アス)”では恋の激しく燃える炎について歌っている。“Heart Beat Here”(ハート・ビート・ヒア)では、痛みや悲しみを乗り越え成長した現在の姿について歌っている。挫折や苦難という痛い経験を乗り越えてこそ、人間は成長ができる。そんな内容がテーマなのだろう。

苦難を乗り越えるという意味での熱さは健在だが、だからといってけっして過去の焼き直しになっているわけではない。前作はキーボードのキラキラメロディーをちりばめたビューティフルなギターロックが中心に、清流のような透明さと熱さのバランスの取れたサウンドだった。今作では、アコースティックギターのエモーショナルな語り引きも健在ながらも、The1975のようなインディーポップから、キャッシュ・キャッシュのようなディスコエモなどの、トレントを取り入れている。過去の魅力を保持しながらも新しい要素を加えている。

ギャラハー自身、若いころの気持ちを取り戻そうと躍起になっているというレビューもある。だが個人的にはけっしてノスタルジーになっていないと思う。なぜなら過去の傷口を掘り返し、思い出にすがるような内容ではないからだ。現在の心境を赤裸々に綴った歌詞には、リアリティーがあり、真実の声が伝わってくる。正直に言って、“Hands down(ハンズ・ダウン)”や“SCREAMING INFIDELITIES(スクリーミング・インフィデリティ―ス)”などの過去の名曲を超える曲は今作にはない。だがそれらの曲と比べて遜色がないほどクオリティーの高い作品に仕上がっている。ダサいと思われようと前へ進んでいく泥臭い熱血漢。いまだに彼がエモレジェントとして呼ばれている理由なのだ。

2017/08/03

DOWNCAST(ダウンキャスト) 『LP』

Downcast

激情エモ/ハードコアのルーツとされているDOWNCAST(ダウンキャスト)の91年に発表されたデビュー作にして最後となるアルバム。

彼らを語る前にますEbullition Records(エボリューション・レコーズ)から説明したい。Ebullition Recordsとは90年にRock Rock Rollのコラムニストであったkent Mcclard(ケント・マクランド)によって、カルフォルニア州ゴレタに創設されたレーベルだ。ケントは動物愛護や環境保全に力を注いでいる筋金入りのストレートエッヂで、レーベルに所属するアーティストは、ストレートエッヂでなければ、音源をリリースしないという徹底したこだわりを持っている。リリースされた作品のなかではとくにコンピレーション・アルバムが印象的で、『VA(EBULLITION)/HEARTATTACK』では、ケントがヨーロッパに出向き、ストレートエッヂ・バンドに声をかけ、コンピレーション・アルバムに参加してもらった作品だ。ヨーロッパか各地のライヴハウスを周り、ストレートエッヂを掲げるバンドをリサーチし、バンドのスタンスやポリシー、アティテュードへのこだわりを聞き、選び抜かれた14組を集め収録した作品なのだ。それほどストレートエッヂへの並みならぬこだわりと情熱をもった人物なのだ。

そのケントが唯一メンバーとして参加していたバンドがダウンキャストなのだ。彼らが発表した作品は4曲入りのEP『Downcast(7)』と10曲入りのフルアルバム『Downcast(LP)』の2作だ。EMBRACE(エムブレイス)のボーカルスタイルに、Helmet(ヘルメット)のスローデンポに重厚なリフのサウンドを合わせたスタイルだった『Downcast(7)』。そのEPと比べると、違い格段に曲のバラエティーが広がっている。今作でもEPのサウンドスタイルがベースとなっているが、リズムとともに叩きつけるようなリフや激しさと静けさのアップダウンを繰り返すギターなど、新しい要素を加えている。エモーショナル・ハードコアが激情コアへと進化し、カオティック・ハードコアへたどり着いた。極限まで過激に進化したバンドがConverge(コンヴァージ)とするなら、絶叫ボーカルやアップダウンを加えた部分で、エモーショナル・ハードコアを少しだけ前に進めたサウンドといえるだろう。

もしかしたら当時としては激しさのなかでも上位に入るサウンドだったのかもしれない。リアルタイムで聞くともっと違った印象だったのかもしれないが、だが今聞くとハードコアバンドならではの迫力や闘志、尋常でないテンションの高さは、あまり感じられない。暗闇で瞑想するようなシリアスや、修行僧のように厳しく内面を見つめ、煩悩を消し去ろうとするような精神の安定と、内省の葛藤が感じられる。ストレートエッヂならではのストイックさが感じられるのだ。

現在ダウンキャストは15年に活動を再開し、新曲をレコーディングしたとのこと。その後の活動は伝わってこない。現在復帰が一番待ち遠しいバンドなのだ。

2017/07/15

DESPAIR (ディスパイヤ) 『4 Years Of Decay  (4イヤーズ・オブ・ディキャリー)』

4 Years Of Decay4 Years Of Decay
DESPAIR

RETRIBUTE RECORDS 2017-05-25
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現TERRORでボーカルを務めているScott Vogel(スコット・ボーゲル)が在籍していたバンドとして知られ、94年から98年にかけて活動したニューヨーク州バッファロー出身のニュースクール・ハードコア・バンドのディスコグラフィー・アルバム。彼らもまたSNAP CASE(スナップケース)やSlugfest (スラッグフェスト)、Buried Alive(ビルド・アライブ)などのバンドと同様、チュガ・チュガ・バッファロー・ハードコア・シーンを代表するバンドのひとつだった。

ここにはデビュー作である『One Thousand Cries (ワン・サウザント・クライズ)』から『Pattern Life (パターンライフ)』『As We Breed (アズ・ウィー・ブリード)』『Kill (キル)』まで、4作品が収録され、彼らの歴史すべてがこの作品に収められている。DESPIR(ディスパイヤ)とは日本語で<絶望>を意味するバンド名で、歌詞のタイトルが示すように、ここで歌われている内容は、ブラット・ピット主演の映画『セブン』のような世界観。4の Decay(腐朽)、5のDay Of Atonement(贖罪の日)、9のSeven Layers Of Waste(7層の廃棄物)、15のSalvation's Slave(救済の奴隷)、21のTo The Depths Of Despair(絶望の深み)など、自分が抱える憎悪に対する罪悪感や、腐った世の中への怒り、考えれば考えるほど絶望の深みにはまる悪循環など、すべてが思慮的で暗い。自分が絶望と感じるすべてを歌詞にしている。

肝心のサウンドだが、スナップケースの変則的なリズムに、Earth Crisis (アース・クライシス)のスローテンポ、ギターコード、怒声を合わせた、スローテンポでグルーヴを重視し、怒声でがなり上げる展開。ニューヨーク・ハードコア以外のバンドからの影響を感じさせないドメスティクなハードコアだ。そのスローな展開、怒声、怒りをハンマーで叩きつけるようなリフやリズムは、典型的なニュースクール・ハードコアなサウンドで、彼らもまたニュースクールを象徴したバンドといえるだろう。

Hatebreed (ヘイトブリード)やConverge(コンヴァージ)など新しいスタイルのバンドたちが現れ始め、ニュースクール全盛期から徐々に衰退に向かっていた98年、彼らは解散をする。時代に取り残される前に。彼ら自身もおそらくニュースクール・サウンドへのマンネリ化が倦怠に感情が変わっていたのではないか。だからスコット・ボーゲルは、ニューヨークを離れてカルフォルニアに移り住み、環境もバンドも精神面でも何から何まですべてを変え、ゼロから再出発を図りたかったのだろう。結果、サウンドはスピーディーでエネルギッシュで闘争的で外向きな感情のテラーという、ディスパイヤとは真逆のベクトルのバンドを立ち上げた。すべては新しくもう一度、音楽への情熱を取り戻すために。

現在、オールドスクール・ハードコア・シーンを語った本やDVDはたくさん存在する。だがニュースクール・ハードコア・シーンに限っては不思議と再検証をした本やDVDが全く存在しない。もしニュースクール・ハードコアを検証した本やDVDが発売されるとするなら、おそらく彼らは外せない存在だろう。それほど一時代を象徴したバンドでもあるし、重要なバンドなのだ。

2016/09/14

Why Be Something That You're Not: Detroit Hardcore 1979-1985 (ホワイ・ビー・サムシング・ザット・ユアー・ノット:デトロイト・ハードコア1979-1985)

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Revelation Records 2010-07-06
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 アメリカン・ハードコアに精通したライター、トニー・レットマン著書による、13年に発売されたデトロイト・ハードコアを紹介した本。なぜトニー・レットマンが、デトロイトという小都市にスポットをあてたのか、その理由は分からないが、これまたすごい内容の本だ。

 その内容は79年にデトロイトで誕生したタッチ&ゴー・レコーズが、85年にシカゴに異動するまでの6年間を中心に語っている。当時のバンドの関係者のインタビューを交え、デトロイトのハードコア・シーンについて語っていく内容だ。

 なぜこの本がすごいかといえば、デトロイトのハードコア・シーンが、ほかの地域と比べると、あまりにも特殊すぎるからだ。そこにはカルフォルニアやニューヨークのシーンのような、大勢のバンドによる活気や、盛り上がりなどはない。ましてや長期にわたってハードコア・シーンが継続され、伝統が生まれる土地柄でもなかった。バンドのつながりや伝統やコミュニティー、仲間意識やライバル心、シーン内による影響など、全く存在しなかった。それらの要素が独特なシーンを形成したのだ。
 
 デトロイトで活動したバンドたちは、まるで線香花火のように瞬間に激しく燃え、瞬く間に散っていった。どのバンドも短命で、単独で行動していた。烏合の集まりのシーンなのだ。デトロイトという治安が悪く、荒っぽい気質の土地柄の人間たちがパンクな暴動を起こす。それがデトロイト・ハードコア・シーンの特徴といえるだろう。
ここで具体的に取り上げられている代表的なバンドはNecros(ネクロス)とTHE FIX(ザ・フィックス)とNEGATIVE APPROACH(ネガティヴ・アプローチ)といったバンドたちだ。3バンドとも、マイナースレットやブラッグ・フラッグ、アグノスティック・フロントなんかと比べると、日本ではあまり知られていない存在のバンドたちといえるだろう。だがアメリカでは3バンドとも、本当の意味で伝説のバンドとして語られ、ハードコア界では神格化された存在として扱われている。

 とくにネガティヴ・アプローチは、デビューが82年で、後世のバンドたちに多大な影響を与え、アメリカ・ハードコアの基礎の半分くらいを作ったと言われているバンドだ。デス声の先駆者のようなボーカル・スタイルや、パワーヴァイオレンスに多大な影響を与えたといわれるノイジーなパワフルなサウンドスタイルが特徴だ。
そしてネクロスは、デビューシングル『SEX DRIVE(セックス・ドライブ)』のプレスリリースがわずか100枚で、いまだに1stアルバムは再発されていない。アメリカン・ハードコア史上10本の指に入るレア盤として語られてきた。YouTubeが普及するまで、長らくそのサウンドが知られることがなかった。最近までそのサウンドが知られることがなかった伝説のバンドとして語り継がれてきた存在だ。

 ザ・フィックスも、デビューEP『VENGENCE(ヴェンジェンス)』の発売がわずか200枚で、このバンドもアメリカン・ハードコア史上10本の指に入るレア盤といわれてきた。だがネクロスとは違いそのサウンドは猛烈な勢いと爆音で駆け抜けるハードコア・パンク。ハードコアに進化していく原型のサウンドなのだ。どのバンドも活動期間が短く、それでいて後世に多大な影響力をあたえたバンドたちだ。

 わずか数百枚しかリリースがなかったという希少性。サウンドと精神性の両面からの後世への影響力。そしてわずかな期間しか活動しなかったという伝説。それらの要素が、デトロイト・ハードコア・シーンという特殊性を生んだのだ。これほど伝説や神話して語られるのがデトロイトならではの特徴といえるだろう。これほどデトロイトの特殊性を探り当て、スポットをあてたトニー・レットマンはすごい。アメリカン・ハードコアが好きなら、絶対必読する必要のある本だ。

2016/08/31

Descendents(ディセンデンツ)  『HYPERCAFFIUM SPAZZINAT(ハイパーカフィウム・スパジネイト)』

HYPERCAFFIUM SPAZZINAT
HYPERCAFFIUM SPAZZINATDESCENDENTS

EPITA 2016-08-01
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78年から活動を始め、Dickies(ディッキーズ)やAgent Orange(エージェント・オレンジ)と並び、西海岸のメロディック・パンクの創始者といわれるDescendents(ディッセンデンツ)の、じつに12年ぶりとなる7作目。

ディッセンデンツといえば、代名詞であるカラッと明るく爽やかなメロディック・パンク・サウンドが特徴のバンドで知られている。だがその音楽性は以外にも幅広く、ファストなハードコアの曲もあれば、トリッキーなインストメンタルな曲など、じつにいろいろな音楽をメロディック・パンクに取り込んでいた。アルバムを発表するたび、毎回違った要素を取り入れたサウンドを展開していた。

若かりしころはいろいろな音楽性を取り入れ新しいサウンドを提供することにチャレンジしていたが、9年ぶりの復活となった96年の以降は、メロディック・サウンドだけにスポットを当てたシンプルなサウンドを展開している。

今作も96年以降のサウンドの延長上にある作品で、あいかわらず良質なメロディック・パンクを展開している。先駆者ならではのオリジナルな個性である、つんのめるようなテンポで進むスラップベースは、今作も健在。独特のスピード感を持っている。前作よりも今作のほうが、いろいろなジャンルをメロディック・パンクに取り込んでいる。だがメロディック・パンクとの融合度は、いままでよりも明らかに上だ。この曲はハードコアの影響が強すぎるなど、そのジャンルの音楽を感じさせない仕上がりだ。

今作も全体的にカラッと明るく仕上がっているが、円熟した大人の味わい深さを感じる。いろいろな苦難を経験したうえでたどり着いた達観のような爽やかさだ。辛いことはたくさんあるけど、爽やかで心地よい風にあたりながらビールを飲み、人生を楽しもうぜみたいな雰囲気だ。

難解なものをいろいろと取り込んで世の中を難しく考えていた時期を経て、シンプルに考える大人になった。そんな経験と大人の渋みがにじみ出たグッドメロディーに勝るものはないのだ。今作も素晴らしい作品だ。

2016/06/20

Dag Nasty(ダグ・ナスティー)  『COLD HEART(コウルド・ハート)』

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 初期のオリジナルメンバー(Vo.ショーン・ブラウン、Gt.ブライアン・ベイカー、Ba.ロジャー・マーブリ、Dr,コリン・シアーズ)のラインナップで発表された、2曲入りのEP。インナー・エアー・スタジオにてドン・ジエンターラとイアン・マッケイによってレコーディングされ、このメンバーでのレコーディングはじつに30年ぶりとなるだろうだ。

 2曲しか収録されていないが、これがいい作品に仕上げっている。全盛期のダグナスティーのハードコアとメロディーの折衷度を6対4とするなら、ハードコア7のメロディーが3という具合。メロディーを重視していないためか、サウンド自体、むかしよりもファストで引き締まった感じがする。息を吸う暇もないくらい矢継ぎ早に捲し立てるショーンのボーカルは相変わらずハードコアしているし、ブライアンのギターは、タイトで無駄がない。性急で気合がみなぎっている。両曲全体に、ハードコアがみなぎっているいい作品だ。

2016/06/17

Dag Nasty(ダグ・ナスティー)  『Dag With Shawn(ダグ・ウィズ・ショーン)』

Dag With ShawnDag With Shawn
Dag Nasty

Dischord 2010-10-18
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 バッド・レリジョンやハスカー・ドゥと並び、メロディックハードコアの創始者のひとつとして知られるDAG NASTY(ダグナスティー)。7セコンズやH2Oなどの東海岸のメロディック・ハードコア・バンドに多大な影響を与えたことでも有名だ。ダグ・ナスティーのデビュー作『CAN I SAY(キャン・アイ・セイ)』以前に収録された、初代ボーカリスト"SHAWN BROWN(ショーン・ブラウン)"在籍していた1985年のハロウィンの日にレコーディングされた『DAG WITH SHAWN(ダグ・ウィズ・ショーン)』が、2010年に25年の時を経てリリースされた。

 現バッド・レリジョンのギタリストであり、元マイナー・スレットのベース/ギターであるブライアン・ベイカーがダグ・ナスティーを始めた経緯は、マイナースレットというバンド活動で、自分の個性を発揮しきれず、忸怩たる気持ちを抱えていたところにある。マイナー・スレットではベースを担当し、後期こそギターに代わったが、自分の演りたいことや、個性を発揮しきれなかった。そんなモヤモヤを抱えていたブライアンが、自分のやりたい音楽や、ギタースタイルを確立するため始めたバンドがダグ・ナスティーなのだ。

 当時ダグ・ナスティーが画期的なサウンドを展開しているバンドとして語られた理由は、ハードコアの2コードの部分にメロディーを導入したところにある。ハードコアのスピードにメロディーギターとボーカルを合わせたバッド・レリジョンやハードコアの分厚いギターにメロディーを取り入れたハスカードゥとは異なるアプローチのメロディック・ハードコアだったのだ。

 とくにデビュー作『キャン・アイ・セイ』は、デイヴ・スマイリーの熱く爽やかなメロディーを帯びたボーカルがブラインのギタースタイルに合わさり、正々堂々と人生に立ち向かっていくような、エネルギッシュで熱く健やかな作品だった。ハードコアのなかでも希望に満ちあふれた作品で、独特な個性を放っていた。

 改めて再発された『ダグ・ウィズ・ショーン』だが、デモ作品をリリースした作品だけあって、『キャント・アイ・セイ』にすべて収録されている曲だ。この作品のほうが粗さがあるものの、サウンド自体はそんなに変わりはない。個人的にはデイヴ・スマイリーのボーカル・スタイルが好きで、ダグナスティーの最高傑作は『キャン・アイ・セイ』だと思う。その気持ちは今も変わらない。そのなかで『ダグ・ウィズ・ショーン』のよさを挙げるなら、デイヴ・スマイリーとは異なる魅力があるショーンの歌声だろう。ショーン・ブラウンのボーカルは、デイヴとは違い、もっとハードコア寄りのスタイルだ。怒声で挑発的で矢継ぎ早に捲し立てる歌声からはハードコアそのものの熱気と闘争心を感じる。デイヴとは違い、希望に向かってキラキラと輝く爽やかさは皆無だ。未開の荒れた土地をブルドーザーのようにパワフルにグイグイ進んでいく、汗臭いほどの熱気と男臭さにあふれた歌声がショーンの魅力なのだろう。

 この作品が『キャン・アイ・セイ』の代わりに発表されていたら、このバンドの評価はもっと違うものになっていたのかもしれない。ボーカルの違いでアルバムの質感が変わることを、改めて再認識させられた作品だ。

2016/03/16

Disgrace(ディスグレイス)   『True Enemy (トゥルー・エネミー)』

True EnemyTrue Enemy
Disgrace

Closed Casket Activi 2015-04-12
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現TWITCHING TONGUES(トイッチング・タングス)のタイラー・ヤングがボーカルを務め、Forced Order(フォースド・オーダー)のケイル・トーマスがギターを担当し、カルフォルニア州オレンジカウンティーで結成されたのハードコア・バンドの15年に発表されたデビュー作。正直、ここまでいろいろなバンドを掛け持ちしていると、どれが本命のプロジェクトなのか分からないが、どのバンドも違ったサウンドのハードコアを展開している。

このバンドで演奏されているのは、ニュースクール・ハードコアの発展形サウンド。90年代に日本で極悪ハードコアと呼ばれたマローダーやオール・アウト・ウォー、コウルド・アズ・ライフなどのサウンドを進化させた。ジャンル的にはニュースクール・ハードコアをもっとメタルよりに進化させた、デスコアとでも呼ぶべきサウンドだ

その進化とは、いろいろなテクニックを盛り込んでいる。地獄のうめきのような声とモーターヘッドのようなバーボンが似合う猥雑でハスキーな歌声を使い分けるボーカル、ニュースクール・ハードコア特有の重く金属質なギターのリフを中心としながらも、ループするギターのリフや、警告音のように鳴る高音ギターなど、いろいろな要素を取り入れているギター、そして終始グルーヴに主眼を置いたスローテンポながらも、ブラストビートから、4ビートまでいろいろなリズムを刻むドラム。緊張感やタイトさ切迫した感情こそないが、テクニックに重点を置くことによって、進化したニュースクール・ハードコアを展開しているのだ。それがこのバンドの個性といえるだろう。

ヘビーロック、ハードコアというこだわりを持ちながらも、マストドンの影響が強く邪教崇拝のトイッチング・タング、オールドスクール・ハードコアの影響が強くスピーディーなサウンドのフォースド・オーダー、そしてニュースクール・ハードコアの影響が強くグルーヴィーでテクニックに重点を置いたDisgrace(ディスグレイス)と、3者3様にネクストレベルのハードコアを追求し、異なるサウンドを展開しているのだ。

どのバンドも遊び感覚ではなく、微妙に異なる一つのジャンルにこだわりを持って演奏している。だからどのバンドも本命といえるのではないか。またこの作品も、新しい形のニュースクール・ハードコアが提示されていてすばらしい。


2015/09/13

DESAPARECIDOS (デサパレシドス) 『PAYOLA (ペイオラ)』


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Desaparecidos

Imports 2015-06-28
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 15年6月に発表された2作目。じつに13年ぶりとなる作品。今回13年ぶりに2作目を発表した理由は、ブライト・アイズの活動が休止したのが原因だろう。ブライト・アイズは歪んたポップサウンドを取り入れたアコースティックで98年に発表したアルバム『レッティング・オブ・ザ・ハッピネス』で、彼らならではの田舎の悪しき風習を体現しているかのような暗くジメッとした世界観を確立した。

 その後『フィーバーズ・アンド・ミラーズ』でピアノやカントリーなどの楽器や音楽性を取り入れ、サウンドの幅をさらに広げた。そして『アイム・ワイド・アウェイク・イッツ、モーニング』で美しいピアノの音色で世界感とは真逆の明るくポジティヴなサウンドへと変容を遂げた。その後オバー・コナースト名義のソロ作品を発表し、牧歌的なカントリーなどのアメリカルーツ音楽で原点を見つめ直し、安らぎと癒しに満ちたサウンドを展開。落ち着き払った鬱な世界観こそ共通しているが、シンプルな前衛的なアコースティックから、ビーチボーイズの『ペットサウンズ』のようなに多種な音楽を取り入れたサウンドを展開し、そしてルーツ音楽への回帰を図った。アルバムを発表するたび、いろいろなことにチャレンジしてきたのだ。だがその反面、毎回異なる音楽性のアルバムを発表することによって、表現しつくし、ブライト・アイズの音楽性自体が行き詰っていった。演りたいことをやりつくした。おそらくそれがブライトアイズの休止の理由だった。

 音楽性に行き詰っていたから、またもう一度鬱から躁へ変革する必要にも迫られていた。だから13年ぶりにデサパレシドスを復活させたのだろう。そんな経緯を経て発表された今作は、オーセンティックなアメリカンロックをベースにしたサウンドを展開している。前作ではノイズギターをベースにしたエモーショナル・ハードコアであったが、今作ではノイズギターがなくなり、代わりにエクスペリメンタルなギターフレーズを導入している。“ゴールデン・パラシュート”ではバリバリ電流が流れるようなギターのリフで、“ラディカリゼッド”ではムーヴシンセのような電極がゆがんだ不協和音なギターを導入している。マイナーで実験的な音を出し、屈折したサウンドを展開している。総じてフレーズにこだわったギターロックを楽しんでいる。前作も今作も世間一般では不快といわれるサウンドのなかにポップさを見出そうという姿勢に変化はない。だが今作のほうがノイジーな尖りない分、サウンドがクリアーになり丸くなったように感じる。しかし外へ向かってストレスを発散させていく爽快感は前作以上に強固になっている。

 今作では、アメリカ社会への政治的な怒りがテーマになっている。取り上げている内容は、移民改革、オバマケア、銃規制、ウォール街のことなど、アメリカ国内で起きた様々な問題を取り上げている。とくに怒りを感じているのが、大量殺人が起きているのに銃規制を強化しないアメリカ政府への怒りや、株投資だけで働かないで莫大な利益を得るウォール街や、リーマンショックで起きた金融危機で説明責任の欠如についてだ。

 前作と同様に怒りをぶちまけ、スカッとする爽快感あふれた内容の歌詞もある。だが今作ではそれだけではなく、富裕層への嘲りや、アメリカンドリームへの皮肉もある。とくに今作で歌詞が深い内容になっているのは“シティー・オン・ザ・ヒル”。そこでは豊かさを求めてアメリカに移住する移民のことを歌っている。貧しい国から豊かさを求めてアメリカに来たはずなのに、逆に富裕層に賃金を搾取され、自国以下の低賃金で働かされという現実。貧しい自国に住んでいるほうがまだ豊かな生活を送れたと、皮肉に満ちた内容で歌っている。

 前作同様、アルバム全体にはポップで熱く、青空のような爽快感あふれるサウンドを展開している。だがその明るさや熱さのなかには、スカッとした爽快感や、皮肉を嘲笑するポップな明るさという感情が散りばめられているのだ。深みを増した表現と、前作以上に実験性を増したギターサウンドがこのアルバムと魅力といえるだろう。個人的には前作のノイジーなギターサウンドのほうが好きだが、この実験性にあふれたギターを導入したこのアルバムも、かなりいい作品だ。

2015/08/31

DESAPARECIDOS (デサパレシドス) 『READ MUSIC SPEAK SPANISH (リード・ミュージック/スピーク・スパニッシュ )』


リード・ミュージック/スピーク・スパニッシュリード・ミュージック/スピーク・スパニッシュ
デサパレシドス

バッドニュース音楽出版 2003-01-22
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03年に発表されたアメリカ中西部ネブラスカ出身の5人組によるバンドのデビュー作。デサパレシドスとは、スペイン語で戦争によって殺害された「行方不明者」という意味で、ブライト・アイズとして知られるシンガー・ソングライター、コナー・オバーストと彼の幼馴染みのデンバー・ダリーを中心に結成されたバンドだ。ボーカル兼ギタリストであるコナー・オバーストといえば、このバンド以外にもうひとつ掛け持っている、ブライト・アイズのボーカリストとして有名だ。世間的に地位も名声も手にしているブライト・アイズ以外に、コナー・オバーストがこのバンドを始めたという理由には、おそらく真逆のベクトルのサウンドと感情を表現したかったからだろう。

その真逆のサウンドとは、ノイズギターをベースにしたエモーショナル・ハードコア。だがほかのエモバンドとはあきらかに異なるサウンドを展開している。ベースになっているのはペイヴメントやセバドーなどのローファイの影響を感じるノイズギター。意図的に質の悪い音響器具を使い、ノイズを増幅させ、そこに浮遊感あるスペイシーなメロディーを合わせた。そこから感じるのは、いままで自分が築いてきたものをハンマーで粉々にするような爽快な破壊衝動。本来エモとは、繊細で触れれば崩れそうなデリケートさを穏やかなメロディーフレーズに載せ、激しいギターと高鳴るドラムングと叫び声で激情を表現し、静と動の感情がアップダウンしていく展開の音楽。だがここではセンシブな感情や内向的な表現はまったくない。あるのは外へ向かってストレスを発散していくスカッとした爽快感だ。おそらく感情のベクトルが外へ発散へ向かっている理由は、ブライト・アイズでじめっと暗いアコースティックで、音数の少ないミニマムなサウンドを追求し、静的でダウナーな感情を表現しているからだろう。だから必然的にうるさくノイジーなサウンドで苛立ちを叫びたくなったのではないか。その理由がこのバンドを立ち上げた動機ではないだろう。

とはいってもほかのエモバンドとは違い、しっかりとした個性がある。音質が悪くとことんノイジーで叫び声を上げるサウンドは、いままでエモ・バンドにはなかったサウンドだし、感情のベクトルも外へ向かっているエモはなかった。なにより、繊細な美しさを追求するエモバンドとは真逆に、あえてダーティに不快を貫こうという姿勢もいい。個性があるエモバンドを10つ挙げるなら、間違えなくその中の一つに入ってくる作品だ。


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