プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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F

2018/05/19

The Fight (ザ・ファイト) 『U.H.T.R.N.H.T.B! Promo』

Cover

ニューヨークはロングアイランド出身のハードコア・バンドの2作目となるEP。最近のニューヨークでは珍しいスタイルのバンドで、ギャングのような不良性が多いニューヨーク・ハードコアのなか、知的でユニークで異端な存在感を放っている。

そのサウンド、80年代のUKハードコアから影響に、SHEER TERROR(シアー・テラー)のニューヨークの伝統を合わせたサウンドを展開。ノイジーなギターからは、Chaos UK (カオスUK)やDischarge (ディスチャージ)からの影響を感じ、2コードでハイスピードにゴリゴリ押していくサウンドと地獄の怨霊のようなボーカルからはシアー・テラーの影響を色濃く感じる。

ぼくがユニークに感じる理由は、そのアティテュードにある。前作ではトランプ政権への批判や反キリスト、反体制的な内容が占められていた。まさにREAGAN YOUTH(レーガン・ユース)以来の皮肉と怒りに満ちたアナーコパンクだった。

今作では環境汚染と健康被害にスポットを当てている。スモッグなどの大気汚染が病を侵し、入院すれば高額医療費を取る。まさにジョージ・オーウェルの小説のような、金持ちや支配者層のためだけに、庶民が飼いならされ、搾取されことへの怒りがそこにはある。UK初期ハードコアのようにシンプルでなつかしさが際立つ作品だ。

こちらからダウンロード可能

2017/10/11

Free (フリー) 『Ex Tenebris (EX・テネバリス)』

Ex Tenebris [7 inch Analog]Ex Tenebris [7 inch Analog]
Free

Warner Proper 2017-06-15
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マサチューセッツ州はボストン出身のハードコアバンドのデビューEP。まさにハードコアのなかのハードコアといえるサウンドで、ハードコア・パンクよりのアグレッシヴで攻撃的なサウンドが魅力のバンドだ。

ほとんどが解散したHave Heart(ハヴ・ハート)からの移行組で、在籍メンバーの経歴はGive(ギヴ), Mindset(マインドセット), NYC Headhunters(NYCヘッドハンターズ), Sweet Jesus(スウィート・ジーザス)など、東海岸を代表するハードコア・シーンの第一線で活躍。とくにHave Heartは、ストレートエッヂで、自分が正しいと思ったことを行動しろと、自らのパンク思想をライブに来る観客に向かって訴え続けている熱いバンドだった。FreeもHave Heartのアティテュードを踏襲し、自分たちができる正しい行動とは?とか、無駄と分かっていてもそれでも立ち向かっていく姿勢など、意識改革や問題提起を投げかけている。

パーカー姿に怒声のボーカル、シンガロング・スタイルからは、同郷のBANE(ベイン)からの影響を多大に感じる。サウンドは前身のバンドHave Heartのテクニカルな部分やクリーンな録音を徹底的に排除し、勢いと怒りという衝動で、体力と精神力のすべてを振り絞り突き抜けていく。Have Heartをより破壊的によりノイジーにパワーアップしたサウンドなのだ。

破壊音のようにブンブンうねるベース。土石流のような勢いで迫ってくるギター。天を衝く怒りのようなボーカル。体中の気合を集め全身全霊を注ぐ攻撃的なサウンドからは、立ち向かっていく気迫と勇気に満ちている。弱さは微塵も感じない熱いサウンド。ゆるぎない信念と熱い魂を持ったハードコアバンドなのだ。

2017/09/19

Forced Order (フォース・オーダー) 『One Last Prayer (ワン・ラスト・プレイヤー)』

One Last Prayer
One Last PrayerForced Order

Triple B. Records 2017-09-22
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TWITCHING TONGUES (トゥイッチング・タングス)、HARNESS (ハーネス)、DISGRACE (ディスグレイス)などの、現在を代表するカルフォルニア・ハードコア・シーンの豪華メンバーからなるバンドの2作目。前作『VANISHED CRUSADE (バニッシュド・クルセイド)』は、IN COLD BLOOD(イン・コウルド・ブラッド)系の硬質でメタリックなギターとスピーディーなハードコア路線に、勢いと迫力がさらに増したサウンドを展開していた。

基本的なサウンド路線は今作も変わらない。だが前作よりも迫力が増している。とくに変化が顕著なのは、ニュースクール・ハードコア的なアプローチと、メタルなギターソロが増えた部分。ここでいうニュースクールの要素とは、スローテンポなリズムとヒップホップな歌い方。その要素が加わったことによって、曲のバラエティーが増えた。これほどスピーディーなハードコアを展開しているバンドがニュースクール的なアプローチを加えると、曲がばらばらになり、大抵が音のまとまりがなくなる。だが彼らの場合、ニュースクールを一部分として取り入れ、終始アグレッシヴな闘争心と熱気で統一されているから、一貫性のあるサウンドになっている。音楽に対する情熱もありモチベーションも高く、前作に引き続き、エネルギッシュで気迫に満ちたいい作品だ。

2016/04/08

face to face(フェイス・トゥ・フェイス) 『Protection(プロテクション)』

Protection
ProtectionFace To Face

Fatwr 2016-03-10
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 デビュー作を発表したレーベルである【ファット・レック・コーズ】に戻り、発表された3年ぶりとなる8作目。フェイス・トゥ・フェイスの活動25周年を記念した発表された作品だが、2011年以降の、再結成されてから発表された作品のなかでは、一番の出来ではないか。いや、むしろ全盛期である3rd『フェイス・トゥ・フェイス』に匹敵する作品だ。90年代後半の、僕が好きだったころのフェイス・トゥ・フェイスが戻ってきた。

 その戻ってきたものとは、窓を全開に開た車で全速力で駆け抜けていくような爽やかで心地よい開放感に満ちた疾走感。渋いコントラストのあるベース、カーテンから光が差し込むようなメロディーライン。カルフォルニアの空気のようなカラッ明るいメロディック・サウンド。それらは目をつぶっいても一発でフェイス・トゥ・フェイスのサウンドだとわかる、彼らならではの独特な音なのだ。

 そのメロディーラインと疾走感は、2ndアルバム『ビック・チョイス』を彷彿とさせる。今作では『ビック・チョイス』の続編のような仕上がりだ。とはいっても、『ビック・チョイス』にあった泣きじゃくるような切なさや感傷などのセンチメンタリズムは、一切ない。あるのは、どんな困難がこの先あろうが前へ進んでいく固い決意と開き直り。アルバム全体に爽やかな風のような男らしさが漂っている。

 元来彼らは似通った作品を作ることに、極端なほど抵抗をみせたバンドでもあった。前作とは違ったサウンドの作品を作るという意識が、ファン離れを起こし、悪い方向に向かうこともあった。自分たちの演りたいサウンドとファンが望むサウンドの狭間で乖離を生みだしていた。

 歳をとって丸くなったせいなのか、ファンが望むんでいるものに対して、その期待に応えてやろうとする意識とモチベーションが、今作では強く感じる。今まで封印していたメロディーと疾走感を、今作で復活させたのは、ファンを喜ばせようとする意識からだろう。その喜ばせようとする意識が、アルバムに熱意と衝動をあたえ、全体に爽やかな風を感じる素晴らしい作品に仕上がっている。ここにきて初めてコール&レスポンスという、ファンの期待に応えたのだ。

 たしかに彼らの魅力の一つであったセンチメンタリズムはなくなっている。だがもやはそんなものはぼく自身彼らに求めていない。むしろセンチメンタリズムから固い決意と開き直りに変わったことによって、40代の心境を如実に表しているのではないか。大方の人が挫折や悲しみの先にある感情を経験した年代で、もはや悲哀だけにくれるほど、同じ場所にとどまっているわけでもないのだ。そんなリアルな気持ちを反映したアルバムでもあるのだ。

 個人的には今年に入りノー・ファン・アット・オールなど、96年のメロコアリバイバルを経験し、ひさびさに20年前の熱い気持ちや衝動、なにより性急なパンク・サウンドにシビれた あのころのフィーリングがよみがえってきた。この作品もそんな意識を強く感じる作品の一つだ。個人的には今年のベスト5に確実に入ってくる作品だ。

2016/02/02

Forced Order(フォースド・オーダー)  『Vanished Crusade(ヴァネッシュド・クルセイド)』

Vanished CrusadeVanished Crusade
Forced Order

Revelation 2015-07-16
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 15年に発表されたデビュー作。今作も引き続き“レボレイション・レコーズ”からのリリース。サウンド路線は前2作と変わらない。今作では前2作で確立したサウンド路線を総まとめにし、さらに研磨したサウンドを展開している。ごつごつした部分が綺麗に整えられつつも、勢いと迫力と衝動に満ちたデビュー作といえる気合の入った内容なのだ。

 彼らの確立したサウンドとは、インテグリティーや イン・コールド・ブラッド、リングウォ-ムなどのバンドから影響を受けた、スピーディーで重くグルービィーなハードコア。上記で述べたとおり、今作でもそのサウンド路線は変わりない。だが余分な部分はそぎ落とし、強調するところは強調し、前作までのごつごつした部分が確実に磨かれ、研磨されたサウンドを展開している。

 とくに目立つのは金属板のように厚く重い低音のギターのリフのなかに妖艶に鳴り響く高音のギターソロ。そして最後に収録された、魔界に森を一人彷徨っているような不気味さを紡ぎだすアコースティックと暗く沈んだ寂寥と孤独ノイズ。

 そこには熱く男くさく立ち向かう勇気を急き立てるような闘争心と、はっとする勢いで駆け抜けていくし初期衝動にあふれている。そして強気に向こう見ずに突き抜けたあとに不気味な静けさとともに漂うに最後のアコースティック・ノイズからは、闘争心やアブレッシヴな感情から開放され、一人逃げ出し癒されているような、神秘に満ちた美しさが漂っている。最後にさらけ出した自分のダークな部分が、独特な美しさ放っている。これもダークサイドNYCに通じる亜種のハードコアの進化版の作品なのだ。


2016/01/26

Forced Order(フォースド・オーダー)  『Retribution (レトリューションEP)』

Photo

 ハードコアの老舗レーベル【レボレイション・レコーズ】に移籍して14年に発表された4曲入り2作目のEP。ここでは4曲すべてが異なるアプローチを展開している。前作との違いは、性急なスピードとスローな緩急を使った曲や、ノイズなどのバラエティー豊富なサウンドを展開している部分にある。

 1曲目の“レトリューション”は沈黙を破る地響きのようなベース音と、重く闘争心を煽るギターコード、カルトなギターソロが絡み合うスピーディーなオールドスクール・ハードコアを展開。スラッシュメタルからの影響が強いダークで怪しげな雰囲気を想像させるイントロの2曲目の“ジノシス”。ドスの効いた迫力ある怒声を張り上げるボーカルと、おいコーラスで男くささと団結信をさらに強調し、これまたスピーディーなサウンドを展開している3曲目の“スパマシー・フォーレン”。魔界の沼地を彷徨うようなノイズの砂嵐の4曲目の“Ekloh”。と、カルトな要素やハードコアという枠を堅持しながらも、いろんなことにチャレンジしているのだ。気迫に満ちた性急なスピードと妖艶なメロディーとのコントラストがすばらしい作品だ。

2016/01/25

Forced Order(フォースド・オーダー)  『Eternal War(エターナル・ウォーEP)』

Forced_order_2


 ソウル・サーチ、トウィッチング・タングス、ディスグレイス、ハーネスなどのメンバーによって結成されたフォースド・オーダーの14年に発表された8曲入りのデビューEP。

 インテグリティー、 イン・コールド・ブラッド、リングウォ-ムなどのバンドからの影響を受けて始めたらしいが、総じてスピーディーで重くグルービィーなハードコア。イン・コールド・ブラッドに影響を感じるのは、重く金属的でグールィーなギターのリフ。カルト的なメロディーのギターソロからは、インテグリティーからの影響を感じる。そしてピップホップの要素が混ざったボーカルの歌い回と矢継ぎ速に繰り広げられるスピード感からは、リングウォームの影響を感じる。90年代のグルーヴィーで金属質なニュースクール・ハードコアを、スピーディーに進化させたサウンドなのだ。

 普段はソウル・サーチ、トウィッチング・タングス、ディスグレイス、ハーネスという異なるバンドで活動している彼らがこのバンドを結成した理由は、おそらく4つのバンドのケミストリーを期待して、このバンドを結成したのだろう。カルト的とデス的な要素はトイッチングとディスグレイス。スピード感はハーネス。ボーカルの歌い回しはソウル・サーチ。ソウル・サーチ、トウィッチング・タングス、ディスグレイス、ハーネスという4つのバンドの個性と、インテグリティー、 イン・コールド・ブラッド、リングウォ-ムという3つの影響を受けたバンドの部分とが、混ざり合ったサウンドを展開しているのだ。

 サウンド的にはいろいろな要素が混ざっているが、アティードは前者のバンドとは全く異なるスタンスを貫いている。ここには悪魔崇拝や死神を崇めるようなカルト的な要素はない。あるのは社会に対して攻撃的であるアグレッシヴなハードコアだ。怒りの言葉を捲くし立てる気合の入ったボーカルと、苛立つ性急なスピード感、怒りを叩きつける金属的なギターサウンドからは、このバンドが反体制側のスタンスに立って、怒りや不満をアティテュードに掲げていることが理解出来る。これはメルファンクションとは異なる別のアプローチからのニュースクール・ハードコアの進化系なのだ。

2015/01/06

Fugazi (フガジ)   『First Demo (ファースト・デモ)』

First DemoFirst Demo
Fugazi

Dischord 2014-11-16
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 ポスト・ハードコアを代表するバンドで知られるフガジの14年に発表されたデモ集。88年にフガジを結成してインナイヤースタジオにて収録された初めてのデモ音源で、その内容は後の2枚のEPを合わせたデビュー作の『13ソングス』に収録された曲が3曲、2ndアルバム『リピーター』から4曲、01年に発表されたEP『ファニチャー』から1曲、89年にフガジが参加したコンピレーションアルバム『ステイト・オブ・ザ・ユニオン』から“イン・ディフェンス・オブ・ヒューマンズ”、02年にディスコード・レーベル創設20周年を記念して発売されたボックス・セットから“ザ・ワールド”、96年に来日したフガジのライブ音源でのちに1000枚日本限定で発売された『10/30/96 SAPPORO JAPAN COUNTERACTION』から“ターン・オフ・ユア・ガンズ”のデモ・ヴァージョンが計11曲が収録されている。

  あくまでもデモだけあって、全体的にラフな仕上がりだ。だからこの作品の最大の価値は、“イン・ディフェンス・オブ・ヒューマンズ”や“ザ・ワールド”などのレアトラックと、いままで日本限定のライヴCD、もしくはダウンロード音源でしか聴くことのできなかった“ターン・オフ・ユア・ガンズ”のレコーディング音源にあるだろう。だが細部まで目を配らせると、この作品の魅力はほか曲にもある。たとえば“ウェイティング・ルーム”では、ラフな感情で作られていて、今作ではあくまでもベースが中心に作られている。それが『13ソングス』では、ボーカルが奥に引っ込み、ギターアレンジが肉付けがされて、曲の深みが増している。そして何より面白いのは、フガジを結成して一番最初に収録されたデモなのに、作品としては一番最後の年に発表された“ファニチャー”だろう。約13年間寝かせ発表された曲だが、フガジは似通った作品を作らないバンドだし、アルバムを重ねるごとに、新しいエッセンスが加わえ、技術的に確実に進化をしている。だがここでは初期のギターのフレーズがループするよさを残しつつも、突如激しくなるパートの部分が洗練されたギターサウンドを肉付けした形に仕上がっている。初期の荒削りなよさと後期の技巧がうまいこと混ざり合っているのだ。

 上記のような初期と最終期がまざった珍しい曲もあるが、デモだけあってやはり全体的に完成度は低い。だがここではバンドを結成した当初の生々しい感情が詰まっている。とくにトリッキーで変則的なリズムと、力強く爪弾くギターアレンジには、どこにもないオリジナルなサウンドを作ってやろうとする気迫を感じ取ることができる。青春時代を真空パックに閉じ込めたような青々しいころの彼らが見える作品なのだ。


2014/09/20

Fartz (ファーティズ)  『Because This Fuckin World Still Stinks (ビコウズ・ディス・ファッキン・ワールド・スティンクス)』

Because This Fuckin World Still StinksBecause This Fuckin World Still Stinks
Fartz

Alternative Tentacles 1998-10-13
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 シアトルを代表するハードコア・バンドで、のちに加入するアキューズドのボーカル、ブレインが在籍していたことで知られるファーティズの98年に発表された3枚のEPをまとめたベスト・トラック集。

 その内訳は、1~9曲目までは81年に発表されたデビューEP『ビコウズ・ディス・ファッキン・ワールド・スティンク....』から全曲収録。10~25曲目までは、82年に発表されたEP『ワールド・フル・オブ・ヘイト』から全曲収録。26~35曲目までは90年に発表されたEP『ユー,ウィー・シー・ユー・クロウィング』から全曲収録。いままで発表された全曲を収録し、CD化された。

 反レーガン政権のイベントに参加したり、ポリティカルな姿勢や歌詞もさることながら、サウンドやジャケットデザインも、初期クラスや初期ディスチャージからの影響が強いハードコアだ。ただこのバンドがクラスやディスチャージのコピーで終わらない理由は、曲を1分台にファストに縮め、メタルのギターソロを導入したところにある。その3つの要素が融合して、このバンドでしかありえないスタイルのハードコアのスタイルを確立したのだ。

 『ビコウズ・ディス・ファッキン・ワールド・スティンク....』は、クラスからの影響が強く、ギターはパンクのように軽い音で、メロディー中心のサウンドだ。『ワールド・フル・オブ・ヘイト』はギターが重く分厚くなり、ギターソロがなくなっているのが特徴だ。ディスチャージからの影響が色濃くなり、ファストで重いサウンドだ。『ユー,ウィー・シー・ユー・クロウィング』は、8年ぶりという作品だけあって、前2作とは変わった部分がある。ギターソロが復活し、4ビートでスローテンポになった。ギターはノイズギターと2コードギターの2本で、コードの音の厚みにバリバリ響くノイズが加わり、さらに深みが増した作品に仕上がっている。

 個人的には『ビコウズ・ディス・ファッキン・ワールド・スティンク....』の曲が一番好きだ。その理由はパンクとハードコアやメタルを混ぜたオリジナルなスタイルがあるから。だが全曲通じてむしゃくしゃした気持ちや怒りを叩きつけるボーカルや全曲ファストで2ビート2コードをベースにしている部分では共通している。そのむしゃくしゃした怒りを叩きつける姿勢が最高だ。あとに結成するアキューズドとは真逆のアティテュードなのが面白い。まさにハードコアの名盤の1枚に入る作品だ。

2014/08/16

fucked up 『Glass Boys』

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ホステス 2014-06-24
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 14年に発表された4作目。前作のロック・オペラとはうって変わり、ここでは1stアルバムのような原点回帰なサウンドを展開している。今作では、シーン自体が硬直化し、無害なバンドたちばかりが増えた現在のパンクシーンを憂い、かつてすばらしかった過去のパンクシーンのような、活気を取り戻すことがテーマにしている。精神的な意味で言えば、ラブソングなどのハッピーソングを歌う、無害なバンドたちばかりが増えた現在のパンクシーンを痛烈に批判し、70年代のパンク・バンドのような、闘争的で有害なパンク・アティチュードを取り戻す、ということなのだろう。そのアティテュードが反映されているサウンド面では、かつてセックス・ピストルズのジョニー・ロットンが、「ロックは死んだ」と発言したことによって、古きスタイルのロックを解体し、今までになかった新しい形のロック・サウンドを提示したように、ロックを新しく生まれ変わらせることがテーマになっている。

 今作では前作で確立したハードコア・オペラを辞め、『ケミストリー・オブ・コモン・ライフ』で確立したサウンド・フォーマットに、60年代のサイケやREMなどメロディーを加え、色彩豊かな作品に仕上がっている。6分代の曲が中心だった前作よりも3分から4分台の曲が増え、時間が大幅に短縮されている。たとえば“サン・グラス”では、アコースティックと女性コーラスの軽快な音に、熱く気合の入ったボーカルの怒声を加えることによって、さわやかさと熱汗という相反する要素が混ざり合う奇妙なサウンドを展開している。“ワーム・チェンジ”では、ダグ・ナスティーのような元気なメロディーと60年代の暗く陰りのあるサイケデリックなメロディーに、ハードコアの分厚いサウンドを融合してミステリアスなサウンドを展開している。総じて木陰でまどろむのような明るいメロディーが中心で、そこに相反する熱さや気合などのボーカルが加わることのよって、二律背反を強調し、新しい形のハードコアのスタイルを提示している。

 だがボーカルの迫力こそ相変わらずだが、『ケミストリー・オブ・コモン・ライフ』とは違い、サウンドの前へ進んでいくような突破力や気合やパワーといった熱量がない。あるのは気だるさと休憩しているときのようなゆるさだ。爽やかさと熱汗のコントラストが、感情的に中途半端になっている。今作のテーマである、前衛的なパンクであろうとする姿勢が、返って逆効果を招いてしまった。演奏技術や新しいサウンドを追求するあまり、表現しようとしている感情が置き去りになってしまっている印象を受けた。サウンド的には新しい形のハードコアを提示したことは間違いないが、彼らの持ち味であるストロングなハードコアの突破力とパワーが失われてしまっているところが残念に思えた。

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