プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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K

2017/11/02

The Kominas (ザ・コミナス) 『Stereotype (ステレオタイプ)』

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マサチューセッツ州出身のパキスタン系アメリカ人のよるパンクバンドの15年に発表された4作目。彼らはマイケルムハンマドの小説、『Taqwacores(タクワコア)』によって、その存在を世間に知られるようになったバンドだ。

彼らは政治的な問題を歌うよりも、イスラム教徒の世間的な話題に重点を置いているという。そのためそんなにシリアスなアティテュードを持っていないようだ。あくまでも音楽に重点を置いた活動をしているという。

その音楽性は、トルコやイランなどの中近東の音楽やパンジャブ民族音楽、サーフロック、レゲェやダブと、パンクとの融合。1作目の『Wild Nights in Guantanamo Bay(ワイルド・ナイツ・イン・グアンタナモ・ベイ)』で中近東音楽とパンクとの融合を目指し、2作目の『Escape to Blackout Beach(エスケープ・トゥ・ブラックアウト・ビーチ)』でアジアンなメロディーに、スカやレゲェを融合した。3作目の『Kominas(コミナス)』ではスカやレゲェを突き詰めた。そして4作目となる今作でも、前作のレゲェとパンク路線を踏襲している。

とくに変化したのはリズムで、スローテンポな曲が増えている。“Again & Again”は低音グルーヴのレゲェな曲で、“See Something, Say Something”は空間を切り裂くダブな曲。全体的にパンクな曲は少なくなったが、バラエティーに富んだレゲェの曲が増えた。そこには南の島をイメージさせるトロピカルで美しいメロディーがあり、ゆったりとした脱力ムードが漂っている。そこには民族問題や社会問題をシリアスに捉えず、社会風刺としてとらえているような穏やかさがある。

ひとつの音楽性にとどまることを嫌うバンドなのだろう。この作品でもいろいろなことにチャレンジしている。意欲的な作品だ。

 こちらから購入可能

2011/12/29

THE KOMINAS/ザ・コミナス

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 11年のクリスマスに配信された10曲入りの3枚目。個人的にはもっとアラブっぽいメロディーのサウンドを期待していたが、ほとんどの曲がラモーンズ直系の初期パンク。しかもかなり丁寧に演奏されている。だが彼らにとっては、新境地を開いた作品といえるだろう。地鳴りをあげるようなギターコード、深い地の底から湧き出るようなゆったりとしたリズム、まるで彼らが生息しているアンダーグランドシーンを体現しているような扇情的なパンク・サウンドだ。またところどころに、アラブの要素を取り入れている。たとえば3曲目の“ディスコ・アンクル”や10曲目の“Bhung Ho”など、アラブ特有の神秘的で弛緩した気だるいメロディーがある。個人的にはもっとラディカルなパンクサウンドに、アラブのメロディーを取り入れて、彼らにしかありえないサウンドを展開して欲しかった。そうすればもっと、面白い作品に仕上がったのでは。

 でもこれだけクオリティーの高い作品を無料で配信するところに、彼らの音楽に対する意気込みを感じるし、パンクを貫く姿勢は評価できる。個人的には、もっと有名になって欲しい。

                    無料ダウンロードはこちらから

2011/12/24

カディスフライ『...セット・セイル・ザ・プラリィー』

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Kaddisfly

Sub City Records 2007-03-06
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 よりプログレッシヴな方向に進化した07年発表の3枚目。前作よりもさらに実験的になった。今作ではポスト・コアに、プログレやジャズ、メタル・コアなどの要素を加え、さらにマニアックで複雑な作品に仕上がっている。とくにヘヴィーなサウンドと繊細なボーカルとメロディーとの絡みがすごい。

 今作は世界中を旅した旅行記で、その季節にその場所で感じた大自然と雰囲気がコンセプトになっている。何月何日にその土地で感じたことを歌詞にし、その雰囲気をサウンドに置き換えている。

 くわしく書くと、1曲目の"夏至"は、6月22日の出来事。2曲目の"キャンプ・ファイア"は、6月23日、メキシコのヌエボ・ラレドにて。3曲目の"波"は、7月12日、ジャマイカのキングストン。4曲目の"ハーバー"は、8月8日、トリニダード・トバゴのポート・オブ・スペインで。5曲目の"鳥"は、9月8日、ガボンのリヴールヴィル。6曲目の"雲"は、10月18日、イスラエルのエルサレム。7曲目の"帝国"は、11月5日、ロシアのモスクワ。8曲目の"冬至" は、12月21日、ノルウェイのトロムセー。9曲目の"雪"は、12月22日、アイスランドのレイキャピーク。10曲目の"レール"は、1月19日、カナダのケベック。11曲目の"シルクロード"は、2月27日、インドのデリ。12曲目の"マーキュリー"は、3月6日、中国の西安。13曲目の"時計じかけ"は、4月13日、中国の大同。14曲目の"森"は、5月1日、ロシアのクラスノヤルスク。

 これが本当にあった出来事なのか、空想の話なのか、 資料がないので正確なことは分からない。ただかなりの臨場感を持ったサウンドであることは確かだ。

 たとえば、“波”では、夏の青い海を眺めて切ない気持ちになるような軽やかで憂鬱さを含んだピアノが印象的。“鳥”は、シタールのようなトランシーなギターが、自分の存在がちっぽけに感じるような壮大な音を奏でている。8,9曲目は雪国ならではの幻想的なメロディーが魅力。“森”は、激しいギターのなかに中国的なメロディーが絡み、ささくれだった空気を急速に洗い流すような、やすらぎに満ちた世界を演出している。

 ときには陶酔するほど美しい光景を想像させるメロディーもあれば、争いが絶えない過酷な環境の土地で殺伐とした重厚なリフを奏でている曲もある。その土地の季節と雰囲気を、メロディーに置き換え表現している。そこには、過酷さ、切なさ、やすらぎ、か弱さ、冷たさなど、異国で感じる違和感や混乱がある。情緒不安定なほどの感情のゆれを表現したメロディーが、この作品の最大の魅力なのだ。

 ギターアレンジやメロディーが多彩な大自然をフィーチャーしたハード・コアだ。そういった意味では、中期レンチに近い。トランシーでラウドなエクスペリメンタル・ハードコアというべき、新しい形のハードコアをこの作品で提示した。ただ残念なのは日本での評価が低い点だ。個人的には07年のベスト3に入る作品だ。

 なお08年にkileの脱退を期に、現在は活動を休止している。残りのメンバーで結成されたウォーター&ボディーズが活動の中心なようだ。いま復帰が期待されるバンドなのだ。

2011/12/21

カディスフライ『バイ・アワ・インテンション;ウィル・バイ・ユー・ア・ユニコーン』

Buy Our Intention We'll Buy You a UnicornBuy Our Intention We'll Buy You a Unicorn
Kaddisfly

Hopeless Records 2005-03-08
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 ポートランド出身、ポスト・ハードコアバンドの05年に発表された2作目。彼らはフォール・オブ・トロイやチオドスなどの代表される、スライス以降のポスト・ハードコアシーンを代表するバンドだ。世間的にもあまり注目されていないマニアックなシーンだが、プログレッシヴでカオティックで、独自のサウンドを持ったバンドたちばかりだ。

 サウンド的には彼らは、グラスジョーから発展した。だが彼らはスクリーモではない。ベースとなるグラスジョーのような激しさと軽やかさが複雑に入れ替わる展開のなかに、パンクやジャズを取り入れ、軽やかなを部分を、さらに突き詰めている。なによりまず彼らにはスクリーム(叫び)はない。そこにホット・ウォーター・ミュージックのようなシュルレアリスムのアート性を加え、特異な美意識と独特の世界観を構築している。

 その世界観とは、シャボン玉のように軽やかで浮遊感と、赤ちゃんのガラガラのようなやすらぎを、奇怪なロボットの絵を用いて表現している。ハリケーンのような轟音のなかで渦巻く破壊衝動と透明で切なく儚い美しさ。まるで子どもがオモチャをガラスに向かって投げ、たたき割るような、純粋な破壊衝動。その浮遊感とある種の混乱が魅力のバンドだ。

 歌詞は、プリメーラの自然災害や環境破壊などについて歌い、社会問題にも言及している。この時点ではまだサウンドが固まっていない印象をうけるが、彼らにしかないオリジナルティーを提示した。ポスト・ハードコアシーンでは新しい価値観を提示したバンドだ。

2011/10/07

ザ・コミナス『エスケープ・トゥ・ブラックアウト・ビーチ』/THE KOMINAS『Escape To Blackout Beach』

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10年発表の7曲入りEP。録音状態がよくなったためか、前作と比べると、妙に落ち着いた印象を受ける。軽快なメロディーと、リズムに重点を置き、スローテンポになった。

今作ではヴァラエティーに富んだ作品に仕上がっている。ファンクギターを強調した1曲目のシルヴァーから、レゲェー調のTunnn、Armoはハードコアと、いろんなジャンルに手を出している。

特筆すべきは、パンジャブ語で歌われているMaanji。アラブ特有の歌い回しとメロディーで、妖しげなムードと、アラブ特有の勇ましさと誇りを放っている。迫力こそなくなってしまったが、けだるさの入り混じったアラブ独特の攻撃性は健在。メロディーは独特で、いい作品。

2011/10/04

ザ・コミナス 『ワイルド・ナイツ・イン・グアンタナモ・バイ』

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Kominas

2008-08-19
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 これはすごい。ひさびさにパンクと思えるアーティストに出会った。ストレートエッヂ、ヴィーガン以降、思想的にパンクは頭打ちかと思っていた。だがまた新しい思想が出てきた。その名もタクヮ・コア(Taqwacore)。敬虔なイスラム教徒によるパンクなのだ。

 タクヮとは信仰深さを意味するアラビア語で、コアはハードコアのコア。彼らは敬虔なイスラム教徒だが、けっして原理主義者ではない。ここで歌われている内容は、イスラム原理主義や同性愛への批判と、ムスリムを差別するアメリカ社会への抗議。アメリカもイスラムをも批判するといった、けっして右寄りに考え方に偏らない中庸的な思想を持ったバンドなのだ。

 その立派な思想もさることながら、彼らの音楽性も面白い。08年に発表されたデビュー作では、ジャームスやランシドなどのアメリカン・ハードコアをベースに、スカやアラブやインドなどのオリエンタルティックなメロディーを合わせたサウンド。いままでオリエンティックなメロディーを取り入れたバンドは数多くいたが、彼らとはあきらかに違う。その違いはメロディーを強調していない点にある。たいていのバンドが聴きやすいオリエンティックなメロディーを、神秘的な装いを持って取り入れているが、彼らの場合、神秘的なメロディーの陰にあたる部分を際立たせ、不穏な空気感を演出している。意図的に他所からメロディーを持ってくるのではなく、元来彼らのなかに染み付いているものが反映されている感じだ。オリエンティックなメロディーを知り尽くしているから、隠された部分も違和感なく表現できる。

 そのサウンドから感じる雰囲気は、昼間は40℃を越え、夜は零下を越える砂漠の夜のような気だるさと過酷さ。アラブ特有の単旋律的で中立音階のみで作られるメロディーからは、うだる真夏の太陽のような気だるさと、暗殺を指示するシグナルのような不気味さを感じる。

 とくに印象的なのが、12曲目の”スイサイド・ボム・ザ・ギャップ”。そこでは無垢な青年に自爆テロを強要するタリバンを痛烈に批判している。イスラム教徒であることに誇りやアンデンティティーを持ちながらも、痛烈にタリバンを批判している。イスラム教徒でありながらタリバンを批判する彼らは、まぎれもなく反社会的で、パンクだ。

 総合的にアメリカ、イギリスが代表するロックシーンが停滞期に突入し、新たな価値観や音楽を創出できないでいる。そんななか、彼らは異文化から新しい思想をもたらした。これは10年以降のパンク・ハードコアシーンを代表する名盤だ。

2010/03/08

ケント『ロッド』

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Kent

2009-11-17
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 デジタルサウンドにますます拍車がかかった09年発表の9作目。ここでは4つ打ちのビートや、水面を弾くようなシンセ音など、機械的な音を大々的に取り入れている。その反面バイオリンやアコースティックギターなどの古典的な楽器も導入し、クラッシク音楽からの影響も強くなり、新しさと古さの入り混じった独創的なサウンドになった。

 個々の独創的なアレンジが緻密に構築された複雑なアンサンブル。そこには、革命前夜の末期ロシア帝国の暗さを髣髴とさせる憂鬱さや心の荒廃、緩やかな風に当たっているときのような心地よいやすらぎ、劇的な出来事が身に降りかかったときのようなショックといった感情が儚くも切ない美しいハーモニーを奏でている。

 まるでビーチボーイズがサーフロックから宅録ポップに移行したように、このバンドもそういった方向に向かっている。

2010/02/17

ケント『TILLBAKA TILL SAMTIDEN』

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Kent

Sony / BMG Import 2008-02-06
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 ギターメロディー中心のサウンドから、キーボードやシンセ、デジタル音を全面に取り入れたサウンドに変わってしまった07年発表の8作目。もはや清冽な美しいサウンドは失われた。

 最初はデジタルに変わりがっかりしたのだけど、だが聞き込んでいくうちにある疑問が頭をもたげた。ケントは『ヴァペン&アミュニション』以降、ピカソの抽象画のように、醜さのなかにある美しさを追求しているように思える。まるで健康的に太った女性を、躍動感や至福あふれる描写で、美を見出したように。

 今作では、薄暗く妖艶なまでのエロティックさが渦巻いている。暗闇のなかで鈍い光を放つようなビリビリと響く電子音や、ソフィスケートされた妖しげな警告音、暗闇で音がこだまするリヴァーヴのかかったボーカルなど、まるで泥酔状態のときに幻覚を見るような、サイケデリックな感覚がある。その視界がメラメラと揺らめく歪んだ感覚や、危険を感じながらも甘い誘惑のある世界が、非常に美しく、エロティックだ。

 ケントにギターメロディーの清純を求めるのか、電子音が混沌と渦巻いている不純なサウンドが好きなのか、それは個人の好みでしかない。だが、彼らが美しさを追求している点は変わらない。独自の美を追求し、同じ作品を作らない姿勢、ぼくは頭が下がる。個人的には好きな作品だ。

2010/01/19

ケント『THE HJӒRTA&SMӒRTA EP』

The Hjarta and SmartaThe Hjarta and Smarta
Kent

BMG International 2005-12-20
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 西欧クリスチャン世界の独特な美しさを表現したと思われる05年発表の5曲入りEP。オーロラのように暗い夜空に音が滲み出すシンセの音から、水底から気泡がポコポコとわきでるような浮遊感あるギターのメロディー、子供が合唱する聖歌隊のコーラスなど、どれをとっても清らかで、心を洗われるような純真さに満ちている。

 前作は孤立した孤独や喪失といったコンセプトになっているように思われた。それと比べると、今作では明らかに再生や開放といった方向に向かっている。まるで荒んでいた心を神の教えを信じることによって、清らかさややさしさを取り戻した感じだ。違った角度から捉えるなら、今までの殻に閉じこもって孤独になっていた自分の心を改悛したことによって、他人に心を開いたともいえる。サウンド的にも今までとは明らかに違った美しさを追求している。また違った個性がある作品だ。

2010/01/11

ケント『DU&JAG DÖDEN』

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Kent

BMG International 2005-05-31
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 前作の延長上にあるサウンドの05年発表の7作目。マイナーコードを主体としたギターや、教会の鐘の音やピアノの単音で構築されたメロディーなど、ケントにしかありえない独特なサウンドは今作も健在。それにしても今作では、何かを喪失したような空虚さに満ちた曲が目立つ。素朴なアコースティックギターで寂しげな静謐を爪弾くメロディーの曲からは、まるで世界のどこともつながっていないような孤立した孤独を感じる。誰にも理解されず、本当の気持ちを打ち明ける友達もいないような類の孤独。しかもそこには起き上がっていくような強さがない。落ち込んで憂鬱になるような人間の弱さが漂っている。

 でも最後の2曲に曇り空が晴れるような曲がある。そこには悩みが解決し希望の灯りが差し込めるような明るさがある。それが唯一の救いか。

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