プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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L

2018/05/30

The Lion's Cage(ザ・ライオンズ・ケージ)  『Raw 2017(ロウ2017)』

Thelionscageraw2017cover


ニューヨークはブルックリン出身のハードコア・バンドのデビュー作。日本語でライオンの監獄と名付けられたバンド名からは、実際のところは分からないが、なにやらスラム街の閉ざされた監獄という隠語のように感じる。

彼らのアティテュードとは、MADBALL(マッド・ボール)やSheer terror(シアー・テイラー)やMERAUDER (メラウダー)などの流れをくむギャングの要素が強いハードコア。歌詞には“綱渡り”や、“運の悪さ”、“プレッシャー”など、ギャングの世界を彷彿とさせる死と隣り合わせな緊迫感に満ちた言葉が並ぶ。

緊迫感に満ちた静けさから濁流のような激しさに変わる展開からはマッドボールの影響を色濃く感じ、そこに狂ったような激しスピードと、躁病的なテンションのボーカルを加えた。

レコーディング状態が悪いためか、若干音の悪さを感じる部分が残念ではあるが、だがメタルからの影響を感じない攻撃的なハードコア・スピリットだけで突き抜けていく初期衝動には、アグレッシヴさがあるし、不良の匂いがする。まさにやさぐれたハードコアなのだ。今後が期待できる作品だ。

 こちらからダウンロード可能

2017/10/23

LIFELESS(ライフレス) 『 No Love For The World (ノー・ラブ・フォー・ザ・ワールド)』

Index

No Love for the WorldNo Love for the World
Lifeless

Fwh Distribution 2011-10-20
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ニュージャージ出身のニュースクール系ハードコアの11年に発表されたデビュー作。彼らもまたアースクライシス以降のスローでグルーヴを重視したニュースクール・ハードコアから進化したバンドなのだ。サウンド的にはMERAUDER(メラウダー)やALL OUT WAR(オール・アウト・ウォー)をもっとヘヴィーに、金属質なリフとデスメタルの要素をさらにパワーアップさせたサウンドだ。

巨大なハンマーで叩き潰すような暴力的なリフ。苦痛のなかで生まれたうめき声や怨霊に近いボーカルの怒声。そこにあるのは圧倒的な音の迫力と憎悪や苦痛。バンド名のLIFELESS(ライフレス)とは、生気や覇気がない、死んだようなという意味。そのバンド名が示す通り、彼らの歌っている内容は、生きることへの苦しみや憎しみや絶望など。おおよその自己破壊的な要素が詰まっている。

アティテュードこそ真逆の位置にいたEARTH CRISIS(アース・クライシス)とメラウダーだが、外の世界に対して闘争的だった部分で共通していた。その2バンドと比べると、彼らのサウンドはあきらかに内省に根付いている。ニュースクール・ハードコアのなかでも異質なアティテュードを持った存在だったといえるだろう。その憎悪と苦痛に彩られた迫力あるサウンドは、彼らにしかない魅力が詰まっている。

2016/08/09

letlive.(レットライブ)  『If I'm The Devil... (イフ・アイム・ザ・デビル)』

IF I'M THE DEVILIF I'M THE DEVIL
LETLIVE

EPITA 2016-06-09
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おそらく現在のへヴィー系音楽の最前線にいるのは、彼らだろう。メタリカなどのスラッシュメタルから、パンテラのパワーメタル、リンプビズキッとなどのニューメタルとシーンが変遷し、そして現在、スリップノットやイン・フレイムなどのメロデス・デスコアが音楽シーンの中心いる。どのバンドもスリップノットやイン・フレイムの影響下から抜け切れず、デス声を中心に据えた音楽を展開している昨今、彼らは主流派とは全く異なるアプローチで、新しい形のへヴィネスを提示している。

とくに前作『ザ・ブラッケスト・ビューティフル』は、コンガのリズムをヘヴィネスサウンドに取り入れ、新しいスタイルのへヴィーロックを展開していた。トライバルなリズムが闘争心を掻き立て、性急なスピード感が苛立ちといった感情を煽っていく。そして怒りの感情をマックスまでに振り切った、ボーカルのシャウト。そこには理性のかけらもない本能だけで動く暴力衝動がある。理性を失った究極の躁病的なサウンドだったのだ。

そんな激しかった前作と比べると、今作では静かさや穏やかさなどの、鬱な感情を追求している。今作でもア・トライブ・コールド・クエストやカニエ・ウエストなどのヒップ・ホップから、ニューロマンティックやゴズ、ヨーロッパのクラッシク調のメロディーなど、いろいろな要素をハードコアに取り込んでいる。いろいろな要素を取り込む無国籍で雑多なハードコアという姿勢は変わらないが、そのなかでもとくに目立つのがスローテンポのバラード曲の多さ。スピーディーな躁から、スローテンポな鬱へと180度異なるアプローチのサウンドを展開している。

ここにあるのは叙情的で、繊細さと妖艶な美しさのある穏やかなメロディー。繊細さの奥にデリケートな神経質さを感じる。メロディックになったといっても、けっしてポップで大衆受けするノー天気な明るさを追求しているわけではない。今作もパンクな姿勢はブレることなく一途に貫かれている。とくに3曲目の“グッド・モーニング・アメリカ”は、白人警察から不当に暴力を受ける黒人や、マルクスとゲバラの理想論を掲げ、貧困からの脱却など、差別と虐待を受けている弱者の気持ちを代弁している。そこには迫害されている者たちの悲惨な苦しみの感情が、切実なほどひしひしと伝わってくるのだ。

レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンから受け継ぐ、政治的なメッセージは今作でも健在なのだ。サウンドが変わったからといっても、反逆のパンクバンドでいることに変わりはない。今作もまぎれもなくパンクロックの最前線にある作品なのだ。

2015/11/06

Leeway (リーウェイ)  『Desperate Measures (デスパート・メシャース)』


Desperate MeasuresDesperate Measures
Leeway

Profile Records Inc. 1991-04-08
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91年に発表された2作目。前作に続き今作もブラジルのスラッシュメタル系レーベルマーキュリーから、全曲リマスタリングされ、8曲のボーナストラックが追加。デラックス版として再発された。

 おそらくこの作品が彼らの最高傑作ではないのか、なぜなら前作のスラッシュメタルの折衷といういい部分の踏襲しつつも新しい要素を加えているからだ。今作では、前作と比べるとスピードこそ遅くなったが、その分グルーヴ感やラップやパワーメタルなど、幅広い音楽性を取り入れている。とくに進化の跡を感じられるのが、“ソフト・ウェイ・アウト”と“2ミニット・ワーニング”と“ザ・フューチャー (エント・ワット・イット・ユーズド・トゥ・ビー) ”。ソフト・ウェイ・アウト”ではザクザクと刻む重たく金属質のギターのリフを取り入れ、“2ミニット・ワーニング”ではラップ歌いまわしを、ハードコアに取りいれた。そして“ザ・フューチャー(エント・ワット・イット・ユーズド・トゥ・ビー)”ではファンクのリズムをメタル・ギターに合わせたサウンドを展開している。どれもあとにニューヨーク・ハードコア(とくにニュースクール系のバンドで)の主流となるサウンドを、いち早く取り入れているのだ。

 もはや大幅にメタルを取り入れるとハードコアとは呼べないサウンドかもしれないが、当時ニューヨークではメタルとハードコアの両方のファンから愛されていた稀有な存在だったらしい。個人的にこの作品から、ハードコアらしさを感じることが出来るのが、金属質なギターのリフから感じられる、冷たく暗く緊迫感に満ちたシリアスな空気くらいだ。サウンドそのものはメタルだ。

 だがこの作品は、マッドボールやバイオハザードなどの後世のバンドたちに、多大な影響をあたえた作品に間違いはない。なぜなら彼らが影響を受けた金属質なリフやラップの歌いまわしは、この作品の音からのインスピレーションを色濃く感じるからだ。そういった意味ではニューヨーク・ハードコアの歴史を語る上で重要な作品といえるだろう。

2015/10/24

LEEWAY (リーウェイ)  『BORN TO EXPIRE (ボーン・トゥ・エクスパイヤ)』


BORN TO EXPIREBORN TO EXPIRE
LEEWAY

MARQUEE RECORDS 2014-12-12
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 ニューヨーク・ハードコアで、伝説のクロスオーバー・バンドとして語られているリーウェイの88年のデビュー作。長いこと入手困難になっていた作品だが、ブラジルのスラッシュメタル系レーベルマーキュリーによって、全曲リマスタリングされ、9曲のボーナストラックが追加。デラックス版として2015年に再発された。

 彼らがなぜ伝説のバンドと呼ばれているかといえば、後世にあたえたインパクトにある。自らをニューヨーク・シティー・ファイネスト(極上)・ハードア・メタルと呼び、スラッシュ・メタルとハードコアを折衷させた。メタルとハードコアのクロスオーバーといえば、D.R.Iやスイサイダル・テンデンシーズが有名だ。だが彼らの場合、クロスオーバーの折衷率が違う。当時ニューヨークで活躍していたアグノスティック・フロントは、あくまでもハードコア中心のサウンドで、比率からすると2対8くらい。あくまでもギターソロの部分でしかメタルを取り入れていなかった。そしてスイサイダル・テンデンシーズやDRIでは、メタルとハードコアの折衷率が5対5くらいまで増したが、あくまでもハードコアがベースでメタルを肉付けした形だった。

 しかし彼らはメタルとハードコアの比率を3対7まで引き上げた。もはやギターのリフやメロディー、ハイトーン気味のボーカルからは、アンスラックスの影響が強いスタッシュメタルをベースにしたサウンドなのだ。ここまでくるとスタッシュ・メタル・バンドといわれても過言ではない。だがなぜ彼らがハードコア・バンドとして捉えられているかといえば、ニューヨーク・ハードコア・コミュニティー出身という出自と、怒りに満ちた歌詞とヒップホップの要素を取り入れた部分にある。

 その歌詞の内容は、黒人とユダヤ人が襲撃しあう恐怖と暴力に満ちた日常や、欺瞞に満ちた宗教についての社会問題や、困難な壁に立ち向かっているリアルな自分の人生について歌っている。モービット・エンジェルとナパーム・デスの違いが、サウンドよりも歌詞の内容にあるように、リーウェイのハードコアも、歌詞にあるのだ。緊迫感に満ちたリアルな日常への怒りに満ちた歌詞は、間違いなくハードコアなのだ。

 その直截的な怒りの内容を歌った歌詞と、ハードコアコミュニティー出身という出自からかもし出されるシリアスで緊迫感に満ちた空気が、スラッシュ・メタルなサウンドに独特のハードコアエッセンスを加えているのだ。それがリーウェイにしか演ることのできないサウンドを生み出しているのだ。

 彼らがスラッシュ・メタルにハードコアの空気感を加えたサウンドは、結果的にニューヨーク・ハードコア界に自由さをもたらせた。90年代に入り、クリシュリナ教を取り入れたシェルターや、ニューウェヴの要素を加えたクイックサンド、ピップホップを取り入れたマッドボールなど、いろんなサウンドを柔軟に取り入れたバンドがニューヨーク・ハードコアでたくさん現れた。そういった意味では先駆者である彼らの功績は高いのだ。

2014/04/11

Letlive (レットライヴ)  『The Blackest Beautiful (ザ・ブラッケスト・ビューティフル)』

Blackest BeautifulBlackest Beautiful
Letlive

Epitaph / Ada 2013-07-08
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 13年発表の3作目。彼らの最高傑作と呼ばれる作品。事実イギリスのハードコア、ヘヴィーロック系専門雑誌の『ロック・サウンド誌』にて、2013年のアルバム・オブ・ザ・イヤーに選ばれた。それほど世間的な評価の高い作品だ。

 前作はハードコアの延長上にあり、リフューズドなどの影響から抜けきれない作品であったが、今作ではどのバンドからも影響を感じさせない、彼らしかありえないオリジナルなサウンドに仕上がっている。サウンドのベースになっているのが、トライバルで呪術的なアフロ・ビートのリズム。前作のサルサのからさらにリズムを追求し、アフロビートにたどり着いた。そこに2ビートのハードコア、メタルコア、デジタル・ノイズ、メランコリーなメロディーギター、ドラマティックで絶望的な悲しみのクラッシクのキーボード、ソウル、ファンクなどを加えた。

 そしてこの作品をさらに複雑なものにしているのは、バラエティー豊かな歌い方のヴァリエーション。“バンジー(ゴースト・フェイム)”では息継ぎなく早口でまくし立てる歌い方で、“エンプティー・エルヴィス”ではマイナー・スレットのような核心だけを叫ぶ端的な歌い方。“ドリーマーズ・デディーズ”ではコーンのような悔しさと恐怖とが入り混じったおどろしい歌い方で、“ザット・フィアー・フィーバー”はR&Bのような歌い方を取り入れている。そして“ヴァージン・ダート”では映画音楽からの影響が強いバラード。全曲すべて違った歌い方をしている。その歌い方の違いを含め、ドラムやギター、ベースなどのすべてのパートにおいて、いろいろなジャンルの音楽が複雑に混ざり合っている。ここまでミクスチャー度が進むと、もはやハードコアではない。これはまさに最新型のヘヴィーロックといえるだろう。

 たいていのバンドはこれだけいろいろな要素を取り込むと、サウンドのまとまりを欠けてしまう。まとまりがないため、作品自体がとっ散らかった印象をあたえ、自分たちの個性が失われてしまう。自分たちはなにを演りたく、なにを表現したいのか、見失ってしまうケースが多々ある。だが彼らの場合、これだけ雑多性が進み、ハードコアからの影響が薄れたとしても、彼らの個性は失われていない。その理由はしっかりとした軸があるからだ。

 その軸となっている部分とは、怒り。一部絶望からくる深い悲しみと憤りのバラードがあるが、アルバム全体に貫かれているのは、尋常でないテンションの高さと、戦闘心や闘争心をかきたてる激しい怒りだ。今作のテーマは、巨額の富を得るため、低賃金で労働者を働かせ、富を搾取する企業の暴利や、人種差別と崩壊した家庭の虐待、新しい形の犯罪が起こる社会の病気など、支配者層や差別主義者への怒りがテーマになっている。

 その怒りが尋常でないテンションの高さと激しいエモーショナルを生み、アルバム全体を統一している。その統一感が、聴いていて闘争心をかきたて、熱い気持ちになれるのだ。それがこの作品のすばらしさだ。闘争心あふれるコンガのリズムと、扇情的なノイズギターと、激しいテンションのボーカル、サビの部分のメロディーの融合は、彼らしかありえない個性を確立しているし、まちがいなく2013年のベスト10に入ってくるいい作品だ。

2014/03/28

Letlive (レットライヴ)  『Fake History (フェイク・ヒストリー)』

Fake HistoryFake History
Letlive

Epitaph / Ada 2011-04-11
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 10年発表の2作目。彼らのオリジナルティーを確立し、人気を獲得したのはこの作品から。今作を発表するまでじつに5年の歳月を要した。その間、リード・ボーカルのバトラーと、バッキング・ボーカルのジェイ・ジョンソンを残し、すべてのメンバーが入れ替わった。過去をすべて捨て、ゼロから再出発を図った作品でもあるのだ。

 今作では前作のデリンジャー・エスケープ・プランやザ・ユーズドなどに影響を受けたカオティック・ハードコアやスクリーモ・サウンドから、リフューズドやダウンセットをベースにしたポスト・ハードコアに変化した。いろいろなフレーズを切り貼りしたサウンド・フォーマットの部分では、あまり変わっていない。だが前作とは、まったく異なるサウンドを展開している。その理由はマッチョでストロングタイプのハードコアに変貌を遂げているからだ。前作はとくにスクリーモからの影響が強く、ヒステリーに満ちた金切り声のスクリームには軟弱で弱々しさや華奢なイメージがあった。そんな前作と比べると、今作ではエモーショナルで力強く尋常でない熱量と情動がアルバムを支配し、過去2作のとは音の迫力そのものが違う。

 そのサウンドはリフューズドやダウンセットをベースにしたハードコアに、サルサのマラカスのリズム、マタドール・ギターを加えた新しいのスタイルのポスト・ハードコア。この作品と代表曲となるであろう“ハームレス・ジャズ”では、高いテンションを叩き付けたノイジーで扇情的なハードコアのギターと、ブラストビートが怒りを高揚させ、そしてクライマックスに達するサビの部分で、いきなり静けさに満ちたマタドール・ギターに変わる。そこには理性が吹き飛ぶような怒りから冷静さを取り戻し、死を覚悟した勇敢さに変わるような感覚がある。

 その尋常でない狂った勢いから、悲しみや孤独が漂う寂寥へと変わっていくサウンドには、まるで怒りから革命へとかわっていくチェ・ゲバラのような中南米独特の革命意識と、孤独と寂しさ、怒りと悲しみが漂っている。メンバーにアフリカン、アメリカン、メキシカン、アイリッシュといった人種で構成されているせいか、自らのルーツ音楽をゴチャマゼにして再構築する技術に長けている。コスモポリタンな感覚が、バンドに反映されていることが彼らの特徴のひとつである。もうひとつの特徴である彼らの出身地、ロサンゼルスという出自がそうさせるのか、精神的な部分では確実にレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンやダウンセットなどの影響を色濃く感じる。その影響とは、マイノリティーならではの差別からくる怒りと政治不信。虐げられた環境を変えようとする怒りがトリガーとなり、革命意識へと変化しているのだ。

 サルサのリズムなどの中南米の要素を加えたハードコアは、彼らの出自やアイデンティティー、ルーツを再確認しながらも、彼らしかありえない独特なサウンドを展開している。そこには90年代にヒップホップの要素を加えたコーンや、変則的なリズムでザクザクと刻むギターのリフが特徴のレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンに匹敵するオリジナルティーあふれるサウンドがあるのだ。なお1年後の4月にエピタフ・レコーズから作品を評価され、再リリースされた。

2014/03/12

Letlive (レットライヴ)  『Speak Like You Talk (スピーク・ライク・ユー・トーク)』

Speak Like You TalkSpeak Like You Talk
Letlive

CD Baby.Com/Indys 2007-12-25
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 05年発表のデビュー・アルバム。彼らの個性を確立したのはこの作品。自分たちの演りたいサウンドが固まっていなかったデビューEPでは、ヘルメットやザ・ユーズドなどのハードコアやスクリーモのフレーズを、ただ切り貼りしただけの作品だった。それが今作では、さらにいろいろなアイデアをぶち込み、カオティックなサウンドに変貌を遂げた。

 デビューEPから今作を発表するまで、2年もの歳月を要した。その理由は、12曲のベースとなる曲に、69曲分の断片的なフレーズやスクリーム、ギターアレンジや、スローテンポからブラストビートまでのドラムを、切り貼りし、組み合わせたからだ。気に入らない箇所があると、作っては壊し、壊しては作り変える。まるで壷を叩き割る陶芸家のように、試行錯誤を繰り返して、自分たちのスタイルを確立したのだ。その作業のため、作品を仕上げるのに、これだけの時間がかかったのだ。

 そんなプロセスを経て完成した今作は、カオティック・ハードコアな作品に仕上がっている。サウンドフォーマットのベースになっているのは、デリンジャー・エスケープ・プランや初期マーズ・ヴォルタのようないろいろなフレーズを切り貼りしたカオティックなサウンド。だがデリンジャー・エスケープ・プランやマーズ・ヴォルタとの一番の違いは、幅広いジャンルの音楽に影響を受けたバラエティーの豊かさと、静と動のふり幅の違いにある。

 たとえば1、2、3、4、9、11は、デリンジャー・エスケープ・プランのマシンガンのような断片的なリズムとリフと、シック・オブ・イット・オールのようなハードコアの歌いまわしをベースにしながらも、そこにスクリーモの絶叫と冷たいメロディー、映画のワンシーンから取り入れたメロディー、エクスメンタルロックなどをカオティックにぶち込んだ。彼らの音楽スタイルを代表する曲たちだ。とくにスクリーモに影響を受けた金切り声が特徴の叫び声には、怒りを感じることができる。スクリーモ特有の被害者の苦しみの叫びではなく、ヒステリーに満ちた怒りの叫びだ。自己嫌悪やうまくいかないことへの焦りと苛立ちなどもあるが、いろいろな種類の怒りがこのアルバムには混在している。“パンクス・ノット・デット,ジーザス・イズ”では、パンクスをつぶそうとするものへの反発心から来る体制側の人間への怒りであり、“スキン・ファック・メタル”では血の通っていない無機質で機械的な人間への憎悪がある。そのほかにも嫉妬からくる怒りもあり、ほとんどが他者に対する怒りの感情でしめられている。

 総じて怒りに満ちた作品だが、それ以外にも変わったバラードの曲がある。6は1965年2月14日に家を爆破された後に、フォード講堂でマルコムXが怒りの演説を行ったテープが収録され、8ではチープなインディーデジタル音と後期スマッシュ・パンプキンズから発展したメラコンコリックな曲。そして10はバトルズのマスロックに影響を受けた浮遊感あるスペイシーなイントロの曲だ。そこにあるのは、虐げられた人間による怒り革命の意識と、人間が交錯する雑踏のなかを自分を見失いさまよっているような孤独に満ちた感覚、疲弊とたそがれがある。怒りの隙間を埋める、一息入れるようなアルバムのアクセントになっている曲。だが、全体を通して表現しているのは不幸の側にある感情なのだ。

 サウンド面に関して言えば、テンポよく曲が進まず、若干まとまりが悪い部分があるが、当時のトレンドをすべてぶち込んでいる。サウンドのトレンドを取り入れながらも、表現している感情は、エモーショナル・ハードコアのような内省もなければスクリーモなどの軟弱な方向に向かっていない。世の中に戦っていく闘争心があるのだ。前世代的な精神性をベースにしつつ、サウンド面ではトレンドを取り入れている。彼ららしいスタイルは確立しつつあるが、この時点ではまだ、もう一回聴きたくなるようなサウンドの中毒性はない。音の迫力もない。それを確立するのは次作からだ。


2014/03/01

Letlive (レットライヴ) 『Exhaustion, Salt Water, and Everything in Between (エクハーション・ソルト・ウォーター&エヴリシング・イン・ビトイーン)』

Exhaustion Salt Water & Everything in BetweenExhaustion Salt Water & Everything in Between
Letlive

2007-12-25
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 ロサンゼルス出身のポスト・ハードコア・バンドの、03年に発表された8曲入りのデビューEP。00年から03年といえば前年にユーズドやテイキング・バック・サンディー、グラスジョーなどのスクリーモ・バンドが出世作を発表し、かたやキルスイッチ・エンゲージなどのメタルコア・バンドも出世作を発表した。スクリーモとメタルコアがハードコアの最先端のシーンとして盛り上がっていたのだ。エモから進化したスクリーモ、メタルとハードコアの折衷スタイルであるメタルコアと、大雑把に分けるとシーンはこの2つが主流になっていたのだ。

 そんなスクリーモとメタルコアがシーンを席巻している03年にデビューしたレットライヴ。彼らのサウンドとは、ヘルメットから発展を遂げたポスト・ハードコア。ヘルメットの変則的リズムの金属質なリフに、ハードロックのようなギターフレーズを加えたサウンドだ。この時点ではまだ、あどけなさが残る子供の声のようなボーカルと悲痛な叫び声には、ザ・ユースドあたりのスクリーモからの影響が強く、ボーカルとサウンドともにオリジナルティーはあまり感じられない。音の厚みがなく、まとまりが悪い印象も受ける。スクリーモという流行を意識したサウンドだった。だが屈強なハードコアに、まにも泣き出しそうな弱々しいボーカルが乗る不協和音には、暴力に裏打ちされた恐怖やおびえを感じることができる。加害者意識の強いハードコア、華奢で被害者意識の強いスクリーモとは一線を画す世界観を持っていたのだ。オリジナルティーを発揮していくのはこれから先になるが、彼らのルーツを知る上では貴重な作品といえるだろう。

2012/09/07

レザーフェイス/ホット・ウォーター・ミュージック 『スプリット』

Byo Split Series #1 - SplitByo Split Series #1 - Split
Leatherface

Better Youth Org. 1999-04-20
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99年に発表されたレザーフェイスとのスプリット。この作品はホット・ウォーター・ミュージックにとって、転機となったのではないか。レザーフェイスは、初期パンクをベースにした荒々しいサウンドで、疾走感のなかにナイーブさが見え隠れしているのが魅力的。たいするホット・ウォーター・ミュージックは、豪快で力強いパンクロック。男臭く、気合の入った曲に仕上がっている。

レザーフェイスとホット・ウォーターミュージックの共通点といえば、男くさく、しゃがれた叫び声。繊細なレザーフェイスに比べると、ホット・ウォーター・ミュージックは豪快で図太い。アプローチが対称的なのが面白い。

だが、この作品を聴くと、影響を受けたのはホット・ウォーター・ミュージックのほうだろう。いままでの曲より、メロディーが磨かれ、彼らのクオリティーは格段に上がっている。真の意味でのエモーショナルで心にしみる音楽とはなにかを、彼らは学んだのではないか。

両者ともに自分たちを代表するいい曲を提供しているし、これはいい作品だ。



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