プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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2017/04/30

Power Trip(パワー・トリップ) 『 Nightmare Logic(ナイトメア・ロジック) 』

NIGHTMARE LOGIC (ナイトメア・ロジック)NIGHTMARE LOGIC (ナイトメア・ロジック)
POWER TRIP (パワー・トリップ)

Daymare Recordings 2017-02-21
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テキサス出身のクロスオーバー・ハードコアバンドの17年に発表された2作目。このバンドもIRON REAGAN(アイアン・レーガン)と同じく、スラッシュメタルと、オールドスクール・ハードコアをクロスオーバーさせている。

同じクロスオーバーでも、怒りに満ちたアイアン・リーガンのブチ切れたサウンドとは違い、正確な演奏力と、怒声でがなり立てる男くさい熱さが彼らの特徴だ。彼らのサウンドは、SLAYER(スレイヤー)などのスラッシュメタルから色濃く影響を受けており、そこにCro-Mags(クロマグス)などのスピーディーなニューヨーク・ハードコアが絡むサウンド。スラッシュメタルとハードコアの折衷率は7対3ぐらいで、ほぼスラッシュメタル寄り。だが怒声やOi、ボーカルの歌い方からは、まぎれもなくハードコアを色濃く感じる。

そして今作だが、前作よりもさらにスラッシュ・メタル度がパワーアップしている。ハードコア・バンドの作品とは、1作目で衝動や熱量を詰めた作品を作り、バンドとしてまとまり技術的に成長が見られた作目で技巧に走る作品を作るケースが多い。このバンドも同じ傾向にある。このバンドも前者のようなケースに見事はまっているが、だからと言ってこの作品がつまらないわけではない。むしろカッコいい。その理由は、メタルのギターフレーズのカッコ良さだけを集めた部分にある。ザクザク刻むギターのリフや、躁病的でスピーディーでテクニカルなギターメロディーのソロ、独特なギターフレーズを反復するギターの展開、そこにはNuclear assault(ニュークリア・アソルト)、Vio-lence(ヴァイオレンス)、Devastation (TX)(デヴァステーションTX)など、アンダーグランドで活躍しているマニアックなスラッシュ・メタル・バンドを聴いているのが理解できる。メロディーが高鳴り気持ちが高揚するギターの展開。そしてIron Maiden(アイアン・メイデン)のようにカッコいいギターフレーズ。自分の好きのものだけを寄せ集めたこのサウンドからは、まるで俺がカッコいいと思うものはカッコいいからと、訴えかけてくるような説得力がある。その姿勢にはある意味好意が持てる。スラッシュ・メタルのカッコいいリフが光る作品だ。

2016/03/22

Pg. 99 (ページ・ナインティーナイン)    Document #8 (ドキュメント No8)

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Robotic Empire 2012-01-15
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アメリカはバージニア州出身のスクリーモ・バンドの01年に発表された2作目となるアルバム。メンバーはボーカルが2人、ギターが3人、ベースが2人、ドラムが1人の計8人からなる大所帯で、彼らの作品は、スピリット、シングル、EP、アルバム、すべての音源がDocument No.○○という形で発表されている。そのうちNo.8はアルバムで9曲が収録されている。

彼らはエモがスクリーモに進化する過程に活動していたバンドで、スクリーモがメタルの亜種となる前の、ハードコアの残り香が残ったスクリーモ・バンドとしてジャンル分けされていた。アメリカではリアル・スクリーモのレジェントとして語られてきたバンドの一つだ。

スクリーモのレジェントとして語られている彼らだが、ここで展開されているサウンドは、スクリーモというよりカオティック・ハードコア。その証拠にリミキシングにコンヴァージのカートが担当している。躁病的なけたたましい叫び声のボーカルや狂ったような勢いで叩くドラム、洪水のような激しさのノイズギターからは、まさしくコンヴァージからの影響を色濃く感じる。だがコンヴァージとの明らかな違いは、メロディーと静のパートを導入している部分にある。そのメロディーだが、深い沈黙の先で不気味に鳴り響いているようなメロディーがループし、まるで高速回転する万華鏡を除いているのような、カオティックな気分に陥る。静の部分はほかのエモバンドとは違い、いじけたようなナイーブなメロディーではない。そこにあるのは中毒患者が夢見るような不気味にキラキラと光る妖しげで幻想的な世界だ。静を妖しく妖艶に変化させ、動をエモよりさらに激しくカオティックにデフォルメさせたサウンドなのだ。いまカオティック・ハードコアとは、突発的な発生したジャンルとして語られているが、元来はエモから進化したサウンドなのだ。この作品はエモからカオティック・ハードコアの進化の過程で現れた作品なのだ。

2013/06/11

プレッシャー・レスティストス  『エレファント・マン』

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 13年に発表された2曲入りのシングル。相変わらずジョイ・ディヴィジョンからの影響を受けたポスト・パンクに変わりはない。変わったところといえば、テープの早送りのようなチープなムーヴシンセが加わったところか。“エレファント・マン”は、暗闇で炎がゆらめくようなサイケデリックなメロディーの曲で、サウンド自体が前作の延長にある。息が詰まるような切迫したスピード感とボーカルの暗い情念が魅力な曲だ。たいする“ノット・オーヴァー”は、これもチープなキーボードと、初期キュアーのようなメロディーが魅力。ところどころにこったギターソロを取り入れ、しかもボーカルもいままでにない歌いまわしで、実験的な要素がうかがえる。レコーディング機材が発達した昨今で、むかしのインディーのようなあえてチープなサウンドを取り入れているところに、拘りがうかがえるし、着実に進歩を感じる。ぼくはこのチープなサウンドに、むかしのインディーのような古きよきものを感じるし、自分たちで全部やっていこうとする彼らの姿勢も好きだ。まさにDIYを感じる作品だ。

                      こちらからダウンロードできます。

2013/06/04

プレッシャー・レスティストス

Pleasure LeftistsPleasure Leftists
Pleasure Leftists

Fan Death Records 2011-06-07
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 アメリカは中部オハイオ州クリーブランド出身のポストパンクバンドの11年に発表されたデビューEP。暗闇で炎がゆらめくようなサイケデリックなメロディーや、静かに感情を煽っていくベース、切迫感に満ちたギターからは、ジョイ・ディヴィジョンの影響を色濃く感じる。だがジョイ・ディヴィジョンとの決定的な違いは、女性ボーカル、ヘイリー・モーリスの歌声と世界観にある。ジョイ・ディヴィジョンといえば、死への切望が悲しいまでの透明な美しさがあった。それに比べるとダークで透明な美しさはない。あるのはエロティックで耽美な美しさ。ヘイリー・モーリスが歌う歌声は、感情が抑制され、まるで毒リンゴを作る魔女のように呪術的。心の奥底で湧き出た小さな感情が、煮えたぎるアワのように次第に大きくなっていくように、静かに激しく変化していく感情を歌っている。彼女が影響を受けたボーカルスタイルは、1950年代のフランスのバラード歌手のエディット・ピアフだという。だからなのか、70年代のサイケディック・カルチャーのようなノスタルジックがある。まるで30年近く文明の遅れている国に足を踏み入れたときのような、世間から取り残された感覚に陥る。古臭い空気が漂っている。その感覚がこのバンドの魅力といえるだろう。アメリカではこの手のサウンドを展開しているバンドはあまりいない。ニューウェーヴ好きにお勧めのEPだ。


2012/04/05

プッシー・ライオット『ディス・トロイ』

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 ロシアのパンクバンド、プッシー・ライオットの06年に発表された公式デモ。どうやら彼女たちはまだ正式なアルバムをリリースしていないようだ。ここで発表された曲は無料ダウンロードが可能な曲だ。まず初めに彼女らの活動から。結成は04年。ギター&ボーカルのカテリーナとベースのアナスタシア、ドラムのルイサによってロシアでバンドは結成された。彼女らはLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジャンダー)の活動家で、アメリカのフェミニストパンクバンド、ビキニ・キルとRiot Grrrlに影響を受け、パンク・バンドをやろうと、結成されたという。原色に統一された露出度の高いワンピースと、銀行強盗が覆る目出し帽という強烈なインパクトのあるバンドコスチュームをまとって、バンド活動を始めた。

 そして今年の2月21日に大統領の再選を狙う反プーチン運動の一環として、ロシア正教の大聖堂で、反プーチンを歌ったゲリラライブを敢行したため、3月3日にメンバーが逮捕された。そして政治犯として7年の懲役の裁判がかけられているという。上記の理由で、現在活動が困難な状況にあり、ライヴ活動やリリースの予定が当分ないという。

 その06年に発表されたデモだが、アグレッシヴで扇情的な初期パンク。ノイズまみれのひしゃげた音で、演奏はけっしてうまいとはいえない。だがそこにこめられている社会に対する怒りや攻撃性は、尋常ではないエナジーを放っている。ワンコードを執拗に繰り返し暴力心を煽るギター。音域がずれ地響きのように響くベース。ヒステリックな叫びをあげる甲高い声女性ボーカル。そしてすべてロシア語で歌われているプーチン批判や女権獲得を歌った歌詞。そこには政治的な怒りを通り越した、狂気を感じる。けっしておしゃれとはいえない原色のワンピースに銀行強盗の目だし帽。一見コミカルな笑いを感じるが、そこには笑いを誘いながらも人を殺しているような感覚があり、恐怖を感じる。

 サウンドのインパクトといい、パフォーマンスとしても、日本で例えるならスターリンのように強烈なインパクトを感じる。だが、とことん嫌われることに徹したスターリンとは違い、笑いながら恐怖に陥れるは、彼女たちならではのもの。これはひさびさにパンクを感じるた。

                        こちらからダウンロードできます。



2011/09/07

Panic at the Disco 『Vices & Virtues』

悪徳と美徳(初回限定バリュー・プライス盤)悪徳と美徳(初回限定バリュー・プライス盤)
パニック!アット・ザ・ディスコ

ワーナーミュージック・ジャパン 2011-04-13
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11年発表の3作目。09年の夏にギターのライアンとベースのジョンがバンドを脱退。その理由は、前作『プリティ・オッド。』の60年代サウンドを追求するため、新バンド、ザ・ヤング・ヴェインズを結成したから。パニック・アット・ザ・ディスコは、1st派と2nd派の2つに分裂したのだ。

残されたボーカルのブレンドンとドラムのスペンサーの2人によって制作された今作は、原点回帰。ヨーロッパの怪しい仮装パーティーのような雰囲気に、80年代のディスコのような、暗闇で水面に揺れ青く淡い光のような幻想を加えた作品だ。

その音楽は幅広い。ホラーから、ビューティフルエモ、デジタル、ディスコ、打ち込みなどの00年代の要素に、中世のクラシックなサウンドや聖歌隊、ジプシーブラス、バイオリン、ラッパなどの古典的な要素を合わせた。いろんな要素が複雑に絡み合った作品に仕上げっている。もはやパンクのノリのよさこそないが、オリジナルティーある作品に仕上がっている。

これだけ作りこんだ作品に仕上がった理由は、アーケード・ファイヤーやのような、オリジナルティーあるサウンドを意識したためだ。それとメンバーが抜け、パニック・アット・ザ・ディスコはダメになったと、言われるのが嫌だったから、というのも理由のひとつだろう。そういった意味では意欲的で、ミュージシャンとして意地を見せた作品だ。

確かに全3作のなかで、いちばんオリジナルティーのある作品に仕上がっている。ほかにはないサウンドだ。だが作りこみすぎて、音楽マニアだけを意識して作られた印象を受ける。ヨーロッパの古典的な音を取り入れることの重視しすぎて、かんじんの表現力が失われている。ここでいう表現力とは、伝えたい感情のこと。前々作、前作はサウンドの方向性こそと違うが、シンプルで分かりやすい作品だった。聴いていて、単純にハッピーな気持ちにさせてくれるポップさがあった。それは共通していた。だから単純に楽しめた。だがこの作品は、ファンが肩組んで楽しめるようなハッピーさがない。喜びにも、悲しみにも、怪しさにも、恐ろしさにも、寄り付かない、あいまいささが漂っている。伝えたい感情をはっきりしてくれれば、いい作品だったに違いない。そういった意味でおしい作品だ。


2011/09/02

Panic at the Disco 『...LIVE IN CHICAGO』

ライヴ・イン・シカゴライヴ・イン・シカゴ
パニック・アット・ザ・ディスコ

ワーナーミュージック・ジャパン 2009-01-28
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08年に発表されたライヴアルバム。おそらくメンバー自身も、この時期、ひとつの頂点に達したと感じていたのでないか。本人たちの充実感が窺える。

ライヴは1stと2ndを交互にやる構成。サウンドの方向性がまったく異なる作品だが、ライヴでは違和感なくはまっている。ゆったりとした2作目の”ウィー・アー・スターヴィング”から始まり、妖しい雰囲気の”ナイン・イン・ジ・アフターヌーン”へと、聴くものを引き込んでいく。じっくり聴かせたあとに、ノセて楽しませるといった流れがある。モッシュダンスをするような激しさがあるわけでもなく、椅子に座って観るような落ち着きがあるわけでもない。まるで壮大なエンターテイメントを観ているようなライヴだ。やはりラスベガスというエンターテイメントの都市で育った影響が反映されているからなのか?次の曲がすぐ聴きたくなるような中毒性がある。ところどころに観客を楽しませようとする姿勢がうかがえるし、演奏を、なにより本人たちがいちばん楽しんでいる。

彼らの最高傑作と呼んでいいほどの、充実した内容だ。


2011/08/26

Panic at the Disco 『PRETTY ODD』

プリティ。オッド。プリティ。オッド。
パニック・アット・ザ・ディスコ

Warner Music Japan =music= 2008-04-09
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08年発表の2作目。ディスコ・パンクから、70年初頭のブリティッシュ・ロックに変貌した作品。たてのノリの曲から、じっくり聴かせる曲へと、テンポも変わり、方向性が180度変わった。当時ぼくはこの作品を聴いて、正直戸惑った。彼らの魅力はディスコ・パンクにあると思っていたから。

このアルバムを作る当初、最初はミュージカル・アルバムを制作する予定だったそうだ。その時点ですでに6曲完成しており、このまま順調に進むと思われていた。だが途中でアルバムの方向性が違うと感じ、いったん破棄し、再度作り直した。だから今作が完成するまで、3年もの歳月がかかったのだ。そしてビートルズのアルバムで知られるアビー・ロードでレコーディングは行われた。しかもメンバー全員の意見を出し合いながら作った作品は、今回が初めてだという。

そのサウンドは、ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』や、ローリングストーンズの『サタニック・マジェスティーズ』などをベースにしたサイケでソフトな優しいロック。歌い方やオーケストラや吹奏楽などをからは、オールディーズの影響も感じる。3年もの歳月を経て、彼らの心境は、シニカルな怒りから、未来への希望や慈愛にあふれた優しさに変わったのだ。

サウンドが変化した理由は、あまりに多くのバンドが80~00年代のロックサウンドに影響を受け、表現しつくされているから。しかも彼らにとって、ローリング・ストーンズやビートルズ、クリーム、フーなどのむかしのロックは、ものすごく新鮮に映るそうだ。だから今回、60年代サウンドをやろうと思ったそうだ。それに合わせ心境も変化した理由は、1stのころは17,8歳の若くて多感な時期で、怒りに溢れていたそうだ。でも今作では前作が売れたことにより状況も変わり、ものすごくハッピーな状態にあったから、その心境がアルバムに自然に反映された結果がだという。

サウンドも心境も劇的に変化したが、古きよきノスタルジックなものが好きという部分では今作でも変わっていない。たしかに中世的なノスタルジックから、ラブ&ピース時代のサイケ調のノスタルジックに変化した。だが古きよきものを現代風によみがえらせるという意味では、前作も今作も共通しているのだ。それが彼らの個性であり、魅力でもあるのだ。

心境の変化に関して言えば、個人的には、ポジティヴに捉えている。売れ線を意識して意図的に変化をしたのではなく、いまの気持ちが正直に反映されている。素直で実直な人柄がリアルに伝わってくる。だから好感が持てる。この作品が彼らの最高傑作という意見をよく耳にする。ノスタルジーを現代風にアレンジされていて、いい作品だとも思う。だがこれは個人の好みとしか言いようがないが、ぼくとしてはパニック・アット・ザ・ディスコと名づけられたバンド名と同様に、ディスコでパニックになるほどの性急なビートと、いかがわしく、わけのわからないノスタルジーを彼らに求めていた。そういったスピード感とノリのよさが失われたのは残念だ。



2011/08/22

Panic! at the Disco/『A Fever You Can't Sweat Out』

フィーバーは止まらないフィーバーは止まらない
パニック!アット・ザ・ディスコ

ワーナーミュージック・ジャパン 2007-01-17
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05年発表のデビュー作。メロディック・パンク・シーンから現れたバンドだが、当時、彼らは新しかった。ライヴで人気が出たのではなく、自らの音源が気軽に試聴ができるソーシャルサイト、マイスペースから人気に火が点いたバントだからだ。自分のことはすべて自分でやったフガジや、カレッジ・ラジオのチャートから徐々に人気を獲得したR.E.Mに続き、新たな価値観を提示した。インターネット世代の新たなDIY精神を提示したバンドなのだ。

とはいっても、それだけで人気がでるわけではない。当時、マイスペースに音源をアップロードし、話題にならなかったバンドはたくさんいた。なのに彼らが人気がでた理由は、しっかりとした個性があったからだ。それはスカ・メロディックパンクに、スペイン音楽とディスコ・サウンドやポルカなどを加えたサウンドにある。

そこにはまるで中世のようなノスタルジーと、怪しい仮装パーティーのようないかがわしさと派手な華やかがある。まるで上流貴族の汚ない裏側のようだ。そしてその視点は、一貫してシニカル。軽快なスカのリズムにのせ、世間を嘲笑っているかのように冷めている。たとえば”機械が書いたロンドンが招いたお金の歌”の歌詞では、音楽評論家に向けて、<おそくらくやつらは、デジタルサウンドとスペイン音楽をスカ・パンクのリズムにくっ付けたくだらないバンドと、俺たちのことを評価するだろう>と歌ったり、この先起こるであろう未来を予見し、シニカルなメッセージを発している。

世の中くだならいことがたくさんあるけど、とことん嘲笑って、楽しく踊ろうぜ、という姿勢が素晴らしい。個人的には、彼らのなかで一番すきな作品。

2011/05/03

paramore 『Brand New Eyes』

ブラン・ニュー・アイズブラン・ニュー・アイズ
パラモア

ワーナーミュージック・ジャパン 2009-10-21
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 09年発表3枚目。このアルバムを発表する前年に映画トワイライトに主題歌を提供し、そのサウンドトラックが200万枚を記録する売り上げを獲得したそうだ。いちやく有名となり、その状況下で今作は発表された。バンドも上昇気流に乗り、自信に満ちた作品となるかと思いきや、ダークでネガティヴな要素が強い作品に仕上がっている。

 その理由は、メンバー間の人間関係がボロボロの状態にあったからだという。ここ数年、忙しさも手伝い、メンバーとの意思の疎通がうまくとれておらず、軋轢があったそうだ。

 だから歌詞には<良くなる前に我々は崖に向かっている>だとか<目標を見失った。しかしわたしたちは新たな目標を見つけられることを信じている>といった、絶望的な状況について書かれている内容が目立つ。実際アルバムには、メンバーに伝え切れなかった気持ちがテーマになっているそうだ。

 とはいっても、批判だけで終わっているわけではない。この辛い状況から抜け出し、バンドを始めたころ初心を取り戻して、また気持ちを共有しながら活動が出来ると力強く希望をこめて歌っている。まさにアルバムタイトル『ブラン・ニュー・アイズ(新しい視点)』を獲得するために。

 今作はけっして悪い作品ではない。歌詞こそネガティヴで批判的な内容が多いが、サウンド的は確実に成長している。どちらかといえば前々作に近く、ジミー・イート・ワールドやサニーディ・リアル・エステイトを発展させたエモサウンドだ。繊細なナイーブさを紡ぎだすメロディーと、トーンこそ暗いが、強気で力強いヘイリーのボーカルが拮抗するサウンドは、お互いが理解を求め合いながらも、ぶつかっているような、もの悲しさを感じる。強気と繊細さというアプローチこそ真逆だが、理解されないことへの悲しみや、すれ違いといった共通意識を生みだしている。それが悲しみを倍増させる相乗効果をもたらしている。

 このあとサウンド面を担当していたジョシュとザックの兄弟が脱退。ジョシュがヘイリーと付き合っていたことを告白。ジョシュはパラモアというバンドが、ヘイリーのソロプロジェクトだったと不満をぶちまけたそうだ。結局、お互いが歩み寄ることが出来ないまま、すれ違いのまま、終わってしまったようだ。

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