プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

スポンサードリンク


Q

2017/11/30

Quicksand (クイックサンド) 『Interiors (インテリア)』

InteriorsInteriors
Quicksand

Imports 2017-11-09
売り上げランキング : 17691

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

じつに22年ぶりとなる3作目。90年代を代表するポスト・ハードコア・バンドで、ニューヨーク・ハードコアの重鎮としても知られ、2作を発表して瞬く間に解散。活動期間が短く、正直この先アルバムを発表するとは思っていなかったが、ここにきてまさかの再結成。

個人的にウォルター・シュレイフェルズが結成したバンドのなかでで一番好きなのはクイックサンド。その理由は独特な世界を持っているから。その世界観とは、シュールレアリスムのような奇怪なものや幻想に価値を見出すアンビバレンスな美しさ。まるでクレパスの底で瞑想しているような暗く深い孤独な静謐。聴くものに落ち着きとまどろみと恍惚を与えてくれる秩序と混乱が入り乱れた幻想的なサウンド。そんな世界観がぼくは好きだった。

そして発表された今作では、まさにぼくが求めていたクイックサンドが帰ってきたという内容の作品。過去のイメージが鮮烈すぎるバンドほど、期待外れに終わるケースがあるが、彼らに限ってはそんなかとはなかった。

そのサウンドだが、1作目(『Slip(スリップ)』)のエコー&ザ・バニーメンをハードコアに解釈したサウンドに、2作目(Manic Compression『マニックコンプレッション』)のノイズギターと、トリッキーでサイケデリックなテクニカルなギターサウンドをたして2で割ったような内容。1作目と2作目のいい部分を合わせた作品なのだ。サイケデリックなギターの揺らめき、穏やかさと厳かさ、微睡みと恍惚など、メロディーとノイズと低音と高音が高速のスイッチのように入れ替わるサウンド。彼らはまったく変わっていない。ここにはまさにぼくが求めていたクイックサンドの理想のサウンドがあるのだ。個人的には今年のベスト10に確実に入ってくる作品だ。

2012/07/03

QUIETDRIVE 『アップ・オア・ダウン』

Up or DownUp or Down
クワイエットドライブ

TWILIGHT RECORDS 2012-03-07
売り上げランキング : 26700

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 11年発表の4作目。今作ではマット(ギター)とドール(ベース)が脱退し、代わりにウィル(ギター)とブライス(ベース)が加入。それが功を奏したのか、前作よりもいい作品に仕上がっている。相変わらず、夏を感じさせるメロディーは健在だが、ポップロックだった前作よりも、面白いサウンドに仕上がっている。その理由は変則的なリズムのギターロックが戻ってきたから。今作ではレゲェーやAORやダンス、アコースティックなどの要素を取り入れ、さらに奥深い夏を表現しているような印象を受ける。彼らは初期のころから一貫して、夏の海をイメージさせるメロディーを表現しているが、今作ではノー天気な真夏の太陽のような明るさというよりも、沈む夕日の美しさ。そこには寂寥感や黄昏がある。歌詞はほとんどが恋愛について。彼女への一途な想いが綴られている。彼女のことを想い続けているのに、報われない恋や、この場から去っていった彼女への寂しさ。それを沈む夕日の黄昏と重ね合わせている。その世界観がすばらしい。前作よりもろロックっぽい曲が増え、親しみの持てる作品だ。なお初期の名曲“ライズ・フロム・ザ・アッシュズ”と“テイク・ア・ドリンク”のニューヴァージョンを再録。それほど現メンバーでの手ごたえがあるのだ。

2011/03/20

QUIETDRIVE

QUIETDRIVEQUIETDRIVE
クワイエットドライブ

TWILIGHT RECORDS 2010-12-08
売り上げランキング : 13512

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

10年に発表された3作目。自らのバンド名を冠したアルバムだけに、過去の集約ともいえる内容だ。2作目の日の出のような明るく高みに昇っていくメロディーと海に向かって吼えるような熱いボーカルに、メロディックパンクの荒々しいギターコードを加えたサウンドだ。

それだけではなく、今作では新しい試みもある。女性ボーカルの掛け合いや、キーボーとアコースティックを使ったビューティフル・ソングなどもある。明るさから切なさ一歩引いた冷静さなど、多面的な感情が支配している。

もはや細やかなギターで、ギラギラした派手さと若さを表現するといった初期衝動は薄れた。変わりにルーズさとほかのジャンルの音楽を取り入れることで、多面的な感情を表現する手法を手に入れた。人間的成長を感じさせる円熟味を増した作品だ。

2010/10/20

クイックサンド 『マニック・コンプレッション』

Manic CompressionManic Compression
Quicksand

Fontana Island 1995-02-28
売り上げランキング : 173651

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 ノイズギターを全面に出した95年発表の2作目。前作の穏やかで暗いサウンド比べると、ここでは荒々しいノイズに満ちたギターサウンドを展開している。当時のNYハードコアは、ヒップホップを加えたドッグ・イート・ドッグ、メタルをハードコアに加えたバイオハザード、ハードコアの荒々しさをより強固に硬質に進化させたシック・オブ・イット・オール、クリシュリナ教をハードコアに取り入れたシェルターなど、ハードコアにプラスアルファーを加え、自由度を求めたバンドがシーンを席巻していた。クイックサンドもそんなシーンに呼応し、彼らとはまた違ったアプローチからポストコアを確立している。

 彼らがこのアルバムで構築した世界観とは、ビートルズの“カム・ドゥ・ギャザー”を、ハードコアにアレンジした暗さと荒々しさ。変則的なリズムのベースやドラムと、左右に音が分かれるノイズギターや、2コード、3コードのギターの組み合わせで、病的な世界観を確立。まるで対人関係で悩んでいる精神病患者が幻覚を見るような、自省と内省にあふれている。

 それにしてもギターコードのヴァラエティーがすごい。警告音のように張り詰める音のギターや、切迫感に満ちたギターのカッティングなど、まるで映画のサウンドトラックのような音と、自らがカッコいい思うギターフレーズを、これでもかというぐらいに詰め込んでいる。ギタリスト、ウォルターの趣味が爆発している。
オリジナルティーもあるし、前作と甲乙付けがたいほどいい作品だ。なによりこのアルバムのイメージをさらに広げるMelinda Beckジャケットのアートワークがすばらしい。

2010/10/09

クイックサンド 『スリップ』

SlipSlip
Quicksand

Fontana Island 1993-02-09
売り上げランキング : 232627

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 まぎれもなく最高傑作。93年に発表された1枚目のフルアルバム。前作に確立したハードコアにストップ&ゴーや、ベースや変則的なドラムのリズムをブレンドしたサウンド路線を、さらに練り上げ、磨きをかけた。技巧的で実験性が顕著に目立った前作と比べると、ここではしっかりとした世界観を確立している。

 このバンドもFARと同様に、エコー&ザ・バニーメンの暗く妖艶な美しさを、ハードコアに落としたバンドだ。だが、FARとは違い叙情性や美しさ、か弱さといった要素がまったくない。

 そこにあるのは地の底で静かに瞑想をしているような暗い落ち着き。絶望に悶え苦しむようなハードコア特有の負のエナジーはない。絶望や切迫感をすべて受け入れ苦痛に身をゆだねているような冷静さが支配しているのだ。

 こんな世界観は、いまも当時もクイックサンドにしかありえない。オルタナティヴの自由な空気が、NYの淀んだ空気と合わさって結晶化した奇跡の一枚。まさに傑作といえるだろう。

2010/09/30

QUICKSAND

QuicksandQuicksand
Quicksand

Revelation 1994-04-01
売り上げランキング : 467340

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

元ゴリラビスケットのギター、ウォルターを中心に結成され、90年に発表された4曲入りのEPでデビュー作。ポジティヴなハードコアを展開していたゴリラビスケッツとは違い、ここでは物静かなインテリジェンスで、重く暗いハードコアを展開している。

ストップ&ゴーなどの変拍子を使ったリズム、多様なギターフレーズ、ベースの重低音の隙間を生かした音など、ウォルターの趣味が大爆発している。このバンドは当時、独特なギターアレンジとリフで次世代のハードコアを提示した。

86年以前のアメリカンハードコアシーンは、自分のことは自分でやれといったDo It Yourselfや、愛のないSEXやドラッグ、アルコールを否定したSxE、肯定的精神姿勢をかかげたP.M.Aの精神や、ドラッグや酒を飲んで暴れるアティチュードや個性が、席巻していた時代であった。フガジだ出始めた88年頃からハードコアシーンは、重いサウンドにプラスアルファーを加えたバンドが注目される時代へと変わってきていた。

彼らもその流れの一翼を担ったバンドだ。まだこの時点では変則的なリズムに独特のギターアレンジを加えた域にとどまっているが、真骨頂が発揮されるのは次の作品から。

2010/07/29

QUIETDRIVE『クローズ・ユア・アイズ』

Close Your EyesClose Your Eyes
クワイエットドライブ

TWILIGHT RECORDS 2009-10-07
売り上げランキング : 83707

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 09年発表のEP。ここでは前作のような意外性に富んだギターフレーズはなく、シンプルなギターロックが展開されている。新しいことといえば、キーボードを導入し、壮大な美しさを追及しているところか。屈折したメロディーがない分、ひねくれた一面よりも、真摯なまじめさが前面に出ている。真夏をイメージさせるメロディーは相変わらず顕在だが、キーボードでメロディーの深みを増した曲やバラードなどもあり、インディーな音からメジャーな大衆的な音に変わった。個人的には2ndの屈折したメロディーが好きなだけにちょっと寂しい気もするが、ポップさや大衆性を求めるならこの作品のほうがお薦め。

2010/07/27

QUIETDRIVE『デリヴァーランス』

DeliveranceDeliverance
クワイエットドライブ

TWILIGHT RECORDS 2008-11-05
売り上げランキング : 52944

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
 これはいい。燦然と降り注ぐ、真夏の日差しのようなギターノイズのシャワー。雲ひとつない青空のような明るいサウンド。派手で屈折したポップ感。08年に発表された2枚目のアルバムは、メロディックパンクやエモというよりもインディーロック。とくかくメロディーが派手で独特。サンディエゴギターから、ガレージ、ファンク、マタドール、レゲェーなど、色々な要素が詰まっている。

 彼らの魅力とは、派手なメロディーと開放的で明るいサウンドにあるが、どことなく屈折を感じる。歌詞には、ストレートな表現が並び、感情の深みや言葉の裏に隠された真意などといった小賢しいものは存在しない。いうなら明るさのみのストレートな感情で勝負している。その屈折とはメロディーフレーズの展開の意外性にある。ストレートに表現するばより深みが増すフレーズパートの部分を、あえて意外性にとんだメロディーパートを導入しているのだ。だからインパクトが強く派手さを感じる。その部分に屈折したメロディーパートは心地よく、病み付きになる。これぞ真夏にふさわしい一枚。海に行きたくなる。

スポンサードリンク


無料ブログはココログ

スポンサードリンク