プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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2018/01/24

REAGAN YOUTH( レーガン・ユース) 『COMPLETE YOUTH ANTHEMS FOR THE NEW ORDER 』

The Complete Youth Anthems forThe Complete Youth Anthems for
Reagan Youth

Cleopatra 2016-03-31
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80年から90年にかけてニューヨークで活動していたアナーコパンク・バンドの16年に発表された全作品を網羅したコンプリート盤。ここに収録されている作品は、83年と84年に発表された作品をまとめた『Volume1』と解散することが決まったあとに録音された『Volume2』の両作品をまとめたCDが一枚、98年に発表されたライヴ盤『Live&Rare』と、84年にレコーディングされた未発表の7インチEPが2枚、CDと7インチレコードを合わせた計4枚、全69曲が収録されている。そこにブックレットと缶バッチが付いた内容だ。

ニューヨーク出身の彼らだが、その存在は異彩を放っていた。アルバムジャケットのKKKの儀式とナチスに忠誠を誓うヒットラーの写真には、逆説的で皮肉な意味が込められていた。一見保守色の強い政治思想に思えるが、実際には反人種主義、社会主義、アナーキズムな思想を掲げていた。彼らはロナルド・レーガンの政策が、キリスト教の権威とアメリカ保守主義、レイシストたちと共通していること自らの持論を述べ、メインテーマとして取り上げていた。彼らの名曲である“Reagan Youth(レーガン・ユース)”では、私はレーガンという一人称で始まり、平和のために異教徒や共産主義を殺すと恫喝し、レーガンの野望と政治政策の恐ろしさを歌っている。彼らがDead Kennedys (デッドケネディーズ)ほど話題にならなかった理由は、ある種のユーモアや冷笑、嘲笑といった要素がなかったからだ。モノトーンの不気味なジャケットからはクラスの影響が強く、まさにクラスのアメリカ版というバンドだった。それとぱっと見右寄りの思想に思える分かりづらい皮肉に満ちたアティテュードを持っていた。個人的にはややインパクトに欠けたその2点が、彼らがそれほど話題にならなかった理由に思える。

肝心の内容だが、レコーディング曲が収録された『Volume1』では、スピーディーなハードコアな曲から、多彩なメロディーフレーズが特徴的なパンクまで、じつに色々な要素を感じる。とくにクラスやダムドからの影響を色濃く感じ、そこに多彩なメロディーフレーズやスピーディーなハードコアなどをちりばめている。そしてライヴ盤である『Live&Rare』は、勢いや迫力を重視している。とくに面白いのが“レーガン・ユース”という曲。メロディーフレーズが印象的な曲だが、メロディックな要素が一切ない。バリバリと音が割れるノイズギターやブンブンうねるベースの重低音を中心に勢いと迫力のあるライヴを展開している。自らが抱える怒りをリズムに刻み、扇動し過激な方向に周囲を煽っていくライヴには、ロナルド・レーガンと共和党を徹底的に嫌い、戦っている姿が生々しく映しだされている。アルバムとはまた違った魅力のある素晴らしいライヴ作品なのだ。

そんな彼らの活動もレーガンが辞任した89年からモチベーションが下がり、90年に解散する。そして93年にはボーカルのDave Rubinstein (デイヴ・ルビンスタイン)が自殺し、永遠に復活することがないと思われた。だが16年後の06年に、もうひとりの中心メンバーであるギターのPaul Bakija(ポール・ベイキア)を中心に活動を再開する。現在も彼らのモチベーションは失われていない。あまり話題にならないバンドだったが隠れた名盤といえる作品だ。


2017/09/10

Really Red (リアリー・レッド) 『Teaching You the Fear: the Com (ティーチング・ユー・ザ・フィア:ザ・カム) 』

Teaching You the Fear: the ComTeaching You the Fear: the Com
Really Red

Alternative Tentacle 2015-01-19
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79年から85年にかけて活動したテキサス州出身のハードコア・バンドの全作品を総まとめし2015年に発売されたコンプリート・アルバム。彼らはアメリカン・ハードコアのなかでも、BIG BOYS(ビック・ボーイズ)やDICKS(ディックス)、MDC(ミリオンズ・オブ・デッド・コップ)などのバンドと一緒に活躍し、テキサス・シーンを代表するバンドのひとつとしても知られている。

アメリカ国内でも中部の田舎で保守的な土地柄として知られるテキサス。その保守への反動なのか、テキサス出身のバンドたちは、反体制的なアティテュードを掲げているバンドが多い。サウンドは、初期パンクをベースに、プラスアルファを加えたバンドが多い。ゴリゴリのハードコアはいないが、ユニークなアイデアにあふれたバンドたちが多く存在する。

MDCはハードコアパンクにカントリーを取り入れ、ビックボーイズはファンクのリズムを消化した。アメリカルーツミュージックのR&Bに初期パンクを折衷したディックスなど、どのバンドもいろいろな要素を取り入れ自由に実験的なサウンドを展開している。それがテキサス・シーンの特徴でもある。Really Red(リアリー・レッド)もその例にもれず、初期パンクから、ニューウェーヴを取り入れ変貌を遂げてきた。テキサスという保守的な土地柄の反動ゆえ、マイノリティーな立場でシリアスな怒りをモチベーションに掲げているバンドが多い。彼らも人種差別や飢餓、商業主義のミュージシャンへの批判など政治的なメッセージを掲げているが、どこか牧歌的なのどかさが漂っている。それがこのバンドの特徴でもあるのだ。

このアルバムは、79年のデビューEP、『Crowd Control/Corporate Settings』から、80年のEP『Modern Needs/White Lies』、81年のEP『Despise Moral Majority』、1stアルバム『Teaching You the Fear』、82年のEP『New Strings for Old Puppets』、84年の2nd『Rest in Pain』、96年にコンピレーション・アルバム『Rather See You Dead』にデモ曲を加えた2枚組CDの計44曲が収録されている。しかもALTERNATIVE TENTACLESからリリースされジェロ・ビアフラ自らマスタリングを担当している。

彼らはバリバリ響くノイズギターが印象的なパンク路線の初期から、金属的にヒステリックに響くポストパンク路線、感情が高揚していくパーカッシブなピアノとホーンが印象的なフリージャズ、プログレのようなサイケデリックなサウンドなど、パンクの制約を受けることなく、自由にいろいろなことを演っている。ポップでのどかな曲から、暗くドロドロした情念の曲、アグレッシヴで攻撃的な曲など、多重人格者を思わせるような多彩な感情の奥行がある。

サウンドの一貫性はあまり感じられないが、だからといって悪い作品ではない。自分たちの演りたい音楽を楽しんでいる姿勢が、高いクオリティーを保有している。アメリカン・ハードコア・シーン全体から見れば、異端だが素晴らしい作品であることに間違いはない。彼らが存在しなければ、Butthole Surfers(バッドフォールサファーズ)のサウンドも大きく変容していただろう。テキサスではそれほど影響力のあるバンドだったのだ。

2017/08/17

Armstrongs (アームストロングス)       『 If There Was Ever a Time(イフ・ゼア・ワズ・エヴァー・ア・タイム)』

GREEN DAY(グリーン・デイ)のボーカル、Billie Joe Armstrong (ビリー・ジョー・アームストロング)と、RANCID(ランシド)のボーカル、Tim Armstrong (ティム・アームストロング)によって結成されたバンドのデビューシングル。このシングルが発表された経緯は、アメリカ西海岸のイースト・ベイ・パンクシーンのドキュメンタリー映画『Turn It Around: The Story of East Bay Punk』が上映されることがきっかけ作曲された。映画用に作られた曲を、iTunes限定で発売された。売り上げはすべてカリフォルニア州バークレーのイースト・ベイエリアにあるライヴハウスVenue、924 Gilmanに100%寄付されるそうだ。

そもそもこの2人の出会いは、87年までにさかのぼる。同じカルフォルニア州のイーストベイ出身で、当時ビリージョーはSweet Children(スウィート・チルドレン)というバンドで活躍し、ティムはOperation Ivy(オぺレーション・アイヴィ)で活動していた。お互いに貧しい地区の出身で、前身のバンド時代からの友人関係だという。先にブレイクを果たしたビリージョーが、ティムに売れてほしいと願い、93年に“Radio Radio Radio”を提供。のちにランシドの名曲と呼ばれ、現在でもライヴの終盤に必ず演奏されている。かたやグリーンディのほうは、初期のころから現在にいたるまでオぺレーション・アイヴィのカヴァーである“Knowledge”を必ずライヴで歌い続けている。そこにはお互いのバンドがどれだけ大きくなろうが、変わることのない絆の深さある。お互いの挫折と復活、成功など、苦楽をともにしてきた仲間だからこその結束の強い友人関係があるのだ。

そして結成されたバンド名は、ティムとビリージョーのラストネイムであるアームストロングが採られ「The Armstrongs(ザ・アームストロング)」と名付けられた。メンバーは、ビリージョーとティムのほかに、ビリー・ジョーの息子ジョーイと、ティムの甥っ子レイ・アームストロングも参加。お互いの親族のみで結成。

肝心の曲だが、アコースティックギターのイントロが印象的なカラッと明るい西海岸特有のパンクロック。ランシドの3作目である“...And Out Come The Wolves(アンド・アウト・カム・ジ・ウルヴス)”に収めされている曲に雰囲気が近いさわやかなパンクロック。ティムのしゃがれたボーカルスタイルに合わせた曲が採用されており、ビリージョーは終始わき役に徹している。

ここで歌われている内容は、映画にふさわしく、自分が生まれ育ったシーンについての楽しかった思い出。もう一度昔に戻ることができるのなら、また過去と同じステージに立ち歌いたいという、痛切な郷愁願望。いささかノスタルジーに浸っている傾向にあるが、けっして後ろ向きな感情ではない。そこにはイーストベイ・シーンへの深い愛情がある。バンドを始めたことによって出会えた同じ気持ちの仲間たち。そしてその仲間たちと巡り会えたことによって生まれた深い絆と、ルーツであるイーストベイ・シーンへの誇り。そのプライドを胸にバンドを続けていく前向きな感情。そして息子たち次世代へと受け継がれていく。その未来へと受け継がれていく希望が、すがすがしいまでのさわやかさとカラッとした心地よい風のような気持ちであふれているのだ。変わらぬ友情が放つ愛情のあふれた1曲なのだ。

2016/01/17

Red Death (レッド・デス)  『PERMANENT EXILE (パーマメント・エグザイル)』

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コーク・バストのボーカル、ニックを中心に、ジェネサイド・パクト、ピュア・ダイジェスト、インテントなどのメンバーで結成された、ワシントンDC出身のハードコア・バンドの15年に発表されたデビュー作。アメリカではクロスオーバー、スケート・スラッシュ・ハードコアやDCファイト・メタルという呼び方をされているが、彼らのサウンドとは、オールドスクール・ハードコアにスラッシュ・メタルをクロスオーバーさせたサウンド・スタイルだ。

ベースにあるのはマイナースレットのワシントンDCの伝統を受け継ぐ、高速スピードなオールドスクール・ハードコア。そこにスラッシュメタルのリフやテクニカルなギターフレーズを合わせた。折衷度でいえば、ハードコアが4、スラッシュメタルが6ぐらいの割合か。苛立ちをはき捨てるような怒声交じりのボーカルからは、シック・オブ・イット・オールからの影響を色濃く感じ、スレイヤーばりのザクザク刻む怒りを煽るような扇情的なギターのリフからは、シンプルでストレートになりがちなハードコアに複雑な色合いをあたえている。

歌詞は自分の弱さを克服する内容や怒りについて歌っているようだ。弱い自分を自覚し、強がってみせる。ある意味、虚勢ともとれるが、過酷な状況を乗り越える精神的な強さこそ、パンク・ハードコアだと彼らは語っている。そういったアティチュードのバンドなのだ。その挑発的な姿勢と怒りや苛立ち焦燥感がサウンドから満ち溢れている。

古い要素を掛け合わせた彼らのサウンドは、今までのバンドにはなかった最新型のクロスオーバー・ハードコアといえるだろう。今までありそうでなかったハードコアの新しいサウンドといえるだろう。

2015/07/13

Refused (リフューズド)   『Freedom (フリーダム)』


FreedomFreedom
Refused

Epitaph 2015-06-29
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 15年7月に発売されたじつに17年ぶりとなる作品。2012年の再結成からワールドツアーを重ねて、よほどの手ごたえを感じたのだろう。一回限定の再結成ツアーが、アルバム発売までいたったのだから。あくまでも憶測だが、おそらく今作を発表した理由は、彼らの人気がスウェーデンだけに留まらず、全世界へと広がっていることに気付いたからではないか。日本でもそうだが、いままでおそらくアメリカでも伝説のバンドという、扱いだったのではないか。アメリカの大手インディーズメーカー、エピタフからの発売も手伝って、前作『シェイプ・オブ・パンク・トゥ・カム』は、それほど絶大なインパクトを残し、全世界へと普及した作品であったのだ。その実験的なサウンドは、安易な商業主義的な音楽とは一線を画し、一部の金持ちだけが暴利をむさぼる資本主義的な体制を徹底的に批判していた。たとえ周囲に評価されなくても、自分たちにしかありえないオリジナルティーを追求し、演りたいことを貫く。その実験性と攻撃的な闘争心にあふれたサウンドで、妥協を許さない信念に満ちたハードコア精神を貫いていた。その姿勢が神格化された要因だろう。

 あれから17年の歳月が経ち、発売された今作は、前作の切り貼りしたフレーズがめまぐるしくクルクル入れ替わるカオティックなサウンド・フォーマットを踏襲している。だが、別のアプローチから進化させているため、前作とはまったく異なるサウンドを展開している。とくに70年代のエレクトロ・ファンクのリズムや80年代のLAメタルやスラッシュメタルなどのフレーズが目立つ。“ドーキンス・キリスト”は甘く魅惑的な女性のボーカルの声で始まるが、全体の骨格を担っているスラッシュメタルのリフが、地獄の黙示録のような雰囲気を作っている。“オールド・フレンズ/ニュー・ウォー”は、エレクトロ・ファンクという現代的な音楽に、12モンキーズのドラッギーな要素を組み合わせ、現代風にアレンジしているが、リズムがファンクだけにどこか古さを感じる。“ウォー・オン・ザ・パレス”はホーンや土臭いバーボンロックのようなギターフレーズが、ゴージャスなロックサウンドをイメージさせる。総じてこのアルバムから感じる雰囲気は、豹柄の服と革パンをはいた、キャバレーや派手なネオン管のサインと結びついた80年代末のアメリカロックのようなゴージャスで派手で淫靡な雰囲気。あるのは80年代の古いものを蘇らせたノスタルジー。ここには、前作のよさであった、道なき道を切り開いていくようなフロンティアスピリッツや、まだ誰もなしとげていない未知なるサウンドに挑戦していく気迫がない。いまの時代性の音楽を自分たちのサウンドに取り入れたり、前作を超える作品を作ろうとする気概や、ハードコアをさらに進化させようとする意思なども感じられない。

 個人的な見解だが、おそらく本人たちもあまりにも神格化されすぎた前作を超える作品を作ることは不可能だと理解していたのだろう。だから、過去に発表したサウンドとは180°異なるジャンルの作品を発表するKYなアメリカアーティストのような自由さで、今回の現代のトレンドや過去の自分たちのサウンドを無視した作品を作ったのではないか。まさにタイトルどおり自由にやっている。まるで伝説と化した過去の評価を、自分たちで壊し、再構築している作品だ。そういった意味では、彼らのパンク精神は失われていないのだ。


2015/07/04

Refused (リフューズド)   『Shape of Punk to Come (シェイプ・オブ・パンク・トゥ・カム)』

Shape of Punk to ComeShape of Punk to Come
Refused

Burning He 2010-06-06
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 98年発表の3作目。これがラストアルバムとなる作品。このアルバムを発表後、彼らは解散を発表する。解散を決意したバンドの作品というのは、たいてい目指していたサウンドの方向性が臨界点を超えたため、いささか倦怠的なムードの漂っていることが多い。だがここには弛んだところは一切ないし、覇気もいささかも衰えていない。倦怠期を迎えたバンドの作品とは思えない、クオリティーの高い出来に仕上がっている。

 おそらくハードコア・バンドとしてのリフューズドは、前作が最高傑作だったのだろう。今作ではハードコアの荒々しいギターが減少している。だがらといってけっして悪い作品ではない。なぜなら前作で確立したボーン・アゲインストのカオティックな要素と、フガジの実験性あふれるフレーズを切り貼りしたサウンドを、さらに推し進めているから、確実に進化を遂げている。彼らの目指していたサウンドスタイルが完成したのは、今作といえるだろう。アルバム名はサックス奏者、オーネット・コールマンが59年に発表し、フリージャズという前衛的なサウンドを確立した作品『ザ・シェイプ・オブ・ジャズ・トゥ・カム』からをもじり、『シェイプ・オブ・パンク・トゥ・カム』と名付けた。そのアルバム名からは、前衛的なパンク・サウンドを確立したという自負と表明を感じることができる。

 前作でベースとなっていた荒々しいハードコアのギターサウンドこそ減少したが、車の音やインダストリアルな工場の音のSEや、フリージャズ、アコースティック、スカ、ノイズ、デジタルのフレーズが、カオティックにめまぐるしく入れ替わるサウンドを展開している。

 これだけいろいろな要素を詰め込むと音の整合性が難しく、消化不良に終わるケースも多々ある。だがこの作品がすばらしいのは、一つ一つのフレーズのかっこよさにある。ここで使われているフレーズは、美しいメロディーとは一線を画したどれもマイナーな音ばかり。たとえば“ニュー・ノイズ”では、時限爆弾のタイマーが刻々と時間を刻むような緊迫感を孕んだフレーズで、“リベラシオン・フィクンシー”では、壊れたラジオのノイズ音とスカのフレーズが静かに闘争心を煽る展開だ。どのフレーズも鋭利に尖りカッコいい音だ。フリージャズのパンク版とでもいうような前衛的なサウンドに、絶叫するボーカルや、緊迫感をはらんだ熱く魂をたぎらせるようなハードコアの衝動で、アルバム全体を統一している。激しい闘争心を感じるハードコアスピリッツと、前衛的な新しいサウンドを確立していく熱意が、奇跡的なグルーヴを生んだ。すばらしい作品なのだ。

 この後、彼らは解散をするわけだが、おそらく決意した理由は、この作品で彼らが目指していたサウンドが完成し、バンドとして演りたいことをやりつくしたからではないか。ここでは、燃え尽きる前の激しい火花が散る瞬間をアルバムに閉じ込めている。まさに奇跡的な瞬間を収めたアルバムでもあるのだ。

 なお10年に発売された2CD+DVDの3枚組みでは、ライヴCDと06年に発売されたDVD『リフューズド・アー・ファッキング・デッド』が収録されている。

2015/05/30

Refused (リフューズド)   『Ep Compilation (EP・コンピレーション)』


Ep CompilationEp Compilation
Refused

Burning Heart 2004-05-24
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 97年に発表されたEP・コンピレーション。02年に再リリースという形でアメリカのエピタフ・レコーズから全世界盤が発売された。97年と02年盤では収録されている曲数が違う。世界普及された02年盤のほうが、曲数が少ない。その理由はとくにカヴァー曲で著作権の承諾が取れなかったそうだ。97年盤のほうを入手できなかったので、ここでは02年盤のほうを紹介したい。

 アルバムは年代が新しい順に収録され、1から4は98年に発表されたEP『ザ・ニュー・ノイズ・ジオロジー』から全曲収録。5から9は96年に発表された『ラザー・ビー・デッド』から全曲。10から16は95年に発表された『エヴィリラスティング』から全曲収録され、計16曲が収録されている。

 『ザ・ニュー・ノイズ・ジオロジー』は、98年の3作目のアルバム『ザ・シェイプ・オブ・パンク・トゥ・カム』のなかに収録されている“ニューノイズ”のシングルカットといえる内容で、そこに未発表曲が2曲収録されている形だ。このシングルは『ザ・シェイプ・オブ・パンク・トゥ・カム』とは違い、まだハードコアの残滓が残っている。とくにアルバム未収録曲である“2”は、エモのようなアップダウンを取り入れハードコアの新しい形を追求し、執拗に繰り返す重厚なギターフレーズにデジタルとプログレ的な要素を取り入れた“3”は“2とは異なるアプローチでハードコアの新しい形を追求している。

 そして『ラザー・ビー・デッド』は、これも『ソング・トゥ・ファン・ザ・フレイム・ディスコンテスト』のなかに収録されている“ラザー・ビー・デッド”のシングルカットといえる内容で、自由で遊び心にあふれた曲が多い。“6”では、スウェーデン語で歌い、いままでと違った滑らかさがある。“8”はクイックサンドのようなギターラインで、アルバムでは収録されていない実験的なタイプの曲だ。そして“9”も、ギターフレーズのみのイントロという実験的な要素をたくさん盛り込んでいる。

 最後の『エヴィリラスティング』は、デビュー作の『ディス・ジャスト・マイト・ビー・ザ・トゥルース』同様、まだ自分たちのスタイルを模索している段階で、先駆者の影響から抜けきれていない。 “11”は歌い方こそニュー・スクール・ハードコアそのものだが、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの“フリーダム”のように、ラストが急にスピードが上がりなだれ込むような展開で、“13”ではヘルメットのような重厚で金属的なリフに、ブラストビートのような、なだれ込むようなスピードを合わせた曲だ。全体的にスローテンポから急スピードに変わる曲が多く、ボーカルはニュースクール・ハードコアのような歌い方で、とくにヘルメットメタリックなギターからの影響が強い。このEPでは、まだリフューズドのスタイルが確立されていないのが理解できるし、ここで提示したニュースクール・ハードコアにプラスアルファーを加えたサウンドは、この先この路線を追及せず、捨ててしまった要素が強いのだ。そういった意味ではレアなサウンドといえるだろう。

 この3枚のEPを通じて共通していることは、太く荒々しいギター・サウンドをベースにしながらも、そこにプラスアルファを加え、ハードコアをつねに変化させている部分だ。たしかに失敗と捉えてこの先サウンド路線を追及するのを辞めた方向性の曲もあるが、全般的にアルバム・コンセプトという制約のない分、プログレなどを取り入れたり、スウェーデン語で歌ったりと、自由で遊び心あふれた実験なものを提示している。アルバムにないタイプの曲が多く、彼らのレアな一面が見られる作品だ。

2015/05/22

Refused (リフューズド)   『Demo Compilation (デモ・コンピレーション)』


Demo CompilationDemo Compilation
Refused

Epitaph Import 1997-09-14
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 97年に発売されたデモ・コンピレーション。リフューズドが結成して間もない初期のころのデモを収録した作品。その内訳は、1曲目から8曲目は、92年に初レコーディングされた『ファースト・デモ』と名付けられたEPからで、全曲収録。9曲目から15曲目は、92年にレコーディングされ発売された2作目のEP『セカンド・デモ』から、全曲収録。16曲目から21曲目までは未発表曲で、計21曲が収録されている。

 『ファースト・デモ』は、2ビートのスピーディーなハードコアな作品で、スウェーデンハードコアのレジェンドであるモブ47のゴリゴリの2ビート、2コードサウンドや、アグノスティック・フロントばりのギターソロなど、彼らが影響されてきたものを色濃く感じる。バンドを始めたころにありがちな、自分たちのサウンドのベースを固めることに必死で、先駆者の影響から抜けきれておらず、オリジナルティーを確立するにいたっていない作品といえるし、とくに途中で音のボリュームが大きくなるなどマスタリングの状態も悪い。まさにデモをそのまま収録している。

 そして『セカンド・デモ』は、演奏技術が前作よりもさらに向上している。とくにギターは音の厚みは増し、ヘヴィーに重く仕上がっている。前作の2コードと3コードのハードコアだけでなく、ユース・オブ・トゥデイのようなザクザク刻むリフや変則的なリズムなどのプラスアルファーな要素を取り入れている。緩やかであるが成長に進化を遂げていることを感じる作品だ。

 確かに両デモとも演奏技術的が未熟であることは間違いない。だが、この作品の魅力はリフューズドのツールがスウェーデンの伝統に沿って出てきたということと、ハードコア以外のバンドで影響を受けたのが誰であるかが理解できるという、その2点に尽きるだろう。とくに面白いのがハードコア以外の影響の部分だ。今作では、AC/DCやモトリークルー、ビスティー・ボーイズなどをカヴァーしている。ハードコア・バンドではない彼らをカヴァーした理由は、おそらくただ純粋のそのサウンドが好きだからだろう。AC/DCからはギターフレーズの間の取り方を学び、モトリークルーからは、執拗に繰り返されるカッティングギターなどの演奏技術を取り入れている。そしてビスティーボーイズから、ピップホップというロックとは関係のないジャンルのサウンドを柔軟に取り入れる方法を学んでいる。

 社会主義者という思想的や、スウェーデン・ハードコアの伝統という、ハードコアに対する尋常でない誇りと拘り持ちながらも、サウンド的には従来のハードコアに固執をせず、柔軟にいろいろなテクニックを取り入れている。それがリフューズドというバンドの特徴といえるだろう。ハードコアの伝統と革新性が結びついたそのアティチュードが、このバンドが一番評価されなくてはいけない部分なのだ。そこ事実を気付かせてくれる作品だ。

2015/05/04

Refused (リフューズド)   『Songs to Fan the Flames of... (ソング・トゥ・ファン・ザ・フレイム・オブ・ディスコンテント)』


Songs to Fan the Flames of...Songs to Fan the Flames of...
Refused

Burning Heart 2004-05-23
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 96年に発表された2作目。これがすばらしい作品に仕上がっている。前作のユース・オブ・トゥディに影響を受けた、変則的なリズムのギターのリフやOiコーラスなどが特徴的なハードコアを、さらに進化させた。ここまでくるともはやユース・クルー・ハードコアではなく、独自の進化を遂げたオリジナルティーあふれるハードコアに仕上がっている。

 今作ではフガジのいろいろな要素を詰め込んだ実験性あふれるフレーズと、ユース・オブ・トゥディの変則的なリズムのハードコアをベースに、ボーン・アゲインストのようなカオティックな要素、クイックサンドのような裏側でなっているような音、テキサス・イズ・ザ・リーズンのエモーショナルに、リフューズドならではのオリジナルティーを加え、独自な進化を遂げている。

 とくにすごいのが、簡潔な言葉で怒りを叫ぶスタイルのボーカル、デニスの怒声。尋常でない怒りと闘争心がアルバム全体を支配している。アルバムタイトルにある『ソング・トゥ・ファン・ザ・フレイム・オブ・ディスコンテント』とは、スウェーデンの産業労働者を支援する活動家で、IWWという労働組合のための応援・団結ソングを作っていたジョー・ヒルの“リトル・レッド・ソング・ブック”という曲から採られている。歌詞の内容もその曲からインスピレーションされ書かれ、たとえば “ラーダー・ビー・デッド”では、<あなたの言いなりになって生きるなら、いっそ死んだほうがいい>と歌い、“クルセイダー・オブ・ホープレス”では<彼らは1000の言い訳と謝罪をする。そして同じ過ちを繰り返す>と歌っている。そこには、権力者への反抗と、資本主義というシステムへの欠陥と怒りが込められている。労働者が一生懸命働き生産した利益の上前をピンはねして富をむさぼる富裕層への尋常でない怒り。まさに弱者のためのハードコアなのだ。

 スウェーデンというアメリカとは離れた土地柄が功を奏したのか、彼らのサウンドはポスト・ハードコアのなかでも独特の進化を遂げている。独特のリズムで怒りを刻み込むようなノイジーで分厚い音のギター、厳かな重低音のベース、雪崩のようなドラム。そこには不穏な空気を漂わせる不気味な静けさに満ちたギターのメロディーが突如激しさへと変わり、急激にギターのイズの洪水が押し寄せて、躁病のようにめまぐるしくギターフレーズがくるくると変化していく展開がある。あとにリフューズドが提示したサウンドがさらに進化してカオティック・ハードコアと呼ばれるようになるが、ちょうどこのころは、実験的なギターのリフやトリッキーなリズムのドラムなどの要素を詰め込んだフガジや、ネオ・サイケデリックな要素をハードコアに取り入れたクイックサンドとは違ったガラパゴス的な進化を遂げた亜種のポスト・ハードコアとして捉えられていたのだ。

 スローテンポでメタルのリフやヒップホップの要素を取り入れたニュースクール・ハードコアがシーンの主流となっていた当時、突然変異な進化を遂げた彼らのハードコアには唯一無二のオリジナルティーがあったのだ。すばらしい作品だ。


2015/04/22

Refused (リフューズド)  『This Just Might Be the Truth (ディス・ジャスト・マイト・ビー・ザ・トゥルース)』


This Just Might Be the TruthThis Just Might Be the Truth
Refused

Burning Heart Sweden 2002-07-01
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 スウェーデン出身のハードコア・バンドの94年に発表されたデビュー作。現在ではノー・ファン・アット・オールやミレンコリン、ラスト・ディズ・オブ・エイプリールなどの活躍によって、スウェーデンのハードコア・シーンが知られているが、そのなかで彼らの存在は、伝説のバンドとして扱われている。その理由は、最高傑作と呼ばれる『ザ・シェイプ・オブ・パンク・トゥ・カム』を発表して、瞬く間に解散したからだ。まるで線香花火のように一瞬のきらめきを放って散った、伝説のバンドなのだ。

 そんな彼らの結成は91年。スウェーデンのウメオで結成された。リードシンガー、デニス・リクセゼンの「資本主義は組織的犯罪であり、我々はすべての被害者だ」という発言にあるとおり、彼らは、初期のころから一貫して、マルクス主義に影響を受けた左翼的な政治スタンスを掲げている。富を搾取する資本主義に対して、怒りのメッセージを発信してきたバンドなのだ。

 デビュー作は、変則的なリズムのギターのリフやOiコーラスが特徴的なハードコアで、そこにはユーズ・オブ・トゥデイの影響を色濃く感じる。録音状態も悪く、荒々しいノイズギターが、迫力なく小さい音で収録されている。音がこもっているせいで、熱量をあまり感じることができない。この時点ではまだ、リフューズドならではのオリジナルなスタイルはなく、まだ先駆者たちの影響から抜けきれていない。

 だが彼らがハードコアを演らなければいけない理由が伝わってくるし、ハードコアそのものを好きだという姿勢も伝わってくる。なりより彼らが何のためにバンドを始めたのか、その理由が明確に伝わってくるのだ。彼らのルーツがよくわかる作品だ。

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