プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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S

2017/12/13

SECT (セクト)  『NO CURE FOR DEATH (ノー・キュア・フォー・デス)』

No Cure for DeathNo Cure for Death
Sect

Southern Lord 2017-11-23
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ヴィーガン・ストレートエッヂ思想を掲げるハードコアバンドの2作目。あいかわらずブレることのない信念を貫き、尋常でない怒りに満ちた熱いサウンドを展開している。

今作でも前作同様のバリバリの轟音を立てるノイズ系ハードコアを踏襲している。だが前作よりも破壊力と激しさと強度が増し、よりパワーアップしている。基本的にはミディアムテンポのハードコアと、怒涛のブラストビートのドラムに、スピーディーでパワーヴァイオレンスな曲が交互に入れ替わる展開。それにしてもものすごいギターの音圧とノイズの嵐の轟音だ。そして怒りの言葉を吐き捨てる雷のような怒声に満ちたボーカル。スローテンポな曲では、怒りの言葉が鮮明に伝わるようじっくりと聴かせ、スピーディーな曲ではギターの音圧とノイズの津波が体全体に被いかぶってくるような圧倒的な音の迫力がある。

そこにあるのは尋常でない怒り。怒りの根源にあるのは、彼らのヴィーガン・ストレートエッヂ思想に対するこだわりのせいなのかもしれない。彼らの考えるストレートエッヂ思想とは、地域性や歴史、信仰する理由によって考え方がかなり異なるものだという。ポップでおおらかな部分もあるという。それに比べヴィーガンは、人間だけが利益になることを嫌い、生物全体の生命の尊厳が守られなければいけないものだと、彼らは考えている。そのためには行動に出ることも厭わないという。そんな生命の尊厳を守らない人間に対する怒りが、この作品には尋常でなくにじみ出ているのだ。その尋常でない怒りと津波のような爆音ノイズ。どれをとっても前作以上に素晴らしい作品だ。

2017/06/19

SECT (セクト)

SECTSECT
SECT

Alliance Trax 2016-08-04
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元Cursed(カースド)、Burning Love(バーニング・ラヴ)、Left For Dead(レフト・フォー・デッド)のChris Colohan (クリス・コロンハン)Vo、元CatharsisのJames Chang(ジェイムス・チャング)Gt、元Earth Crisis(アース・クライシス)のIan Edwards(イアン・エドワーズ)Bs、元Fall Out Boy(フォールアウト・ボーイ)のAndy Hurley(アンディー・ハリー)Drによって結成されたニューヨーク出身の16年に発表されたデビュー作。

これがTrash-Talk (トラッシュトーク)やNALIS(ネイルズ)に通じる峻烈なハードコアを展開している。FAST誌11月号のインタビューによれば、政治や社会問題、環境問題に対して怒りに満ちた不満があり、自らの主義・主張を宣言するため、ハードコア・バンドを結成したとのこと。掲げている信条とは、ビーガンストレートエッヂ思想。バンドの信念として、Not Drinking(酒を飲まない)、Not Smoking(タバコを吸わない)Not Drugging(ドラッグをやらない)、Not Vaping(マリファナを吸わない)など、かなり禁欲的なハードコア思想を掲げている。ストレート・エッヂはアースクライシスの出現によって、シーシェパードなどの結びつき、行動に出る闘争的な方向に進んだが、彼らもまた動物愛護を実践している。まさに筋金入りのハードコアバンドなのだ。

ここで歌わている内容は、核兵器でキリスト教徒以外は排除するキリスト原理主義への批判、動物実験を繰り返し、巨大な利益を得る大企業への怒りなど。西側諸国の大企業やキリスト原理主義への批判が多い。それにしても尋常でないほどの巨大な怒りがこのアルバムを支配している。そのサウンドを形容するなら、まるで怒りの雷だ。どす黒い空に光を放ち龍が走り回るようにゴロゴロと不気味な音を立てるブラストビートのドラム。バリバリと巨大な音を立てるノイズギター。そして激しい音を立て落雷するような怒りを落とすボーカルの怒声。激しい怒りを爆発させる尋常でないエナジーに満ち溢れているのだ。

尋常でないテンションの高さとノイジーなサウンドを極めたこともさることながら、トラッシュトークのような激しいテンションとスピード感や、ネイルズのノイジーなサウンドをさらに突き詰めたギター、Modern Pain(モダンペイン)あたりのスローパートをミックスさせたサウンドは、現在のハードコアの最先端にいる作品といえるだろう。


2016/10/10

seven sisters of sleep(セブン・シスターズ・オブ・スリープ) 『Ezekiel's Hags (エゼキエル・ヘッグ)』

Ezekiel's HagsEzekiel's Hags
Seven Sisters Of Sleep

Relapse 2016-02-04
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悪魔崇拝のサタニズム思想を全面に掲げ、ブルータルでドゥーム色の強いパワーヴァイオレンス・バンドの3作目。バンドのサウンドコンセプトともいえる、怨霊の呻きのようなボーカルやブラストビート、スローテンポでグルーヴを重視した重厚なリフなどは、3作通じて一貫して変わっていない。だが一作一作発表するごとに、サウンドの迫力や、演奏の技術力が上がり、確実に深化している。円熟と深化の極みに向かっているバンドなのだ。

今作では前2作と比べ、さらにサタニズムが深まり、魔界の地獄絵図を想像させるような迫力のあるサウンドで、悪魔の世界観を追及している。とくにドゥーム・メタルからの影響が強くなり、ブラストビートに磨きがかかっている。

地獄の窯がふつふつと煮詰まるようなブラストビート。獄の苦しみを味わっているかのような絶叫ボーカル。スローテンポのギターのリフとドラムが地獄めぐりという重く暗く絶望的な無限ループを感じさせる展開。すべてに地獄や悪魔の生贄といった禍々しさを感じさせるのだ。アルバムタイトルは、紀元前6世紀ごろのユダヤ人の預言者が書き、旧約聖書の一部となっているエゼキエル書から引用。神の怒りと悔い改めることへの教訓を書いたエゼキエル書とは真逆の内容の世界観を、追求している。

ここまでくるとハードコアというより、ブルータルやドゥームメタルだ。全作品中このアルバムが、一番迫力のあるサウンドを展開している。彼らの最高傑作といえるだろう。

2016/08/24

『SALAD DAYS:A Decade Of Punk In Washington,DC(1980-1990)』サラダ・デイズ:ア・デケイド・オブ・パンク・イン・ワシントンDC(1980-1990)

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2014年12月に上映されたワシントンDCのパンク・ハードコア・シーンに焦点を当てたドキュメンタリー映画『SALAD DAYS:A Decade Of Punk In Washington,DC(1980-1990)』(サラダ・デイズ:ア・デケイド・オブ・パンク・イン・ワシントンDC(1980-1990))。その映画が2015年にDVD化で販売。07年に上映されたドキュメンタリー映画『アメリカン・ハードコア』は、80年から86年にかけてのアメリカ全土のハードコア・シーンを、相関的に紹介した映画だった。今回紹介する映画『サラダ・デイズ:ア・デケイド・オブ・パンク・イン・ワシントンDC(1980-1990)』は、80年から90年にかけてのワシントンDCのパンク・ハードコア・シーンのみに焦点を当て、10年に起こった出来事を紹介する作品だ。トニー・レットマン著書の『ニューヨーク・ハードコア1980-1990』は、ニューヨーク・ハードコア・シーンの10年間の出来事を事細かく追った紹介した本だったが、それのワシントンDC版といえる内容だ。この2作品を比べると、ニューヨークとワシントンDCでは、別の国の出来事のように、シーンの内容が全く違うのが面白い。

本編では、イアン・マッケイとDC出身であるヘンリー・ロリンズが影響を受けたラモーンズやシド・ヴィシャスなどの初期パンク・バンドの話から始まる。そしてイアン・マッケイが初めて結成したバンド、ティーン・アイドルの話に移り、そのバンドのレコードをリリースするためディスコード・レコーズを設立した話に移る。ユース・ブリケードやヴォイド、フェイス、SOAなど、バッドブレインズに影響を受けたバンドたちの台頭により、DCシーンが活気を増していく話に移る。そしてストレートエッヂの始まり。警察介入や暴力の蔓延などによるDCシーンの倦怠期。スキンズの台頭。そして85年に起きたレボリューション・サマー(改革の夏)と呼ばれる重大な出来事。倦怠期を迎えていたDCシーンに、ライツ・オブ・スプリングやエムブレイス、ダグ・ナスティーなど新しいバンドたちの登場によって、新たなルネサンス運動を起こした。これらのバンドがのちにエモーショナル・ハードコアというジャンルで呼ばれることになる。そしてファイヤーパーティーという女性バンドや、フガジなどのバンドによって設立されたポシティヴ・フォース(正しい力の目覚め)と名付けられた新しい芸術家運動。自らの成長が目的とされ、社会変革や非暴力などを訴え、芸術や教育、慈善運動などに力を入れた活動だ。最後にフガジがニルヴァーナーに与えた影響について語り、ジョーボックスなどの新しいバンドの台頭、J・ロビンスとデイヴ・グロールがDCシーンにつて総括するところで映画は終わる。10年間に起こった出来事を、時系列に沿って、DCシーンの変遷をインタビューとライブ映像を交えて進めていく内容だ。

DCシーンの始まりのころは、どのバンドもバッド・ブレインズからの影響を抜けきれずにいた。それが85年に起きた“レボリューション・サマー”で、サウンド面でのオリジナルティーを獲得することになる。そして“ポジティブ・フォース”で、DCシーンそのものが独自サウンドを持ったバンドを次々と輩出していくようになる。

個人的には、フガジのあとにマイナー・スレットを聴いたり、そのあとにダグ・ナスティーを聴いたりしていたから、シーンのそのものの移り変わり自体、知らなかった。それが今回のDVDでDCの全容すべてを知ることができた。資料としてもものすごく基調価値のある内容なのだ。

個人的な感想をいえば、DCハードコアとは、ものすごく理想的で素晴らしいシーンだと思った。ドラッグが蔓延することもなければ、黒人や白人、アジアや男女差別のない、DCに住んでいることという以外、すべてに対して、門戸を開いた特殊なシーンだった。

そこにはまるで隣近所がすべて知り合いで、お互いに助け合った昭和時代のような、義理と人情にあふれた昔の日本の下町のような情緒を感じる。その遠因としてディスコード・レコーズのオーナーである、イアン・マッケイの性格が大きく左右しているのだろう。

このDVDでは語られていなかったが、一点疑問に思ったのが、ディスコード・レコーズがDCのバンド以外リリースしなかったところ。もちろんDC以外のバンドをリリースしていたら、これほどDCシーンは、大きく発展しなかっただろう。DC以外に門戸を開かなかったのが、すごくいい意味で作用したのは事実だ。ただイアン・マッケイにどんなポリシーがあったのか、個人的には知りたかった。そこだけが残念だった。(英語が分からなかったので、もしかしたら語っていたのかもしれないが)

なおボーナストラックに本編からカットされたインタビューと、当時のDCバンドのライブ映像が、収録されている。

2016/06/06

Shai Hulud(シャイハルード) 『Just Can’t Hate Enough X 2 – Plus Other Hate Songs』(ジャスト・キャント・イナフ×2-プラス・アザー・ヘイト・ソングス)

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 15年にヴァイナルのみで発表された8曲入りEP。4曲のカヴァーと多彩なゲストをボーカルに据えた4曲で構成された作品。今作ではボーカルがマットからマッティ・カロックに代わり、心機一転を図った作品といえるだろう。自分たちの影響を受けたミュージシャンや、現在の嗜好するサウンドを徹底的に見つめ直した。いわば再生をテーマに掲げたカヴァー集なのだ。

 06年に発表したカヴァー集『ア・プロファウンド・オブ・マン』( A Profound Hatred of Man)では、NOFX、バッド・ブレインズ(BAD BRAINS)、バッド・レリジョン(Bad Religion)、ネガティヴ・アプローチ(NEGATIVE APPROACH)、メタリカ(Metallica)と、オールドスクール・ハードコアからスラッシュ・メタル、メロディック・ハードコアなど、彼らのルーツが垣間見れるカヴァーだった。

 今回もハードコアからメロディックパンク、スラッシュメタル、クロスオーバーなど、パンクやハードコア、メタルなど特定のジャンルに焦点を絞っている。だが『ア・プロファウンド・オブ・マン』と比べると、今作ではエクセル以外は比較的最近活動しているバンドが多い。自らのルーツをカヴァーするというより、いろいろなバンドの異なるアイデアを、自らのサウンドに取り込むためのカヴァーといえる。自分たちの原点を見つめ直すカヴァーではなく、異なる視点からハードコアを学ぶためのカヴァーなのだ。

 肝心の内容だが、1~4はオリジナルの曲で、5~8はカヴァー曲。1曲目の“Sincerely Hated”(センシリティー・ヘイテッド)から3曲目の“How Hates The Heart”(ハウ・ヘイツ・ザ・ハート)は新曲で、4曲目の“A Profound Hatred Of Man”(ア・プロファウンド・ヘイテッド・オブ・マン)は97年に発表された『Hearts Once Nourished With Hope & Compassion』(ハーツ・ワンス・ノーリッシュド・ウィズ・ホープ・コンパッション)からの再録。Further Seems Forever (ファーザ・シームス・フォエバー)のチャド・ネプチューンやComeback Kid (カムバック・キッド)のアンドリュー・ニューフェルドなど、多彩なゲストを招いて制作された曲だが、カヴァー曲を含め、2曲目以外はHate(憎しみ)という言葉が引用されている。自己嫌悪や相手に対する憎しみなど、多種多様な憎しみが表現されているのだ。そして5~8のカヴァー曲は、5曲目の“I Just Can't Hate Enough”(アイ・ジャスト・キャント・ヘイト・イナフ)はカルフォルニアのオールド・ハードコア・バンド、 A Chorus Of Disapproval(ア・コーラス・オブ・ディサプルーヴ)のカヴァーで、6曲目の“Just Can't Hate Enough”(ジャスト・キャント・ヘイト・イナフ)はニューヨークの極悪ハードコアと呼ばれたSheer Terror(シアー・テーラー)のカヴァー。7曲目の“Blaze Some Hate”(ブレイズ・サム・ヘイト)はスラッシュメタルとスケーターパンクをクロスオーバーさせたExcel(エクセル)のカヴァー。8曲目の“Hate, Myth, Muscle, Etiquette”(ヘイト、メス、マッスル、エチケット)はカナダのメロディック・パンクバンド、Propagandhi(プロパガンティー)のカヴァーだ。

 今回も自分たちのサウンドスタイルを強調しつつも原曲の個性も残す、折衷スタイルのカヴァーだ。5曲目の“アイ・ジャスト・キャント・ヘイト・イナフ”はア・コーラス・オブ・ディサプルーヴのメロディーラインを残しつつも、シャイハルードの特徴である気合の入った叫び声を全面に出したカヴァーで、“ジャスト・キャント・ヘイト・イナフ”はシアー・テーラー特有の重くグルーヴィーなギターのリフを、スピーディーな激しさに変化させている。“ブレイズ・サム・ヘイト”はエクセルのリズム感とギターコードを残し、そこにシャイハールドの個性である激しさを加えたカヴァーだ。そして“ヘイト、メス、マッスル、エチケット”はプロガンバティーのスピード感とメロディーラインを重視したカヴァー。そこにシャイハルードらしい叫び声を加えた。どの曲も両者の個性が顕著に表れているのだ。

 今回シャイハルードが、カヴァーと新曲、そして思いいれの強い旧曲の入り混じったこの作品を発表した理由は、自分たちがバンドを始めた動機を再確認するためだろう。だから自分たちがバンドを始めた動機であり、フラストレーションを発散する理由であり、バンドを続けているモチーベションの原因でもある<憎しみ>という感情を、追求したのだろう。そして多彩なゲストと一緒に曲を作ることによって、新しい手法を手に入れた。自分たちのサウンドを貫く変わらない自分であるためには、ハードコアの違った手法を取り入れることによって変わり続けていくことによって、成し遂げられる。新しく生まれ変わるために必要な作品だったのだ。

2015/11/16

Siege (シージ) 『Drop Dead (ドロップ・デッド)』


Drop DeadDrop Dead
Siege

Deranged Records 2008-05-06
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 ボストン・ハードコア・シーンで一際異質な個性を放っていたシージ。彼らが唯一発表した作品『ドロップ・デッド』の発売30周年を記念して、4曲のボーナストラックが収録され再発された。

 その内容は、84年に唯一発売されたデモ音源『ドロップ・デッド』から6曲と、ハードコアのコンピレーションアルバム『クリーンス・ザ・バクテリア』から3曲、今回新たに発掘された未発表曲が4曲、計13曲が収録されている。

 シージの出自であるボストン・ハードコア・シーンとは、カオティック・ハードコアの代表格であるコンヴァージや、体育会系的なスポーティーなノリをハードコアに取り込んだDYSなど、ハードコア界のなかでもの突然変異を遂げたバンドを多く輩出したシーンだ。その例に漏れずシージも個性的なハードコア・サウンドを展開していた。

 そのサウンドは、ジャームスの退廃感に満ちたスローテンポなサウンドに、SODのマシンガンのような高速スピードのドラムと1分台のファストな曲と、ノイジーなディストーションを加え、緊迫した空気を孕んだバイオレンスに発展させた。オリジナルティーあふれるハードコア・サウンドなのだ。

 曲調や展開、歌いまわしこそ、ジャームスやSODなどのバンドから色濃い影響を感じることが出来るが、ミサイルのシャワーのようにとことん歪んだ分厚いノイズのギターや、苦悶の嘆きのようなデス声、フリージャズのトランペットを取り入れたカオティックな音は、彼らならではのオリジナルだ。退廃感に満ちたスローテンポから突如汚物を吐き出すようにピッチが上がっている独特の展開は、当時の2ビート、2コードの曲展開こそがハードコアだった当時としては、意外性あふれるサウンドだったらしい。現在、彼らのサウンドは、グラインド・コアやパワー・バイオレンス、クラスト・コアの先駆者として語り継がれている。それほど当時は画期的なサウンドであったそうだ。このサウンドから影響を受け、あとにヘレシーやナパーム・デスといったバンドたちがさらに発展したサウンドを展開したのだ。大きなインパクトは残さなかったが、隠れた名盤であるのだ。

2015/03/23

Slapshot (スラップショット) 『Slapshot 』


Slapshot -Digi-Slapshot -Digi-
Slapshot

Imports 2014-06-25
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 85年から活動しストレートエッヂとして知られるボストンのハードコアバンドの7作目。EPを含めるとじつに9作目となる作品だが、初期のころから一貫してG.B.H系のオールドスクール・ハードコアにOiをプラスした独自なサウンドを展開している。

 今作も重く厚みのあるギターコードに、スピーディーで間段なく突き抜けていくオールドスクールなハードコアに変わりはない。気合の入ったボーカル、チョークの怒声は相変わらず健在。パワフルで熱気にあふれたサウンドを展開している。あえて変化した部分を上げるのなら、演奏技術が精密になった部分と、ギターソロなどを取り入れた部分か。あと名曲“ファック・ニューヨーク”のような、ニューヨークの良いところや悪いところの流行の最先端や憧れなどのすべてにファックをつけ、全否定する毒に満ちた歌詞がないのが、ちょっと残念な部分だ。

 だが彼らの魅力であるストレート・エッヂながらもイギーポップばりの破天荒なアティチュードはアティチュードは健在だ。気合の入ったエネルギッシュに満ちながらも、シリアスさはまったくない。歌詞も短絡的な批判や悪口に満ち、毒々しい内容がらも、そこには怒りや憎しみを通り越し、滑稽な笑いとユーモアに満ち溢れている。その魅力は今作でも失われていない。相変わらず好感の持てるバンドだ。



2013/11/27

SAVES THE DAY 

Saves the DaySaves the Day
Saves the Day

Equal Vision Records 2013-09-22
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13年発表の8作目。前作は<自分探し>という壮大なテーマのもと、自分たちの伝えたい感情を、サウンドで表現していた。セイヴス・ザ・ディというバンドを一言でまとめるなら、子供から大人になる過程を、感情論や教訓、導き出した答えなどの歌詞を交え、サウンドに仮託し伝えていたバンドである。いうなら自分たちの伝えたい気持ちが先行していたバンドであったのだ。

いままで表現してきた感情とは、学生時代の恋愛のドキドキ感から、ノー天気な明るさ。3作前からは、自分探しという壮大なテーマがあった。孤独と怒りを経て、反省と後悔をし、怒りや悲しみ、恥辱を、あるがままに受け入れた。受け入れたことによって、愛を手に入れることだできた。それが自分探しで得た答えだった。前作で自分探しの答えが見つかったためなのか、今作では、自分を表現したいという欲求よりも、音へのこだわりに目覚めている。

新たなスタートを切った今作では、ビューティフルなサウンドに徹底的なこだわりを見せている。サウンドの基盤となっているのは、サニーディ・リアル・エステイトやザ・スミスのようなビューティフル系のエモとギターポップ。なかにはバラードもある。とくに美しさを感じるのは、“ビヨンド・オール・オブ・タイム”と“エイント・ノー・カインド・オブ・ラヴ”。エイント・ノー・カインド・オブ・ラヴ”では、曲の最後を閉めくるるイントロが、舞い散る桜のような儚さと切ないさを感じるメロディーが印象的。そして“ビヨンド・オール・オブ・タイム”では、夏の日の真っ赤な夕日の美しさを連想させるメロディーがあり、真夏のけだるさや倦怠感といった陰の部分がある。コリンの透明な美声も、柔らかく穏やかに歌われていて、丁寧に作りこまれている。全体的に幻想的で明るいメロディーの曲が多いが、その2曲に代表されるように、けっして明るさ一辺倒の表面的なメロディーではない。その奥の部分に黄昏や刹那的な儚さといった陰の部分を感じる。そこには、楽しかった日々が刹那のように通り過ぎて、すべてが幻だったかのような印象を受ける。

 いままで彼らが表現してきた感情と比べると、明るさの裏に落ち着いた感情があったり、華やかさのあとに訪れる淡く儚い感情などの、2面的な部分ある。今まで怒りや悲しみなどの直情を歌っていた彼らからすると、この奥深さには、表現力の進歩や人間的な成長のあとを感じる。

 2面以上ある奥深い表現と、ビューティフルなサウンドに対するこだわり、その2つの要素が、今までの作品とは違った印象を与えている要因であり、バンドが新しく生まれ変わった理由なのだ。だからこの作品のタイトルに、自らのバンド名を冠したのだろう。それほど、すべての面でリニューアルされている。

 今まで彼らには、一貫して満たされない想いがあった。それもなくなり、感情論として達観した印象を受ける。だからアティテュードからサウンドのこだわりにシフトしたのだろう。といっても、音楽への情熱は少しも薄れていない。すぐに消え忘れさられてしまうような、桜が舞い散る淡く儚い美しさはすばらしい。これはこれでいい作品だ。

2013/11/18

SAVES THE DAY 『DAYBREAK』

デイブレイクデイブレイク
セイヴス・ザ・デイ

ビクターエンタテインメント 2011-09-06
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 11年発表の7作目。自分探し第3弾。最終章となる今作のテーマは、受け入れること。当初、この作品は08年に発表予定であった。だがレーベルの移籍やメンバーチェンジなどのトラブルが生じてしまい、発表が3年延びてしまった。

 とくにメンバーチェンジは深刻で、10年間在籍をし、ギターメロディーを担当していたデヴィットを含め、クリス以外のメンバーはすべて代わった。一度作った作品を、新たなメンバーで、再度、録り直したそうだ。一見ものすごいトラブルがあったように思われるが、クリス自身、このメンバーチェンジを前向きに捉えている。その理由は、前メンバーでのレコーディングが、しっくりこなかったから。メロディック・パンクなギターが持ち味のデヴィットとは違い、新メンバー、アランのギターセンスは、インディーロックやオルタナに影響を受けたサウンド。ギターセンスが違う新しいメンバーが加入したことによって、新鮮さをもたらし、理想のサウンドに仕上がったという。2年前にリリースしていたら、こんなにいいアルバムにはならなかったと、クリスは後日のインタビューで語っている。メンバーチェンジとレーベル移籍というトラブルが、アルバムに熟成期間を与えてくれたのだ。

 そんなプロセスを経て完成した今作は、『イン・レヴァリー』の延長上にあるナイーヴな悲しみに満ちたオルタナティヴなサウンド。そこにグリーンディの『アメリカン・イデオット』のようなパンクオペラや、フランメコギターや、オルタナティヴな実験的なメロディーなど、新しい要素が加わった。“ディレンジド&デスペレイト”では、警告音のようなメロディーを導入し、今までにない新しい展開で、新メンバーであるアランの個性が遺憾なく発揮されている。

 歌詞は、彼女と別れや、再会、そしてよりを戻すという順番で、曲は展開していく。まず始めの1曲目のパンクオペラの“デイブレイク”では、これまでの3部作を総括した内容で、彼女が去って心にぽっかりと開いた心の空白と苦しみをアルコールで紛らわしている。そこから心を掻き乱されるような苦しみを経て、時間がたつにつれ、傷口をなでるような落ち着きと優しさを取り戻し、悲しみを受け入れ、立ち直っていくという、物語を展開している。

 そしてアルバム後半の8曲目の“リヴィング・ウィズアウト・ラヴ”では<俺たちは道に迷っている。引き裂かれ、褒め称え、批判する>と、彼女と別れた時期は、自分を見失っていたと、結論付けている。苦難を乗り越え、自分の気持ちが天気が晴れたような、清々しさとともに、劇的な結末を迎えていく。

 今作のテーマである、受け入れることとは、苦しみや孤独などのすべてを自らの中に受け入れることだなのだ。そして第1章の怒りと、第2章の反省と後悔を経て手に入れたものとは、愛だったのだ。愛とは隙の延長上にあるものではなく、相手のいやな部分や欠点も受け入れること。達観した感情のことなのだ。この3部作の自分探しの答えとは、愛にあったのだ。

 彼らが探していた答えが見つかったという影響もあると思うが、アルバムの後半では特に晴れ晴れとした感情があり、今まで彼らにあった満たされない思いが解消されている。挫折や苦難を経て、彼らが大人になった姿がある。それがこの作品の魅力なのだ。

2013/11/11

セイヴス・ザ・デイ  『アンダー・ザ・ボーズ』

Under the Boards + DVDUnder the Boards + DVD
Saves the Day

Vagrant 2007-11-05
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 07年発表の6作目。自分探し第2弾。今作のテーマは、反省と後悔。前作は孤独と怒りといった感情を、初期パンクサウンドに叩きつけ、自分の内面を見つめ直していた。今作では、ミディアムテンポのメロディック・パンクがひさびさに復活している。

 今作では、メロディックパンク中心のサウンドだが、そのほかにもバラードや、スミスのようなギターポップな曲、エモーショナル・ハードコアのような静寂と激しさがアップダウンしていく曲など、バラエティーに富んだサウンドを展開している。メロディック・パンクな曲の“ゲット・ファックド・アップ”では、健やかなアメリカン・ポップからの影響がうかがえる。メロディック・パンクの3作目と比べると、リフレインするコーラスやメロディーなどの新しい要素が加わっている。その部分に彼らがどのようにステップアップしてきたのか成長の軌跡が伺える。

 そしてこのアルバムでとくに印象深いのがバラード。“ロンリー・ナイツ”は、素朴なピアノのバラードで、アルバムジャケットのように、夜空を見上げ、自分の悩みがちっぽけに思えてしまうような広大な世界がある。また“ステイ”は、牧歌的なフォークギターを中心としたバラード。自然をフィーチャーしたアンビエントな要素を加え、インティーロックを展開している。ドロドロとした怨情を激しいノイズギターに叩きつけている“ウォウ”と“ターニング・オーバー・イン・マイ・トゥーム”では、エモーショナル・ハードコアのような展開で、激情から静けさに包まれた落ち着いた感情へトーンダウンしていく。いままでにないノイジーで実験的なサウンドを展開している。サウンド的には今作では、いろんなことに挑戦している。それが今作の特徴だ。

 歌詞も前向きな曲から、悲哀や慈悲など、多彩な感情を表現している。“アンダー・ザ・ボーズ”では<真意とは逆の邪悪な言葉を口走り、嫌われいく自分を殺してしまいたい>と、自己嫌悪な気持ちについて歌い、“ゲット・ファックド・アップ”では、<この星がみんな僕の心に舞い降りてくるのを、窓越しに見つめた日々は遠い昔になってしまった>と、彼女との楽しかった思い出について歌っている。“バイ・バイ・ベイビー”では、<バイバイベイビー、この愛ではダメなんだ>と、恋愛の終焉について歌っている。ドロドロとした内面の怨情や、孤独で惨めな気持ち、自嘲、やさしさ、慈しみ、思いやりなど、前向きな感情から負のネガティブな感情まで、じつに多彩でバラバラ。いろんな感情を感じながらも、すべて反省と後悔で統一されている。弱さも、汚らしさも、いやらしさもさらけ出した、人間味が溢れた作品といえるだろう。

 だが、いろんなことにチャレンジしすぎて、まとまっていない印象を受けた。感情のベクトルもいろんな方向に向かっているため、情念が定まっていない印象を受けた。個人的には悲しみなら悲しみだけ、怒りなら怒りだけど、一方向の感情で統一された、前作と前々作のような作品を作って欲しかった。そのほうが勢いも出たし、よかったのではないかと思う。だが、この作品の魅力は、現状に満足せず、新しいことにチャレンジしていく姿勢だ。なぜなら彼らの作品には全作品を通して、一貫して満たされない思いがあった。それがいままで精神的な部分だとぼくは思っていたが、ここではその思いが音楽の完成度に対して満足していないようにも感じに思えた。それがセイヴス・ザ・ディというバンドを、現在でも続けているモチベーションになっているのかもしれないとも感じた。そういった意味では、彼らの本質を垣間見れた作品ではないか。

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