プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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2018/03/26

TONNY RETTMAN(トニーレットマン著) 『STRAIGHT EDGE (ストレートエッジ)』

Straight Edge: A Clear-headed Hardcore Punk HistoryStraight Edge: A Clear-headed Hardcore Punk History
Tony Rettman

Bazillion Points 2017-11-14
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ニューヨーク・ハードコアやデトロイト・ハードコア『Why Be Something That Youre Not』の著者として知られるトニーレットマンが、17年に発表したストレート・エッジ・シーン全般を紹介した本。

アメリカン・ハードコアの細分化されたジャンルのひとつとして知られるストレート・エッジ。この本では37年に渡るストレートエッジの歴史を、当事者の発言を引用する形式で執筆している。当時のシーンの裏側や、知られることのなかったエピソードや、実際の話とは異なる事実など、くまなく紹介している。

まずストレート・エッジとは、「喫煙をしない」「麻薬をやらない」「アルコールを飲まない」「快楽目的のセックスをしない」という基本理念を柱に掲げたパンク・ハードコアの思想だ。その始まりはティーンアイドル、マイナースレットのボーカルであったイアン・マッケイの発言から始まる。

この本でチャプター分けされ紹介されている内容を説明していくと、

WASTED YOUTH…ヒッピー・カルチャーやTHE BEATLES(ビートルズ)やTHE DOORS (ドアーズ)、THE ROLLING STONES (ローリング・ストーンズ)などの、60年代のロックバンドを象徴する「セックス、ドラッグ、ロックンロール」の価値観を否定するためのアンチ・テーゼとして、ストレート・エッジ思想が生まれた。

D.C.: SNEAKERS…当時10代であったIan MacKaye(イアン・マッケイ)が結成したバンド、THE TEEN IDLES(ザ・ティーン・アイドルズ)が、未成年でもライヴハウスに入る方法として未成年の手の甲にマジックでバツ印(×)印を付けることを提案。以来、手の甲のバツ印は、反アルコールと反ドラッグのシンボルとなった。

MINOR THREAT : STRAIGHT EDGE…MINOR THREAT(マイナー・スレット)が81年に発表したEP。『MINOR THREAT』のなかの“Straight Edge (ストレート・エッジ)”と、同年発表のEP『In My Eyes』のなかの“Out Of Step (アウト・オブ・ステップ)”との2曲から、ストレートエッジに対する思想やアティテュードが生まれた。歌詞の内容を説明すると、“ Straight Edge”ではと歌い、“ Out of step”ではと歌った。この歌詞によって、ストレート・エッジ思想が確立された。

BOSTON : THE KIDS WILL HAVE SAY…ボストン・ストレートエッジ・シーンについて。イアン・マッケイが単独で歌っていた内容を、ボストンでSSDやDYSなど複数のバンドが共鳴し、シーンとして確立した。ボストンではDCと違い、酒やクスリをやっているバンドを、暴力で強制的に排除するなど武闘派も多く、激しく体を動かす体育会系のようなシーンだった。

7 SECONDS : COMMITTED FOR LIFE…初期ストレートエッジからユースクルー・シーンへの橋渡しをした7 SECONDS(7セコンズ)。
OUTHERN CALIFORNIA : IN CONTROL…西海岸のストレートエッジの創始者として知られるUNIFORM CHOICE (ユニフォーム・チョイス)。

YOUTH OF TODAY : TAKE A STAND! …ストレートエッジをアメリカ全土に広めるきっかけとなったYOUTH OF TODAY(ユース・オブ・トゥディ)。7セコンズやユニフォームチョイスなど、各地で細々と活動していたストレートエッジ・バンドに連帯感を促し、ユース・クルーと呼ばれることになるシーンでまとめ上げた。ポジティヴで健全なストレートエッジとして、新しいライフスタイルを提示した。

SLAPSHOT : BACK ON THE MAP…メタル化したボストン・ハードコアに、もう一度昔のストレートエッジ・ハードコアの活気を取り戻すため、元NEGATIVE FX(ネガティヴFX)のメンバーによって結成されたSLAPSHOT(スラップショット)。

BOLD : JOIN THE FIGHT…JOGCORE(運動部コア)といわれたBOLD(ボールド)。友情、団結をテーマに、弱い自分をみつめ、勇気を振り絞り行動していくスタイルを提示。

YOUTH CREW STYLE : MORE THAN FASHION…ユース・クルーのファッションについて。

ORANGE COUNTY : WE’LL MAKE THE DIFFRENCE…オレンジカウンティ周辺の、ドギースタイルと呼ばれたストレートエッジのバンドたち。INSTEAD(インステッド)を筆頭に、ベジタリアンだったRAGE AGAINST THE MACHINE (レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン)のZack de la Rocha (ザック・デ・ロチャ)が在籍していたバンドINSIDEOUT(インサイド・アウト)。なかでもCHAIN OF STRENGTH(チェイン・オブ・ストレングス)は、カリスマ性に富み、ストレートエッジ・アンセムのひとつとして数えられている“Ture Till Death(死ぬまで事実)”という曲を発表。

JUDGE : FED UP!…ドラッグによって崩壊した家庭に育ったJUDGE(ジャッジ)。心からドラッグを憎み、闘争的なアティテュードを持っていた。ポジティヴで健全だったストレートエッジ・シーンを暴力化し、全体主義化していった。

VEGETARIANISM : NO MORE…ユース・オブ・トゥディのRay Cappo (レイ・キャポ)がクリシュリナ教に改宗したことや、イアン・マッケイがベジタリアンであったこともあって、ストレート・エッジに菜食主義的な考えが加わった。ベジタリアンに辟易してストレート・エッジを辞めていく人もいた。

NO ONE CAN BE THAT DUMB : THE U.K.&EUROPE…オランダ出身でヨーロッパ初のストレート・エッジ・バンド、Larmについて。

HARDLINE : THE WAY IT IS…HARDLINE(ハードライン)というコミュニティーを作り、ストレートエッジをヴィーガン・ストレート・エッジにストイックに推し進めたVEGAN REICH(ヴィーガン・リッチ)とRAID(レイド)。

DESPERATE STATE : UMEA STRAIGHT EDGE…REFUSED(リフューズド)を中心としたスウェーデンのストレート・エッジ・シーン。

EARTH CRISIS : A FIRESTORM TO PURIFY…ヴィーガン・ストレートエッジ思想を全世界に普及させたEARTH CRISIS(アースクライシス)。メタルエッジのサウンドに、ヴィーガン・ストレートエッジ思想を載せたサウンドは画期的だった。アニマルライツ(動物権利)の歌詞と、コンピレーションの売り上げをシーシェパードなどに支援するなど、具体的に行動に出るバンドでも有名だった。

SALT LAKE CITY:IDENTITY CRISIS…97年にユタ州ソルトレークシティーでストレート・エッジを名乗る集団が酒屋やドラッグストアなどを襲撃した事件。日本で例えるならチーマーのような暴力行為を行う存在として、ストレートエッジがアメリカ全土に認識された。

YOUTH CREW REVIVAL : DO YOU REMEMBER HARDCORE ? …IN MY EYES(イン・マイ・アイズ)やBANE(ベイン)、TEN YARD FIGHT(テン・ヤード・ファイト)などのボストンのバンドたちによるユースクルー・リバイバル。80年代のユースクルー・サウンドをベースに90年代風にブラッシュアップさせたサウンドを提示。

EAST COAST 2000 : THE UNBREAKABLE… THE FIRST STEP(ザ・ファースト・ステップ)やDOWN TO NOTHING(ダウン・トゥ・ナッシング)、HAVE HEART(ハヴ・ハード)など、新世代のバンドたちによるユース・クルー・リバイバル。前者とは違い、メロディックな要素を加え、家族のきずなや友情を歌った健やかで健全なストレートエッジ。メジャーリーガーのピッチャーであるChristopher John Wilson(CJウィルソン)が、ストレートエッジであることを表明。プロレスラーのCMパンクもストレートエッジ・ソサエティーを作った。アンダーグランドなものであったストレートエッジが、一躍メインストリーム化した。

THE VALUE’S HERE : ASIA AND THE WORLD’S EDGE…日本と韓国のストレートエッジ・バンドについて。

BACK TO DC : BUILDING TOMORROW…約30年ぶりにワシントンDCで誕生したストレートエッジ・バンド、MINDSET(マインドセット)について。D.I.Yでベジタリアン。自分たちでツアーをブッキングし、Tシャツを作り、フェアトレードを無視し、庶民から搾取する大企業の靴は履かないという姿勢を貫いている。

と、以上のようにストレート・エッジ史の重大な出来事は、ほとんどすべて網羅している。イアン・マッケイの何気ない一言で始まったストレートエッジも、ベジタリアンから、アニマルライツ、天然由来の穀物しか食べないヴィーガンまでと、30年という時間を経るなかで、時には過激に、拡大解釈が進んだ。とくにソルトレークシティーでの事件は、正しいと信じて行動したものが、社会的な悪へと転換する格好の事例だったし、シーシェパードのような拳銃で発砲し船を沈没させる行為は、もはやテロとかわらないだろう。何にしても行き過ぎはよくないのだ。

いままで個人的にストレートエッジを遵守するひとは、長生きをするための健康志向なのか、それとも不良のすることを嫌う真面目な人間という捉えかたをしていた。だがこの本で酒やドラッグのせいで家族が崩壊し、心の底から酒とドラッグを憎んでいるストレート・エッジバンドもいる事実を知り、あらためて日本とは違うアメリカ社会の闇を考えさせられた。ユースクルーという一過性のムーブメントが過ぎ去り、ストレートエッジを辞めていくバンドが意外にも多いことや、酒やクスリまで手を出すニセ・エッジ・バンドもいることにびっくりさせられた。定義がはっきりしている思想だけに、その考えを10年、20年のその遵守するのは困難だといえるだろう。それほど人は弱い生き物なのだ。

個人的にこの本で一番面白かった部分は、日本であまり知られていないバンドでも、それぞれに異なるバックボーンや物語を持っているということ。その背景やバンドでなにを伝えたいのか、どんなサウンドを表現したいのかなどの細かいディティールを知ることによって、いままでとは違った音楽のように聴こえる。そのへんが○○に影響を受けてバンドを始め、二番煎じ、フォロアー的な意味合いが多かったメロディック・パンクやエモなどのシーンとの違いなのだ。

ストレート・エッジとは精神性を主とする考えなので、サウンド的な特徴が捉えづらいシーンでもある。だが映画『ザ・コープ』やシーシェパード、ベジタリアンなど、日本人に対して間接的ではあるが、広く知られている思想も珍しいといえるだろう。個人的にはEbullition Records(エボリューション・レコーズ)について、もっと紹介して欲しかったことが不満だが、ストレートエッジのいろいろな部分が知れ、個人的に楽しめた。ものすごく価値のある本なのだ。

2017/11/02

The Kominas (ザ・コミナス) 『Stereotype (ステレオタイプ)』

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マサチューセッツ州出身のパキスタン系アメリカ人のよるパンクバンドの15年に発表された4作目。彼らはマイケルムハンマドの小説、『Taqwacores(タクワコア)』によって、その存在を世間に知られるようになったバンドだ。

彼らは政治的な問題を歌うよりも、イスラム教徒の世間的な話題に重点を置いているという。そのためそんなにシリアスなアティテュードを持っていないようだ。あくまでも音楽に重点を置いた活動をしているという。

その音楽性は、トルコやイランなどの中近東の音楽やパンジャブ民族音楽、サーフロック、レゲェやダブと、パンクとの融合。1作目の『Wild Nights in Guantanamo Bay(ワイルド・ナイツ・イン・グアンタナモ・ベイ)』で中近東音楽とパンクとの融合を目指し、2作目の『Escape to Blackout Beach(エスケープ・トゥ・ブラックアウト・ビーチ)』でアジアンなメロディーに、スカやレゲェを融合した。3作目の『Kominas(コミナス)』ではスカやレゲェを突き詰めた。そして4作目となる今作でも、前作のレゲェとパンク路線を踏襲している。

とくに変化したのはリズムで、スローテンポな曲が増えている。“Again & Again”は低音グルーヴのレゲェな曲で、“See Something, Say Something”は空間を切り裂くダブな曲。全体的にパンクな曲は少なくなったが、バラエティーに富んだレゲェの曲が増えた。そこには南の島をイメージさせるトロピカルで美しいメロディーがあり、ゆったりとした脱力ムードが漂っている。そこには民族問題や社会問題をシリアスに捉えず、社会風刺としてとらえているような穏やかさがある。

ひとつの音楽性にとどまることを嫌うバンドなのだろう。この作品でもいろいろなことにチャレンジしている。意欲的な作品だ。

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2017/07/05

Trash talk (トラッシュ・トーク) 『Tangle(タングル)』

Cover

16年にホームページ上で発表された5曲入りのEP。約2年ぶりとなる作品。彼らの特徴である怒りまくった怒声のボーカルや、音の厚みを重視したノイジーなハードコアに変わりはない。全作品を通してサウンドにブレはないが、微妙な特徴を挙げるのなら、前作はベースの低音にまでブイブイうねるほどノイジーなベースが印象的でスローテンポな曲が多かった。

今作ではスローテンポ路線を踏襲しつつも、ノイズサウンドよりギターフレーズがしっかりとわかる展開。とはいってもノイジーなサウンドであることに変わりはないが、前作と比べると、若干ノイズさが薄れている。NEGATIVE APPROACH(ネガティヴ・アプローチ)のような怒声にBLACK FLAG (ブラッグ・フラッグ)の“My War”(マイウォー)のような気合と闘争心。特に印象的なのは5曲目の“Soothe Sayer”(スーズ・セイヤー)。反復する2コードのギターフレーズが、まるで暴走族のバイクが煽りまくるような過激さを感じる。若干新しいことにチャレンジしているからといって、相変わらず怒り狂っているし、鬱さの微塵のかけらもない。聴くだけでテンションが高くなる素晴らしい作品。

2017/06/14

TERROR(テラー) 『The Walls Will Fall(ザ・ウォールズ・ウィル・フォール)』


The Walls Will FallThe Walls Will Fall
TERROR

Alliance Trax 2017-04-27
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西海岸はロサンゼルス出身のハードコア・バンドの17年に発表された(アルバムを合わせ計11枚目となる)5曲入りのEP。西海岸のバンドだが、フロントマンであるボーカルのスコット・ボーゲルがニューヨーク州バッファロー出身で、そのため彼らのサウンド的な特徴は、ニューヨーク・ハードコアの伝統的なスタイルを受け継いでいる。シック・オブ・イット・オールのOiコーラスを交えた男臭く硬質なサウンドから、アースクライシスのスローパートやノイジーなギターなど、ユースクルーとニュースクールのニューヨーク・スタイルを集約したバンドといえるだろう。

全作品を通してニューヨークのストイックで硬質なハードコアサウンドに変わりはない。だが、アルバムを発表するたびに、メタルサウンドをふんだんに取り入れたアルバムや、oiコーラスとシャウトにこだわったアルバム、ノイジーでよりアグレッシブになったアルバム、ブラストビート、メタルのギターフレーズ、ドラムのテンポの変化など、色々な要素を取り込み、バラエティー豊かに深化してきた。

そして今EPでは前作『The 25th Hour』の延長上にある、スローから急激にスピードが上がるストップ&ゴーの重く重厚なリフが特徴的なサウンドを展開している。そして注目すべきは、5曲目に収録されている“Step To You”。この曲はMADBALL(マッドボール)のカバー曲で、ゲストヴォーカルにはマッドボールのヴォーカル、Freddy Cricien(フレディー・)と、AGNOSTIC FRONT(アグノステッィク・フロント)のヴォーカル、Roger Miret(ロジャー・ミレット)が参加。ニューヨークのオールドスクール・ハードコアと、ニュースクール・ハードコアを代表する新旧世代のレジェンドによる夢の競演をはたしている。

肝心の曲だが、原曲のアレンジを変えず、忠実にカヴァー。違いがある部分といえば、ギターサウンド。全体に拡散するノイジーだったマッドボールのギターと比べると、音を絞った硬質なギターが持ち味のterror(テラー)の個性が発揮されている。ここには自分たちが好きだったマッドボールやアグノステッィク・フロント、それをひっくるめたニューヨーク・ハードコアへの限りない愛情と、伝統に対する誇らしい気持ちがひしひしと伝わってくるのだ。彼らの気合や、音楽への情熱、高いモチベーションになにも変わりはない。好作品だ。


2017/05/09

This Is Boston, Not L.A. (ディス・イズ・ボストン,ノット・L.A)

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This Is Boston Not L.a.This Is Boston Not L.a.
Various Artists

Wicked Disc 1995-10-10
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82年に発表されたボストン・ハードコア・バンドを集めたコンピレーション。この作品を聴けばボストン・ハードコアがどんなシーンなのか、サウンド的な意味でも、アティーテュードの特徴も、おおよそ理解できる。ボストン・ハードコア・シーンを知るうえで外せない重要な作品だ。

当時このコンピレーション・アルバムを制作した理由は、ボストン・ハードコア・シーンのアイデンティティを全国に広めるためと、退廃的なイメージが強かったロサンゼルス・シーンと差別化を図るためだった。そのため『This is Boston NOT L.A.』(これぞボストン。ロザンゼルスではない)という過激なタイトルがつけられた。だがこのタイトルの意味はロサンゼルスのバンドたちにとっては侮辱して捉えられ、あとにストレートエッヂ思想やNegative FX(ネガティヴ・FX)などのボストンバードコアシーンを全否定したNOFXを生み出すほど、西海岸のバンドたちには評判の悪い作品となった。この作品を発表した結果、ボストンのハードコア・シーンのバンドたちは、ほかの地域のバントたちを受け入れない排他性を確立し、ガラパゴス的な進化を遂げていった。

ほかのシーンにはなにかと評判の悪い作品だが、サウンド的には優れている。アメリカン・ハードコアのなかでも5本の指に入る名作だ。ここに収録されているバンドは、JERRY’S KIDS(ジェリー・キッズ)、THE PROLETARIAT(ザ・プロレティアート)、 GROINOIDS(グロイノイドズ)、 THE F.U.’S(ザ・フューズ)、 GANG GRREEN(ギャング・グリーン)、 DECADENCE(デカダンス)、 THE FREEZE(ザ・フリーズ)など、すべてボストンのバンドたちだ。ボストンでも有名だったSSDecontrol(ソサエティー・システム・デコントロール)やDYS、Negative FX(ネガティヴ・FX)などのバンドたちは参加していない。とくにボストンシーンの中心的存在であったSSDecontrolは、参加のオファーがあったが、レーベルへの不信感があり、参加を見送ったそうだ。

全体を通して聴いてみると、メロディックギターを導入した初期パンクに影響を受けたサウンドのバンドと、性急で電源がショートしたような歪んだギターのノイジーなハードコア・サウンドを展開しているバンドの2タイプに分かれる。だがどのバンドも声量の限りを出し尽し早口でまくし立てるボーカルと、苛立ちと焦燥感に満ちた音楽衝動の部分では共通している。それがボストン・ハードコアの特徴なのだ。この一枚を聴くだけで、ボストン・ハードコア・シーンのサウンドの特徴が分かり、しかも退廃的でメロディーパートがあるLAハードコアシーンや、スピーディーでノイジーなサウンドのバンドが多かったワシントンDCシーンなど、地域ごとの音の違いも理解できるのだ。なおCD盤には、ボストンの上記6バンドが参加し、82年に発表されたEP『Unsafe at Any Speed EP (センセーフ・アット・エニィ・スピード・EP)』がボーナストラックとして収録されている。

2017/02/11

Touché Amoré (トゥーシェ・アモーレ) 『Stage Four(ステージ・フォー)』

STAGE FOURSTAGE FOUR
TOUCHE AMORE

EPITA 2016-09-29
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エピタフに移籍し、16年に発表された4作目。彼らのサウンドは、ポスト・ハードコアやスクリーモという括りで語られている。だが絶滅してしまったジャンルを現代に蘇らせたバンドといえるだろう。そのサウンドとは、スクリーモがメタルのいちジャンルと化し、形骸化する前の、スクリームするエモという語源のバンドなのだ。

バンド名で例えるなら、Heroin (ヘロイン)や初期Still Life(初期スティール・ライフ)、Julia(ジュリア)など。それらのバンド影響を感じる。血の噴き出るようなスクリームや、静と動のアップダウンする展開などは、彼らからの影響が強い。そこに性急なビートを加え、よりファストにメロディックに進化したバンドなのだ。

爆撃のような激しさと勢いに、妖艶で陰りのあるメロディーと、血の噴き出るようなスクリームが混然一体となった最高傑作と名高い『前作』。今作では前作で確立したサウンドフォーマットをベースに、さらにメロディーを追求した作品だ。

今作ではよりポップに、メロディックに爽やかな疾走感を加えたサウンドに進化した。メロディーの幅が広がった作品に仕上がっている。ここまでくるともはやメロディック・激情コアという内容だが、それはそれでいい作品だ。

相変わらずすべてを出し切るような叫び声は健在で、そこにface to face(フェイス・トゥ・フェイス)のような切ない疾走感や、陰りのある穏やかで美しいメロディーが加わった。そして“Skyscraper(スカイスクレパー)”では、叫び声を捨て、穏やかで落ち着いた雰囲気を醸し出している。そこには深い森の中にひっそりと湧き出る泉のような、心落ち着く穏やかなやさしさと癒しに満ちたメロディーがある。いままでなかった新しいタイプの曲だ。

とはいっても相変わらず全力を出し尽くして燃え尽きるような、彼らの個性は失われていない。大衆受けするような、ポップな聴きやすさとか、悲しみや励ましなどの共感しやすい感情は一切求めていない。例えるなら、川の流れのなかで研磨され丸くなった石のような、滑らかでソフィスティケイトされた聴きやすさよりも、ごつごつと尖った岩のようなぎこちなさが残る荒々しい演奏を重視している。

滑らかさのない荒々しさや勢いを重視する姿勢には、うまく立ち振る舞うことのできない不器用なぎこちなさを感じる。彼らの魅力は、この作品でも変わっていないのだ。メロディーの深みを増した分、人間としてもニュージシャンとしても確実に成長の跡がうかがえる作品に仕上げっている。

2017/01/17

『The Emo Apocalypse (ザ・エモ・アポーカレス)』

Index2

06年にドイツから発売されたコンピレーション・アルバム。『The Emo Apocalypse (ザ・エモ・アポーカレス)』というタイトル通り、エモ・バンドばかりを収録している。エモといってもJIMMY EAT WORLD(ジミー・イート・ワールド)に代表されるようなポップエモのバンドは一つもいない。ものすごく乱暴に例えるなら、Texas Is the Reason(テキサス・イズ・リーズン)の古典的なエモーショナル・ハードコアから、Converge(コンヴァージ)のカオティック・ハードコアに進化していく過程の、そのふり幅の間にあるバンドを集めたコンピといえるだろう。

収録バンドはCease Upon The Capitol、Khere、Loma Prieta、D Amore、Her Breath On Glass、The Birds Are Spies They Report To the Trees、Kias Fansuri、June Paik、Enoch Ardon、Cagliostro、Louise Cyphre、Trainwreck、Architects、A Fine Boat That Coffin、Ten And Two、The Walls You’ve Built、Balboa、Only For The Sake Of Aching、Belle Epoque、Catena Collapse、The Critic、Manhattan Skyline、Am I Dead Yet、Petetheepiratesquid、Alegory Of The Cave、Antithesis、Towers、Funeral Diner、I Spoke、Escapado、Violent Breakfast、Monocycle、Arse Moreira、Pyramids、Suis La Lune、Kurhaus、Orbit Cinta Benjamin、A Day In Black And White、SL 27、Mr Willis Of Ohio、Van Cosel。の計42バンド。すべての収録曲は30秒前後で終わる、センシブでうるさくファストな曲だ。

このなかで有名なバンドといえば、カルフォルニアのLoma Prieta(ロラ・ピエタ)や、ボストンのHer Breath On Glass(ハー・ブレス・オン・グラス)、サンフランシスコのFuneral Diner(フューレル・ダイナー)ぐらい。あとはあまり知られていないバンドが多数を占めている。

全体の特徴をいえば、どのバンドもスクリームと暴走するスピード、荒れ狂ったノイズがある。すべての理性が消し飛ぶようなその躁状態のサウンドはありまるで、すべてを吹き飛ばす荒れ狂った巨大竜巻のようなサウンドを展開している。

どのバンドも尋常でないテンションのサウンドを展開している反面、同じようなサウンド・スタイルのバンドが多く、これといった特徴があるバンドがあまりないのが欠点だ。

そのなかでもとくに印象深いのは、ノイズギターが一切なく繊細なメロディーを高速で奏でるエスクぺリメンタルなサウンドを展開しているBelle Epoque(ベル・エポック)、無機質でテクニカルなメロディーが不快なノイズの歪に変わっていくA Day In Black And White(ア・ディ・イン・ブラック・アンド・ホワイト)。彼らはエモや激情の範疇に捉われず独特なサウンドを展開している。そして首を絞められた女性のような金切り声をあげるOrbit Cinta Benjamin(オアビット・チンタ・ベンジャミン)は、激情コアの先にあるもっと過激なサウンドを目指している。

さずがエモ/激情のコンピとだけあって、ものすごく激しいサウンドだが、どのバンドも外へ向かって闘争していくというよりも、自閉症的というか、内面世界に感情が根付いている。エモといえば腐るほどコンピがリリースされているが、この作品は意外とありそうでなかったジャンルのバンドたちを集めたコンピなのだ。

2016/09/14

Why Be Something That You're Not: Detroit Hardcore 1979-1985 (ホワイ・ビー・サムシング・ザット・ユアー・ノット:デトロイト・ハードコア1979-1985)

Why Be Something That You're Not: Detroit Hardcore 1979-1985Why Be Something That You're Not: Detroit Hardcore 1979-1985
Tony Rettman Tesco Vee

Revelation Records 2010-07-06
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 アメリカン・ハードコアに精通したライター、トニー・レットマン著書による、13年に発売されたデトロイト・ハードコアを紹介した本。なぜトニー・レットマンが、デトロイトという小都市にスポットをあてたのか、その理由は分からないが、これまたすごい内容の本だ。

 その内容は79年にデトロイトで誕生したタッチ&ゴー・レコーズが、85年にシカゴに異動するまでの6年間を中心に語っている。当時のバンドの関係者のインタビューを交え、デトロイトのハードコア・シーンについて語っていく内容だ。

 なぜこの本がすごいかといえば、デトロイトのハードコア・シーンが、ほかの地域と比べると、あまりにも特殊すぎるからだ。そこにはカルフォルニアやニューヨークのシーンのような、大勢のバンドによる活気や、盛り上がりなどはない。ましてや長期にわたってハードコア・シーンが継続され、伝統が生まれる土地柄でもなかった。バンドのつながりや伝統やコミュニティー、仲間意識やライバル心、シーン内による影響など、全く存在しなかった。それらの要素が独特なシーンを形成したのだ。
 
 デトロイトで活動したバンドたちは、まるで線香花火のように瞬間に激しく燃え、瞬く間に散っていった。どのバンドも短命で、単独で行動していた。烏合の集まりのシーンなのだ。デトロイトという治安が悪く、荒っぽい気質の土地柄の人間たちがパンクな暴動を起こす。それがデトロイト・ハードコア・シーンの特徴といえるだろう。
ここで具体的に取り上げられている代表的なバンドはNecros(ネクロス)とTHE FIX(ザ・フィックス)とNEGATIVE APPROACH(ネガティヴ・アプローチ)といったバンドたちだ。3バンドとも、マイナースレットやブラッグ・フラッグ、アグノスティック・フロントなんかと比べると、日本ではあまり知られていない存在のバンドたちといえるだろう。だがアメリカでは3バンドとも、本当の意味で伝説のバンドとして語られ、ハードコア界では神格化された存在として扱われている。

 とくにネガティヴ・アプローチは、デビューが82年で、後世のバンドたちに多大な影響を与え、アメリカ・ハードコアの基礎の半分くらいを作ったと言われているバンドだ。デス声の先駆者のようなボーカル・スタイルや、パワーヴァイオレンスに多大な影響を与えたといわれるノイジーなパワフルなサウンドスタイルが特徴だ。
そしてネクロスは、デビューシングル『SEX DRIVE(セックス・ドライブ)』のプレスリリースがわずか100枚で、いまだに1stアルバムは再発されていない。アメリカン・ハードコア史上10本の指に入るレア盤として語られてきた。YouTubeが普及するまで、長らくそのサウンドが知られることがなかった。最近までそのサウンドが知られることがなかった伝説のバンドとして語り継がれてきた存在だ。

 ザ・フィックスも、デビューEP『VENGENCE(ヴェンジェンス)』の発売がわずか200枚で、このバンドもアメリカン・ハードコア史上10本の指に入るレア盤といわれてきた。だがネクロスとは違いそのサウンドは猛烈な勢いと爆音で駆け抜けるハードコア・パンク。ハードコアに進化していく原型のサウンドなのだ。どのバンドも活動期間が短く、それでいて後世に多大な影響力をあたえたバンドたちだ。

 わずか数百枚しかリリースがなかったという希少性。サウンドと精神性の両面からの後世への影響力。そしてわずかな期間しか活動しなかったという伝説。それらの要素が、デトロイト・ハードコア・シーンという特殊性を生んだのだ。これほど伝説や神話して語られるのがデトロイトならではの特徴といえるだろう。これほどデトロイトの特殊性を探り当て、スポットをあてたトニー・レットマンはすごい。アメリカン・ハードコアが好きなら、絶対必読する必要のある本だ。

2015/12/18

Twitching Tongues (トイッチング・タングス)  『Disharmony (ディスハメニー)』


DisharmonyDisharmony
Twitching Tongues

Metal Blade 2015-10-29
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 大手インディーレーベル、メタルブレイドに移籍して発表された3作目。前作の死神に恋をするという世界観をガラッと一新させ、前作よりもさらにスケール感が増した作品に仕上がっている。

 ぼくは前作『イン・ラヴ・ゼア・イズ・ノー・ロウ』のレビューで、この作品が最高傑作と書いた。その気持ちはいまも変わらないが、おそらくメタルが好きな人から見れば、今作を最高傑作に挙げる人も多いのではないか。前作がハードコア的な要素が強い作品とするならば、今作はメタルと呼べる作品に仕上がっている。

 前作はシリアスで緊迫した空気が流れるなか、独特な静けさがあった。葬式のような死者の霊を愛しむ深い沈黙の静謐が魅力であった。そのサウンドはマッドボールから発展した新しい形の、ニュースクール・ハードコアなサウンドであった。今作ではその静謐が薄れ、代わりに土臭いアメリカ南部のサザンロック的な荒々しさが支配している。ボーカルもワイルドな歌い方に変わり、ギターの音は野太くなり、ソロパートなども加えている。複雑な展開はなく、サウンド自体は至ってシンプルでストレート。マストドンの影響が色濃いメタルな作品に仕上がっている。

 ただマストドンとの違いを揚げるのなら、キリスト教の影響が色濃い神秘的なオルガンを不吉な音色に変え取り入れている。どうやら今作も前作同様にコンセプチュアルな作品らしい。現時点でそのコンセプトは何かわからないが、反キリスト的な異端の宗教と、愛の欠如や、愛の終わり、偽造され全世界へ布教された愛の話など、といった歌詞の内容が目立つ。今作では哲学的な思慮的なムードと、ニヒリズムが支配しているのだ。それがこのアルバムの特徴だ。

 前作とサウンドの違いこそあれ、漆黒に囲まれた、死神や反キリスト的な異端教、ダークな世界感は今作でも変わっていない。趣向の違いこそあるが、今作もすばらしい作品なのだ。

2015/12/07

TAKEN (テイクン)  『CARRY US UNTIL THERE IS NOTHING LEFT (キャリー・アス・アンティル・スリー・イズ・ナッシング・レフト)』


CARRY US UNTIL THERE IS NOTHING LEFTCARRY US UNTIL THERE IS NOTHING LEFT
TAKEN

FALLING LEAVES RECORDS 2015-01-27
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 日本では叙情系ニュースクール・ハードコアと呼ばれ、97年から04年まで活動をしていたカルフォルニア州オレンジカウンティー出身のバンド、テイクン。15年1月に、再結成&新作レコーディングを記念して、現在廃盤となっている過去3作品、『Finding Solace in Dissension』『And They Slept』『Between Two Unseens』を収録した2枚組みが発売された。

 日本ではホープス・フォールやシャイ・ハルードと並び、叙情系ニュースクール・ハードコアの代表格と呼ばれているテイクン。叙情系ハードコアとは、従来のハードコアに、断末魔の苦しみのような叫びと、繊細なメロディー・パートが絡むサウンドことを言う。エモーショナル・ハードコアの発展系で、アメリカではリアル・スクリーモと呼ばれている。

 そのなかでもテイクンは、安らぎと心地よさと、桜が散るような儚さに満たされた浮遊感のあるメロディーに特長があった。悲痛な叫び声と、荒々しくバイオレンスなハードコアのなかに、気品ともいえる美意識が漂っていた。それが彼らの個性でもあったのだ。

 アルバムの構成は、ディスク1は04年の2作目のEP『Between Two Unseens』から5曲、02年のデビュー・アルバム『And They Slept』から5曲の計10曲が収録されている。ディスク2は、『And They Slept』から2曲、00年の1作目のEP『Finding Solace in Dissension』7曲の、計9曲が収められている。新しい作品から順に収録され、古い作品にさかのぼっていく展開だ。

 『Between Two Unseens』は、メロディーに力を入れた作品ながらも、叫び声の迫力が増し、激しさと繊細さの境目がなくなっている。初期にあったころあった荒削りな部分がなくなり、滑らかに聴かせる仕上がりに。技術的に円熟の域を感じさせる作品だ。『And They Slept』は、前作『Finding Solace in Dissension』の延長上にある作品で、エモのように静のメロディーとハードコア激しさがくるくると入れ替わる展開。ボーカルもクリーン・ボイスと叫び声を使い分け、全体に荒々しさが目立ち、エモーショナル・ハードコアの要素が強い作品だ。そして『Finding Solace in Dissension』は、絶叫にザクザク刻むリフとノイジーなギター、ブラストビートの焦燥感が特徴的なハードコアな曲が多い。あくまでもメロディーをハードコアのエッセンスとして加え、勢いや衝動を重視している。

 全体を通して聴いてみると、ベースにある儚いメロディーと叫び声にハードコアが加わったサウンドスタイルは、全アルバムを通して貫いている。だが後期になるほどメロディーが研磨されていき、初期になればなるほど、激しく暴力的なハードコアな衝動を感じる。彼らが目指していたサウンドとは、おそらく『Between Two Unseens』だったのだろう。ここで完成したから、潔く解散したのだろう。解散後、メンバーがメタルコアを志向ミコトと、メロディーをさらに追及したサーカ・サヴァイブに分かれたのが象徴的だ。

 桜が散るような儚いメロディーに激情の叫び声と高みに登っていくハードコアのノイズギターは、
叙情系ハードコアのなかでは間違いなく5本の指に入る名盤だ。


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